乱音の最悪な悪戯により、重度の腹痛と吐き気が原因でベッド上にて、俺達四人は3日間も過ごす事になった。
気絶した翌日には、医務室のベッド上で眼が覚めたのだが、ロープで簀巻きにされた乱音とそのロープを握りボロボロな姿のマドカが立っていた。
「あっ、お兄ちゃん眼が覚めた?」
「あぁ、最悪な目覚めだな」
「あぅぅ、一夏お兄ちゃんごめんなさい」
頭に大きいタンコブを二つも作った乱音が素直に俺達に謝るが、マドカのズタボロな姿から予測すると捕まえるのに相当苦労したらしい。
マドカから経緯を聞いたが、マドカ達から逃げる乱音と真剣の薙刀を振り回しながらキレた簪に追われる生徒会長との二人が逃げる為に手を組んだらしい。
そして、学園内を逃げ回る二人の大捕物へ発展した。
手を組んだ二人は、学園最強と悪戯最強の劇物同士の混ぜるな危険のコンビの誕生の瞬間だった。
逃げる二人は本当に混ぜるな危険の言葉が似合うほどに手強く、箒を除いた一組と二組のクラスメイト全員で追い回すが一向に捕まらず、乱音が瞬時に掘って作る落し穴に次々と落ちたり、楯無会長が自分の専用機のナノマシンで凍らせた廊下に滑った数名のクラスメイトが壁へと激突して気絶し脱落していた。
しかし、途中で寮方面と食堂方面へと二手に別れた片方の生徒会長が食堂に逃げ込んだのが運の尽きで、度重なる職員会議で遅い昼食を食べていた千冬姉の好物のカレーハンバーグライスを机ごとひっくり返した事により、生徒会長は好物を駄目にされてキレた千冬姉から瞬獄殺を喰らい気絶したが、怒りの収まらない千冬姉にトドメのアイアンクローを食らっている最中に捕縛された。
そして、寮へと逃げ込もうとした乱音はマドカが飛び付いて抱き付く事で捕まえたが、何とか逃げようと酷く暴れる為に相川さんに『私ごと蹴り飛ばせ!!』と叫び、相川さんの必殺の飛び蹴りを食らわせた反動を利用してジャーマン・スープレックスを乱音にお見舞いして意識を刈り取ったらしい。
無論、逃げて捕縛された二人は担任教師の召喚と昼食を駄目にされキレている織斑先生からのお説教を受けながら落とされた拳骨により、大きいタンコブを頭に作ったのだ。
その後、千冬姉から絶賛怒り爆発中の簪に引き取られた楯無会長は専用機が没収された上で第一アリーナへと引き摺られ、アリーナ入口で連絡して呼んだ同じくキレた虚さんと合流してアリーナ内で二人に折檻された様で楯無会長の悲鳴がアリーナ全体に木霊したらしい。
医務室から出られた翌日から、俺はクラス対抗戦に向けてアンとセシリアを相手に訓練を始める。
途中、箒が無理矢理借りた打鉄を纏い葵を持ちながら乱入したが、弾幕射撃の中での回避訓練中だった為に二人からの容赦のない攻撃と十数機のガトリング砲付きドローンからの弾幕射撃の弾幕を躱す事など技量の低い箒が出来る訳が無く、箒が纏う打鉄は大量の弾丸を浴びてシールドエネルギーを刈り取られてアリーナのグラウンドへと落ちたのだ。
アンとセシリアは猪武者の様に弾幕に突っ込んで行く箒を見て思った。
『飛んで火にいる夏の虫』
と箒の事を思ったらしい。
無論、落下して気絶した箒は企業で借用中の第三アリーナに無断侵入したので、駆け付けたミューゼル先生に回収された箒はアリーナの外に投げ捨てられたらしい。
そして、時間になり訓練が終るが、やはり数日は寝込んだ為に非常に疲れた。
鈴は二組のクラス対抗戦の為に一夏達が訓練をする第三アリーナは使わず、副担任の巻紙先生に訓練相手を頼んで第一アリーナで単一仕様の『EXAM』にリミッターが掛けられた制限時間内までは身体が耐えられる様にとフィジカルトレーニングで肉体改造に勤しんだのだ。
三組のクラス代表を勤めるマドカは、ビット操作の柔軟性を高める為に並行思考の訓練を重点的にしていたらしく、前日には姉の千冬姉に苦手な近接戦闘を克服する為に頼み込み模擬戦をしたのだった。
クラス対抗戦の当日となり、一回戦の第一試合は一組対四組で、俺の相手は四組の簪が纏う打鉄弍式だった。
「一夏くんの胸を借りる気で挑むから」
「あぁ、来い!!」
「じゃあ、遠慮なく行くから」
カッシュゥ
「へっ?
あっ、ヤバい!?」
「山嵐、バージョン2.0全弾発射!!」
試合開始早々から打鉄弍式の展開装甲が展開して内蔵された90発のマイクロミサイルが俺の白式に目掛けて全弾発射する。
「ちぃ、いきなりかよ!?」
「コレで落ちてくれると助かる!!」
「初っ端から、エゲツねぇ!?」
「駄姉のせいで溜まり溜まったストレスを一夏くんにぶつける!!」
「それ、責任転嫁だ!?」
「駄姉の代わりに落ちろ!!」
白式BC-OC型のスラスターをスロット全開にして加速しながら地面スレスレまで降りて加速して、白式を追うマイクロミサイルから逃げる。
無論、両手にマシンガンをコールし装備して乱射して、弾幕を張りながらミサイルを迎撃したりしているが、ミサイル全てを躱し切れないと判断する。
「ちぃ、コレを使うしかない」
「えっ!?
大量の風船!?」
「全て、ダミーだ‼」
新しく追加した武装の一つを使い、指の付け根からバルーンを射出して、白式の周りに展開したダミーバルーンにミサイルの標的を逸してダミーバルーンに命中させたり、ダミーバルーンに内蔵した爆薬の爆発にミサイルを巻き込んだりして誘爆させたりと、簪からのミサイルを躱し切ったのだった。
「くっ、やっぱり防がれた!?」
「ベテランじゃ無かったら落ちてたな?」
「何で、疑問系なの!?」
確かに、ベテランでも普通に躱せない事よりも、本人は気付いてないがニュータイプへと覚醒している為に、この様な方法で躱したに過ぎない。
アリーナで試合を観る生徒達も試合開始早々から打鉄弍式から放たれた90発のマイクロミサイルの一斉発射には流石に顔を引き摺り、それを躱し切った一夏にも別の意味で呆れる生徒達だった。
だが、試合は続き二人の白兵戦へとなった。
「これで!!」
腰の両サイドに装備された小型の折畳み式のレールガンを展開して白式へと放つが、レーザーサーベルモードにしたナギナタでレールガンの弾丸を全て斬り捨てたり、レーザーライフルでレールガンの銃口に狙撃する。
「見える!!
そこぉ!!」
「弾丸を斬るなんて、あり得ない!?」
「実際に斬れたからなぁ…」
「やっぱり、一夏くんは人間辞めてるよ…」
「簪にまで言われた!?」
「だって、いつの間にかレールガンも破壊してるし!!」
「スキを見せるのが悪い!!」
「ろっ、ロケットランチャー!?」
「落ちろ!!」
「きゃあ!?」
簪に呆れられる始末だが試合は続き、白式が瞬時加速でレールガンを破壊された打鉄弍式の懐へ入り、左腕のシールド付き三連ロケットランチャーを至近距離から放ち打鉄弍式に直撃させる。
「まだだ、終わらない!!
はぁぁぁ!!」
既に打鉄弍式は、俺の距離だった。
ラピッドスイッチで斬艦刀に変え、打鉄弍式を切り裂きシールドエネルギーを強制発動させて削り切ると打鉄弍式のシールドエネルギーが無くなり解除されたのだった。
『打鉄弍式、シールドエネルギーエンプティ。よって勝者、織斑一夏』
無機質なアナウンスより、落下する簪をお姫様抱っこで抱えてピットに戻るが、ピットに戻るまで簪が顔を真っ赤にしていた。
だが、ピットに簪をお姫様抱っこしたまま戻ると、一人の鬼が居たのだ。
「イチカ?
あんた、あたしと鈴が居ながら、新しい女にお姫様抱っこ?」
「えっ、私が新しい女////」
簪は何をどうしたら勘違いしているのか、満更でも無いが顔を林檎の様に顔を更に真っ赤にしていた。だが、俺を睨むアンの眼は氷点下まで下がっていたのだ。
「イチカ、浮気は構わないわ。
でも、火遊びが少しでも、本気に変わったらチョン切るから」
何処からか出した魚肉ソーセージを握って睨み、俺を一瞥してからハサミで魚肉ソーセージを切り落としていた。
つまり、浮気したら息子を切ると言う含みだったと気付いたのだ。
「はわわわ…アンさんとそんな関係!?」
「えっ?」
「一夏くんのエッチ!!」
俺はピットから出るアンを見ながら顔を真っ青にし、簪も意味を理解したのか顔を真っ赤にピットから走る様に逃げたのだった。
第二試合は二組対五組の試合だった。
鈴は五組のクラス代表が纏うラファールと試合を開始。早々から瞬時加速で懐に入り込み、綺麗な舞とも言えるヒートソードの二刀流で舞うようにラファールを切り裂き圧勝していた。
三組のマドカは六組のクラス代表と対戦。
試合開始から、5連荷電粒子砲を装備する両腕をビットとして飛ばして、六組のクラス代表の度肝を抜き、5連装の荷電粒子砲のみを撃ちながらオールレンジ攻撃を繰り出して遊々と勝利していた。
準決勝戦は一組対八組。
八組のクラス代表は、1回戦の俺の試合を見て勝てないと判断して棄権により一組が決勝へと駒を進め、準決勝の第二試合はマドカの三組と二組の鈴との対戦だった。
先に言えば、二組の鈴の圧勝だった。
「マドカ!!
あんたには恨みは無いげど、鍛えたあたしで一夏と何処まで通じるか、やりたいから勝たせて貰うわよ!!」
「鈴お姉ちゃんじゃなく、お兄ちゃんと殺り合うのは私だ!!」
「マドカ、字が違うわよ!!」
「「でも、勝つのはあたし(私)だ!!」」
「マドカ、最初から飛ばして行くわよ!!
単一仕様『EXAM』を起動するわよ!!」
脳内に響く、『EXAMシステム、スタンバイ』を聞き気を引き締める。前回同様に怪我をしない為だ。
「うっげぇ!?
鈴お姉ちゃんが単一仕様を、最初から使って来た!?
なら、私も全ビットを射出だ!!」
マドカの黒式から放たれた、大量のビットと両腕のビットからのオールレンジ攻撃。
だけど、今のあたしにはEXAMの補助もあり、全ての攻撃が見える。
コレが、一夏の見えている世界。
「マドカ、全て見えるから無駄よ!!」
「うっなぁ!?
お兄ちゃんの様に、ソレを躱すの!?」
何故なら、鈴の紅式の単一仕様『EXAM』は数倍の機体性能の向上だけでは無い。本当のEXAMの恐ろしさは機体の性能の向上だけで無く、システムの補助による擬似ニュータイプ化が最も恐ろしいのだが、肉体と脳への過大な負担が掛かる、システムとしては致命的な欠陥も有った。(宇宙世紀の世界では、このシステムが原因による犠牲者が出ている)
そして、擬似ニュータイプとは言え、ニュータイプとも言える超反応と鈴が最初から有る野性の勘が合わさり、マドカを翻弄して見せつけ、黒式から放たれた全てのレーザーと荷電粒子砲が織りなす網をステップダンスを踊る様に全て躱していたのだ。
「そりゃぁぁぁぁ!!」
「あっ、懐に入られた!?」
驚愕するマドカのスキを突いて、瞬時加速で一気に懐へと入り込み、黒式は斬り刻まれたのだった。
そして、試合は鈴が勝ったが、EXAMのタイムリミッターの残り時間は残り10秒と観ていた俺でも、鈴が単一仕様を時間ギリギリまで使った事に非常にヤバかった。もし、単一仕様でもタイムリミットを過ぎていたら最悪、鈴の身体への負担により重傷または死亡だけでは無く、紅式の暴走だってあり得たからだ。
だから、束さんはブラックボックス化した紅式のコアに何とか強制停止させるタイムリミッターを取付け、見張りとしてスコールさんが目を光らせていたのだ。
試合の後に鈴はEXAMの使用により、スコールさんに叱られていた。
そして、準決勝が終わり2時間後に試合をやる事になり、決勝戦は俺と鈴との夫婦による試合だった。
「一夏にどれくらい通じるか、やらせて貰うわよ!!」
「あぁ、鈴が妻だからって、手は抜かない!!」
対峙する白と赤の機体。
「当たり前じゃない!!
手を抜いたら、アンにあんたの中学生の時の恥ずかしい話をしてやる所だったわよ!!」
プライベートチャンネルでは無く、オープンチャンネルで鈴が言うものだから、客席にいる生徒達は俺の中学生の恥ずかしい話に『何それ、聴いてみたい』と興味深々だった。
「まさか、乱絡みか?」
「乱絡みね」
オープンチャンネルを開いたままなのを気付かずに聞くんじゃ無かったと、俺は直ぐにオープンチャンネルだと気付いたが後悔するのが遅かった。
オープンチャンネルでの俺と鈴の会話がアリーナの客席には駄々漏れで、会話の内容を聴いた乱は慌てる様にアリーナから脱兎の如く逃げようとしたが、それの内容が気になる二組の生徒達に取り押さえられ、何処かのドラマでの警察署の取調室とは言わないが、学園の人気メニューの熱々のカツ丼を目の前に出されて『吐けば、カツ丼が食えるぞ』とクラスメイトにより尋問中だった。
「「……」」
尋問される乱を後目にしながらも、二人して放置と決め込んだ瞬間に試合が開始される。
先ず、先手を取ったのは鈴だった。
「あんたには、コレでも食らいなさい!!」
両足の展開装甲から展開してマイクロミサイルを全弾発射する。俺も鈴の紅式のミサイルの量ならとツインレーザーナギナタを振り回し、俺に迫るミサイルを斬り捨てて行くが鈴の囮だった。
「二番煎じだっての!!」
「ミサイルは囮よ!!」
「なっ!?」
「貰ったわよ!!」
瞬間加速で加速した鈴の紅式がヒートソードを片手に突っ込んで来て、すれ違い様に一太刀で肩のアーマーを斬り裂く。
「ちぃ、やってくれる!!」
「コレで、やっとアンに並べたわよ!!
あんたと並び歩む為に!!」
まさかの鈴の愛の告白が来るとは思いも拠らず、客席からは黄色い歓声が立ち起こる。
無論、ピットから観ていたアンは額に手を宛てて
「鈴、あんたは既に妻の一人でしょうが!!」
と叫んでいたらしい。
そして、俺も鈴に応えるべく、斬艦刀をコールして構えるとリボルバーで加速して鈴に斬り掛かろうとした瞬間だった。
ガッシャァァァァン
アリーナを覆うバリアが砕けたのだ。
「一夏、あの黒い穴は!?」
「あぁ、俺が飲まれた黒い穴だ」
空には、誘拐現場やア・バオア・クーの暗礁宙域で見た黒い穴が開き、4機のモビルスーツが落ちてきたのだ。
その内の1機は、ゲルググタイプの様な肩のアーマーでは無く、長い肩のアーマーにジオン公国のマークが入る、真紅と黒で染められたゲルググタイプに近い機体とイーグルに星のマークが入るダークブルーに染められたガンダムアレックスいやジム系統の機体が、ビームサーベル同士の鍔迫り合いをしながら絡み合いながら重力に惹かれてグラウンドに落ちて来る。
その絡み合う2機を追う様に2機の同型のジム系統の機体がマシンガンを撃ちながら追いアリーナのグラウンドに落ちて来たのだった。
だが、ゲルググに近い機体の認識番号を見ていたアンは呟く。
「えっ?
あの番号343-121は、あたし達の居た部隊の機体!?
まさか…」
アンの予測は正しく、彼女はア・バオア・クー決戦では酷い生理痛でベッドに寝込んでしまい出撃が出来ず、自機の機体を勝手に乗り込んだジオンの補充要員の新米パイロットが彼女のゲルググに乗り込み、彼女の代わりにガンダムに落とされた。それが、ア・バオア・クー決戦で彼女が死んだと思っていたイチカとあたしだった。
そして、向こう(宇宙世紀での世界)では、あたしとイチカを巡り取り合ったライバルであり、オリムラ中隊では三人いた女性パイロットの一人のシャーロット・シュタイナー中尉だった。
そして、彼女の父親はジオン軍の特殊部隊のサイクロプス隊隊長のシュタイナー大佐で、その一人娘でもあるのだ。
ドズル閣下の前でイチカの女宣言したのも、シャーロットの父親に気に入られてイチカを彼女にも彼女の父親にも取られたく無かったからだ。
だから、わざと宣言して彼女を泣かしてやった。
アリーナに落ちて来た4機は1対3の激しいモビルスーツ戦を繰り広げ、アリーナ全体が混乱に陥ったのだ。
ただ、真紅と黒く染められたゲルググタイプは左腕を無くして武装はビームサーベルのみで戦い、3機のジムタイプと戦うが劣勢だった。
現状を観ていた織斑先生は、直ぐに非常事態宣言を出して生徒達を避難誘導をさせてシェルターに避難を開始させる。
まさか彼女いや、シャーロット中尉が生きて居たとは、俺でも流石に驚いた。
確かに、機体識別番号はシャーロット中尉のソロモン方面防衛師団所属343宇宙突撃大隊、オリムラ中隊の機体番号343-121は確かにシャーロット中尉の番号だった。
俺は、ジオン公国軍の通信チャンネルの周波数を530に合わせると彼女だった。
『もう!!
何で黒い穴に落ちたと思ったら、通信が繋がらないのよ!!
って、繋がってる!?
も〜し〜も〜し!!』
「やっぱり、シャーロットか!?」
『フッぇ!?
たっ、隊長じゃないですか!!
えっ、隊長が生きてる?
ぶぇぇぇぇぇん!?』
俺が生きている事に戦闘よりも、シャーロットが泣き出す始末だった。
「馬鹿者!!
戦闘中に泣き出す阿呆が何処にいる!!」
『って、私で〜す!!
嫌ァァァ!?
斬られる!?』
「ちぃぃぃ!?」
と怒鳴る最中にシャーロットの乗るゲルググタイプに似た機体にジムタイプからのビームサーベルが迫る。俺は、斬艦刀を突きの構えで構えて瞬時加速し、ビームサーベルを振るおうとするジムタイプのコクピットに目掛け斬艦刀を突き刺したのだった。