管制室から、あのモビルスーツと言う兵器同士の戦いに息を呑む私。
「織斑先生、生徒の避難が九割ほど完了ですね」
「山田先生、これが戦争なのだな…」
「私も織斑先生と織斑君の和解の話をマジックミラー越しから聞かせて貰いましたが、あの戦闘がそうなんですね…」
そして、一夏が大剣を突きの構えのままで瞬時加速してISの数倍の大きさの18メートルは在るロボットに肉薄し、コクピットが有るだろう場所に白式が装備する4、5メートルはある大剣を突き刺して引き抜き、大剣の剣先が真っ赤に染まる。
「もしかして、織斑君はあのロボットのパイロットを?」
「剣先に付着した血の量から、確実に殺ったな。
そして、パイロットは即死だ」
「なにもコクピットを狙わなくても!!」
確かに、通常なら山田先生が言っている通り、コクピットを狙う必要性はない。だが、鈴音の牽制を見て判断するにISの競技用の武器では、装甲が硬くて無理なのだろうな。
「いや、ISだから他を狙うのが無理なのだろうな。
鈴音も牽制して、脚を斬り掛かっているが、装甲が硬くて剣が弾かれている。
だから、一夏は最も装甲が薄く攻撃が通り易いコクピットハッチを狙わざるを得ないのだろうな。
例え、相手のパイロットを殺してでもだ」
向こうの世界で命のやり取りをして来た一夏なら、この状況は既に戦争なのだ。
コクピットを突き刺されたモビルスーツは力無く倒れた。
モビルスーツのコクピットを突き刺し、推進剤が入っている燃料タンクまでも突き刺したのか、漏れた燃料がコクピットの中まで漏れ出し、配線とショートしていたコクピットから火が出ると燃料に一気に引火してモビルスーツは爆発して四散した。
この、爆発によりアリーナの客席を守るバリアは激しくショートするが耐え切り、避難中の生徒達に被害はない。しかし、次の爆発には耐え切れないと判断して防護シャッターを降ろしたのだった。
一夏はモビルスーツが爆発するのを一瞥すると無理な瞬時旋回加速をしながら、マシンガンを乱射し牽制。
もう1機のモビルスーツへ同じ様に斬り掛かろうとするが、放送室からの声に一夏の攻撃が、モビルスーツが標的にした放送室に気付き止まる。
『一夏!!
男なら弱点ばかり狙わないで正面から堂々と戦え!!』
管制室から放送室を見れば、数名の生徒が篠ノ之が握る木刀に殴られて頭から血を流して気絶している状況だった。一夏も放送室の惨事ともう一方のモビルスーツの銃口の標的に気付き、放送室を人質にされた事で攻撃を中断したのだ。
そう、赤いモビルスーツと戦うモビルスーツが放送室へとマシンガンの銃口を向けた為だった。
「あの、馬鹿者が!!」
「織斑先生!!
教師部隊の準備が出来ました!!」
「山田先生、この戦闘では教師部隊は役に立たない!!
だが、直ぐに放送室へと向かわせ、篠ノ之の捕縛と気絶している生徒の救助へ向かえ!!
救護班も忘れるな!!」
私は山田先生を怒鳴り飛ばすと、手元のコーヒーを飲もうと、近くに有った瓶に入っている砂糖らしき物入れて飲んだのだ。
「ブッフォ!?」
余りの不味さにコーヒーを吹き出し、瓶のラベルを確認したら重曹と書かれていたのだった。
「何故、こんな所に重曹が有るのだ!?」
シャーロットに斬り掛かろうとしたジムタイプの1機を撃墜し、シャーロットに話を聞く。
「シャーロット、無事か?」
『無事です!!
でも、隊長もそんな小さな機体でティターンズの新型機、ジム・クウェルを撃墜が出来ますね?』
どうやら、撃墜したのは角無しのガンダムアレックスでは無く、新型のジム・クウェルらしい。
道理でア・バオア・クー戦で撃墜したアレックスより弱い筈だと俺は思ったのだ。
そして、ジムもガンダムもコクピットハッチの位置は分かりやすいし、連邦軍のモビルスーツは共通して装甲が薄い記憶が有ったし、鈴がヒートソードを足に斬り付けて弾かれるのも観ていた。なら、シャーロットのあの状況で狙うのは断然的にコクピットハッチだった。
「まぁ、コクピットを狙うしか無かったがな。
それよりも、シャーロットの機体はゲルググに見えるが?」
『この機体?
あぁ、私はア・バオア・クーから脱出した時に、シーマ准将に拾われてからは、シーマ准将のシーマ艦隊とアステロイドベルトのアクシズに行ったら、戦後に教導大隊に所属して教官用に受領したのが、このリゲルグだったんですよ。
私も、今はアクシズ所属の少佐に昇進しまして、イリヤやマシュマー等の問題児が居る新兵達の宇宙での教導中にティターンズのジオン狩りによるアクシズへの奇襲で、アクシズの防衛戦になって20機ほどのジムⅡを撃墜してヘトヘトですよ』
「じゃあ、俺よりも階級は上だな」
『そんな訳無いじゃないですか!!
ア・バオア・クー戦でイチカ大尉とアン大尉も50機のモビルスーツの撃墜、特にガンダムタイプの2機の撃墜とマゼラン級4隻とサラミス級6隻の撃沈による二人の大戦果ですよ。ア・バオア・クー戦の中で撃墜されて人は行方不明になりましたが、大戦果による名誉の戦死扱いになって二階級特進で中佐ですよ!!』
シャーロットからのカミングアウトに驚く。
「マジかよ…」
『てめぇ、人様の殺し合いに水を刺すんじゃねぇ!!』
シャーロットのリゲルグと鍔迫り合いしていたジム・クウェルとは別の機体がスラスターを吹かし、俺に突撃する。
「ティターンズのパイロット!!
ここは異世界だ!!
武器を捨てて、投降しろ!!」
『ハッ、嫌だね!!
楽しい、殺し合いを楽しませろ!!』
ジム・クウェルからのマシンガンの乱射を躱して回り込む為に瞬時旋回加速をして、ジム・クウェルのコクピットへ向けて肉薄する。
しかし、放送室からの放送で攻撃を辞めざるを負えなかった。
『一夏!!
男なら弱点ばかり狙わないで、正面から堂々と戦え!!』
「ちぃぃぃ!?
あの馬鹿!!」
思わず、箒に舌打ちしながら攻撃を辞める。
『ハッ、丁度良い人質だな!!
おい、彼処に見える放送室を狙え!!』
敵パイロットが叫び、シャーロットと鍔迫り合いするジム・クウェルのマシンガンが放送室に銃口を向ける。
だが、ジム・クウェルのパイロットが放送室を人質にしたのも束の間、放送室内に教師達が決死の突入をして箒を捕縛し、倒れている生徒を救助しながら放送室から撤退したのだ。
まるで、巻紙先生が海兵隊仕込みの突入を教師達に教え込んだかの様に鮮やかな突入劇と撤退劇の2つだった。そして、先陣を切り放送室に突入して箒を殴り飛ばしていたのは、まさかの巻紙先生だった。
「まさか…鈴とアンに海兵隊教練を教えたのは巻紙先生か…」
知りたくも無い真実にゲンナリするが、ジム・クウェルは2機もいる。
「シャーロット!!
そいつとやり合っても、耐え切れるか!!」
『舐めないで隊長!!
アクシズ防衛戦で可愛い妹分達を殺した、こいつ等だけは私が落とす!!』
1機をシャーロットに任せジム・クウェルとモビルスーツ戦を再び展開し、俺は隊長機だろうジム・クウェルに斬艦刀を構えて突貫する。
『あっははは!!
その、動きは!?
やはり、てめぇは『ジオンの白い流星』のイチカ・オリムラ大尉か!?
ツイているぜ!!
しかも、この世界に居てあの、ジオンの大エースと殺り合えるなんてな!!
だから、死ねや!!』
ジム・クウェルから放たれるマシンガンの弾丸。
「殺らせるかよ!!」
襲い掛かるマシンガンの弾丸を斬艦刀でひたすら斬りながら肉薄する。
『何ッ!?そんな小さい機体でマシンガンの弾を斬るだと!?』
「アン、今だ!!」
だが、ピットにはジオンのエースとも言えるアンが蒼式J型を纏い、リミッターを解除したロングレンジレーザーライフルを構えて待機していた。
『任せなさい!!』
背中越しに隠していた迫り来るレーザーを瞬時加速で右に避け、ジム・クウェルに高出力のロングレンジレーザーライフルでコクピットへと狙撃する。
『ちぃ、焼きが回ったぜぇぇぇぇ!?』
直撃したジム・クウェルはコクピットを撃ち抜かれて機体は爆散したのだ。パイロットは叫びながら、レーザーに焼かれて即死だった。
『私の妹分の仇だぁぁぁ!!』
『ヤッ、ヤザン隊長ォォォ!?』
そして、シャーロットもジム・クウェルのビームサーベルを弾くと、リゲルグのビームサーベルで袈裟斬りをしてジム・クウェルを機体を真っ二つに切り裂き撃墜したのだ。
『きゃあ!?
やっ、ヤバッ!?
隊長、脱出するので回収をお願い!!』
「了解」
だが、シャーロットのリゲルグも酷い破損状況から活動限界だった様で、コクピット内部ではモニターが罅割れ、ショートした火花が散っていた。
リゲルグのコクピットハッチを開き、シャーロットは脱出して俺に抱き付く。
「きゃあ!!
隊長のエッチ。
でも、アン副隊長に趣旨返し♪」
懐かしいジオンのノーマルスーツを着るシャーロットだが、グラマスでピッチリしたノーマルスーツ越しに感じるのは彼女の巨大な胸だった。
仕方なく、アンと鈴を刺激しない為にお姫様抱っこしても、シャーロットはアンに見せ付ける為にわざと抱き付き、たわわな胸を当てる様に腕に抱き着いていたのだ。
リゲルグから離れると、コクピットから火が出て、ピットに戻る頃には推進剤が引火したのか爆発してリゲルグは残骸を撒き散らしながら四散したのだった。
そして、ピットには修羅の顔をした二人。
「「イチカぁぁ?」」
「あらあら」
二人の形相を見て、微笑むシャーロット。向こうの世界以来の戦いに火花が散っていた。
「鈴、シャーロットには気を付けなさい!!」
別の意味で警戒する二人はシャーロットを睨む。
だが、鈴の睨む位置はシャーロットのとある部位を見て叫ぶ。
「こ〜の、おっぱいお化けがァァァ!!」
叫び、鈴はシャーロットの胸を鷲掴みして引っ張る。
「引っ張っちゃ、イヤン♪」
「うるさい!!
おっぱいお化け!!」
確かに、シャーロットのたわわに実った胸を凝視するアンと鷲掴みして引き千切ろうと引っ張る鈴。
「アン、鈴はそこまでだ!!
一夏達には学園長室で話を聞かせて貰う」
千冬姉に言われ、その後、学園長に全ての経緯を説明する。
「……以上がクラス対抗戦で起きた、乱入の真相です」
「では、彼女は?」
「宇宙世紀の世界ではソロモン以後からのイチカの部下で、アンとイチカを奪い合った仲です」
「はぁ…認めたくないけど、本当です」
「そうですか。
織斑一夏君には本来なら殺人罪が適用されますが、3機による被害をアリーナ一つにした実績でお咎めは無しです。アンさんも同様です。
ですが、篠ノ之箒さんは庇いようがありません」
「ただ、私は一夏が卑怯な戦い方をするから!!」
「黙りなさい小娘。
戦闘に綺麗、汚いは存在しない。
篠ノ之箒の罰ですが、本来なら殺人未遂で退学の上で少年院送りですが、反省房に2ヶ月の謹慎と反省文を500枚を言い渡します」
箒は山田先生により反省房へと連行されたのだった。
そして、箒が連行された後に話の証拠映像を見せる為にシャーロットは、ノーマルスーツのポシェットから一つのUSBメモリーで映像を再生したのだ。
そう、俺達に見せたのは、戦後に起きたティターンズによるジオン狩りによる虐殺事件『30バンチ事件』の映像だった。
これを撮影したのは、30バンチを実体調査したシャア大佐だった。
だが、驚いた事にシャア大佐は妻帯者になっていた。
その相手とは、ギレン閣下はサイド3で戦犯として捕まり、代わりにドズル閣下の愛娘のミネバ・ザビが総統を務めるが幼く、アクシズの現摂政を勤めるハマーン・カーンが摂政に就任して、シャア大佐の妻となっていた。
戦訓で、ミネバ・ザビ閣下の教育を民を想いやる優しい女王にする点でハマーンと対立したが、傲慢な女王は嫌われる事をハマーンが理解してシャア大佐とミネバ・ザビ閣下を教育したらしい。
シャア大佐も摂政になったが、現在は現場に居る事を好みアクシズから調査を理由に地球圏へと向かい、反地球連邦組織のエゥーゴに協力する為に出向中らしいと、シャーロットが話していた。
そして、映像を観て、顔を真っ青にする生徒会長の更識楯無会長と山田先生。
仕方ない。
俺でも、気分が悪くなる。ミイラ化した赤ん坊を抱く、ミイラ化した母親やそこら中にミイラ化した遺体や噴水に浮かぶ白骨化した30バンチコロニーの住人達。
「ティターンズにはロクなのいないな」
「あたしも、イチカに同じ意見ね」
「うん、これはまだ、中国のあたしの事件より酷いわ」
「まだ、30バンチは見境なく虐殺したからマシよ。
パパが潜入調査したコロニーはサイド3の出身ってだけで、逮捕されて拷問されて亡くなった人もいたわ」
「って、親父さん生きてんのかよ…」
「勿論、パパから伝言。
娘の花嫁衣装を早く見せろってさ」
「「「はっ!?」」」
シャーロットから落とされた爆弾に一斉に固まる三人とニヤニヤしながら『爆ぜろ、ハーレム野郎!!』と達筆な文字を表した扇子を持つ楯無会長、義理の妹が増えるのかと頭を抱える千冬姉のカオス化した学園長室だった。
そして、第一アリーナのモビルスーツの残骸はホワイトラビット社が全て回収して、束社長自ら解析するらしい。
シャーロットの処遇はアンと鈴に無理矢理に部屋から拉致して来た簪を交えての女子会ならぬ、妻達による話し合いの末、鈴から一番を奪わない条件の元でシャーロットがアンと鈴に合意してシャーロットが妻として加わり、簪は友人が良いと断ったらしい。
無論、シャーロットは同い年である為、ホワイトラビット社のテストパイロットに就職して、学年別トーナメント前には専用機を持参して学園に編入が決まったのだった。