ソロモンの敗北から、俺達はシャア大佐率いる部隊へと吸収された。
ザンジバルはア・バオア・クーの軍港へと入りメンテナンスを受けている。
無論、俺達の機体もア・バオア・クーの工廠へと運ばれて修理を兼ねた小改造を受けていた。
「ねぇ、あたしとイチカのゲルググだけど、脚部に大型スラスターが追加になったみたいだけど、扱い切れるかな?」
「加速力はゲルググB型の三割増しか…」
「そんなになの…」
キャットウォークから改造中のゲルググを眺める二人は改造された高機動型ゲルググカスタムに扱い切れるかと一抹の不安が過る。
そして、俺達の機体の隣には巨大な完成したパーフェクトジオングが鎮座していた。
「あれ、シャア大佐の専用の機体だろ?」
「ララァ大尉が戦死しなければ乗る機体だった…」
「流石に全身にメガ粒子砲装備はな…」
「エネルギー切れが怖いかも…」
二人揃って、パーフェクトジオングには辛口の感想を吐いたのだった。
ただ、パーフェクトジオングを整備する整備兵に聞こえなかったのは二人には幸せかも知れない。
無論、俺のゲルググもビームライフルは下ろし、実弾系の武装を追加したのだ。ゲルググM型に搭載された腕部の110ミリ速射砲の追加とアンと同じく90ミリマシンガンへと変更したのだ。
そして、腰のアーマーにはビームサーベル用のラックの追加とマシンガン用のマガジンラックを追加して部隊で武装の共有が出来る様にしたのだ。
他の隊員だが、損傷の酷さからリック・ドムからシーマ・ガハラウ大佐率いるシーマ艦隊へと配備予定だったMS-14Mゲルググマリーネが配備された。
本来、受領する予定の機体はキマイラ隊に配備されたゲルググタイプの30機を除き、俺達の部隊にはMS-14Aゲルググが4機とMS-09R-2リックドムⅡが8機が配備される予定だったが、ア・バオア・クーの防衛任務とゲルググマリーネを受領しに来たシーマ大佐から気に入られ、ゲルググマリーネ12機を受領予定の機体と交換条件に俺達の部隊に譲られたのだ。
「坊やとお嬢ちゃんには頑張って貰いたいからねぇ、海兵隊からのプレゼントさね」
「「シーマ大佐!?」」
「おやおや、シャア大佐のパーフェクトジオングに目移りしてたかい?
辞めとくんさね。
アレは一般人が扱えるしろもんじゃないさね」
思わずキャットウォークに現れ、扇子で口元を隠しながら笑うシーマ大佐に敬礼する。かなり年上に見えるが千冬姉と同い年らしい。
「それにしても、坊やとお嬢ちゃんのゲルググ、無茶な改造さね。
高機動パックをM型のバックパックに変えれば機動性を落とさずにプロペラントタンクが追加出来るさね。
なんなら、B型パックと下ろしたビームライフルをあたしらに譲るなら、あたしらの海兵隊仕様のM型の一般仕様のバックパックを融通してやるさね?」
確かに有り難い提案だった。
「アン、どうする?」
「イチカ、良いかも」
俺達のゲルググのB型バックパックとビームライフルをシーマ大佐に譲り、一般仕様のM型バックパックを交換したのだ。
改造を終えた高機動型ゲルググカスタムで慣熟訓練をしながら、部隊の慣熟訓練中のゲルググマリーネとも模擬戦をして部下達を鍛えたのだ。
だが、模擬戦は終わらなかった。
「さて、君達の力を見せて貰おうか?」
「「シャア大佐!?」」
修理を終えたシャア大佐専用のゲルググS型を駆り、俺達二人の前に現れたのだ。
「あたしも混ざるさね」
「「シーマ大佐まで!?」」
シーマ大佐も受領したばかりのMS-14M-FSシーマ大佐専用ゲルググマリーネカスタムを駆り現れる。
何か、嫌なフラグが…
「何、凄く楽しそうじゃん!!」
「「ジョニー少佐!?」」
補給作業中のキマイラ隊からはジョニー・ライデン少佐がMS-14Bジョニー・ライデン専用高機動型ゲルググを駆り乱入したのだ。
「なぁ、コレは流石に勝てる気がしねぇ…」
「あははは…」
アンは死んだ魚の眼になりながら乾いた笑いしか出ず、俺は虚ろな目に成りながら三人の大エースが駆るゲルググに挑んだのだ。
「イチカ、逃げるんじゃあ無いよ!!」
「逃げるしか無いから!!」
シーマ大佐のゲルググマリーネカスタムの装備するペイント弾にしたビームマシンガンに乱射されながら追われたり
「アンくんの射撃は正直だな。
だから、そうそう当たるもんでも無い」
「嘘、ソレを躱す!?」
アンはシャア大佐に個人レッスンと言う名の弄ばれる始末だった。
結局は大エース同士のガチのサバイバル戦となり俺とアンの高機動型ゲルググカスタムは三人の大エースからのペイント弾に被弾しまくりペイント塗れになったのは言うまでもない。
最終的にジョニー・ライデン少佐と一騎打ちとなり、一人勝ちしたのはシャア大佐だった。
シャア大佐もニュータイプなのは知っていたが、あそこまで強いシャア大佐に男としての憧れだったしアンは射撃術と回避技術に眼を輝かせていた。
そして、数日後に連邦軍の大艦隊がせまり、俺達の中隊とシャア大佐はSフィールドに配置されてア・バオア・クー防衛戦の始まりだった。
Nフィールドに配備されのはキマイラ隊にシーマ艦隊、デラーズ艦隊の三つが展開。
ア・バオア・クー要塞には学徒兵が使用するMS-06F-2ザクF2やMS-06Fzザク改の他に地上から撤退して来たベテランパイロットが駆るMS-14Aゲルググが配備され、キシリア閣下はドロスにて指揮を取っていたのだ。ただ、ギレン閣下はサイド3にて増援部隊の編成でア・バオア・クーには居ない。
連邦軍の大艦隊からの飛び交うビームやミサイル。
味方敵が入り交じる戦場。
命が散る花火の様にア・バオア・クーの宇宙(そら)は綺麗だった。
「必ず、ニ機一組で当たれ!!」
「イチカ!!
連邦軍が来たわ!!」
押し寄せるのは連邦軍のモビルスーツ隊の数の暴力。
「落ちろ!!」
マシンガンをジムに乱射して蜂の巣にして、やはりボールは蹴り飛ばして撃破する。
「邪魔よ!!」
アンはビームサーベルを抜きジムを切り裂く。
一年戦争でア・バオア・クー防衛戦の激戦区は、このSフィードだと後の歴史家達が語る程の大激戦だった。
何故なら、ア・バオア・クーに取り付く為の連邦軍の挺身艦隊が猛攻を仕掛けたに過ぎない。
その中には、連邦軍の第13独立部隊やルナ2に配備された筈のRX-78-FAフルアーマーガンダムに加え、サイド6で試験中の筈のRX-78-NT1ガンダムアレックスなどが集中配備されたからである。
だが、既に俺とアンでフルアーマーガンダムとガンダムアレックスはパイロットが未熟だったのか判らないがニ機とも撃墜していた。
しかし、連邦軍の猛攻は木馬と言われたホワイトベースにより出撃した機体により均衡が崩れたのだ。
そう、RX-78-3ガンダムマグネットコーティング仕様を駆るアムロ・レイの突入により均衡が崩れたのだ。
最初の部隊の犠牲者は部隊のムードメーカーだったジャックだった。
「たっ、隊長!?
グッワァァァァ!?」
「ジャック!!」
ジャックのゲルググマリーネは一筋のビームがコクピットに直撃して爆散する。
「ガンダムか!?」
俺達の中隊に現れたのは、連邦軍の第一波の3機目となるガンダムだった。
「嫌ァァァ!?」
「ミチル!?」
アンと同じく女性隊員のミチルのゲルググマリーネがコクピットを撃ち抜かれて爆散する。
「やらせるかよ!!」
「イチカ‼」
スラスターを全開にして、斬艦刀を構えてガンダムに突っ込む。アンもマシンガンを乱射しながら援護射撃をする。
しかし、アムロ・レイが駆るガンダムにはカスリもしない。部隊のゲルググマリーネがガンダムを囲いながら襲うが犠牲が増えるばかりだった。
「甘い!!」
「隊長はやrギャァァ!?」
「マックス‼」
他の隊員達が援護射撃をするがゲルググマリーネはガンダムからのビームライフルのビームが直撃して次々と仲間達が宇宙に散っていく。
そして、俺達二人以外は壊滅したのだ。
だが、二人で連携を組みながら、俺は斬艦刀で再び斬りかかるがガンダムのビームサーベルで受け止められてしまった。
「糞が!!」
「その声はイチカか!?」
「アムロ・レイ!?」
鍔迫り合いとなり、ガンダムから聞こえたパイロットの声はリゾートコロニーで出会ったアムロ・レイだった。
「あんたが、ララァを!!」
「アン、よせ!!」
「邪魔だ!!」
「あっ、しまった!?」
「アァァァァァン!!」
「イチカ!?」
「くっ、やらせるか!!」
「ぐぁ!?」
ララァ大尉を殺された事の仇討ちとアンがビームサーベルで鍔迫り合い中の俺の高機動型ゲルググカスタムとアムロのガンダムの間に割り込みに斬り掛かるが、もう片方のビームサーベルを抜きアンのゲルググをカウンターでコクピットを狙われ切り裂かれそうになる。
俺はスラスターを全開にガンダムに体当たりをしてビームサーベルを逸したのだが、俺のゲルググカスタムの左腕は切り裂かれたのだ。
そして、アムロはこれを離脱のチャンスと見て離脱したのだ。
「糞!!
残ったのは俺とアンだけかよ!!」
「大丈夫。
あたしは絶対に死なないから」
アムロが駆るガンダム一機に俺達のベテラン揃いのオリムラ中隊は俺とアンを残して壊滅したのだ。
だが、アムロが駆るガンダムは既にSフィールドを抜けてシャア大佐のパーフェクトジオングと交戦していた。
次々に手負いの俺達に迫る連邦軍のモビルスーツ隊の猛攻は激化の一途を辿る。
「さっさと落ちろ!!」
「ぐぁ!?ママァァァァ!?」
「連邦も学徒兵かよ!!」
まだ、俺のゲルググは左腕を失っただけだから戦える。罅割れて来た斬艦刀でジムを縦に切り裂き、連邦のパイロットが叫ぶのは幼い少年兵ばかりだ。
「いい加減に!!」
アンも片手にマシンガンを持ちながらビームサーベルでジムキャノンのコクピットを突き刺し撃墜。
アムロが駆るガンダムに抜けられてから、俺達二人は既に軽く30機近くのジムとボールを撃墜していた。
補給手段はガンダムに落とされた仲間の残骸からマガジンや予備のプロペラントタンクなどを回収して近くの岩礁に隠し、それで補給しながら連邦軍のモビルスーツ隊を屠ったのだ。
だが、ア・バオア・クーに戻るにしても、近くの艦隊に補給に行くにしても敵味方入り乱れた戦場では向かう事も勿論だが逃げ場など既に無い。
「ジオンの白き流星‼
貰った!!」
「ちっ!?」
「ジオンの蒼い悪魔!!
貰った!!」
「誰が悪魔よ!!」
第一波はアムロ以外は抜けられずに撃破されたが、第二波の連邦軍のモビルスーツ隊の猛攻はベテランばかりで苦戦を強いられた。そして、灰色に染めた5機編成のジムいや4機のジム・コマンドとジムスナイパーカスタムが襲い掛かる。
先程の第一波のジムとは全く動きが違う。
「アン、こいつ等ベテランだ!!」
「あぁ、もう!!
いい加減に落ちなさいよ!!」
「しっ、姿勢制御用スラスターじゃない!?
グアァァァ!?」
「まず、1機!!」
アンが腕部の110ミリ速射砲を乱射して、ジム・コマンドを撃墜する。
「せりゃぁぁぁ!!」
「ゴッフッ!?」
指揮官機のジムスナイパーカスタムのコクピット付近を斬艦刀で横殴りで切り裂く。パイロットは腹から下をコクピット毎斬られ大量の吐血をしてノーマルスーツのヘルメットのバイザーを血に染めて即死する。
指揮官機を失うが、ベテラン達は士気が衰えない。
「囲え!!」
ジム・コマンド3機がビームスプレーガンを乱射しながら牽制し俺達を囲う。
「邪魔なんだよ!!」
「メインカメラが!?」
「落ちろ!!」
斬艦刀をジム・コマンドに投げ付けると頭部に突き刺さり、腰のアーマーにマウントしたマシンガンを抜きゼロ距離でジム・コマンドのコクピットハッチにガシャリと付けてマシンガンを乱射する。
「ギャァァ!?」
パイロットはコクピットを撃ち抜かれて、マシンガンの弾丸が襲いパイロットはバラバラになりながら絶命する。
「イチカをやらせないわよ!!」
ジム・コマンドがビームサーベルを抜き、背中から斬りかかるがアンがマシンガンでジム・コマンドのバックパックを撃ち抜き燃料に引火したのか四散する。
残りのジム・コマンドを撃破し、弾薬をほぼ使い切り満身創痍の俺達二人は暗礁へと補給に戻る。
だが、暗礁に隠した弾薬は底が尽き無くなっていた。
俺の高機動型ゲルググカスタムの残弾はマシンガンは半分で予備マガジンは無し。
「アン、残弾はどれ位だ?」
「マシンガンも速射砲も残弾なしよ」
「どうする?」
「そうね、他の部隊の撃墜された機体からなら弾薬は補給出来そうかもね」
確かに、周りを見渡せばやられたリックドムにはジャイアントバズーカが、ザクなら120ミリマシンガンが手に入るだろう。
「じゃあ、あたしはジャイアントバズーカを貰う」
「俺は120ミリマシンガンだな」
暗礁宙域から各々の武器を拾い残弾を確認しながら、連邦軍のモビルスーツ隊へと突っ込んだのだ。
そして、暫くしてドロスが轟沈してキシリア閣下の戦死によりア・バオア・クーは陥落したのだ。
そして、両軍の救助隊はイチカ・オリムラ専用高機動型ゲルググカスタムとアン・オリムラ専用高機動型ゲルググカスタムのニ機が大破した状態で恋人同士が抱き合う様な形でいるところを暗礁宙域で発見したのだ。
ただ、コクピットハッチは開いたままで中に人は乗ってなく、付近を捜索したがパイロットの二人は行方不明となっている。
イチカ・オリムラの総撃墜数は158機
アン・オリムラの総撃墜数は152機
正式にジオン公国国防省が二人の総撃墜数を記録していた。三つの戦いでの総撃墜数が異常なだけに二人をニュータイプだと言う研究者が居るが行方不明なだけに本当にニュータイプかは判らない。
そして、一年戦争の中で連邦軍からは『ジオンの白き流星』と『ジオンの蒼い悪魔』と二つ名で呼ばれて怖れられ、戦後に二人はジオン軍の大エースの一人として教本に乗る人物となったのだ。
ザァ…サァ…
白い砂浜。
そして、どこまでも広がる蒼い海。
ジオン軍の白と蒼のノーマルスーツ姿の二人。
「んっ…」
目覚めたのはアンが先だった。
「イチカ!?
イチカは!?」
ヘルメットを脱ぎ捨てて見ると、隣に気絶していたのはあたしの愛しい人。
「イチカ、目を覚まして!!」
「……」
イチカのヘルメットを脱がし、未だに気絶したまま覚めない。
プッツン…
「起きなさいって、言っているでしょ馬鹿イチカ!!」
ドッゴォ
「グッハァ!?」
ガックリ……チーン
「あっ、やり過ぎたわ…」
目覚めない苛つきからイチカのお腹に全体重を乗せたダイビング肘打ちをお腹に思わず入れてしまった。一度は衝撃で覚醒したのだが、今ので再び気絶したのは言うまでもない。
同じ頃、とある島の研究室。
ウサ耳をした不思議の国のアリスの格好をした女性はモニターに映る男女の姿に歓喜の声を上げた。
「えっ………!!??
いっくんなの?」
とある島に映る宇宙服姿の男女の二人。
女が自分のヘルメットを脱ぎ、気絶している男のヘルメットを脱がして顕わになった男性の顔は忘れもしない、織斑一夏の素顔だったのだ。
「うぇぇぇん…いっくんが生きてたよ…」
思わず、大泣きになる。
「うるさい駄兎!!」
バッキィ
「グッハァ!?
束さん、死んじゃうから!?」
「だったら、騒ぐな!!」
夜間哨戒で眠っていたマドカちゃんに寝起きがてらに殴られるが、マドカちゃんにモニターを観せると大泣きしたのだ。
「えっ…お兄ちゃん?……お兄ちゃんが……お兄ちゃんが…生きてたよ!!
うぇぇぇぇん!!」
ただ、その後のダイビング肘打ちは流石にないだろうと束さんは思うな…
((アレは絶対に痛いよね……))
そして、マドカちゃんは束さんの静止を聞かずに秘密基地から飛び出していっくんの所に向かったのだ。
まぁ、束さんもニンジンロケットに乗り込み、マドカちゃんを追ったのだった。