一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

17 / 82
黒いガンダム

 

 

 「まさか、アイツかよ!!」

 

 イチカの叫びにあたしは、あの黒いガンダムを見て顔が真っ青になる。

 

 忘れもしない、ア・バオア・クーの戦い。

 

 あたし達のオリムラ中隊には、あたしを含めて3人の女性パイロットがいた。

 

 一人は、あたしと同じイチカの妻のシャーロット。

 

 ア・バオア・クー決戦時には酷い生理痛で出撃が出来なくて生き延びた一人で、あたしとイチカを取り合ったライバルでもあり親友だった。彼女はあたし達の部隊に配属前はアジア方面侵攻大隊ではMS-07グフを駆り、シンガポール基地を拠点にして暴れていたパイロットで、ア・バオア・クー決戦後はアクシズに亡命して教導大隊で教官をしていたが、アクシズ防衛戦で黒い穴に吸い込まれて先行生産型のリゲルグと一緒にイチカの世界に来たのだ。

 

 そして、もう一人はミチル・タチバナ。

 

 あたし達の部隊を纏めてくれた優しいお姉さんだったが、ア・バオア・クー決戦ではガンダムにコクピットを撃ち抜かれて即死している。配属前は、シャーロットと同じアジア方面侵攻大隊所属で上海の宇宙ステーションの防衛任務でMS-06Kザクキャノンを愛機にしていた。

 

 無論、ソロモンに上がってからオリムラ中隊へと転属となり、ア・バオア・クーではMS-14Cゲルググキャノンを受領する予定がキマイラ隊を優先されて受領が出来なかった。

 

 あたしは二人とは、イチカに恋する乙女であり、イチカを巡り争うライバルでもあり、姉妹の様に部隊で過ごした仲間だった。

 

 だから、姉の様に慕いライバルだったミチルを殺したガンダムが憎い。

 

 それは、シャーロットも同じだろう。

 

 シャーロットも、ジャイアントバズーカを両手に持ち、イチカの援護に回る。

 

 あたしは、蒼式をJ型に換装して、あの黒いガンダムにロングレンジレーザーライフルで狙いを付けるが、あたしの恐怖なのかが判らないけど、息が荒く手先が振るえて照準が全く定まらなかった。

 

 「どうしてよ!!

 

 どうして、こんな時に限って、あたしは役立たずなのよ!!」 

 

 叫ぶけど、動かなくなっていく、あたしの蒼式。

 

 そして、あの黒いガンダムがアムロの動きなら、動けないあたしを狙うのは確実だった。

 

 ビュン ビュン ビュン

 

 黒いガンダムからビームライフルで放たれた、三条のビームがあたしに迫る。

 

 「くっ、ビーム兵器まで!?」

 

 ロングレンジレーザーライフルを放棄して、辛うじて右にスラスターを吹かして躱すが、放棄したロングレンジレーザーライフルは撃ち抜かれ、更には左肩のアーマーにビームがかする。

 

 「きゃあ!?

 

 アッ、アーマーが融解する威力だなんて!?」

 

 それは、ア・バオア・クーの時と同じ、当たれば死を予感する威力だった。そう、あたしは動きが鈍くなった的でしか無かったのだ。

 

 「嫌っ!?

 

 来ないで!!」

 

 バルカンを放ち逃げ道を牽制しながら、ビームサーベルを構えた黒いガンダムは瞬時加速を合わせた加速力であたしの駆る蒼式を腹部に目掛けて斬り裂こうとしたのだった。

 

 

 

 液状に溶けて変化した、シュヴァルツェア・レーゲンは、あのガンダムだった。

 

 「まさか、アイツかよ!!」

 

 俺は忘れもしない。

 

 アムロの駆るガンダムにア・バオア・クーでは見逃された事実と、大切な家族とも言えた部隊の仲間を殺された事実の二つ重なり、フラッシュバックし、怒りさえ込み上げてくる。

 

 そして、黒いガンダムが狙ったのはアンだった。

 

 普通なら、アンは援護射撃に徹するが、今回ばかりは顔を真っ青にして震えながら、ロングレンジレーザーライフルを構えて狙撃大勢をしていたが、ガンダムが相手なら狙撃など無意味な事に気付かずに、アンらしく無いあからさまなミスをしている。

 

 「まさか、ガンダム恐怖症か!?」

 

 ジオン軍内部では、ガンダム恐怖症は有名な話だった。

 

 ガンダムと戦い、生き残った兵士が発症するPTSDだとも言われ、特に地上戦線のオデッサから宇宙へと撤退し、ア・バオア・クーまで帰還した多数の兵士に顕著に見られていた。無論、ソロモンやア・バオア・クーでの戦いでもガンダムと戦ったパイロット達にも言えた。

 

 アンも、その中の一人だと言えた。

 

 ア・バオア・クーでは突撃して来たガンダムにミチルを殺され、逆上してビームサーベルで斬り掛かるが、逆に返り討ちに遭いガンダムにコクピットをビームサーベルで斬られ掛けられていた。

 

 完全に斬られる前に、俺がガンダムにタックルしてガンダムを突き放したからアンは斬られなかったが、コクピットハッチの一部が融解してコクピットの中のアンが丸見えだった記憶がある。

 

 恐怖するアンに、黒いガンダムはビームライフルを三連射し、放棄したロングレンジレーザーライフルは破壊され、アンの蒼式の肩のアーマーにかすりアーマーの一部が融解した事に気付く。

 

 『嫌っ!?

 

 来ないで!!』

 

 アンが恐慌状態に陥り、IS特有の精神異常を感知して蒼式の動きが完全に鈍くなっていた。無論、最悪は強制解除だって有り得る状況だった。

 

 そして、逃げようとするアンにヘッドバルカンを撃ち逃げ道を塞ぎながら牽制し、ビームサーベルを抜き瞬時加速しながら斬り裂こうと迫っていたのだ。

 

 だが、俺はアンを見捨てないし、見殺しには絶対にしない。支援射撃に徹しようとジャイアントバズーカを構えた翡翠を駆るシャーロットに気付く。

 

 「シャーロット、俺が奴に牽制とアンから引き離す!!

 

 アンを回収して、撤退を命じる!!」

 

 『イッ、イチカ隊長!?

 

 隊長一人じゃ無茶よ!!』

 

 シャーロットは慌てて居たのか、俺を部隊にいた頃の様に隊長と呼び命令を拒否しようとする。

 

 「アンを任せる!!

 

 これは、隊長命令だ!!」

 

 『くっ!?』

 

 隊長命令だときつく言い、シャーロットも唇を噛み締めながら渋々従い、俺は二重瞬時加速でアンにビームサーベルで斬り掛かろうとする黒いガンダムに蹴りを入れるべく、アンの名前を叫び加速したのだ。

 

 「アァァァァァァン!!」

 

 『ひっくぅ…イチカ?』

 

 ガンダムを蹴り飛ばし、アンから引き離す事には成功する。しかし、ガンダムもただで引き離されなかった。

 

 そう、リミッターカットしたレーザーライフルを持つ、左腕の手首から先が斬り裂かれたのだ。

 

 「グッアァ!?」

 

 『イチカ!?』

 

 しかし、この状況にデジャヴさえ感じる。

 

 アンは俺に気付いたが、白式の無くなった左腕の手首を見て完全に泣いていた。

 

 「イチカのバカバカバカ!!」

 

 「でも、アンが無事で良かった」

 

 「本当にバァァァカァァァ!!

 

 ウワァァァァ」

 

 

 黒いガンダムを蹴り飛ばし、アンから引き離す事には成功したが、ア・バオア・クーの時の様にとは少し違うが、レーザーライフルを握る左手首から先を黒いガンダムの振り下ろしたビームサーベルにより斬り落とされたのだ。

 

 「シャーロット、アンを頼んだ」

 

 「はっ、隊長。

 

 ご武運を!!」

 

 シャーロットにアンを引き渡すと、シャーロットはジオン式敬礼をしてピットへと引き返したのだ。

 

 無論、ピットには鈴やセシリア達はスコールさんからの避難命令により避難していた。

 

 「さあ、2ラウンド目を始めるか!!」

 

 黒いガンダムは体制を整え、ビームライフルを乱射しながら、ビームサーベルを構えて俺に突撃して来る。

 

 「チィ、残った武装までも、あの時と同じかよ」

 

 ツインレーザーナギナタを展開し、サーベルモードにして構える。無論、通常出力ではビームサーベルは受け切れないのは判っていたから、レーザーサーベルとして使用してリミッターを解除し出力を全開にする。

 

 無論、リミッターの解除をする以上はレーザーサーベルの発生装置は、余りの熱量に耐え切れずにジワジワと融解を始める。

 

 「持って3分か…」

 

 『ガァァァ!!』

 

 「チィィィィ!!」

 

 突っ込んで来た、黒いガンダムのビームサーベルを受け止めながら、右手に持つビームライフルへと蹴りを入れてビームライフルを蹴り飛ばす。

 

 「ちぃ、洒落臭い!!」

 

 バルカンまでも乱射して俺に襲い掛かり、2合3合とビームサーベルとレーザーサーベルで斬り合う。

 

 無論、乱射されたバルカンは身体を逸して躱したが、無くした左手首側の肩のアーマーに被弾して、アーマーがズタボロに代わる。

 

 「バルカンまでも、高威力かよ!?

 

 クソが、消し飛べ!!」

 

 逆に、お釣りだとガンダムの頭を蹴り、ツインアンテナをへし折りながら突き放し、手首から先は無いが無事だった左腕の三連ロケットランチャーを頭に命中させて、ガンダムの頭が消し飛んだのだ。

 

 「だが、やる!?」

 

 だが、頭を消し飛ばされても動きは止まらず、逆にビームサーベルをもう一本抜き、二刀流で斬り掛かる。

 

 「ちぃ、こんな時に!?」

 

 ギッギギギギギ…バッキィン

 

 連続した回避運動と斬り合う内に白式の反応速度が俺の反応速度に付いて行けなくなり、直したばかりの左膝の関節が悲鳴を上げ始めたのだ。 

 

 『イチカ、こんなに早く動かれたら、関節が持たない!!』

 

 白星からの悲鳴だった。

 

 だが、もっと早く動かなければ、斬られるのは俺だった。

 

 「!?

 

 見える!?」

 

 何故か、スローモーションで見えたビジョンに反応して咄嗟に右に回避すれば、ビームが横切ったのだ。

 

 そのビームは、蹴り飛ばしたビームライフルを拾い、撃って来たビームだった。

 

 「ビームライフルを拾いやがった!?」

 

 レーザーサーベルも、もう少しで限界であるのは判っている。なら、突っ込んで斬るしか無い。

 

「ウォォォ!!」

 

 バレルロールを描き、瞬時旋回加速して黒いガンダムに旋回して裏から肉迫する。しかし、関節が限界を超えたのだ。

 

 バッキィ

 

 ガッシャァァァァン 

 

 既に、瞬時加速にすら耐え切れずに左膝の関節が壊れて膝関節からの下の脚を失い、落ちた左脚は旋回中だった為に、そのままアリーナの客席へと飛んで行き、客席を数席を破壊して失った脚は止まったのだ。

 

 「脚を失っただけだ!!

 

 そこぉ、貰った!!」

 

 無論、姿勢制御は難しくなったが、不意を付けた為に、黒いガンダムの右腕を斬り落とす事には成功する。

 

 「まだだ!!」

 

 追撃は終わらず、黒いガンダムが後ろを振り向く前にバックパックを斬り破壊すると、グラウンドへと落下したのだ。

 

 ズッゥゥゥン

 

 「ちぃ、レーザーサーベルが!?」

 

 この時には、レーザーサーベルは限界を超えて発生装置は融解して使い物に成らなくなりコールしたのは、最も信頼する斬艦刀だった。

 

 アリーナのグラウンドには白と黒が対峙して、お互いが瞬時加速で加速する。そして、2機が交差したのだ。

 

「はぁァァァ!!」

 

 ザッシュ

 

 「グッアァ!?」

 

 すれ違い座間に空中に舞うのは斬艦刀を握ったままの右腕だった。

 

 俺の右腕が肘から下が斬られて失い腕の斬り口から鮮血が吹き出るが、腕が斬られるよりも先に黒いガンダムを斬り裂き、ガンダムも同時に俺の腕を斬り落としたが、シールドエネルギーを失い液状化すると同じくしてラウラが吐き出されて黒いガンダムは消えて待機状態のレーゲンに戻ったのだった。

 

 俺は大量出血から気を失い本社へと緊急搬送されたが、束さんが発明した『人体治す君』と言う、ナノマシン医療再生装置に投げ込まれ、斬られた腕を綺麗に再生して治ったが、二週間の入院となったのだった。

 

 

 

 「全く、いっくんは無茶するんだから」

 

 病室で眠る、いっくんの可愛い寝顔を堪能しながら頭を撫でると、束さんはいっくんの白式を直すべく本社の整備室に向かう。

 

 整備室に鎮座するのは大破した白式とシャーロットちゃんが乗っていたリゲルグの残骸。

 

 右脚は膝関節から下を失い両腕までも欠損して、損傷判定はレベルEだった。白式は修理不能の判定だった。

 

 パソコンのコンソールを開き、図面を広げると1機のモビルスーツの図面が表示されていた。無論、いっくんが言っていた連邦軍の技術であるマグネットコーティングの細かな仕様が記載された内容だった。

 

 「シャア・アズナブル。

 

 いっくんが思っている以上に食えない人物だよ…」

 

 この図面は、シャーロットちゃんが乗っていたリゲルグと言うモビルスーツのコクピットを回収した際に、残っていたブラックボックス内にデータが保存されてて解析したら出て来たのが図面などだった。

 

 そして、もう一つが束さん的には使いたくない、悪魔のシステムのサイコミュシステムのデータだった。

 

 「まさか、シャア・アズナブルは、いっくんがニュータイプに覚醒するのが判って入れていた?」

 

 しかし、第三アリーナの戦闘を見て納得するしか無く、シャア・アズナブルへの疑問が膨らむばかりにイライラが募り頭をワシャワシャと掻き毟る。

 

 「束様、首相との会食のお時間ですが?」

 

 整備室に来たのは秘書で愛娘のクーちゃんことクロエだった。だが、いっくんの白式の惨状を見て、即キャンセルをクーちゃんに言い渡す。

 

 「クーちゃん、キャンセルして。

 

 束さん、急な仕事になったから」

 

 「解りました。

 

 首相にはキャンセルとお伝えします」

 

 クーちゃんが整備室から出るのを確認してからビームサーベルから得た、エネルギーCAPの技術を最初から搭載した機体設計だとも、今更ながら気付く。

 

 「あぁ、もう!!

 

 本当、食えないよ!!

 

 シャア・アズナブルは!!」

 

 叫び、いっくんの新しい専用機の設計を始め、シャア・アズナブルから贈られた図面と束さんの叡智を合わせた専用機になるに違い無かった。

 

 

 

 そして、コンソールに浮かんだ贈られた図面の端には、ニナ・パープルントンという設計者の名前とAE社のマークが入り、元がガンダムタイプだったと知るのは、いっくんが目覚めた時だとは束さんも知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。