アクシズの内部にある、とあるバーに一人の若い女性はロックのコニャックを飲みながら想い更けるのは、ア・バオア・クー決戦で行方不明となった一人の少年の事だった。
そして、シャア大佐に拾われ、通商破壊作戦から活躍したイチカ・オリムラをア・バオア・クーまで従軍記者として追い駆けた一人の女性記者がバーに入り、お酒を飲む女性に話し掛ける。
「私はフォン・ブラウン市の記者でカナデと言います。すいませんが、シーマ准将ですか?」
「おや、あたしの事かい?
あたしは、一つの艦隊司令を勤めるシーマ・ガラハウ准将さね」
「では、この写真に見覚えはありますか?」
一枚の写真はア・バオア・クーにて模擬戦後に撮られた集合写真。
確かに、あたしやジョニー少佐にシャア大佐。
そして、坊やと珍竹林娘の率いたオリムラ中隊と撮った写真だった。
「あたしが写っているから間違いないさね。
さて、あたしが酔って気分が良いついでに、話をしようじゃないさね」
「えぇ、是非に!!」
「あたしには一時、燻っていた時が在ったさ」
そう、坊やに出合うまではジオンの汚れ仕事ばかりで嫌になっていた。そして、ソロモンの防衛面での戦力不足からあたしの艦隊が派遣されたのさ。
そして、若かったあたしは除け者扱いされて、バーでヤケ酒三昧だった。酒に潰れた時に介抱してくれたのが、ソロモンに新たに転属して来た坊やと珍竹林娘の二人だった。
「そうだったんですね」
「恥ずかしい話さね。
酒とはさね、酔った勢いが怖いさね…」
今でも、あたしは忘れない。
酔った勢いで、坊やに抱き付いて大泣きしながら、汚れ仕事での愚痴を全て話してしまった。
その話が、イチカからドズル閣下の耳に入り、あたしの名誉と地位が回復したのだ。
ただ、坊やの入浴中にあたしが突入して、お風呂の中で坊やを背中から抱き締めて可愛がったのは懐かしいし、珍竹林娘が帰るまでにイチカをお風呂場にて美味しく頂いたのは二人の秘密にしている。
もし、あたしがブリティッシュ作戦の真相を坊やに話して無ければ、腐った人生をしながら野垂れ死んだと言っても過言でもなかった。
「それで、坊やのお陰であたしは立ち直れたさ」
「そうだったんですね」
あたしが立ち直る為に坊やにデカい借りを作り、返すチャンスだったさね。
だけど、坊やはあの珍竹林娘と一緒にア・バオア・クー決戦では白い悪魔によって部隊が壊滅し、たった2機で連邦の主力艦隊を護るモビルスーツ隊に特攻して行方不明となったさね。
「でも、イチカ大尉とアン大尉の総撃墜数は凄い数でしたね」
「確かに、あたしから言わせたらシャア大佐やジョニー・ライデン少佐並みの化け物に短期間で育ったパイロットは見た事がないさね。でもね、あたしは思うのさ。坊やと珍竹林娘が生きていると信じてるのさ」
「何故ですか?
ア・バオア・クー海戦からは既に二年近いです。
それに、お二人の専用のゲルググは無人だったと…はっ!?
まさか、神隠しとかの非科学的な事でも信じてるのですか?」
「おや、記者は気付いたかい?」
確かに停戦中を理由に坊や達を探す救助隊を、あたしの部隊から大量に出した。
「確かに、見つかったのは二人の専用機だった大破した無人のゲルググだったさね…
だがね、二人の機体の周りが余りにも綺麗過ぎたのさね。
まるで、何かに吸い込まれたかの様にさね。
だから、生きていると思うさね」
無論、大破した機体はあたしの部隊が回収した。
もし、あの二人が戻って来た時の専用機としてアクシズの工廠に預け、二人の専用機のリゲルグ改として改造して保存されている。
「別の話ですが、オリムラ中隊に唯一の生き残りが居ると噂で聴きましたが?」
「一人だけ居るさね。彼女の父親は機密扱いだから言えないが、とある特殊部隊の隊長の一人娘さね。
それも、とびっきりの跳ねっ返り娘さね」
「もしかして、問題児ばかり集まる教導大隊のシャーロット少佐ですか?」
「そうさねぇ」
だけど、ア・バオア・クーからの撤退命令に従う時に、サイクロプス隊の隊長の馬鹿娘で坊やの部隊に居たシャーロット中尉が旧ザクに複数のジオン兵と一緒に掴まり、ワイヤーに引かれながら脱出していた所を拾った。
無論、馬鹿娘には隊長の坊やと珍竹林娘が行方不明なのを話したさ。
馬鹿娘が、その場で座り込んでいつまでも泣きじゃくる姿は、あたしには胸が痛かった。
「でもさね、シャア大佐とハマーン様の出来事は傑作だったさね…」
それから、アクシズに渡り最初に再会したのは、お互いに頭にタンコブを作り仮面をしていないシャア大佐とハマーン様に中央付近が凹んだフライパンを握るミネバ様だった。
シャア大佐に聴いたら、坊やの影響を強く受けたミネバ様はハマーン様とシャア大佐がミネバ様の教育問題で二人で喧嘩した所を観てしまい、フライパンで二人の頭を『喧嘩はめっ』と殴ったらしい。
当時、3歳児だったミネバ様はイチカの手作りのおやつが大好きで、将来はお嫁さんになるとドズル閣下に言って泣かせた程だった。
ミネバ様がアクシズへ逃げる際も、二人を連れて行く気だったが、二人の部隊が戦うのはソロモンでの激戦区で二人が撤退するのは不可能に近かったらしい。
ミネバ様が二人を叱ってからは、二人は寄りを戻したらしくて最近、結婚をした。
「イチカ大尉に影響を受けた方が多いんですね」
確かに、影響を受けたのはあたしだけでなく、ザビ家の末男を除いた三人の兄弟達の仲違いも修復していたし、坊やがミネバ様からの信頼を得てドズル閣下に進言した事でゲルググとリックドムⅡなどの製造が早まり、ア・バオア・クー決戦では大損耗を回避してアクシズにベテランパイロットが多くが渡っていた。
その中には、大量のエースパイロットが存在するキマイラ隊やあたしの艦隊とデラーズ閣下の艦隊までもが、殆ど生き残った状態で終戦を迎えてアクシズに渡っている。
先週のアクシズ攻防では、シャーロットがリゲルグに乗ったままティターンズの小隊と一緒に行方不明にはなったが、戦力を失わずに乗り切っていたのだった。
そして、ハマーン様からは、地球圏への足掛かりにルナツー攻略戦をキマイラと隊共に行い、総指揮をあたしに任されている。
無論、交換条件にあたしの艦隊とキマイラ隊のモビルスーツ隊には、最新鋭のリゲルグとゲルググ改を最優先で配備する事で了承したのだ。
「あたしも…」
何故か、ルナツーでイチカ達に逢えそうな予感に、あたしはニヤリと笑いコニャックを飲み干したのだった。