一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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クラス代表就任とパーティー

 

 

 織斑一夏との試合に負けた私は医務室へと運ばれ試合を思い出す。

 

 入試試験でミューゼル先生を怒らせた時以上の蹂躙劇に手も足も出なかった。そして、全ての攻撃が見えていたかの様な最小限の動きでの回避行動は常人の枠を越えた反応速度だった。

 

 だけど、私は彼を怒らせた理由は判っていたし、二組の彼のもう一人の妻の織斑鈴音から言われた。

 

 彼女の両親はヨーロッパ連合の貴族で、食料不足を解消する為に最大の食料生産地だったオーストラリアに渡り、食料を輸入する為にシドニーで交渉していた所を超質量兵器が落ちて亡くなった事を聞いた。

 

 その心の傷を私は抉ったのだ。

 

 私も同じく、両親を亡くしていた事を判っていながらだ。取り返しの出来ない仕打ちを彼女にしたのだと理解する。

 

 イギリスから代表候補生の身分剥奪とブルーティアーズの返却命令が来るかも知れない。

 

 無論、学園は退学となるかも知れない。

 

 「やぁ、金髪ドリル」

 

 茶髪のスーツ姿の女性。

 

 医務室に来たのはホワイトラビット社の社長、篠ノ之束だった。そして、表情からも怒っているのも判るし、それよりもドロッとした殺気に怯えるしか無かった。

 

 「私はとんでもない事をしてしまいすみませんでした!!」

 

 最早、束社長からの殺気に殺されるよりはマシだと、プライドなんて捨てて謝るしか無かった。ベッドから転げ落ちる様に出て、額を床に擦り付ける様に土下座をして束社長に謝ったのだ。

 

 「なあ、謝罪なんてどうでも良いんだよ。

 

 束さんの可愛い妹分を泣かした落とし前はどうするんだよ?

 まぁ、その前に金髪ドリルは退学かな?」

 

 退学の二文字に真っ青になる私。

 

 「だけど、いっくんとアンちゃんからは謝罪したら許すって言われたし、束さんからは何もするつもりもない。

 

 もし、いっくんが許さないと言っていたら、あのデュノア社の糞社長夫人の時の様に細胞レベルに解体して殺していたよ?

 

 ただ、いっくんは金髪ドリルの射撃の腕前にダイヤの原石だと言っていたから、候補生の座も国籍も全てを失うだろう金髪ドリルをいっくんが設計した長距離狙撃型の専用機のテストパイロットにスカウトしろってさ。

 

 で、どうする?」

 

 私は身体中が痛いのを我慢して束社長に土下座したのだった。

 

 「身を粉にして働かせて貰いますわ」

 

 「んじゃあ、明日は必ず二人とクラスメイトに謝れよ。

 

 もし、二人の優しさを蔑ろにして謝らなかったら、金髪ドリルを束さんは許さないし殺すからな?」

 

 「謹んで謝りますわ!!」

 

 そして、夕方にはホワイトラビット社の契約書類が届きサインしたのだ。無論、大破したブルーティアーズのコアは社長が作った2つのコアと交換して引き取り、長距離狙撃型のブルーイェーガー(蒼き狩人)のコアに使用されたのだ。

 

 

 医務室を後にした束さんの携帯には『イギリス大使館』から着信が入る。

 

 「無能のイギリス大使館の大使が何かな?」

 

 『我がイギリスのブルーティアーズを大破させておきながら何ですか、その態度は!!』

 

 「ふ〜ん。イギリスは何も調べもしないで一方的に文句を言って来るなんて、無能の判断でホワイトラビット社と全面戦争がしたいのかな?

 

 何なら、束さんはコアをイギリスが潰せるだけ作って、本気で潰しても構わないんだよ?

 

 だだ、悪友だけは助けるけどね。

 

 それに、在日イギリス大使は元々は代表候補生の教育不足が呼んだ事態だったのを判っているのかな?

 

 お宅のイギリスが候補生の教育を怠って、ウチの企業代表が潰れ掛けた責任はどうすんのかな?

 

 ウチの会社の事を棚に上げて、文句を言わないで欲しいかな?」

 

 『たかが、企業が国家に喧嘩を売りますか!!』

 

 「無能と話すだけ無駄なのは判ったよ。だから、悪友に話す事にするよ」

 

 『悪友!?

 

 まっ、まさか…』

 

 全く、大使館如きの役人では話にならない。

 

 もう一台の携帯でイギリスのとある人物に電話をする。

 

 「やぁ、久しぶりだねぇ、メアリーちゃん♪」

 

 無論、相手はIS学園の学生時代の悪友。

 

 『うっげぇ!?たっ、束!?』

 

 ティーカップが落ちて砕けた音から、ティータイム中だったのだろう。

 

 「あのさ、ティータイム中に悪いけどさ、お宅の日本のイギリス大使館の大使、どうにか成らないかな?

 

 悪友のエ・リ・ザ・ベ・ス三世ちゃん?」

 

 そう、IS学園の第一期の卒業生で同級生だった現イギリスの女王のエリザベス三世で女王就任前はメアリー・フランクフルトの名前だった。

 

 そして、ちーちゃんが幼馴染ならメアリーはIS学園で一緒になって学園中に悪戯をやりまくった悪友で悪戯の内容は秘密だよ。

 

 『あたしは何をやれば良いのよ?』

 

 「そうだね、新しいコアを上げるからさ、金髪ドリルの大破した専用機と金髪ドリルのセットで交換でどうかな?」

 

 『金髪ドリルって、あの貴族のセシリア・オルコット…ウップッ…あっははは…ひっひひひひ…ハァハァ…金髪ドリル、確かにあの小娘に言えてるわね…あぁ、駄目…はははははは…ひっひひひひ…あぁ、お腹が痛い…束はあたしを笑い殺しする気!?』

 

 金髪ドリルで笑いのツボに嵌まる悪友メアリー。

 

 「大丈夫だよ。メアリーはそれ位じゃ、ちーちゃんと同じで死なないし」

 

 『酷ぉぉい!!

 

 あの、ツンデレ剣術馬鹿と一緒にするな!!

 

 まぁ、話は置いとくけど、BT兵器の情報まで流れるから2個が妥当ね。

 

 束がそれでいいなら、あたしが女王の勅命を出しても構わないわ。

 

 どうかしら?』

 

 「じゃあ、成立だね。

 

 でも、BT兵器は開発済だよ。

 

 確かに、ちーちゃんツンデレだけど」

 

 『やっぱり、束は天災ね。

 

 チフユにも言っときなさい。

 

 学年別トーナメントに行くから、その時にクラリッサも来るだろうから4人で久しぶりに飲むわよって』

 

 悪友二人による物々交換が成立した瞬間だった。

 

 次の日には、日本のイギリス大使は女王の勅命で更迭され、バッキンガム宮殿の美しい芝生の庭には『兎直送便』とペンキで書かれたニンジンロケットが刺さり、中には新しいISコアが2個が入っていたらしい。

 

 無論、束の策略によりイギリスの女王と物々交換という名前で売られた事とは知らない、セシリア・オルコットは女王の勅命により、今回の一件を理由に代表候補生とイギリス国籍を剥奪されて無国籍扱いにされたのだった。

 

 これが、セシリア・オルコットが代表候補生と国籍を剥奪されてホワイトラビット社へテストパイロットとして入社した裏の理由の顛末だった。

 

 だが、これは彼女がこれから受ける地獄(イチカ提案の訓練)の入口だとセシリアは知らない。

 

 

 翌日、SHRでは俺がクラス代表に就任したが、セシリアが怯えながらアンと俺に謝罪とクラスメイト全員に謝罪して来た。

 

 「一夏様、アン様、お二人に失礼な事を言ってしまい、誠にすいませんでした!!」

 

 『土下座での謝罪!?』

 

 「それと、皆様にも失礼しました。私はこの一件で代表候補生と国籍を失いましたわ。この事を忘れずに精進したいと思いますわ」

 

 ただ、ひと目を憚らずにアンに土下座で謝罪した事にはクラスメイト達が騒然としたのは言うまでもない。

 

 そして、セシリアがホワイトラビット社へ入社した事で退学には成らなかったが、今回の一件でイギリスの国家代表候補生とイギリス国籍の両方を女王の勅命で失い、イギリスでの資産と財産は没収は無かったが国籍の剥奪は事実上の国外追放だった。

 

 イギリスと何の取り引きをしたか判らないが、セシリアのスカウトには成功し、束さんの目論み通りに狙撃手としては超一級品の腕があるセシリアを入手したのだった。

 

 セシリアの新しい専用機は蒼式のバリエーションタイプの機体で長距離狙撃型のブルーイェーガーを彼女が入社した日には既に開発されて用意されていた。

 

 ブルーイェーガーは蒼式の換装ユニットのJ型を基本として再設計されており、高性能の照準装置や高機動型では無いが小型のスラスターユニットをスカートアーマーやゲルググタイプの肩にも装備されて俊敏性は確保されている。

 

 また、ブルーイェーガーの武装は狙撃用で高出力のロングレンジレーザーライフルと中近距離用の装備でレーザーマシンガンの他に、両腕には内蔵型のレーザースポットガンにエネルギー消費を抑えたレーザーサーベル2本を腰のアーマーにマウントしている。

 

 そして、ブルーイェーガーの元になった機体はジオン軍の統合整備計画の1つでMS-14Jゲルググイェーガーだった。

 

 放課後には、会社からブルーイェーガーが待機状態でセシリアに届けられ、学園のイベント以外ではホワイトラビット社の貸し切り状態で借りている第三アリーナでは、一次移行を済ませたセシリアがアンを相手に慣熟訓練をスコールさんの指導で行われた。

 

 「アン様、そのA型で手加減ですの!?」

 

 「ほら、避けないと当てちゃうわよ!!」

 

 「ひっ、ひぃぃ!?」

 

 アンが蒼式A型でレーザーライフルを片手にセシリアのブルーイェーガーを追い回すが、ブルーイェーガーのレーザーマシンガンは撃ち抜かれてグラウンドの地面に落ちていた。

 

 無論、手加減している為に多数の装備をしている2つの高機動パックは使用していない。

 

 A型で普通に追い回しているのは、これはアンの元からの高い技量であり、一年戦争を生き抜いたパイロット達なら普通のレベルである。

 

 ブルーイェーガーよりも蒼式A型が速度では遅い筈なのにアンに追い付かれて近接戦闘を仕掛けられてしまい苦手な近接戦闘を強いられたセシリアはアンには近接戦闘で敵うはずもなく、展開したツインレーザーナギナタで斬られてシールドエネルギーを失っていたのだった。

 

 「セシリアにも近接戦闘訓練を追加だな」

 

 「射撃も正直ね。

 

 でも、課題は多いけど鍛えがいがあるわ」

 

 既に、スコールさんは俺の考案したメニューでセシリアを鍛え抜くつもりらしい。

 

 「お兄ちゃんのフィジカルトレーニングをやらせんだ…」

 

 「マドカの初日よりはマシだろ?」

 

 「マシと言うよりも死にかけたよ、お兄ちゃん」

 

 「スコール、鈴の単一仕様にいつまでタイムリミットを付けてんだ?」

 

 「オータム、だって鈴の身体が成長が仕切れて無いのだからリミッターは当然よ」

 

 「「そうなんだ…」」

 

 「アンもマドカも、あたしが貧乳だって言いたい訳!!」

 

 「鈴、ゴメン。

 

 あたし、バスト83」

 

 「なっ!?」

 

 「私も最近、測ったら80だった」

 

 マドカとアンはスコールと鈴のある一点を交互に見比べる。決して、二人が考えているそちらではないが二人のバストが育っている事に鈴はキレていたのだった。

 

 EXAMはスコールの見立て通りに身体への負担が大きく、一度だけスコールがクラス代表決定戦で使用許可をだしたが、鈴は凄まじい加速力のGに耐え切れる訳が無く肋骨にひびを入れていた。

 

 「うっなぁ!?

 

 マドカにまで抜かれたですって!?

 

 別に良いわよ!!

 

 ババアになったら垂れるだけの脂肪の塊よ!!」

 

 「へぇ、誰がババアですって?」

 

 アンとマドカは鈴の後ろに立つスコールの形相を見てしまった二人は、お互いを抱き合いながら歯をガタガタ震わせて怯えるが鈴は全く気付かない。

 

 「あたしの例えなら、スコールさんとかよ!!」

 

 後ろにいるのに言ってしまった鈴の未来は確定したのだ。

 

 「へぇ、鈴は私がババアになったら胸が垂れるのね?」

 

 ズッゴン

 

 「へっ?うっげぇ!?」

 

 気付くと同じくして鈴は、スコールから拳骨を落とされ蛙が潰された様な声を出したのだった。

 

 

 

 寮への帰り道、5人で帰る途中で相川さんに夕食前に食堂へ集まる様に言われ、部屋に戻りシャワーを済ませて俺はアンとセシリアを連れて食堂に向かった。

 

 食堂のテーブルには様々な料理が並ぶ立食パーティーが開かれていた。

 

 「織斑くんが来たから、はじめましょう」

 

 『せーの、織斑くんクラス代表就任おめでとう!!』

 

 「これで、優勝したらデザートの無料フリーパスが貰える!!」

 

 どうやら、クラス代表就任のお祝いパーティーだった様だった。

 

 「ねえ、イチカ。懐かしいわ」

 

 「確かに懐かしいな」

 

 俺は懐のポケットから一枚の写真を出す。

 

 「イチカはまだ、持っていたのね」

 

 今と同じく、隊長就任で部下達と小さかったけど、食堂でパーティーをした時の集合写真には部下達が笑う姿があった。

 

 「これが、一夏さんの部下だった人達ですの?」

 

 後から来たセシリアの目に俺達の集合写真が見えていた。入社したセシリアにも宇宙世紀での話はしてある。

 

 「あぁ、セシリアか。

 

 そうだな。

 

 宇宙世紀の世界に飛ばされた時の写真だ。

 

 部下のみんなはクラスの皆の様に騒がしかったな」

 

 「皆さんは…」

 

 「セシリア、あたしも余り言いたくないけど、みんなは最後のア・バオア・クー決戦でたった1機の敵機に落とされて全員が戦死したのよ。あたしもイチカに庇われ無かったら死んでた」

 

 「ごめんなさい。

 

 一夏さんとアンさんが思い出す事を聴いてしまって」

 

 「いや、セシリアが謝る事じゃないさ。

 

 だが、これだけは知って欲しい。

 

 戦争は哀しいだけだと。

 

 そして、様々な過ちが重なる場所だとな」

 

「私の発言で危うく、クラスの皆様を哀しい事にしてしまう所でしたのですわね」

 

 「だから、セシリアは俺とアンの様に成らないで欲しい」

 

 その後、新聞部のインタビューを受けて、インタビューに手慣れていた事に驚かれるが、俺とアンはジオンに居た時からジオン軍のベストカップルで取材されたり、連邦の艦艇を複数を撃沈したり撃墜数が増える度にマスコミにインタビューで追われたりと散々な思い出がある事だけは言っておく。

 

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