イチカ達の臨海学校が始まった頃の話、ティターンズのルナツー基地は、この日は騒然に包まれた。
爆発する、監視衛星や漂う隕石に見立てて作られたモビルスーツ用の待機施設が突如、謎の艦艇からのメガ粒子砲の艦砲射撃により直撃して爆発してパイロット諸共蒸発したのだ。
被害はそれだけでは無く、メガ粒子砲搭載型の衛星も艦砲射撃からのメガ粒子砲やミサイルによりほとんどが壊滅的な状態だった。
「あたしは、一年戦争ではソロモン守備隊だったさぁね。何処を突っ付けば弱いかなんさぁ、判るもんさぁね。フフフ…脆いもんさねぇ。
艦砲射撃を緩めるんじゃないよ!!
モビルスーツ隊の発進を急がせな!!」
アクシズで新造されたグワジン級戦艦アカツキのブリッジから激を飛ばすのは、扇子をルナツーへと向けて砲撃命令を下すシーマ艦隊総司令のシーマ・ガラハウ准将だった。
無論、砲撃するのは述べ七十隻はくだらないシーマ、デラーズ、キマイラからなる連合艦隊だった。
アカツキやザンジバル級、ムサイ改から射出されるMSは、隊長機にはリゲルグを駆り、一般兵士にはゲルググ改が母艦から吐き出され宇宙を舞う。
無論、別動艦隊からはルナツー内部へ侵攻する為のエース部隊のキマイラ艦隊が受け持ち、艦隊支援にグワジン級戦艦を旗艦とするデラーズ中将が率いるデラーズ艦隊がルナツーへとシーマ艦隊と共同で艦隊からの艦砲射撃を実行していたのだった。
カタパルトでは真紅に染められた、ゲルググ改がカタパルトに接続され、出撃命令を待ち待機する。
「ジョニー・ライデン、ゲルググ改出る!!」
出撃命令が出ると、ビームライフルを片手にジョニー・ライデン専用ゲルググ改が射出され、ジョニー・ライデンに続けと、ライデン少佐の指揮下のゲルググ改のキャノンタイプやフル装備したゲルググ改がキマイラから射出され、ルナツーへと向かう。
無論、デラーズ艦隊からも出撃命令が下りモビルスーツ隊が展開していた。
「アナベル・ガトー、GP-02ガンダムサイサリス出る!!」
サイサリスのアトミックバズーカを外してガトー専用ゲルググに積まれていた大型のビームライフルを握り、ガトーのサイサリスもビームバズーカを装備したペズンドワッジ隊を引き連れルナツーへと向かう。
突然の奇襲を受けた連邦軍とティターンズの両艦隊はパニック状態となり、アクシズからのシーマ艦隊、デラーズ艦隊、キマイラ艦隊からなる連合艦隊から見ると艦砲射撃の格好の的と成り下がったのだ。
無論、慌ててモビルスーツ隊を展開はするが、アクシズからのベテランパイロット達には新米ばかりの連邦とティターンズのモビルスーツ隊では敵わない状態だった。
その状況は旗艦のアカツキのブリッジからでも確認が出来ており、シーマは副官でアカツキ艦長のコッセルをチラ見していると、副官のコッセルも気付く。
「閣下、気になるんでしたら、お嬢の所に行ってやしたらどうですか?」
「コッセル、戦闘中にブリッジを離れるなんざ、馬鹿の指揮官がやる事さね。娘に関しては、大きなお世話さねぇ」
「ですが、お嬢は母親の閣下にしか…」
だが、シーマが時計とコッセルをチラ見していたのは、今年で三歳になる愛娘のナツキのお昼ご飯を食べさせないといけなかったのもある。しかし、ナツキは自宅のメイド達には懐くが、強面で下品なシーマ艦隊の男共に一切懐かなった。
「はぁ、仕方ないさね。
コッセル、ナツキと昼食を済ませるさねぇ、指揮は任させたからね」
「へい、閣下」
レバーに掴まり、自室へと向かう。
プシューと気が抜けた様な音を出して最初の部屋に入り、入った部屋の扉が閉まると2つ目の扉が開くと室内にはきちんと重力があり、見た目とは全く予想出来ない様な、女性らしいアンティーク調に揃えられたシーマの自室には、天蓋付きベッドに座り『ジオン軍エースパイロット写真集』と書かれた写真集のあるページには『ジオンの白い流星』と『ジオンの蒼い悪魔』のツーショット写真を見ているのは、とある人物を幼く少女にした様な長い黒髪に鋭い目付きの少女・シーマの愛娘のナツキだった。
「さあ、ナツキお昼ご飯にするよ」
「あっ、ママ!?」
ナツキはあたしに気付き、ベッドに本を投げ捨てるとスタスタと走り抱き着いてくる。
「おやおや、ナツキは甘えん坊だねぇ」
「だって、パパは写真でしか見られないだもん!!」
「じゃあ、パパが得意だったチキンライスにしようじゃないさ」
「わ〜い!!」
シーマは部屋に備え付けられた、キッチンに入ると冷蔵庫の食材からチキンライスの材料の鶏もも肉や玉ねぎなどの材料を出して調理をする。
そして、このチキンライスにはイチカとの思い出の料理でありシーマ自身も好物だった。何故なら、ソロモンで一晩だけお世話になった時に出され、心が救われる様にチキンライスを掻き込むように食べた記憶がシーマにとっての初恋の味だったからだと言えた。
そして、アンが居ないの狙い、当時13歳だったイチカが入浴中の所を襲い妊娠して産んだのがナツキだったのだ。
話を戻すが、シーマはそのチキンライスの味が忘れられずに料理や炊事洗濯などの家事を覚えてからチキンライスを研究して、やっとイチカが作るチキンライスの味付けになった経緯だった。
「そろそろ頃合いさね」
チキンライスが出来上がり、簡単なサラダと厨房から取り寄せた少し薄めのコンソメスープをテーブルに並べ、親子二人だけの昼食を食べる。
「おひ〜」
トロ顔で喜ぶ娘に戦争での嫌な気分を洗い流される様に、シーマ自身も母親としての笑みをナツキだけに浮かべるのだった。
ズッガァァァァァン
「きゃあ!?」
「ナツキ!?」
急な艦の揺れに椅子から投げ出されたナツキを抱え、シーマは床に叩きつけられた。シーマは、ナツキを抱えたまま、ブリッジに連絡を入れた。
「何事だい!!」
「閣下、後方からの奇襲でさぁ!!
連邦のバーミンガム級戦艦が4隻とマゼラン級戦艦6隻、サラミス改級巡洋艦が8隻の連邦軍のア・バオア・クー防衛艦隊だ!!」
「ちぃ、ア・バオア・クーからかい!?」
「ふぇぇぇぇん!?」
「ナツキにノーマルスーツを着せたら、ブリッジに上がるさね!!
対アンチビーム爆雷投下し、艦隊防御に回りな!!」
「いやいや、ママ行っちゃイヤ!!」
泣き止まないナツキ。
何とか、ナツキにノーマルスーツを着せるが、泣き止まない為に仕方なくブリッジに連れて行く。
「コッセル、被害状況を知らせな!!」
「第一砲塔は全損して射撃不能。
残りの主砲で連邦艦隊に応戦中でさあ」
「ちぃ、仕方ないさね。
あたしもモビルスーツで出る!!
待機中のモビルスーツ隊にも出撃を掛けな!!」
「ママ、行っちゃイヤ!!
ママが行ったら、ママがパパに会えなくなるからイヤイヤ!!」
ナツキも幼いながら、ニュータイプだったのは知っていた。アクシズの研究機関での検査では、高いニュータイプ能力があるのは判っていたし、イチカももしかしたらニュータイプだと、娘までがニュータイプなのだから有り得た話だった。
そして、泣き止まないナツキは、あたしの出撃でさえも反対する。普段なら、『ママなら大丈夫!』と笑顔で送るが、今回は全く違う。
「閣下、お嬢の直感には何時も助けられてます。出撃は待機部隊を見てからでも?」
「そうさね、ナツキに免じて様子見するさね」
「うん、ママ大好き!!」
娘に抱き着かれ、指揮官としての威厳が損なうが、あたしにはナツキが居てくれる幸せが大切だった。
だが、あたしは知らなかった。
ナツキを庇い、負傷したあたしとの永遠の別れが来るとはまだ知らなかった。