純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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おはこんばんにちは!

文字数がかなり増えましたね…。
本当は評価するところまで行きたかったのですが、長くなりすぎるので止めました。



落としどころを探し始める今日この頃…。



戦闘訓練

「オールフォーワン、急に脳無が3体必要だなんて、何があったんじゃ?用意できないことは無いんじゃが…。」

 

 ドクターはオールフォーワンが急に脳無が3体必要だと言ってきたことに疑問を持つ。今回のUSJ襲撃は、死柄木を戦闘に慣れさせたり、超えるべき壁を実際に見せるためだが、そのために脳無3体は少しやりすぎだ。それでは、あまりにも一方的過ぎて、死柄木の訓練にはならない、とドクターは考えていた。

 

「ああ、すまない。説明してなかったね。君は落月純狐、という生徒を知っているか?」

 

「まあ、今年の雄英の生徒はあらかた調べたから知っているが、その生徒がどうしたのじゃ?確かに強力な個性だが、あの無機物への純化は人を対象にはできないはずじゃろ。それに、あのパワーも驚異的ではあるが、脳無を倒すとまではいかないはずじゃが?」

 

 ドクターは急に出てきた名前にまたも疑問を持つ。一体何がオールフォーワンを焦らせているかが分からない。

 

「それがそうではなかったんだよ。彼女の個性はオールマイトのパワーどころではないらしい。うまく戦えば、あの対オールマイト用の脳無を3、4発で倒してしまうらしいよ。」

 

「あの脳無を3、4発でじゃと!?ありえんじゃろ!あれは全盛期のオールマイトのパンチにも10発くらいは耐えることができるように設計しておるのじゃぞ。そもそも、そんな情報誰に聞いたんじゃ?」

 

 ドクターは聞いた話が信じられずに驚き、そんなことは無いと思いつつ誰かに嘘の情報を流されているのではとオールフォーワンに尋ねる。ただの生徒があの脳無を簡単に倒せることができるなど考えたくもなかったのだ。

 

「ヘカーティア・ラピスラズリって神様だよ。その神様がさっき僕のところに来て、そう言ったんだ。それに、その落月って生徒がどれだけ力を持っているかは関係ない。脳無が3体いるってことが重要なんだ。そうじゃないと今度こそ僕は殺されて…いや、もっとひどいことをされてしまうかもしれない。」

 

 オールフォーワンは震えた声で言う。殴られたときの全身を割かれるような痛み。それを思い出すだけでも吐きそうだった。

 

 そんなオールフォーワンの声の調子を聞いて、ドクターは本気でオールフォーワンのことを心配しだす。

 

「おい、オールフォーワン。いったい何をされたのじゃ。それに神様じゃと?そんなものがおるのか?」

 

「ああ、最初は僕も信じられなかったけど、あれは多分本物だ。僕が本気で放ったパンチを何もせずに受け止めて、服すら傷ついてなかったし、攻撃されたときもできる限りの防御をしたが、全く効果が無かった。逆にあれが人間だった方が怖いよ。」

 

 ドクターはその説明を聞き冷や汗をかく。オールフォーワンは本気で殴ればオールマイト以上の力を出すことができる。それを受けて無傷という事は本当に人間だったときの方が恐ろしい。しかし、ドクターはまだそれが神だとは信じきれない。まあ、この科学の世で急に神を信じろ、と言われても信じられないのは当たり前である。

 

「なあ、オールフォーワン。それは、とんでもない個性を持った人間だとは考えられんか?神でなく人間ならば、まだ対策の施しようがあるんじゃが…。」

 

「どこからともなくワープしてきて、僕の攻撃を完全に無効化し、僕が個性を奪おうとしても奪うことができず、脳の神経を好きなように操れるような奴がかい?人間だとしてもどうやって対策するんだ。少なくとも、僕はお手上げだよ。そんなことをするよりは奴の提案に乗った方がいいと思うがね。幸運にも、奴は僕らの計画に反対ではないらしいからね。」

 

 ドクターは鬼気迫るようなオールフォーワンの声に気圧される。今のオールフォーワンの説明を聞く限り人間だとしても対策のしようがない。下手に抵抗して殺されるくらいならばヘカーティアの策に乗った方がいい、とドクターも考えを改めた。

 

「…ああ、分かった。USJ襲撃の際に、脳無を3体送らせてもらう。後は、お前さんに任せるぞ。」

 

「ありがとうドクター。」

 

 そこで通信を終え、二人の会話は終わった。

 

 

 

「わーたーしーがー!!」

 

 大きな声がしてクラスのみんなが扉の方を見る。初めてのヒーロー基礎学でみんなソワソワしているようだ。それに、先生が先生だ。初めての登場に期待をしないわけがない。そんな期待を背負った先生がついに登場する!

 

「普通にドアから来た!!」

 

 …なんとなく期待外れだな。という感じの空気が教室の中に漂う。しかし、ほとんどの生徒が生のオールマイトに興奮して、そんな空気はすぐに消し飛んでしまった。

 

「オールマイトだ!本当に先生をやってたんだ!」「画風違い過ぎて鳥肌が…。」

 

 そんな声が、教室のいたるところから聞こえてくる。そんな歓声を浴びながら、いつものように笑うオールマイトは、早速本題を話し始めた。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、訓練を行う科目だ!」

 

 オールマイトは言い終わると、BATTLEと書かれたプレートを出し、今日することを発表する。

 

「早速だが、今日はこれ!戦闘訓練!!そして、コスチュームを着て行ってもらう!」

 

 生徒たちはコスチュームを着ることができると聞くと、立ち上がって喜ぶ。そんな生徒の様子を見て、オールマイトはHAHAHAと笑いながら言った。

 

「着替えたら、グラウンドβに集合してくれ!」

 

生徒たちは元気に返事をして着替えに行く。そんな皆の様子を見ながら、オールマイトは一足先にグラウンドへ行き、独り言のように言う。

 

「格好から入るのも大事だぜ。そして、自覚するんだ!今日から自分は、ヒーローなのだと!」

 

 

 みんなが、自分のコスチュームについていろいろ話しているのを横目に見ながら、純狐はいつもの袍服のような服装に着替える。

 

(建物の中でちまちま戦闘をするのも面倒だし、建物を砂にでも純化してみようかしら)

 

 今回は対人戦なのであまり全力で力を使うことはできないが、個性把握テストの時よりも様々な応用ができ、より楽しむことができると考えていた純狐は、かなり本気で作戦を考え出す。そして、それなりの計画を思いついたところで、着替え終わりグラウンドへ向かった。

 

 グラウンドへ出た純狐はすでに集まっていた他の生徒のもとに向かう。純狐のすぐ後に出久が出てきたのを確認すると、オールマイトは説明を始めた。

 

「おし、集まったな。今日行うのは屋内での対人戦闘訓練だ。君たちにはこれからヴィラン側とヒーロー側に分かれて、2対2の屋内戦をしてもらう。」

 

「勝敗のシステムはどうなるのですか?」「分かれ方はどのようにすればいいのでしょうか。」「相澤先生みたいに除籍とかはあるんですか…?」

 

 オールマイトの説明に生徒たちは次々に質問を放つ。オールマイトは少し困ったような顔をして、カンペを取り出し質問に答え始めた。

 

「えーと、状況設定はヴィランが核兵器をヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか核を回収すること。ヴィランは制限時間まで核を守るかヒーローを捕まえることだね。対戦相手とコンビはくじだ。」

 

 オールマイトはくじの入った箱を取り出して言う。組み分けは順調に進んでいき、純狐は尾白とペアになった。原作で尾白と組んでいた葉隠が余ったが、純狐たちが終わった後に尾白が組むことになり、対戦チームもくじで決められることになった。その他の組は、原作通りのようだ。

 

 ヴィランとして純狐と組むことになった尾白が純狐に話しかけてくる。

 

「よろしく、落月さん。何か作戦って考えてたりするかい?」

 

「よろしくね、尾白君。まあ、作戦っていうかなんて言うか…。二人は私が入り口前で足止めするわ。その時、入口の陰に隠れて一時的に戦闘できなくなったりした敵を縛ってもらっていいかしら。戦闘をしないからすっきりはしないだろうけど、必要な役なのよ。」

 

 正直純狐は誰と組むかはあまり考えていなかった。誰と組んでも自分が一人で頑張ればどうにかできるからだ。

 

 そんな余裕ぶった純狐を訝しむ尾白だが、個性把握テストなどを見る限り、純狐に戦闘は任せた方がいいため、純狐の策に従うことにした。

 

 

 一回戦目の出久班対爆豪班が終わり、純狐たちの番が来た。一回戦で建物が大きく壊れてしまったため別の建物での戦闘になる。

 

ヴィラン側の準備タイムに入り、純狐は渡された小型の通信機で尾白に連絡を取った。

 

「あーあー。聞こえてる?配置には着いたかしら。あと、さっきの作戦忘れないでね。」

 

「こちら尾白。聞こえてます。…ねえ、落月さん。相手には轟君がいるけど本当に一人で大丈夫かい?何なら今からでも策を考えた方が…。」

 

 尾白は轟の班と戦うことになって、あの二人を一人で止めることができるのかと心配する。まあ、どうやって二人を止めるか聞かされていないので、当たり前のことである。だが、当の本人である純狐は尾白の心配を聞き入れようとはせず、ニヤリと笑みを浮かべていた。

 

「心配ないわよ。まあ、見てなさいって。」

 

 それを最後に通信をいったん切った純狐は、入口のすぐ目の前に立ち、試合開始の合図を待つ。ちなみに、核は入口から近い一階の部屋に置いてある。下手に離れたところに置けば、情報収集に優れた障子にばれ、気づかないうちに取られてしまったなんてことになりかねないからだ。

 

 そんな純狐たちの様子をモニターの前の生徒たちは見ていた。

 

「おいおい、落月の奴、轟と障子を真正面から迎え撃つ気かよ。さすがに無理じゃないか?」「いや、でも落月ちゃんならいけるかも…?」「また熱い戦闘が見れたらいいな!」

 

 皆、一回戦で熱くなる戦闘を見せられ盛り上がっていたため、口から出る言葉はどれも正面からのバトルを望むものが多い。

 

 そんな中、ついにオールマイトは戦闘開始の合図をした。

 

「始め!」

 

「よし、じゃあ始めますか。」

 

 戦闘開始の合図があったと同時に純狐はそう言うと、腕を強化し、扉を殴って轟と障子の方にふっ飛ばす。轟と障子は一瞬焦るが、冷静にそれを避けると、轟が純狐の足元を凍らせて動けなくし、建物に向かって走りだした。

 

 対する純狐は足元の氷を気にする様子も見せず、ポケットに手を突っ込み小さな種を一つ、二人の上に向かって投げる。

 

「さあ、ヒーロー。私を超えてみなさい。」

 

 純狐は近づいてくる二人に向かってそう言い放つと、種を“生命力”に純化した。すると、一瞬で種が10メートル程の木になり、横倒しになって落ちてくる。

 

「っ障子!かがめ!」

 

 轟は木を凍らせて、落下の勢いを殺しながら言う。障子はそれを聞くと、すぐにかがみ、轟が凍らせた木を下からくぐり抜ける。轟は、急に出てきた木に驚きはしたが、すぐに冷静になり、氷の橋を作って木の上を通って行く。

 

(落月は速攻で終わらせようとしたらしいが、避けてしまえば大丈夫なはず。それに木が邪魔で、俺たちを一瞬見失い、すぐには行動できないはずだ。)

 

 轟はそう考えると、障子に声をかける。

 

「障子!お前はそのまま下から行ってくれ。俺は上から攻める!」

 

(よし、二手に分かれて行けば対処はできない…)

 

 そう思い轟は油断してしまう。その隙を純狐は見逃さなかった。

 

「あら、轟君。話している暇はあるのかしら。」

 

 純狐は片足を軽く強化して一瞬で轟の前に跳びそう言うと、轟の体の左右に弾幕を飛ばして動きを制限し、強化していない足で轟を、建物から離すように蹴飛ばした。

 

 轟は遠くに飛ばされないように氷を背後に作ろうとするが、それを読んでいた純狐が轟の周りをただの空気に純化して、空気中の氷を作るために必要な氷の核となるごみなどを無くす。氷が作れずに轟が離れたところに転がるのを純狐は確認すると、落下しながら、建物に入りかけていた障子の足元の地面を“軟”に純化する。障子が地面に腰まで飲み込まれるのを見ると、純化を解除し、障子の動きを封じる。

 

「尾白君、出番よ。」

 

 尾白はその声を聞くとすぐに入口から出てくる。純狐は出てきた尾白に力を分け与えた。そして尾白は、自慢の怪力で無理やり出ようとし始めた障子に確保テープを巻き付け確保する。

 

 純狐はそれを見ると目の前にある邪魔な凍った木を、強化した腕で殴って吹き飛ばし、轟の方を見る。

 

「ほら、どうしたのヒーロー?もう、一人捕まったわよ。」

 

 純狐は、この自分の読みが噛み合ってうまくいくことに快感を覚える。月と戦っていたころは永琳などによって自分の作戦の裏をかかれたりして、うまくいくことは少なかった。まあ、あれはあれで失敗を糧として新しい作戦を考えたり、完璧だと考えていた作戦をユニークな方法で破られたりするのを見るのが楽しくはあったが。

 

 轟は余裕を隠さない純狐の態度にイラっとするが、ここで突撃しても無駄に終わると思い踏みとどまる。そして、解決策を考える時間を稼ぐため純狐に話しかけた。

 

「おい、落月。お前どうやって氷を作れなくした?お前の個性は超パワーだけじゃなかったのか。」

 

「敵にわざわざ情報を渡す奴っているかしら。それよりも、本当にもう終わりなの?左を使ってもいいのよ。」

 

 純狐は轟の左側を見ながら言う。純狐も家庭のことでいろいろあったので、思うところがあるようだ。まあ、原作で一応解決されることが分かっているので、今解決するつもりはないが。

 

「…いいや、戦闘において左は使わない。」

 

「そう?どんな理由があって使わないのかは分からないけど、それじゃあいつか限界が来るわよ。実際今こうやって追い込まれているわけだし。」

 

 そう言うと純狐は腕を強化し、轟の方に向かって腕を振る。轟は急いで自分の前に氷の壁を作るが、風圧で壁が壊され、また建物から離されてしまう。

 

「っ余計な世話だ。」

 

 轟は体制を立て直すと、あたり一帯を凍らせる。その攻撃に対して一瞬固まった純狐の腕と足を凍らせて動きを封じ、そのまま走って建物に向かうが、純狐は腕に着いた氷を腕を強化して壊し、その強化した腕を轟に向かって振って、建物に近寄らせない。

 

「一つ教えてあげるわ。私の力は名前が付く前の純粋な力。それには熱も含まれるから私の体を凍らせてもその部分を強化…正確に言うと“力”に純化すれば私の強化した部分から少し漏れ出ている力の一部が熱に変化してその程度の氷は簡単に溶かせるのよ。」

 

 純狐は轟にゆっくりと近づきながら話す。

 

「さすがに、あなたの本気の氷結なんかは無理でしょうけど、今のある程度弱ったあなたの氷なんかほとんど意味をなさないわ。」

 

 

 モニターの前の生徒は、一方的な展開になっているのを見て唖然としていた。

 

「あの轟が押されてる?」「しかも、ほんとに一人であの二人を完全に足止めしてるよ。」「尾白が空気だ…。」

 

 そんな中で、切島がオールマイトに話しかける。

 

「先生、あれってもう、勝負あったんじゃないっすか。轟はなぜか炎を使えねえようだし…。」

 

 モニターを見つめながら心配そうに言う切島にオールマイトはいつもの笑顔で答えた。

 

「うん、轟少年は確かに弱ってきているが、まだ勝ち目が無くなったわけではないと思うぞ。ほら、落月少女の腕をよく見てみるんだ。」

 

 そう言われて切島は純狐の腕をよく見てみる。

 

「あれ、手が震えてる?」

 

 切島がそうつぶやくとその声が聞こえたのか、他の生徒たちも純狐の手の震えに気づいた。その様子を見て、オールマイトは言う。

 

「そうだ!今は何事も無いように振舞ってはいるが、おそらく何度か手を氷で拘束されたり周りを凍らされたりして、轟少年程ではないにしても、寒さで相当動きにくくなっているはずだ。」

 

「じゃあ、もし轟が炎を使えるようになって自分の体を温めることができれば…!」

 

「落月ちゃんが反応できずに建物に入ることができるかもしれない!」

 

 轟にも勝機があることが分かりみんなが盛り上がる。そして、オールマイトはまとめに入った。

 

「ああ、そうさ!こんな風に追い込まれても相手の動きを観察して諦めず冷静に立ち回るのが大事なんだ!つまりあれさ、PLUS UL…」

 

「あ、ムッシュ。轟が。」

 

 

(不味いわね。体の動きが鈍くなってる…。)

 

 純狐も自分の体が動きにくくなっていることに気づき始めた。先ほどは轟がそれに気づき、アクションを起こされたりしないために、嘘を言ったが、そろそろ気づかれてしまうだろう。

 

 純狐は轟の氷でこうなることを想定はしていたが、今まで寒さで動きにくくなったりした経験がなかったため正確にどうなるか分かっていなかった。まあ、今まで宇宙に行って普通に活動できていたので、分かるはずもないのだが。

 

また、“力”への純化は、純狐自身も言っていたように、持っているのは何事にも変化する前の純粋な力なので別に熱が出るわけではない。それに、純狐自身が力を持つ場合、漏れ出るようなことは無い。そのため、純狐は腕を強化して動かし、その瞬間に発生する熱で体を温めようとしているのだが、あまりやりすぎると、轟に自分が寒がっているのがばれてしまうかもしれないので、それは必要最低限にとどめるしかなかった。

 

 まあ、そうは言っても轟も弱ってきているので純狐が足を強化して近づき殴って気絶させれば簡単に終わらせることができるのだが、それではあんまり楽しくない。純狐はこれからの轟の行動を見てから最後にその方法をとることにした。

 

 

 轟は何とかしてこの状況を打破するために近づいてくる純狐から離れるため後ろに下がりながら考える。

 

(なんとかしねえと、このまま押し切られちまう。体も満足に動かなくなってるし…。なんかねえのか。)

 

 轟は一縷の望みをかけて、純狐をよく観察し、決定的な隙を探す。そしてついに純狐の手が震えているのに気づいた。

 

(ん?あいつ震えている?いや、さっき熱は自分で出せるっつってたし、それはねえか…。でもそれがフェイクってこともある。いや、それなら手が震えてるのもわざとって線もあるし…。)

 

 轟は様々なことを考慮してこれからの行動を決めようとするが、どの情報を信じていいか分からず混乱する。

 

(このまま何もしなかったら本当に何もできずに終わっちまう。それなら…)

 

 轟は純狐が寒さで弱っていることにかけて攻撃に移ることにした。

 

 轟はそう決めるとすぐに純狐に向かって小さな氷を飛ばす。

 

(おっと、攻撃してきたわね。)

 

 純狐は顔に向かって飛んできた氷に対して、これくらいで腕を強化するのは不自然だと考え、腕を強化せずに氷を払った。

 

 しかし、

 

「えっ!?」

 

 払いのけたと思っていた氷が純狐の眉間のあたりに当たる。実は轟は二つの氷を一列にして飛ばして奥の方の氷を隠し、一つ払いのけても、もう一つが当たるようにしていたのだ。これは、純狐の動きが鈍って、急に腕を強化することができないだろうと考えて放った攻撃であった。

 

 純狐は眉間に氷が当たると、とっさに目をつぶってしまう。その隙に轟は足元に氷を作って高いところに行き、入口までつながる橋を作って、それを滑り下りる。

 

 轟が橋を半分程まで滑り終えたころに、純狐は防いだと思っていた攻撃に当たった混乱から立ち直る。そして振り返り、どんどん建物に近づいて行く轟を確認すると、轟の上にある空気の中の水蒸気を利用し、その空間を“水”に純化した。ちなみに、なぜ、轟の周りを直接水にしなかったかと言うと、純化する空気の中に人間などの生き物がいると、純化するのに時間がかかるからだ。

 

 轟は、急に自分の上に現れた水に驚くが、最後の力を振り絞って、その水の塊を凍らせ、氷の橋から飛び降りて避けた。そして、純狐に追いつかれないように後ろに氷の壁を作る。

 

 轟は尾白を警戒して自分の両サイドにも氷の壁を作り、建物の入り口付近も凍らせる。もう、体に霜が降りてきてあまり速く走れないので、轟は今までの勢いを生かして薄く凍った地面を滑るように進んだ。

 

(よし!このままいけば、動きが鈍っている落月には追い付けないはずだ。そのまま建物に入ることができれば…)

 

 そう轟は考え、そしてついに建物に入る。

 

 モニターの前ではあの絶望的だと思われた状態から見事に逆転した轟に対して歓声が上がる。純狐も、もう動こうとはしていない。

 

 そして、誰もが轟の勝ちを確信した瞬間であった。

 

「うっわぁぁぁあああ!?」

 

 轟の足元の地面が崩れて、轟は空いた深さ2メートルほどの穴に落ちた。轟は何とかしてそこから出ようとするが、寒さで、もうその穴から這い出る体力は残っていなかった。

 

 叫び声を聞いて駆け付けた純狐は、動けない轟の様子を見ると、穴の中に入りテープで轟を確保する。

 

 勝ち誇った様子の純狐は穴から轟と一緒に出てくると入口のすぐそばで足を凍らされて動けなくなっている尾白の方を向く。

 

「作戦どおりね尾白君。落とし穴、よくやってくれたわ。」

 

「それよりも、この氷を解いてくれないかな。」

 

「…ああ、すまない。今解く。」

 

 轟は悔しそうな顔で尾白の氷を溶かし始めた。

 




お読みくださりありがとうございます!

今回もなかなかアイデアが浮かばず、書くのに時間がかかってあまり見直せてないので矛盾や誤字があると思います。

誤字報告なんかして頂けるとありがたいです。

では、次回はあるはずなのでそこでも会えたらうれしいです!

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