純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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こんにちは!

遅くなって申し訳ありません。
本誌の方で色々重大発表があったみたいですね……
それ含めるとこの二次創作でも矛盾が出てきますが、お許しください

あけましておめでとうございます。



神野2

 一瞬であった。目の前の障害物も防御も、その暴力の前には無意味に等しかった。

 

「流石№4ベストジーニスト!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!」

 

 その暴力を振るった本人、オールフォーワンは倒れ伏すヒーローたちを見下ろしながら拍手する。嫌味ではなく、本気で褒めているのだろう。その事実が恨めしさを加速させるが、この場に恨みを晴らせる者はいない。

 

「皆の衣服を操り、瞬時に端に寄せた。判断力、技術……並の神経じゃない!」

 

 ベストジーニストはオールフォーワンの姿を一度も見たことは無い。今回の作戦に参加するにあたり、その性格などについて聞かされていただけだ。だが、目の前の存在を見て、これこそがオールフォーワンだと確信できた。それほどの存在感だったのだ。

 

「でも驚いたな。イレイザーヘッドも来ていたのかい。見られる前に気絶させることができてよかったよ。」

 

 オールフォーワンは少しずれた場所で倒れている相澤の方を向く。個性は彼にとって文字通り生命線である。周囲を吹き飛ばすのが数秒遅れていれば彼は死なずとも甚大な被害を受けていただろう。

 

「まあ、リスクは排除するに越したことは無いな。念のためもう少しいたぶっておくか。」

 

「……ッ!止まれッ!」

 

 相澤に近づくオールフォーワンに、ベストジーニストは何とか抵抗しようと繊維を伸ばす。だが、それが届く前に、ベストジーニストの体を衝撃波が襲い、その意識を完全に断ってしまった。

 

「相当な練習量と実務経験故の強さだ。……君のは要らないな。弔とは性の合わない個性だ。」

 

 オールフォーワンは何も無かったかのようにそう呟き、今度こそ相澤に狙いを定める。いくつもの個性を指先に集め、それを放とうとしたところで、その二人の間に黒い液体が溢れ出した。

 

「ゲッホッ、くせぇ……。んじゃ、こりゃあ……!」

 

 爆豪はせき込みながら、顔に付いた黒い液体を拭う。邪魔をされた形となったオールフォーワンは、出現場所の調整が難しいな、と思いながら相澤を攻撃する手を止めた。その後、爆豪に続きヴィラン連合の面々が黒い液体から出現する。

 

「また失敗したね、弔。」

 

 皆が集まったのを見て、オールフォーワンは死柄木に話しかける。その声は穏やか過ぎるほどであり、この場において異質さが際立つ。

 

「でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。それに今回は君に助けられたところもある。成長したね。」

 

 そう言うとオールフォーワンは爆豪の方を向き、その腹に衝撃波を叩き込んで動きを封じる。

 

「この子もね……君が大切な駒だと考え、判断したからだ。」

 

 死柄木は何も言わず俯いたままだ。予想の範囲内ではあったものの、自分の考えた作戦の多くが失敗し、今後の予定も完全に狂ったという事実は彼の精神を疲労させるには十分だったようだ。

 

「いくらでもやり直せ。その為に僕がいるんだよ。すべては、君のためにある。」

 

 まるで誰もが憧れる先生と生徒の理想像がそこにはあった。だが、それはどこまでも不気味で絶望の前兆のようなものだ。その気味悪さに、さすがの爆豪も言葉が出ない。近くで会話を聞いているだけの出久でさえ、吐き気を催すような気分だ。

 

「……やはり来てるな。荼毘、イレイザーの目だけでもいいから焼いてくれないか。その個性は何かに生かせるかもしれないから一応生かしといてくれ。」

 

 オールフォーワンは何かに気づいたのか、空を見上げる。その間に死柄木たちは邪魔にならない場所に移動し、イレイザーの目を焼き始めた。静かになったその場に、相澤の絶叫が響く。

 

(クッソ、とにかく動かなきゃ……‼ここで動かなきゃ何も……!)

 

 あまりの事態に飛び出そうとする出久。だが、ここで荼毘の所業を止めることができても、オールフォーワンたちの眼前から逃げられる保証は全くない。出久もそれは分かっていたが、それでも動かずにはいられなかった。

 

 しかし、跳び出す寸前で出久の体は飯田に止められる。横を見れば、轟、そして切島もその動きを止められていた。飯田と八百万も相澤を助けたいという気持ちはあるし、今にも飛び出したいという気持ちは同じヒーローを志す者として痛いほどわかっているのだろう。その表情からは怒りと無力感、そしてそれ以上にせめて出久たちを守る、という覚悟が見て取れた。

 

 そんな絶望が支配する中、オールフォーワンの眺める空から一筋の希望が降り立つ。

 

「すべて返してもらうぞ!オールフォーワン‼」

 

「また僕を殺す気か。オールマイト。」

 

 オールマイトの拳をオールフォーワンが受ける。ただそれだけのことで、周りには暴風が吹き荒れ、体制を整えていた爆豪でさえ吹き飛ばされた。

 

「バーからここまで5キロ余り……僕が脳無を送り優に40秒はしてからの到着……。衰えたね、オールマイト。」

 

 相変わらず感情の読めない声で話すオールフォーワン。オールマイトはその間に周囲の状況をある程度把握し、重体の相澤を救出しようと動き出す。

 

「おっと、そっちには行かせないよ。」

 

 オールフォーワンの指から黒い棘のようなものが生え、オールマイトの背中に刺さる。それを振り払おうと体に力を入れるオールマイトだったが、その身を捻るよりもオールフォーワンがその手を引き寄せる方が早かった。

 

「5年前と同じ過ちは犯さん!爆豪少年を取り戻す!そして今度こそ貴様を刑務所にぶち込む‼ヴィラン連合もろとも‼」

 

 オールフォーワンを無視しての救出は不可能だと考え、オールマイトはありったけの力を込めてオールフォーワンに突っ込む。だが、その行動は読まれていたらしく、異常に膨れたオールフォーワンの腕がオールマイトを正面から吹き飛ばした。

 

 その威力は見た目以上に凄まじく、オールマイトはビルをなぎ倒しながら吹き飛ばされて行く。その隙に、オールフォーワンはヴィラン連合の面々を逃走させようと黒霧の個性を強制的に発動させた。

 

 だが、それだけだ。ヴィラン連合の面々がワープに入る前にオールマイトはその場所に戻り、再びオールフォーワンに拳をぶつける。

 

「逃がさん!」

 

「常に考えろ、弔。君はまだまだ成長できるんだ。」

 

 必死なオールマイトと冷静沈着なオールフォーワン。実際実力差はあるのだろう。そもそも真正面からの攻撃は衝撃反転によりほとんど意味をなさない。また、虚を突いた攻撃はどうしても威力が落ちてしまい、超再生によって瞬時に回復されてしまう。

 

「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを食い止めている間に!コマを持ってよ!」

 

 そんなスペックの差による劣勢に加え、爆豪そして相澤の存在がオールマイトの行動を制限してしまっている。爆豪は優秀とはいえ学生、オールフォーワンの攻撃を受ければただでは済まない。相澤は通常時であればある程度動けるだろうが、今は動くどころではない。大規模攻撃が掠りでもすればその命が危険にさらされる。

 

(せめて隙が……一瞬でいい。かっちゃんと先生を救け出せる道は無いのか……!)

 

 近くで戦いを見守る出久は何か無いかと考えることを辞めない。しかし、爆豪だけならまだしも、自分で動けない、目も見えない相澤を助け出す手段がどうしても思い浮かばなかった。

 

(こんな時、落月さんがいたら……)

 

 出久の脳裏に純狐の姿が浮かぶ。出久がピンチに陥ったり、思考が行き詰った時、彼女は的確なアドバイスを与えてくれた。しかし今、純狐は居ない。あの万能の力を借りることはできないのだ。

 

(思い出せ!今まで雄英で僕らは何を学んできた!どこかにヒントがあるはずだ……)

 

 そして終に出久あるアイデアを思いつく。

 

「皆!」

 

「ダメだぞ……緑谷君!」

 

 今にも動き出しそうな出久を止める飯田の手に力がこもる。だが出久が思いついたのは彼らに禁止されていない行為の中での行動だ。

 

「違うんだ、あるんだよ!決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!そしてかっちゃんと相澤先生を救け出せる方法が‼」

 

 そして出久は説明を始める。まず、出久のフルカウルと飯田のレシプロで加速。切島の硬化で壁をぶち抜き、開けたところに轟の氷結で道と壁を作って、できる限り妨害を防ぎながら上へ移動。そこで爆豪に切島が手を伸ばし、その手を掴んでくれるのを待つ。さらに、落ちながら八百万の作った閃光弾を使って相澤の周りにいるヴィランの視力を奪い、出久が相澤を抱えてそのまま脱出する。

 

 博打要素は確かに強い。しかし、このままでは事態が好転しないことは確かだ。飯田は渋々、と言った様子だが、出久の案を採用した。

 

 そして実行の時。出久たちは勢いよく壁から飛び出し、轟は足場を形成する。ステインや純狐に注意されたように、壁は周りの様子が見える高さに設定した。

 

「来い‼」

 

 オールフォーワンがオールマイトに殴り飛ばされるとほぼ同時に、切島が叫ぶ。飯田や出久が呼びかけるのではなく切島が呼びかけるのは、入学してから爆豪と対等な関係を築いてきたのが彼だったからだ。出久に対しての様々な感情、轟に対する劣等感、飯田に対する対抗心、八百万に対する無関心など、様々なしがらみや精神的な障害が無いのはこの場においては切島だけなのだ。

 

「……バカかよ」

 

 そしてその思いに爆豪も答えた。オールマイトを見てから、彼は不思議と体の萎縮は収まっていた。殴られた腹も、体育祭で純狐から継続的に受けた風の爆弾と比べれば、いやらしい痛みは無い。故に、彼はその場における最善の行動を選択する。

 

「爆豪君!このまま相澤先生も救助する!目を瞑ってくれ!」

 

 そう言うや否や、飯田は手に持っていたマトリョーシカ型の閃光弾を相澤の近くに投げつける。相澤はもはや視力を失っているため閃光が効かないが、近くにいたスピナーやマグネにとってはひとたまりもない。さらに、遠くから氷の壁が出現し、閃光を受けていなかったコンプレスを隔離した。

 

「相澤先生‼」

 

 出久が手を伸ばし、相澤を抱える。相澤は死なないように加減されたためか、見た目ほどダメージが深くないようだ。すべてうまくいっている。後は脱出するだけだ。出久含め、メンバー全員の気が引き締まった。

 

「どいつもこいつも……」

 

 だが、あと一歩でこの場を跳び出せる、というところで飯田の速度が落ちる。決して個性の限界を迎えたわけでは無い。足元が急に崩れたのだ。

 

「あー!むしゃくしゃするなぁ!お前ら‼」

 

 死柄木は飯田が失速すると同時に動き、氷の壁を利用して出久たちの前に回り込む。迂回を余儀なくされた出久たちだったが、足場が悪い中の急な方向転換は爆豪の補助があっても難しかった。

 

「あッ相澤先生!」

 

 方向転換をした拍子に相澤が投げ出されてしまう。出久は勿論その救出に向かうが、死柄木がそれを許さない。瞬時に相澤の前に躍り出ると、向かってくる出久ではなく爆豪に向かって手を突き出し、もう片方の手で動こうとしていた相澤の頭を押さえつける。

 

「お前ら……爆豪以外は戦えないんだろ?大変だよな、ヒーローは。おっと、動くなよ。この指が下りた瞬間、こいつがどうなるか分かるはずだ。」

 

 隙が無いわけでは無い。だが、死柄木は弱った様子を見せておらず、こちらで動ける爆豪はオールフォーワンからの攻撃などで動きが鈍っていることは否めない。そうしているうちに黒霧の靄がその場に広がり、死柄木の体もその範囲に入る。

 

「じゃあな。」

 

「そう簡単に逃がさないわよ。」

 

 死柄木の体が靄に隠れる直前、その場に凛とした声が響いた。それと同時に死柄木の手が捕まれ、靄の中から投げ出される。

 

「本当ならまだ関わらない予定だったんだけど……さすがにここまでされて黙ってるわけにはいかないわね。」

 

「落月ィ!」

 

 上空から現れた純狐は、真っ先に相澤を救出し、霊力と生命力への純化を駆使して相澤の目を治す。霊力節約とこの戦いを変な方向に行かせないため完全に治すとまではしないが、これで失明は免れるだろう。

 

「落月さん!ありがとう!一緒に脱出を……」

 

 目の前に現れた純狐に出久たちは肩を撫でおろす。と同時に、結局今回も彼女の助けなしには作戦を成功させきれなかった自分たちを不甲斐なく感じていた。しかし、後悔は今すべきではない。心の曇りを振り払い手を伸ばす出久たちに対し、純狐は風を起こして彼らを浮かせ、戦闘の範囲外に移動させた。

 

「大丈夫よ。私は戦闘許可の効果が継続中だし。皆も気を付けて。」

 

 遠くへ飛ばされていく出久たちを見送ると、純狐は目の前の死柄木に向き直る。だが、彼に戦闘の意思は無さそうだった。

 

「予想通り戦えなさそうね。エッジショットにいじられた手、少し回復はしたようだけどほとんど動かないんでしょ。それにその後の尋問もかなりきつそうだったものね。」

 

 にやにや笑いながら話しかける純狐を恨めしそうに睨みつけながら、死柄木は口の中にたまった血の混じった唾を吐く。純狐に言われたことはすべて図星だ。体力的にそこまで問題は無いが、受けたダメージは半端なものではない。

 

「うっせぇよ。それに俺と話してていいのか?」

 

 死柄木は純狐の後ろを指さす。そこでは制限がなくなり、先程よりアグレッシブに戦っているオールマイトとオールフォーワンの姿があった。先程とは変わり若干オールマイト有利かと思われる戦闘だが、オールフォーワンは一瞬の隙を突いてマグネの個性を強制発動させ、ヴィラン連合のメンバーを黒霧に吸い付ける。

 

「じゃあな。落月……いや、純狐と言った方がいいか。多分こっちが本当の名前だろ。……まあどうでもいいか。」

 

 純狐は一応死柄木を止めようとしたが、本気で止めるつもりは無かった。死柄木もそれを感じ取ったのか、落ち着いた口調で別れを告げる。その表情は先程までの無気力なものではなく、穏やかなものが見て取れた。

 

「……ふッ、何だかんだ憎めない奴だったわね。ま、しでかしたことは許されないから誰かに裁いてもらいなさい。」

 

 誰にも聞こえないようにそう呟くと、純狐はオールマイトに力を分け与え、戦線を離脱する。とは言っても完全に離れるわけでは無く、いつでも飛び出せる位置で身をひそめるだけだが。

 

「やられたな。一手で形勢逆転だ。死柄木の成長が見て取れたのは良かったが、やっぱりあの子は厄介だな。」

 

「落月少女!援護感謝する!そのままここから離れてくれ!こいつは私が相手する‼」

 

 オールマイトはそう言うや否や、今まで以上のスピードでオールフォーワンに殴りかかる。個性使用の限界が近いためか焦っているようにも見える攻撃だ。しかし勿論彼がこの期に及んで焦っているということは無い。オールフォーワンに攻撃が届く寸前、体の動きに対して拳をワンテンポ遅らせ、防御が崩れたのを確認してからそれを叩き込む。

 

体制を崩されたオールフォーワンは開幕でオールマイトを吹き飛ばした攻撃を再度放ち立て直そうとするが、腕を強化した瞬間、強引に相殺されてしまった。しかし衝撃反転の効果もあってオールマイトにも少なくないダメージが蓄積される。

 

「僕は弔を助けに来ただけだったんだが……戦うというなら受けて立つよ。何せ僕はお前が憎い。かつてその拳で僕の仲間を潰して回り、お前は平和の象徴と謳われた。さぞやいい眺めだろう。」

 

 攻撃を転送した瓦礫で防ぎながら、オールフォーワンは民間人のいる方に攻撃が向くよう体勢を変える。オールマイトもそれを察知して、攻撃を受け流したり避けるのではなく真正面から受け止めるようになっていた。だがそんなことをしていれば体力や集中力は急激に削がれるのは必至だ。

 

「心置きなく、戦わせないよ。ヒーローは多いよな、守るものが。」

 

 オールマイトはヒーローだ。それはこの極限状態でも変わらない。目の前に宿敵が居ようと、いかにそれが強敵だろうと、市民を守るのが彼の仕事であり、使命である。

 

「黙れ」

 

 その使命は、時に戦闘の邪魔にもなる。今までも、その市民に少しの怪我を負わせればもっとスマートに、自身が怪我をすることなく取り押さえられたという事もあった。

 

「貴様はそうやって人を弄ぶ!壊し!奪い!付け入り支配する!」

 

 普通のヒーローであれば、自身が傷つく判断をよしとはしても全く後悔しないなどということは無いだろう。誰だって痛い思いをするのは嫌だ。

 

「日々暮らす方々を!理不尽が嘲り嗤う!」

 

 しかし、オールマイトはどこまでもヒーローだ。市民を理不尽な害が襲うのであれば、一切の迷いなくそこに飛び出し、害を防いで市民を守る。彼はその姿勢を正しいと信じてやまないし、他のヒーロー含め、そのような姿勢を見せる人々を尊敬している。

 

「私はそれが!」

 

 故に、オールマイトは目の前の存在を否定する。その守ろうとする意志を特に理由も無く踏みつぶし、守ろうとする対象さえも奪い、時にはそれを誑かして元々の意思とは反した思想に染め上げる。どこまでもどす黒い悪を。

 

「許せない‼」

 

 オールマイト、ひいてはその後方の市民や多くのヒーローを巻き込もうとしていたオールフォーワンの手首を握り締め、オールマイトはその顔面に拳をぶつける。そこには一切の慈悲もない。

 

 初めて急所にまともな攻撃が入った。だが、オールマイトの表情は芳しくない。純狐に力をもらっていたとはいえ、さすがに無茶をし過ぎたのだ。活動限界が近く、その右半身はすでにしぼんでしまっている。

 

「……いやに感情的じゃないか、オールマイト。同じようなセリフを前にも聞いたな。ワンフォーオール先代継承者、志村菜奈から。」

 

◇  ◇  ◇

 

一方その頃、爆豪を奪還した出久たちはそれぞれ人波に合流していた。ヒーローや警察

の努力もあり、大きな事故などは起こっていないようだ。

 

「相澤先生も近くのヒーローに任せたし、こっちは大丈夫だよ。また後で!気を付けてね!」

 

 轟との通話を終えた出久は街頭モニターに目を移す。まだ神野の映像が映っているわけでは無いが、上空を飛ぶヘリを見るにこれから情報を得るのであればここが適当だろう。

 

「……ごめん。」

 

 周りで騒ぐ爆豪と切島に向き直り、出久は頭を下げる。相澤を落としてしまったことに責任を感じているのだ。しかし、これが彼の責任ではないことはこの場の誰でも知っている。

 

「や、やめろよ緑谷!誰が悪いわけでもねぇって……。俺ももう少し周囲に気を配るべきだったよ。そしたらもっと早く死柄木に気づけたかもしれねぇのに……。」

 

「君のせいではないよ緑谷君。あの作戦に最終的な判断を下したのは俺だ。」

 

 各々思うところがあるのは当然だろう。自分たちのせいで先生をさらに危険にさらしてしまうだけではなく、自分たちが人質となってしまい更なる危機に陥ってしまっていた可能性も高い。

 

「だけど、あの時動かなければ、もっとひどい結果になっていたかもしれないわよ?」

 

 出久たちが己の無力さに打ちひしがれていると、後ろから声が聞こえた。振り返って見ると、そこには青い髪の変な服装をした女性が立っている。その女性は出久たちが自分を見ていることに気づくと、目を合わせてお辞儀をしてきた。

 

「初めましてかしら。とは言っても紹介することも無いわね。……ま、気にしないでもらえると助かるわ。ヴィランの仲間ってわけじゃないから安心してもらっていいわよ。何か起こった時にあなたたちを守るために呼ばれたんだし。」

 

 そうは言われても、会った覚えも無い人物がこの状況下で急に現れるという状況は明らかに異常事態である。自分たちを保護しに来たヒーローかとも疑ったが、ほぼすべてのヒーローを知っている出久でも目の前にいるような人物は見たことが無い。

 

「あの……俺たちを知ってるようですが、どなたですか?」

 

 当然のようについてくるその女性を警戒しながら切島が話しかける。出久はその横で何かあった時にすぐ逃げ出すことができるようメンバーを集めた。こんな時真っ先に反応しそうな爆豪が静かなことも不安を加速させる。

 

「私は、ヘカーティア・ラピスラズリ。覚える必要は無いわ。あと2時間もしないうちに私は居なくなるから。でも……そうねぇ、ずっとここでテレビ見てるのも味気ないし、面白そうなことになったら向こうに行きましょうか。ええ、そうしましょう!」

 

 青い髪のヘカーティアはそう言うと、出久たちを取り囲むように透明な壁を作った。出久たちはそれに気づき、何とか脱出しようと試みるがそんなこと勿論できるはずがない。

 

「ちょっとじっとしてなさいよ。」

 

 何とか抵抗しようとする出久たちを最初は面白く思っていたヘカーティアだったが、段々飽きてきた。その為出久たちの精神を少しいじり、自分に不信感を持たないように設定する。

 

「ふぅ、これで雑音なく様子を見守ることができるわね。異界の私が何考えてるかは分からないけど、おそらくどこかのタイミングで純狐の正体をばらすでしょう。そうなった時、この子たちはどんな反応するのかしら。」

 

 コーヒーを飲みながらクスクスと笑うヘカーティア。正直言って地球のヘカーティアの趣味ではないが、最近仕事三昧だったため新鮮なことができて楽しいのだ。

 

「それにしても純狐は冷静ね。オールフォーワンなんて大嫌いな部類でしょうに。」

 

 




読んでくださりありがとうございます!

ヒロアカもそろそろ本格的に最終盤ですね。
本誌は買ってないのでその雰囲気を本当に感じるのはもう少し後になりそうですが、好きな物語が終わるのはやはり寂しいものです。

次回、神野の続き。後2~3話でこの話も終わるかなぁ
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