疲れたよ。これからホントに毎週模試だよ。どうしよう。
最後の方は深夜テンションDEATH気にしないで。
「出久君、ケガの調子はどう?」
純狐は戦闘訓練があった日の放課後、保健室から返ってきた出久に話しかける。もっと早い時間に話しかけたかったが、今日の出久の活躍を見たクラスメイトが出久を取り囲んでいたのでそれができなかった。
「まあ、大丈夫だよ。それよりも落月さん、凄かったらしいね!僕も見たかったよ。」
傷の治った手を見てながら、出久は残念そうに話す。個性オタクの出久としては、純化という個性がどれほどのものか実践の中で見たかったのだ。また、純狐の自分自身を強化するという個性の使い方はそれに似ているワンフォーオールの使い方の参考にもなると、出久は考えていた。
「あの、落月さん。“力”に純化?だっけ。あれってまだまだ上があるって前言ってたよね。全力で力を使ったら、体に負担がかかって、僕みたいになるの?」
出久の質問を聞き、純狐は仙界にいた頃、全力で力を使って腕がボロボロになったのを思い出して少し嫌な顔をする。
別に痛くはないのだが、腕全体を複雑骨折したりするのは、自分の体が他人に乗っ取られたようで気持ち悪い。それに、感覚の無くなった自分の体の一部の重さを感じるのもあまり気分のいいものではなかった。
「あー。そうね、そうなるわ。私の場合は、個性の影響で熱や衝撃に少しは耐えられるようになってるんだけど、それでもさっきの出久君みたいになっちゃうわよ。」
「それじゃあ、どうやって力を制御してるの?」
純狐の答えを聞いて瞳を輝かせる出久。ここまで自分に似ているのであれば、ワンフォーオールを制御するヒントになると考えているのだろう。
そんな純狐は出久を見てどう答えるか迷う。今この場で1か100かではない力の使い方を教えて、体育祭などでの変化を見たい気持ちもあるが、これから変なイレギュラーが起こらないとも限らない。純狐はその二つを天秤にかけたうえで、秘密にしておくことにした。
「ふふっ、それは秘密よ。自分で見つけなさい。あなたはオールマイトに気に入られているみたいだから、相談してみればいいじゃない、似たような個性でしょ?」
「そっそうだよね、こういうことは自分で考えなきゃだよね!」
出久は残念そうな顔をする。
「ああ、そうだ出久君。友達として、飯田君や麗日さんを紹介してくれないかしら。」
純狐はそんな出久の様子を気にも留めずに前々から考えていたことについて話し出した。
純狐はいまだに友達と呼べるような人が少ない。今日、戦闘訓練中に仲良く?なった轟と、出久の二人くらいしかいない。だから、このクラスで基本誰とでも仲がいい麗日や、見ていて面白く、出久とも仲がいい飯田を紹介してもらおうと思っていた。
「ん?まあいいけど、なんで?」
「えっと…ほら、私ってあんまり親しく話す人いないじゃない?自分から話しかけるにしても、話題が見つからないのよ。」
「なんか…ごめん。」
出久は申し訳なさそうな顔をしながら苦笑いをする。純狐はそんな出久の表情を見て、悲しくなってきた。
原作のように、目立つ人にはいずれ向こうから話しかけてくれるかな?と思っていたが、そんな気配が全くと言っていいほどない。
(そういえば、轟なんかも目立ってはいたけれど、誰かから話しかけられて、仲良くしているという事もなかったわね。)
「デク君!帰ろう!」
「やあ、緑谷君。今日も帰路を共にしないか?」
気まずい雰囲気が漂っているところに明るい声がかけられる。
「ああ、麗日さんと飯田君!ちょうどよかった。」
「あれ?落月さん?」
出久に話しかけた二人が意外そうな顔をして純狐の方を見る。純狐は、笑顔で二人の方を見た。
「こんにちは、二人とも。」
「落月さんが誰かと話してるなんて珍しいね。何話してたの?」
「えーと…」
「いいわ、出久君。」
出久が純狐にさっき言われたように二人に純狐を紹介しようとするが、純狐がそれを制す。さすがに、純狐でも自分がいる前で自分のことを紹介されるのは、ちょっと恥ずかしい。
「ねえ、二人とも。私も一緒に帰っていいかしら。まあ、校門までだけど。」
「うん?もちろんいいよ!一緒に帰ろう!飯田君もいいでしょ?」
「ああ、元論だ!」
二人は、急に一緒に帰ろうと言われて驚くが、快く返事をした。二人、特に飯田は純狐と個性の話をしてみたいと思っていた。しかし、なんとなく近寄りがたいので、話しかけられずにいたのだ。
「ありがとう。じゃあ、帰りましょうか。」
純狐はお礼を言うと、カバンを担ぐ。そして、歩き出そうとしたときに、麗日から声がかけられた。
「ねえ、落月さんはどうしてヒーローになりたいの?」
純狐は答えに詰まる。
(そう言えば考えたことなかったわね…。)
いつか聞かれるとは思っていたので、何か考えておこうとは思っていたのだがめんどうで、まだ考えていなかった。まあ、すぐにいなくなる予定なので考える必要もなかったのもある。
さすがにここで、楽しむためとは言えないので、純狐はとりあえず適当に考えたことを答えた。
「ありがちなことよ。幼かったころにあるヒーローに助けられて、それに憧れたのよ。助けてくれたヒーローの名前は忘れちゃったけどね。」
「いいヒーローに出会ったんだな。」
「へぇー!そんなことがあったんだ!なんか、今の落月さんからは想像もできないね。」
麗日は、ヴィランに襲われたと聞いて、嫌なことを思い出させてしまった、と後悔したが、純狐が特に気にした様子を見せないでいるのを見て安心する。
「ねえ、落月さん。そのヒーローの個性なんかは覚えてないかな?覚えていたら調べることができるんだけど…。」
出久は手元のノートを開き始める。今まで様々なところで世話になってきているので、少しでも役に立てたらな、と思っているのだ。しかし、今の純狐にとっては余計なお世話である。
「気遣いありがとう、出久君。でも、ごめんね。3歳くらいのことだから助けられた、っていう事しか覚えてないのよ。」
出久はそれを聞いて残念そうにうつむく。それを見た純狐は何か話題を逸らせないかと思い周りを見た。そして、時計を見て、かなり時間がたってしまっていることに気づいた。
「3人ともそろそろ帰りましょう。」
3人はそれぞれ時計を見て時間に気づき、急いでカバンを持つ。
「気づかなかったよ。じゃあ、歩きながら話そうか。」
そして、3人はそれぞれの中学校での思い出なんかを、純狐に紹介しながら校門まで歩いて行った。
「…そこで相手のヴィランは言ったんだ!『いいや限界だ!押すねっ!!』ってね。そしたら兄さんは『“ヴィランを倒す” “市民を守る” “両方”やらなくっちゃいけないってのが“ヒーロー”のつらいところだな…覚悟はいいか?俺は出来てる。』と言って、仲間を鼓舞してボタンを押させる前にそのヴィランを捕まえたんだよ!」
「へぇー!すごいんだね!」
(どこかの漫画で見たことがある気がするんだけど…。)
麗日が飯田の話に感心している隣で純狐は考える。しかし、ここでは口に出さない方がいいだろう。
「おっと、それじゃあ落月さんとはここでお別れかな。また明日ね。」
純狐と同じように微妙な顔をしていた出久が校門の前まで来ていたことに気づく。話し込んでいた二人も顔を上げて、純狐の方を向いた。
「おおっと、気づかなかった。また明日な、落月さん。」
「じゃあね、落月さん。」
「ええ、また明日ね。」
そう言って純狐は少しの間、手を振りながらアパートに帰っていった。
― ヘカーティアside ―
「バナナ!粉☆バナナ!!これは月のが私を陥れるために仕組んだ罠だ!」
隣にいるクラウンピースの目は死んでいる。
異界のヘカーティアの叫び声が響く。そして、錯乱し始めた異界のヘカーティアの肩に軽く手がのせられた。
「いや、異界の。あなたの負けよ。さっき『私の勝ちだ』といったじゃない。」
地球のヘカーティアはなだめるように言う。しかし、異界のヘカーティアの叫びは終わらない。
「だって、おかしいジャマイカ!もう3日たったんだから、あのプリンの所有権はわたしにあるのよ!」
ヘカーティアたちは欲しいものが被った時の平和的解決のために、3日間欲しいものを自分の家で保管し続けることのできたなら、保管することのできたヘカーティアの物にそれはなる、というルールを作っていた。そして、そのルールが破られないため、三人がお互いに魔法をかけ、あるヘカーティアの物になったものには、他の誰も触ることができないようにしていたのだ。
クラウンピースの目は死んでいる。
「しかし、あなたには失望しましたよ。異界の。じゃんけんをして決めようとなっていたものを…。」
そんな月のヘカーティアのつぶやきは今の異界のヘカーティアの耳には届いていない。
「なぜだ…なぜおまえがそのプリンに触れる…!」
月のヘカーティアはやれやれと首を軽く振りながら答える。
「あなたが、さっき異界に行っているときに霊夢にあなたの家の時計の時間を30秒ずつずらしてもらっていたんですよ。」
異界のヘカーティアは目を見開く。
「いかに霊夢といえど、あの家にはあの時かなり強力な魔法をかけておいたから、入れない!もしも、お前たちが力を貸していたならばそれに反応して警報が鳴り、私に連絡が来る!やはり、お前の言っていることは…」
「ええ、それは分かっていましたよ。」
月のヘカーティアは食い気味に言う。
クラウンピースの目は死んでいる。
「私たちはあなたが異界に行く少し前に、戦闘訓練が終わって更衣中の純狐に働きかけ、私たちの持つ神力をただの力に変換してもらっていたのです。そしてその力をゲートで霊夢に直接流し込んだ…。そして、その状態で無想転生を使ってもらい、あなたの家の結界をすり抜け家じゅうの時計の時間をずらしてもらったわけです。霊夢は1万あげると言ったら快く引き受けてくれましたよ。」
異界のヘカーティアは何も言えなくなる。
そしてここで、やっとクラウンピースがしゃべった。
「ご主人様方。そろそろ茶番は終わりませんか?」
「「「そうね。」」」
クラウンピースがそう言うと、ヘカーティアたちは何事もなかったかのようにじゃんけんの準備を始める。ちなみに、さっきの触れられないなど言っていたのはヘカーティアたちが茶番を楽しむために作った嘘の設定だ。もし本当にそんなことになっていたのであれば色々面倒なことになる。
「今日こそ私がいただくわ。」
「何言ってるの、2週連続私の物よ。」
「……。」
そして、緊張が最高まで高ぶったところで、今週のプリンを食べるのは誰かを決める、神々の戦いが始まったのであった。
お読みくださりありがとうございます!
すみません、やってみたかったんです。(二回目)
それと、評価ありがとうございます!こんな、失踪予定で間違いだらけの小説にあんなに高い評価を付けてもらってなんか申し訳ないです。
次回!一か月以内には…。