一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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帰還への序章 銀の福音暴走事件 中編

 

 

 あたしは、初めて一夏のこの顔を見るのかも知れない。

 

 作戦室での一夏の顔は、千冬義姉さんの様な鋭い眼差をしてブリーフィングで詳細を淡々と説明して行く。

 

 「…であり、海上封鎖は数が出せるブラックラビット隊が受け持ち、俺の中隊の初任務は強奪犯の篠ノ之箒の逮捕並びに銀の福音のパイロットの救出だ。

 

 鈴、セシリア」

 

 「「はい」」

 

 「セシリアはロングレンジスナイパーライフルの使用を認め、降伏勧告に従わない場合は遠距離からの狙撃による箒の撃墜。鈴は狙撃するセシリアの護衛」

 

 「「了解!!」」

 

 「アン、シャロは俺の僚機として援護。簪とシャルは上空警戒だ。

 

 以上!!」

 

 「「「「了解!!」」」」

 

 ブリーフィングが終わると、ラウラは既にブラックラビット隊として海上封鎖に出ている。無論、マドカはブラックラビット隊を支援の為に共に出ている。

 

 そして、ブラックラビット隊の海上封鎖による展開の完了の報告を受け、あたし達のオリムラ中隊が出撃したのだ。

 

 

 その頃、太平洋上空。

 

 「糞!!

 

 姉さんの作った機体は欠陥品なのか!?」

 

 ブラックローズを奪った箒は、何とか飛ぶ事が出来たのだが、非固定部位の二基の大型スラスターに内蔵されたマイクロミサイル以外は全てがビーム兵器であり、実体剣が無い事に嘆いていた。

 

 無論、射撃が得意とする元イギリス国家代表候補生の2年生のサラに合わせたチューニングが施されているのだから、ブラックローズは欠陥機では無く、5世代型のブルーローズを原型にした4.5世代型として完成した量産機でだった。

 

 サイコミュを積まない代わりに小型で高出力のジェネレーターを搭載したり、ファンネルの代わりにマイクロミサイルポッドを内蔵した大型スラスターを搭載したのだから、当然の如くサラに合わせた射撃特化のビーム兵器が積まれているのは当たり前だった。

 

 『篠ノ之箒、貴様にはIS強奪の容疑により逮捕状が出ている。武装を解除し投降しろ!!』

 

 一夏達に追い付かれたのか、一夏からのオープンチャンネルによる投降の呼びかけが響いた。

 

 何故?

 

 私に逮捕状が?

 

 意味が判らない。

 

 意味が判らないから、沸々と湧き上がる怒り。

 

 「一夏!!

 

 私が犯罪者だと?

 

 ふざけるなァァァ!!」

 

 私は、レーダーに映る銀の福音に向けて、スラスターを全開にして逃げたのだ。

 

 だが、一夏達に追われ逃げた先に見える光景は、私には絶望と言う名の暴走する銀の福音とも交戦状態であり、浮上した潜水艦からISが発艦して、私を追撃する一夏達へと攻撃をするアメリカ軍のIS部隊が展開していたのだった。

 

 「なっ……」

 

 そして、私の機体にもターゲットをロックされたアラートが鳴り、遥か上空へと加速して、マシンガンを放つアメリカ軍からも逃げたのだ。

 

 「良いかい、あたしらの標的はホワイトラビット社の新型の奪取だ!!

 

 抜かるなよ!!」

 

 『了解!!』

 

 箒が逃亡し追った先には、箒と銀の福音とアメリカ軍のIS部隊が見えており、銀の福音はアメリカのIS部隊に対して攻撃しており、下手をすれば三つ巴の戦いにすらなり得る状況だった。

 

 「ホワイトラビット社の新型だ!!」

 

 「シールドエネルギーを無くして解除させたら、パイロットは殺せ!!」

 

 無論、こちらにはアメリカ軍のIS部隊からの問答無用の攻撃が仕掛けられていた。

 

 「イチカ、銀の福音!!」

 

 「ちぃ、不味いな…箒を落とせば、アメリカ軍に最新鋭のブラックローズが確実に拿捕されるよな…」

 

 「しかも、標的はあたしらの新型機(ブラックローズとイチカのブルーローズ)…」

 

 「先に銀の福音を落とせば良いんじゃないの?

 

 最悪、パイロットの救出だからイチカのファンネルとアンの狙撃で充分落ちると思うわよ?」

 

 「シャロ、そんな単純な問題じゃないわよ」

 

 「いや、やってみたい事があるが構わないか?」

 

 「「なっ、何よ?」」

 

 「ブルーローズの全力での加速だな。

 

 4基の大型スラスターとメインスラスターによるリボルバーイグニッションブーストだよ。

 

 理論上なら、八段階の加速が出来るはずだ。

 

 それで、戦場を撹乱させながらアメリカのIS部隊と箒を斬り刻む。

 

 アンは浮上している潜水艦を撃沈しろ」

 

 「了解…(イチカらしい無茶振りだけど、無事でいてよね…)」

 

 イチカは、あたしに冷酷な下命をすると、八段階加速によるリボルバーで一瞬で消えて行き乱戦化する戦場に突入して行ったのだ。

 

 「じゃあ、あたしも仕事をしますかね…」

 

 ブラックローズの拡張領域から実戦用の形成炸薬の弾頭を搭載したジャイアントバズーカをコールして装備すると、浮上し未だにIS部隊の発艦が続く潜水艦に向けて急降下して狙いを定めながら、あたしはジャイアントバズーカを構え突入する。

 

 「てっ、敵機直上!?」

 

 「はっ、早い!?」

 

 潜水艦の乗組員が叫ぶが既に遅く、甲板にはカタパルトに接続されたままの展開したISのパイロットと待機中の数機のISが母艦である潜水艦を守ろうとマシンガンで弾幕射撃を放つが、弾幕射撃が凄まじかったサラミスやマゼランにジャイアントバズーカで突っ込んで来たあの頃に比べたら、この程度の弾幕射撃では全く持ってぬるま湯のお風呂に浸かるのと等しかった。

 

 「沈め!!」

 

 ドッゴォォン ドッゴォォン ドッゴォォン

 

 ジャイアントバズーカの三連射。

 

 一発目は、見張り員の水兵が対空監視で居た潜水艦の浮上時のブリッジとも言えるセイルを水兵諸共に吹き飛ばして破壊し、二発目はカタパルトの射出のタイミングが長い事から蒸気式だと睨み、供給元へとバズーカの弾頭を直撃させて破壊する。

 

 無論、直撃した被害は発艦待ちのパイロット達や作業員達が破壊されたカタパルトに接続された配管から大量に漏れた高圧高温の水蒸気を諸に浴びて、ISの絶対防御には護られてはいるだろうが高温で吹き出す水蒸気を浴びては耐えられずに甲板上に溢れるのは、大火傷を負いながら皮膚が剥がれてもがき苦しむ甲板作業員や艦の破片が身体中に刺さり即死した作業員に配管から蒸気を浴びた女性パイロットは余りの苦しみから酷い形相のまま死んでいたりと甲板は地獄絵図化していた。

 

 そして、止めとなった三発目は魚雷発射管室の真上へと直撃し、幾らチタン製の装甲でも堪えられる訳がなく、形成炸薬弾頭のジャイアントバズーカの弾頭は装甲を突き破り魚雷発射管室内にて弾頭が爆発する。

 

 無慈悲な魚雷発射管室の内部での爆発は、魚雷へと誘爆を次々と起こして爆発して行き、魚雷発射管室が内部からの爆発に耐え切れなくなって艦首部分が吹き飛び、大量の海水が潜水艦内部へと濁流となって襲い、生き残った乗組員が海へ飛び込みながら、潜水艦は艦首から沈みオベリスクの塔の様に突き立って海中へと没した。

 

 そして、海上に浮かぶのは大火傷を負い絶命したパイロットや作業員達の遺体だけだった。

 

 「あっ、母艦が!?」

 

 「貴様が、やったのか!!」

 

 無論、母艦を撃沈された事に、怒り狂うアメリカ軍のIS部隊のパイロットの数名は、あたしへと襲い掛かるがペア行動が原則のオリムラ中隊では、あたしの他にもう一人が居るのさえ忘れたアメリカのパイロットには、戦争がなんたるかと教育の時間とするとしよう。

 

 「シャロ、フォーメーションB‼」

 

 「アン副隊長、了解!!」

 

 既に、競技用リミッターを切ったビームライフルは絶対防御の意味が無い事をあたし自身は理解している。

 

 無論、引き金を引けば相手の命を刈り取る意味さえも理解しているからこそ引き金を引く。

 

 殺らなければ死ぬのは、確実にあたしだった。

 

 それが、戦場で認められた唯一のルールであり、覚悟無き者が入るべき場所では無い事は判っているし、殺される覚悟だってしていた。

 

 だから…

 

 「落ちなさい!!」

 

 ビュンビュン

 

 「ガッハァ!?

 

 絶対防御が…」

 

 ISを駆る、一人の女性のアメリカ兵にあたしのビームライフルのビームが胸部を貫通し絶命して海へとISを纏ったまま落ちて沈み、二度と浮上する事は無かった。

 

 「次!!」

 

 

 私は、躊躇いなくビームライフルを放ちパイロットごと殺すアンさんやシャーロットさんの二人を見て、自分はまだ『引き金を引く』意味を理解して覚悟すら出来て無かった事に気付く。

 

 そして、箒さんへの狙撃命令にも躊躇い、引き金を引けない事に隊長である一夏さんに気付かれたのだ。

  

 「セシリア、あんたは人を殺すのが怖いんでしょ?」

 

 不意に、鈴さんから私の抱えていた、核心を読まれた。当然、訓練は代表候補生になる為にして来たつもりだった。

 

 「怖くないと言っても、嘘になりますわね。覚悟はして来たつもりでしたわよ。でも、でも…」

 

 私の言葉は続かなった。

 

 続かなかったのは、戦場と言う恐怖に取り憑かれ、いつの間にか恐怖から涙を流していたのだから…

 

 「それが、セシリアの性格よ。

 

 あたしも正直、怖い。

 

 あたしがあたしで居られなくなる様な、狂った戦場には優し過ぎるセシリアには耐えられないし、あたしもセシリアの護衛に回されたのは、一夏があたしを戦場には立たせなく無かったのかも知れない。

 

 でも、簪やシャルまで周囲警戒で主戦場から外したのは、戦場に立つ覚悟が出来てないあたし達に対しての一夏の優しさ。

 

 でも、あたしは決めたのよ。

 

 覚悟を決めて、あたしは引き金を引くわ。

 

 セシリア、あんたには簪達と上空警戒を頼むわよ!!」

 

 鈴さんは、私にそう言うと赤いブラックローズは、乱戦となるアンさんの元へと飛んで行ったのだった。

 

 

 セシリアから離れたあたしは、乱戦となっていたアンとシャロを援護すべく、コアの朱雀が用意してくれた『EXAM』を躊躇いなく使用することに覚悟を決めた。

 

 「朱雀、ありがとう。 

 

 これで、あたしは輪舞曲を踊れるわよ!!」

 

 『無茶しちゃ嫌よ?』

 

 「当たり前じゃない‼

 

 行くわよ!!

 

 単一仕様『EXAM』を起動するわよ!!」

 

 ブラックローズが、真っ赤なオーラに包まれて『EXAM』が起動する。凄まじい、加速力に身体が潰されそうになるけど、朱雀があたしを凄まじいGから護ってくれる。だが、EXAMのタイムリミットは鍛えたお陰か5分と表示される。

 

 「ぜりゃァァァァ!!」

 

 「??」

 

 驚き、驚愕する間もなく、アメリカのIS部隊の機体の推進系だけ斬り刻み海へと落とす。

 

 「邪魔よ!!」 

 

 「速すぎる!?」  

 

 次のターゲットを落とすべく、瞬時加速して更に加速する。バレルロールを描きマシンガンの弾丸を躱して、もう一機の機体をひたすらに斬る。

 

 だが、タイミングを狙ったかのように一機の機体があたしを狙い襲って来たのだ。

 

 「ファ、ファング・クエイクですって!?」

 

 「ちぃ、それを躱すとは強い奴だな!!」

 

 まさか、アメリカ国家代表のイーリス・コーリングと戦闘になるとは全く予想が出来なかったが、EXAMのタイムリミット内に倒せるか判らない状況に成るとは予想していなかったのだ。

 

 「上等…」

 

 「行くぜ!!」

 

 そして、鈴とイーリスの二人の激しいIS戦になるのは明白だと、この時には誰も知らない。

 

 

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