こんにちは!
ごめんなさい。失踪しかけました。主です。
言い訳しますと、一応書いてはいたのです。モチベが無く、設定を忘れていただけなのです。
お詫びと言っては何ですが、最終話まで毎日投降します。
多分今日含めて5日以内には終わります。
ワンピの映画面白かったです
時間は少し巻き戻り、オールフォーワンが目の個性を暴走させていた頃。出久たちはヘカーティアの結界の中でじっとテレビの画面を見ていた。勿論そこに映っていたのはオールマイトたちではなく、現場の情報を整理しようと奔走するニュースキャスターだけである。
「おいおい、落月の奴本当に大丈夫なんだろうな!」
「計算なしに飛び出したりはしないと思うが……。」
切島は居ても立ってもいられずに壁に張り付き、飯田は自分を納得させるためにも様々な可能性を挙げていく。その横で、オールフォーワンのことを知っている出久、直接その個性を受けた爆豪は最悪の予想が頭をよぎっていた。
「……デク、お前も見えたよな、あの目。」
「………」
出久は体育祭で純狐のあの個性を見た時から、純狐に何度もその個性について質問していた。だが、純狐からは自分でもあまり分かっていない、と言われその度に断られていたのだ。それは同時に、純化という前代未聞の個性を扱う純狐でさえ扱いに困るような代物であるという事だと出久は理解していた。
「なあ緑谷、あいつの個性はお前でも分かんないんだよな!」
羽詰まったように切島が出久の肩を揺らす。出久は職場体験の後オールマイトから話を聞いていたため、オールフォーワンのこのとは知っているが、それはワンフォーオールにも関わってくる機密事項。他人に漏らすわけにはいかない。
(ヤバい……!もし純化をオールフォーワンに奪われたのだとすればとんでもないことになるぞ)
出久はオールフォーワンのことを詳しくは知らない。が、その邪悪さ、強大さは彼の近くにいるだけで嫌というほど感じ取れた。オールマイトも苦戦するような巨悪に純化という最強クラスの個性が渡ってしまったとなると、その被害は想像もできない。
「ッ!ここはどこだ?」
その混乱した場に別方向に逃げていた轟と八百万が現れた。分散していては守るにしても面倒だと、ヘカーティアがワープさせたのだ。勿論ヘカーティアに対して疑問を抱かないようにはしてある。
「轟君に八百万さん!どうしてここに?」
「気づいたらここに居ましたの。それよりも先程の映像!あれは何ですか!?」
出久はここまで気付いたことなどを簡単に伝える。だが、画面に何も映らなくなってからしばらく経ち、誰も詳しい情報は持っていない。
「今のとこなんも出来ねぇってことだな……。回復を待つか。」
6人はそこで言葉を失う。そんな中、ヘカーティアがいち早く異変に気づいた。
「みんな、ちょっと私の方に寄ってくれるかしら。……あの子何してるの。変なことされたら困るんだけど。」
青い髪をさらに青く染め、ヘカーティアは結界に力を流し始める。出久たちはその雰囲気を見て何か起こるのだろうと言うことに従った。
「おいおい、あれなんだよ。」
唖然とする皆の目の前に現れたのは天にそびえる赤い光の柱だった。爆豪、出久、そして轟は臨戦態勢を整える。あの巨悪を生で見た彼らは、自分たちの力が通じるとは思っていない。だが、自衛だけでもして見せるという思いは全員が共有していた。
「変に動かないでね。どの程度のものか私も想像できないの。」
青く染まっていく結界。そしてその中心で手を掲げ、神々しく光るヘカーティアのその言葉は何よりも説得力を持つ。彼女はこれでも最高神クラスの神である。その場の若者数人をまとめ上げるなど造作も無い。
そしてその赤い光は開花した。淡い光は街を飲み込む濁流のように広がり、人々はパニックになりながらその光に呑まれていく。
「何なんだコレは……」
ヘカーティアの結界内にも光の一部が入って来る。ヘカーティアが張っていたのはあくまで自分たちに害をなすものを拒む結界であり、何もかもを完全に防ぐことはできなかったようだ。彼女としては出久たちに命の危険が無ければいいので、パニックにも陥っていないこの状況は上出来である。
だが、その結界の外は正に地獄だった。虚ろな目で駆ける者、個性を暴発させる者、急に叫び出す者。逃げ惑う人さえいない、正に狂気の世界。その光景に当てられてか、結界内の光が濃くなっているせいか、結界に守られているはずの出久たちも頭を抑え、他人を気遣う余裕がない。
しかし、そんなこの世の地獄は何の前触れもなく終わる。赤い光は急に消滅し、狂気に駆り立てられた者たちは記憶を無くしたかのように呆けている。
「みんな……大丈夫?」
「ええ、ちょっと頭痛が起こっただけですわ。ですが……」
「……誰だ。女狐の声でガンガン頭に響く。」
結界に守られていたため、出久たちの被害はほとんどないに等しかった。だが、害意や悪意が除かれていたからこそ彼らは感じ取ってしまったのだ。その狂気の中に潜む憎しみに。その核心付近に。
「じょうが、って……あの女神の嫦娥か?」
轟がその名を口にしたとたん、ヘカーティアの顔色が変わった。嫌な予感はしていたのだ。しかし彼女は、その嫌な予感が良い方向に転ぶことを期待して外界と完全に遮断された結界を張らなかった。異界のヘカーティアがあの光の柱、純狐自身から生まれた個性を止めなかったからというのもある。
(何を考えているのかしら、異界の私は。あの子の前にこの子たちを連れて行く予定だったのに、下手すればぶち切れ案件よ。……いや、まさかそこまで織り込み済みなのかしら)
ヘカーティアは考える。自分のことだ、同じ考えに至れないはずはない。
(確かにこのままだと出久君たちは蚊帳の外。それだと純狐と対面した時の反応は当たり障りのないものになってあまり面白くない。いや、でもなぁ……純狐の逆鱗は私たちでもどこにあるのかあんまり分かってないし、怒らせたら色々面倒なことになるでしょうに。特に月の私が)
そんなことを考えていると、テレビが再び機能を取り戻した。その画面に映るのは立ち上がったトゥルーフォームのオールマイトと、そんな彼を見てニヤニヤと笑うオールフォーワンだ。
戦いが最終局面であることは、原作未読の地球のヘカーティアからしても明白であった。もはや迷っている時間は無い。そして終に彼女は判断を下す。
(まあいいや、異界の私をたまには信用してあげましょう。この前仕事手伝ってくれたしね)
◇ ◇ ◇
永遠にも思えた時間も、終わりを告げる。水蒸気は空に消え去り、土煙は微かな風に飛ばされ舞い落ちる。
誰もが固唾をのんで見守った。人生でこれほどまでテレビを覗き込んだのは、多くの人が初めてだっただろう。
そして人影があった。男はゆっくりと立ち上がる。もう限界を迎え、気を失わないことさえ奇跡と言える状態で。最後の仕事を完遂しようと、彼は立ち上がり拳を掲げた。
『「オールマイト‼」』
絶叫、そして歓喜。そう、彼は勝ったのだ。あの巨悪に、世の理不尽に。
「さっすがぁ!」
純狐も物陰でホッと胸を撫でおろす。正直、純狐から見ても勝敗は最後まで分からなかった。最低限強化したとはいえ、オールマイトの負っていたダメージは原作以上のものであったし、オールフォーワンに取られた目の個性が何か悪さをする可能性もあった。
「いやー、面白かった。こんな感想で済ますのはどうかとも思うけど、この戦闘を生で見られただけでこの世界に来た価値はあったわ。」
色々な問題があったため、いつまでこの世界に居られるかどうか分からなかったが、ここまで残ってよかったと純狐は心から思う。ヘカーティアからの妨害も全くなかったため、彼女もこの戦いの素晴らしさを分かってくれたのだという事も嬉しかった。
純狐の興奮が冷めない間も、この災害とも呼べる事件の後処理は進められていく。オールフォーワンの洗脳の影響で一時戦線が乱れたため正確な状況把握は困難だと思われていたが、純狐を包囲するための監視網のおかげで被害状況の把握は予定よりスムーズにいっているようだ。
「後処理は任せてもよさそうね。帰る前にオールマイトや出久君たちに会いに行きましょうか。」
周囲に自分を監視している者がいないことを確認しながら純狐は立ち上がり移動し始める。オールフォーワンが建物を破壊しまくっていたせいで歩きにくくはあったが、障害物が増えている分カメラなどから身を隠すのにはちょうどいい。
純狐は自分が居なくなった後のこの世界についてふと考える。原作の流れをできる限り守って行動したため特に大きな変化は起きないだろうが、もしかすると出久たちそしてオールマイトの精神面に何かしら影響は出るかもしれない。
あまり気にしてはいなかったが、純狐が想定していた以上に出久と轟は純狐を目標にしている節がある。出久に関しては純狐以上にオールマイトという大きな目標がある為、特に影響がない可能性もあるが、問題は轟だ。原作において自分と同学年に圧倒されるという経験が少ないためそのあたり何か問題が起こるかもしれない。
まあ最大の地雷であるエンデヴァーが何の手出しもしてきていないことを考えると、特に問題ないかもしれない。それに轟は精神的に不安定なことがあったとはいえ、体育祭後は作中でも屈指のメンタル強者だ。ちょっとやそっとのことでは自分を曲げることは無いだろう。
(振り返って見るとなんだか名残惜しいわね)
そうこうしているうちに、純狐は周りを見渡せて、かつ人の流れから離れている場所に到着する。大変なことになっているなぁと他人事のようにそこから見える光景を眺めていると、取材陣から離れ病院に向かうオールマイトを発見した。
「よし、まずはオールマイトに会いに行ってみましょう。」
そう言って純狐は建物の上を飛び跳ねながら再び移動し始める。オールマイトもこちらに気づいたようで、歩く速さを落としていた。
「オールマイト、大丈夫ですか?少しであれば私でも癒すことができますが……。」
(ミスったわね。オールマイトには回復してもらわないと話も出来ないわ)
近くで見ると、予想していた以上に重症だ。細い体からは死に至る程の出血があり、オールフォーワンの攻撃を受け止めた腕から覗く骨は明らかに形が変わってしまっている。このまま放っておけば、出血量が致死量に達しオールマイトとはいえ死は避けられない。
「落月少女……改めてありがとう。君が居なければ被害はさらに広がっていただろう。今は握手も出来ないような状態だがいつか、ちゃんとお礼をさせてくれ。」
対するオールマイトは力ない笑みを浮かべながら純狐に近づき、ボロボロの手を差し出した。声に張りは無い。声帯がつぶれかけているのだ。だがその声は、純狐にこれ以上ない頼もしさを覚える。そしてそのオールマイトの思いに応えられないことを心から残念に思っていた。
「そんな、悪いですよ。お礼を言いたいのは私たちの方です。あなたという柱が居なければこの場はさらに混乱していて私も満足に行動できなかったでしょう。今はゆっくり休んでください。」
◇ ◇ ◇
「異界の私は何考えているのかしら。」
地球のヘカーティアはぶつぶつと不満を垂れる。純狐たちのいる場所に移動しようとしたその時、遠くで戦況を見守っていた異界のヘカーティアから、まだ来るなと指示が出たのだ。そしてその指示があって既に二十分は経っている。
そんなヘカーティアに対し、同じ結界内にいる出久たちは皆気が気ではないような様子で頭を抱えていた。そう、先程赤い光に呑まれたときに頭に響いた言葉のことである。
(嫦娥ってのは知らねぇが……あの女狐にしては珍しいな。あいつがあそこまで感情を露わにすることは無かったぞ)
爆豪はいまだに純狐がいけ好かない。いつも余裕ですよ、と言わんばかりの態度を取り自分たちを前にして全力を出すことが無いからだ。それに加え、純狐からは感情の起伏がほとんど感じ取れない。まるでこの世界の外から来ているのではないかという感覚さえ覚えてしまう。
こう考えていたのは爆豪だけではない、この場にいる者や純狐とある程度接したことがある人間はみなそのような感覚を抱いている。だからこそ先程の声の正体が気になっているのだ。
「……皆はどう感じたか?」
沈黙を破ったのは切島だった。彼は純狐とほぼ初対面の頃から、彼女の中にある何かに気づこうとしてきた。だが、近づこうとすればするほど、それは切島の恐怖心を駆り立てた。触れてはいけない、知ってはいけない、本能が何度も警告を鳴らす。先程の光に触れたことでどうにかなってしまったのではないか。切島はその恐怖からか手が小刻みに震えている。
「俺は……分からない。体育祭の時感じたものと似ていたが、あの時は何かを感じる暇もなく思考が止まってしまった。だが、今回ははっきりとその声を聞くことができた。それでも、あの声が何を伝えようとしていたのかは分からないし、本当に落月さんの声だったのかも妖しい。だけど……憎悪は確実にあの声に含まれていたと思う。」
「俺も飯田と同意見だ。あの声と似たようなものを、俺は知っている……。」
飯田に続き話し出した轟は、そう言うと口をつぐんで下を向く。幼少期、自分の父に対し心の中で何度も叫んだ憎しみの言葉。純狐の声は正にそれに通じるものがあったように感じたのだ。
「私は……私は……よく分からないけれど、悲しくなりましたわ。そしてなにより恐ろしかった。」
八百万はまだ大きな悪意に触れたことがあまりない。そんな彼女でもあの淡い光からそれを感じ取ることができるほどのものを感じていた。
「僕は……」
そして出久が口を開く。純狐のことをよく知る彼がどんな言葉を発するか、他人に興味の無い爆豪もその言葉に耳を澄ます。
「話したい、と思った。まだ、彼女のことをよく知らない。だから、彼女に聞きに行くんだ。そして、もし彼女が救いを求めているのなら、救けたい。……救うというのは傲慢かな、彼女は僕なんかよりずっと強いし頭もいいから。うん、だからせめてお手伝いをさせてほしい。」
出久のその言葉に、爆豪を除く皆は頷く。爆豪も反論してこないため、皆が行くとなればそれに従ってくれるだろう。出久たちは近くで連絡を待つヘカーティアに純狐に会いたいという旨を伝え、結界を解くよう説得し始める。ヘカーティアもあまりに暇なためそれを承諾し、異界のヘカーティアの指示を待たず移動を開始することにした。
そしてこの日最大の事件は起こる。
読んでくださりありがとうございました!
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次回!神野?5