純狐とヘカTのヒーローアカデミア   作:SKT YKR

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お久しぶりです。

文字数がついに9000を超えてしまいました…。
ごめんなさい。大体7000くらいで安定させたいんですけどねぇ。

模試?ああ、あれね、ああー、うん、あれね。



委員長決め

「オールマイトの授業はどんな感じです?」

 

「えっ!?ああ、すみません。僕、保健室に行かなくちゃいけないので。」

 

 純狐は校門の前でインタビュアーに迫られ戸惑っている出久を見つける。

 

(そういえば、こんなこともあったわね。)

 

 そんなことを考えながら歩いていると、純狐にもインタビュアーが近づいてきた。面倒なので無視しようとした純狐だが、目ががっつり合ってしまったので諦め、笑顔でインタビュアーを待つ。人間だったころの名残で瞬時の表情の変化を得意としていたのは幸いであったと、この時純狐は初めて思った。

 

「おはようございます。」

 

「あっ、おはようございます。えーとですね…オールマイトが教師をやっていることについてどうお考えでしょうか。」

 

「ああ、そのことですか。ええ、いい先生だと思いますよ。特に、戦闘訓練などでの指示の出し方などは、さすがNo1ヒーローと思うようなことばかりです。まだ不慣れなところもあるようですが、慣れていくと本当に素晴らしい先生になられることでしょう。」

 

 インタビュアーは純狐の答えを聞いてメモを取ると、少し居心地悪そうな表情をして一歩下がる。純狐の態度が想像以上のものであり、ただの学生と思ってインタビューしていたインタビュアーは自分のペースに持ち込めなさそうだと考えたのだ。

 

「あっ、えっと、ありがとうございました。」

 

「いえいえ、こちらこそ。」

 

(手ごたえはまあまあね)

 

 純狐はインタビュアーから離れると軽く舌打ちをする。

 

昔から純狐はああいったマスコミが嫌いである。しかし、そんなことを言っても、このご時世なのでどうにもならないだろう。なので、逆に利用して自分の評価を上げさせればやればいい、というのがこの世界における純狐の付き合い方だ。

 

「あっ、落月さん。おはよう。」

 

「あら、おはよう。どうかしたの?顔が赤いようだけど。」

 

「ああ、さっきインタビュー受けてね…。緊張しちゃって。」

 

 麗日は赤く染まった顔をかきながら言う。だが、純狐の目を引いたのは、その後ろでインタビューを受けている飯田であった。飯田がマシンガントークを続けるせいでインタビュアーが困った顔をしている。マスコミ嫌いの純狐でもインタビュアーに憐れみを覚えるような光景であった。

 

「飯田君、あんまり話していると遅れるわよ。早くいきましょう。」

 

「…だから、私としては…ん?おお!おはよう、落月さん。まあ、そうだな、言いたいことはまだまだあったが、学生の本分は勉強!それに、常に10分前行動を心掛けなくては。」

 

 飯田はインタビュアーに断りを入れてその場を去ろうとしたが、インタビュアーはすでに疲れた顔をして遠くに行ってしまっていた。

 

「それにしても、どこから情報が漏れたんでしょうね。一応、秘密になってるはずでしょ?」

 

「まあ、手に入れようと思えば、いくらでも情報が手に入る時代だからな。」

 

 飯田は顎に手を当てながら言う。麗日は不安そうな顔をしながら、テレビのカメラなどが並ぶ校舎前を振り返った。

 

「便利だけど、なんか怖いよね。今回のも変に尾ひれ着けて報道されなければいいけど…。」

 

「まあ、今気にしても意味があんまりないわ。なるべく変な行動をしないようにしましょう。それよりも、今日の英語の小テストの勉強した?」

 

 気にしていてもしょうがないと、純狐は話題を変えるべくポケットから暗記用のメモを取り出す。それを見た二人は嫌なものを思い出したというような表情をして表情を暗くした。

 

「わっ、そうだったね。忘れるとこだったよ。再テストは避けたいなぁ…。」

 

「俺は準備はしてきたが…。なかなか難しいからな。」

 

 そこまで言ったところで、飯田は前回のテストで純狐の点数がよかったのを思い出す。戦闘に関して遅れを取っている純狐に学力でも負けてしまったのを気にしているのだ。純狐はそんな対抗意識を燃やす飯田に対し、年の功というずるを使っていることを少し申し訳なく思っている。

 

「そういえば、落月さんは、前回、点数高かったな。どれくらい勉強してるんだ?」

 

「あんまり……、いや覚えてないわね。」

 

「やっぱり才能かなぁ。私なんか1時間くらい見直しても全然だめだよ。」

 

「いや…そんなことないわよ。何かできることがあったら手伝うわ。」

 

 純狐自身気づいていないが、純狐はとんでもなく頭がよく、努力家だ。実際、たった3000年ほどしか生きていないのに、十億年単位で生きてきた永琳と戦闘で知恵比べができるほどに頭がいい。まあ、純狐の知識が戦闘や策謀特化なのに対して、永琳は全分野だったり、時代の違いなどもあるだろうが、それでも異常だろう。

 

「ありがとう、落月さん。何かあったら頼るね。」

 

 麗日は暗い顔のまま言う。その後、3人でまたしばらく話していると、もう見慣れた大きな入口が見えてきた。

 

「着いたわね。じゃあ、テスト頑張りましょう。」

 

「うん、できるだけやってみるよ。」

 

「reap pledge adore suck paradigm…」

 

  ◇  ◇  ◇

 

 教室は暗い空気に包まれていた。単語のテストで言われていた範囲とは全く別の部分が出題されほとんどの生徒が不合格だったからだ。プレゼントマイク曰く、

 

「HEY!!今日の問題はなんと!皆さんご存じ相澤TEATHERから作ってもらったぜ!!張り切っていってみYO!!」

 

 だそうだ。

 

 そんな暗い空気の中、その元凶ともいえる相澤が教室に入ってきた。生徒たちはやる気のない挨拶をして席に着く。

 

「今日は、いん……委員長決めを行う。」

 

教室の空気が一変した。

 

「「「学校っぽいのきたー!」」」

 

 そして、ほとんどの生徒が手を上げ始める。普通の学校であれば面倒な役職の押し付け合いとなりやすい行事だが、この雄英ではそんなことにはならない。皆がクラスの中心に立てる器を持った人材であり、自信も人一倍である。

 

「委員長?やりたいですそれ!」「うちもやりたいっす。」「僕のためにあるやつ。」「リーダー?やるやる!」

 

 純狐はそれを、手を上げずに見守っていた。委員長なんかになっても面倒だからだ。

 

相澤はそんな純狐の様子を静かに観察する。

 

 相澤は純狐をどうするか迷っていた。いつもであれば純狐のような性格の奴はすぐに除籍にするのだが、今回はそうはいかない。あまりにも強すぎる個性、雄英でも10本の指に入るであろう頭の良さ、そして訓練で見せた戦闘への慣れ。ここで手放すには惜しすぎる。もし、ヴィランにでもなられたらその被害は尋常ではないだろう。

 

 相澤がそのような事を考えているころ、教室にはそびえたつ腕があった。その腕の根元から、混沌とした教室に声が響く。

 

「静粛にしたまえ!これは平等に投票で決めるべき議案!」

 

「「そびえたってんじゃねーか!なんで発案した!?」」

 

 飯田の手を見ながら生徒が叫ぶ。そう、そびえ立つ腕の正体は飯田だったのだ。

 

「会って日も浅いのに、信頼もくそもないわ。」「そんなん、みな自分にいれらぁ。」

 

「だからこそ、ここで複数票取った人がふさわしい人となるはずだ。どうでしょうか先生!」

 

 飯田は文句を言ってくる生徒に投票で委員長を決めるメリットなどを説明しながら先生に言う。

 

「時間内に決まれば何でもいいよ。」

 

 考えることを邪魔された相澤は不機嫌そうな表情でイヤホンをはめ、寝袋に入る。

相澤の許可も得た飯田は、すぐに21人分の票を用意すると、早速投票作業に移るのだった。

 

「結果発表~~~~~!!!」

 

 飯田が、○田のような声で告げる。ちなみに純狐は轟に入れた。特に理由はないが、強いて言えば唯一対等に話しかけてきてくれる人物だからだ。

 

 そして、その結果は…

 

「落月純狐 3票! 八百万百 2票! 他 1票! よって…落月さんが委員長だぁぁぁあああ!!」

 

 発表し終わると、飯田は涙を浮かべながら教卓に倒れこんだ。そして、栄えある委員長に選ばれた純狐は何が起きているか分からず呆けた顔をする。その反応とは逆に、クラスの雰囲気は何か納得したような雰囲気であった。

 

「…えっ?私、立候補してな…」

 

「おおー!落月かぁ。確かに頭いいし、基本何でもできるからな!」「頑張ってね、落月さん。」「応援してるよ!」

 

「いや、だから私、立候補してな…」

 

「俺の分も頑張ってくれよな!」「おい、女狐ぇ!お前どんな手使いやがった!」

 

 純狐は必死に立候補していないことを伝えようとするが、みんなが食い気味に反応してくるためなかなか伝わらない。

 

「落月さん…っ!俺の分まで頼んだ。」

 

 純狐が生徒の波に押されて前に行くと、飯田が肩を思いっきりつかんでくる。

 

(ここで断るのも悪い気がしてきたわね…)

 

 そこで純狐は原作のこのシーンの後を思い出す。

 

(そうだ、この後はマスコミが入ってきて、その混乱を収めるため飯田が活躍するはず。そこで、飯田に委員長を譲ればいいわ。)

 

 そう考えた純狐は飯田の目をまっすぐ見つめる。

 

「分かったわ。そこまで言うならやってやろうじゃない!」

 

 飯田は純狐の目に見入りそうなり、とっさに目を逸らす。それでも、目も焦点が合わず、少しふらつきながら純狐の肩から手を放した。

 

 その後すぐに、委員長決めが終わったのを察して相澤が起き上がる。

 

「じゃあ、落月が委員長で八百万が副委員長だな。」

 

 相澤がそう言うと生徒たちは純狐と八百万を応援し始める。その間、飯田は悔しそうに純狐を見ていた。

 

 

― ヘカーティア side ―

 

 

「ふふっ。よしよし、困ってるわね。でも、もう少し困ってもらうわよ。」

 

 ヘカーティアは委員長と発表されたときの純狐の顔を見て笑う。

 

「ご主人、もうやめましょうよ。友人様も純粋に楽しんでるみたいだし、この前怒られたばっかりじゃないですか。」

 

 ヘカーティアは画面から目を離しクラウンピースの方を見る。

 

「まだまだよ、クラウンピース。純狐に毎晩漫画の愚痴を聞かされたのを忘れたの?」

 

 クラウンピースはその時のことを思い出し、少し嫌な顔をするが、それも過去のことなのでいいかなぁと思う。

 

「でも、ご主人。やってることがガキ大将みたいじゃないですか、品格を疑われますよ。それに、この先のUSJでしたっけ?そこでも何か仕掛けてるんですよね?そっちの準備はもういいんですか?」

 

「ああ、そっちはもう大丈夫よ。それにあれは、純狐を困らせるのもあるけど、もう一つの目的が本命よ。それが成功すれば、暮らしがかなり楽になるわ。」

 

 ヘカーティアはニヤリと笑い、視線を画面に戻す。

 

「そんなことより、もう少しで、また少し面白いものが見られるわよ。」

 

「はぁ、注意はしましたからね。」

 

 そう言うとクラウンピースは部屋を出て他の妖精と遊ぶ準備を始めた。

 

「大丈夫かなぁ。」

 

 そんな心配をしながら…。

 

 

― side out ―

 

 

「人すごいなぁ。」

 

 純狐は飯田、麗日、出久と一緒に食堂まで来ていた。

 

「そういえば、誰が私に票を入れたの?」

 

「俺だ。」

 

「私も!」

 

 純狐の疑問に二人がすぐに答える。飯田たちは、純狐の振る舞いや頭の良さ、人との接し方などを近くで見てきて、純狐がふさわしいと思っていた。

 

「僕は八百万さんに入れたよ。」

 

 出久は控えめに言う。

 

「だとすると、残り一票は誰でしょうね。まあ、もうどうでもいいんだけど。」

 

  ◇  ◇  ◇

 

「くしゅっ。」

 

 轟は教室で一人、昼ご飯を食べながらくしゃみをする。

 

「誰か噂でもしてんのか?」

 

  ◇  ◇  ◇

 

「でも、飯田君も委員長したかったんだよね。よかったの?」

 

 麗日は飯田の方を見ながら笑顔で言う。

 

「やりたいのと、相応しいかどうかは別だ。僕は自分より落月さんがふさわしいと思ったからそうしただけだ。」

 

「あら、うれしいこと言ってくれるじゃない。」

 

「ん?僕?」

 

 純狐が社交辞令のようなものを言っていると、出久と麗日は飯田の発言に食いついた。麗日は焦った顔をした飯田の顔を覗き込む。

 

「もしかして、飯田君って坊ちゃん?」

 

 飯田は反射的に反論しようとするが、ごまかせないと悟り、正直に話すことにした。

 

「そう言われるのが嫌で、一人称を変えていたんだが…」

 

 飯田はガン見している麗日と出久の方を向く。

 

「ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ。」

 

「ええーー!?」

 

 出久と麗日は机から身を乗り出して飯田を見る。純狐は知っていたし、ヒーローという仕事に興味が無いので少し、目を大きくして飯田を見る位しかしなかった。飯田はそんな純狐には気づかずに大きく反応した二人に対してどや顔をする。

 

「インゲニウムってヒーローを知ってるかい?それが僕の兄だ!」

 

 飯田は眼鏡を上げながら続ける。

 

「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!俺はそんな兄に憧れてヒーローを志したんだ。」

 

(この後…足…動かなくなったんだよね…。)

 

 純狐は飯田の兄のこれからのことを思い、窓の外を眺める。すると、マスコミが詰めかけてくるのが見えた。

 

(おっ、そろそろね。飯田君には頑張ってもらわないと。私、飯田君に委員長譲ったら、嫦娥殺すんだ…。)

 

  <WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY↑↑>

 

「警報!?」

 

(何か、違う気がする…。)

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに避難してください。』

 

 無機質な声で警報が流れる。生徒たちは何が起こっているか分かってはいないが、とりあえず避難しようと廊下に出始めた。

 

「みんな、俺たちも先輩方に続こう!」

 

「う、うん。」

 

 飯田が最初に動き出し、純狐たちもそれに続く。廊下に出るとそこは人の洪水という言葉がぴったりの光景だった。

 

「昼食を食べるのをやめ、廊下に出ると、そこは人海だったってね。」

 

「ふざけている場合じゃないぞ、落月さん!」

 

 飯田は人波をかき分けるように進んでいく。純狐は飯田について行きながら飯田の行動に少し疑問を覚える。

 

(あれ?私の記憶が正しければ、飯田君は窓際に追い込まれてマスコミを見るはずなんだけど…。)

 

 そんなことを思っている間にも飯田はどんどん進んでいく。そしてついに、非常口の表示が見えてきた。

 

 純狐は本格的に焦り始める。ここで失敗することなど考えていなかったのだ。手の甲の鍵穴から笑い声が聞こえるのは気のせいだろう。

 

(これも、イレギュラーの一つよね。何とかしないと…。後で変なことになったら困るわね。)

 

 純狐は飯田の後ろを歩きながらどうするかを考える。そして、ある方法を思いついた。

 

「ねえ飯田君。」

 

 純狐は近くに出久や麗日がいないことを確認すると、どんどん先に行く飯田の肩に手を置き、自分の方を振り向かせる。

 

「なんだ、落月さん。早くグラウンドに…」

 

 飯田はそこまで言って、動きを止める。

 

 飯田はまともに見てしまっていたのだ。純狐の真っ赤に染まる瞳を。

 

 純狐は、自分の目を見て飯田が動かなくなったのを確認すると、飯田の耳元でつぶやく。

 

「飯田君。今から、私があなたをあの非常口の看板の方に投げるわ。そこに着いたら大きな声で、この騒動がマスコミの不法侵入によるものだと伝えてくれるかしら。」

 

「はい。」

 

 飯田はさっきのアナウンスのような、生気のない声で返事をする。純狐はそれを聞くと肩においていた手に力を込めて、飯田を持ち上げる。そして、飯田を看板の方に投げた。飯田はまっすぐ飛んでいき、大きな音を立てて看板の上に着地する。

 

 そして、落ちないように、顔の横にあるちょっとした突起を持つ。

 

「皆さん!大丈―夫!!」

 

 飯田で、生徒たちは飯田の方を一斉に向く。

 

「ただのマスコミです!ここは雄英生らしい行動をしましょう!」

 

(ナイスよ飯田君。)

 

 純狐は飯田の言葉で落ち着きを取り戻した生徒たちを見る。

 

(そして、このことはヘカーティアに言わなきゃね…。)

 

純狐はポケットから鏡を取り出して、自分の目を確認する。純狐の目は真っ赤に光ったり、光らなかったりしていた。

 

 

 その後、警察が到着し、マスコミは撤退。そして、純狐たちの教室では、他の委員決めが始まっていた。

 

「はい、じゃあ初めて行こうと思います。でも、その前に少しいいでしょうか。」

 

 純狐はそう言うと、飯田の方を向く。

 

「委員長はやっぱり飯田君がいいんじゃないかしら。あんな風にみんなをまとめられるんだもの、私なんかより向いてるわよ。」

 

「いや、だからその件に関しては、俺は何も覚えて…」

 

「いいんじゃね!飯田、食堂で活躍してたし!いや、落月でも全然いいんだけど!」

 

 飯田は覚えていないことを伝えようとするが切島の声に遮られる。

 

 飯田は、あの時、純狐の目を見た瞬間から、2分くらいの記憶が抜け落ちていた。意識が戻ると、なぜか非常口の看板の上にいたのだ。その後、何とかして思い出そうとしたが、思い出そうとするたびに頭が痛くなり思い出すことができない。

 

 そんな風に、飯田が悩んでいると、純狐から声がかかる。

 

「そういうわけで、よろしくね、委員長。」

 

 飯田は顔を上げて周りを見る。そこには、飯田に期待を寄せる生徒たちがいた。飯田は納得はできないが、みんなの期待を無下にするわけには行けないと思い、委員長を引き受けることにした。

 

「委員長の指名であれば仕方ない!やらせていただこう!」

 

「おう!頑張れよ!非常口!」「期待してるよ飯田君!」

 

 飯田はクラスメイト達の声に少し感動しながら前へ出て行った。

 

 

 

「ヘカーティア~。暇でしょ。出てきて。」

 

 純狐は家に帰ると、部屋着に着替えながら鍵穴に向かって言う。すると、すぐに目の前に紫のゲートができ、中からヘカーティアが出てきた。

 

「はいはい、どうしましたか。まあ、大体分かってるけど。」

 

 ヘカーティアは純狐の目を見ながら言う。

 

「なんか、この世界に来てからおかしいのよね。私、人を操るなんてできなかったはずなんだけど。」

 

「ちょっと待ってね。」

 

 ヘカーティアは鍵を取り出すと、純狐の鍵穴に差し込んだ。そして、純狐の力を少しずつ戻しながら難しい顔をする。そして、ある程度のところまで力を戻すと、純狐に話しかけた。

 

「純狐。今、目を赤くするやつ使える?」

 

 純狐は、どうしたのだろうかと、思いながら、昼にやったように、目に力を入れ始めた。しかし、目が赤く光らない。

 

「あれ?あんな風にならないわね。」

 

 ヘカーティアは、やっぱりか、というような顔をして純狐の力を縛られた状態に戻した。

 

「何かわかったの?」

 

「ええ、予想だけどね。」

 

 ヘカーティアはそう言うと説明を始めた。

 

「この世界には、【個性】ってものがあるじゃない?多分だけど、あなたはこの世界に来た時にそれが芽生えたのよ。まあ、最初は、【目を長時間合わせた者をボーとさせる】程度の物だったでしょうけどね。」

 

「ああ、出久君と最初に会った時のあれね。まあ、“この世界の”人間に合わせて体を調節したからそこまで不思議じゃないわね。予想はしてなかったけど。」

 

 ヘカーティアは軽く頷き、話を続ける。

 

「そして、あなたは、体の強度は人間だけれど、厳密には人間じゃなくて幻想の存在のままなのよ。」

 

「ああ~、なんとなく落ちが読めてきたわ。」

 

 純狐は今までの学校生活を思い出す。今回の事件の前にあった出来事を思い出したところでなんとなく分かってしまっていた。

 

「あら、もう分かったの?じゃあ、詳しいところは話さなくていいわね。」

 

 ヘカーティアは少し詰まらなさそうな顔をするが、話を続ける。

 

「そう、あなた、個性の話をしてたわよね。そこで、人の思考を操れることを話した。みんなはそれをかなり畏れたのよ。それが、あなたの手に入れた個性と相性が良かった。だから…」

 

「だから、そもそも幻想の存在である私は影響されてその能力が強化されたってことね。」

 

「ええ、でも普段のあなたは力が強いから影響されることは無いのよ。さっき力を戻したときは使えなかったでしょ?」

 

 純狐はため息をついた。今まででも相当強かったのに、これ以上強くなったらつまらなくなってしまう。

 

 純狐がそんなことを考えている一方でヘカーティアもあることを気にしていた。

 

「ねえ、純狐。腕をMAXまで強化して私を殴ってみて。」

 

「えっ、何あなた。マゾヒストなの?」

 

 純狐は顔を青くして少しヘカーティアから離れる。

 

「いや、違うわよ。ちょっと試したいことがあるの。」

 

「いいのよ、ヘカーティア。正直に言って。私たち友達じゃない。」

 

 純狐は母親のような優しい笑顔でヘカーティアに語り掛ける。しかし、その額には冷や汗が流れていた。

 

「ああー、もう面倒だわ。じゃあ、飛ぶわよ。」

 

 ヘカーティアは面倒になって強制的に始めることにした。そして、純狐の足元にゲートを開きどこかの山奥に飛ばす。その後、ヘカーティアもそのゲートに入った。

 

 

「何よ、乗ってくれてもいいじゃない。」

 

 純狐は文句を言いながら腕を強化する。

 

「私の予想が正しかったらあんまり笑っていられる状況じゃないのよ。さっさとやりなさい。」

 

 純狐はヘカーティアの言葉を聞き、真剣な顔になる。そして、最高まで強化した腕でヘカーティアの腹のあたりを殴った。

 

「…やっぱりね。」

 

 ヘカーティアは純狐の腕を手で受け止め、治療しながら言う。

 

「あら、あんまり手が壊れてない。どうしたのかしら。」

 

 純狐の腕はボロボロではあるが、自分の意思で動かせないほどではない。純狐はいろいろなことを考え始める。

 

(出る力も戦闘訓練の時より落ちてる?そして今回の私のこの世界での個性の発動。いや、強化か。そして、周りに影響されやすくなった能力…。もしかして…)

 

「純狐、あなた…」

 

「「もともとの能力が弱ってきてる。」」

 

 純狐とヘカーティアの声が重なる。

 

 かなり、混乱している純狐を見て、ヘカーティアは純狐の部屋に続くゲートを開きながら。話しかける。

 

「あんまり深刻にとらえなくていいわ。いざとなれば、力を戻せばいいし…。でも、あんまり、【目を合わせた人を操る】個性は使わない方がいいわね。この世界に長くいられないかもしれないわ。」

 

「…ええ、私も、純化が使えなくなるのはまずいわ。ヘカーティア、あとどのくらいこの世界にいられるか分かる?」

 

 純狐は落ち着きを取り戻し、ヘカーティアに尋ねる。ヘカーティアは純狐の部屋に戻り、純狐の仙界に戻る準備をしながら言った。

 

「あと…半年は無いわね。」

 

「分かったわ。ありがとう。それだけあれば、まあ、楽しむのには問題なさそうね。」

 

「気を付けてね。あなた、素の力が強いから私も簡単に手を出せないのよ。」

 

 

 純狐はヘカーティアが帰った後、窓際に行き、窓から見える雄英高校の校舎を見る。

 

「あんまりのんびりしてられなくなったわね。まあ、いいわ。邪魔なイベントは回避できるようにしていきましょう。回避…そうね、時間のかかるイベントとしてのものは…。」

 

 そう言うと、純狐は笑った。

 




お読みいただきありがとうございました!

次回!USJだと思う!失踪はしな…
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