一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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父親と娘の二人の出会い

 

 

 イチカ達が、この世界に戻って来た頃。

 

 グワジン級戦艦のアカツキのブリッジでは、母親のシーマに抱かれたまま泣き止まないナツキが急に何かを感じて顔を上げて泣き止んだ事に、シーマは不思議そうに娘を見ていた。

 

 「んっ!?ママ!!」

 

 「全く、どうしたんだい?」

 

 「パパが帰って来た!!」

 

 「つっ!?」

 

 「コッセル!!

 

 早急に迎えのモビルスーツ隊とランチを出せ!!」

 

 「おっ、お嬢!?

 

 戦闘中に無茶を言わんでくだせい!?」

 

 どうやら、ナツキはイチカのニュータイプの波動を感じ取ったのだと理解する。初めて、何時もとは違う娘の豹変ぶりに戸惑う私に、副官であり艦長のコッセルを含むブリッジクルー達は母親として戸惑う私を見てニヤニヤと笑う姿を見て、あまりの恥ずかしさから蹴り飛ばしたくなる衝動に駆られるが、それよりも先に娘が副官のコッセルを呼び捨てに叫びイチカに迎えを出せと言う。

 

 「ナツキ、あんたはイチカの居る場所が判るのかい?」

 

 「うん、この波動はルナツー内部の第八通路に、パパ達が居る!!」

 

 「コッセル!!

 

 ルナツーの内部の地図を至急出しな!!」

 

 「へっ、へい!?」

 

 まさか、私までも娘に賛同してコッセルに叫び、タジタジながらコッセルが内部通路の地図を出してテーブルに広げさせて、各艦隊のモビルスーツ隊が担当するエリアを地図と照らし合わせながら確認すると、港湾部から第八通路に掛けては、キマイラ艦隊のジョニー中佐の率いる部隊が侵攻を受け持ち内部へと侵攻する際の通路だと判る。

 

 そして、一度は連邦軍のア・バオア・クー防衛艦隊からの奇襲を後方から受けたが、あたし等の艦隊からのモビルスーツ隊の迎撃と艦隊戦によって、バーミンガム級戦艦4隻の撃沈と引き返したガトー少佐によるサイサリスの突撃と率いたペズンドワッジ隊の共同の迎撃により、艦隊を撃破に成功していた。

 

 無論、キマイラ艦隊はこれを好機と見てルナツーへと艦隊とモビルスーツ隊が突撃して取り付き、ティターンズと連邦のモビルスーツを排除しながら港湾部の制圧に成功して、制圧した港湾部を死守しながら内部へと繋がる通路へとモビルスーツ隊の侵攻を開始していたのだ。

 

 「そうさねぇ、ジョニー中佐にでもイチカ達の回収を頼むかねぇ…」

 

 「うん、あのお兄ちゃんなら、きっと回収してくれるよ」

  

 「お嬢?」

 

 「コッセル、うるさい。さっさとお兄ちゃんに通信を繋げ!!」

 

 「へっ、へい…」

 

 「もたもたせずに、中佐に通信を繋ぎな!!」

 

 「閣下まで!?」

 

 コッセルは思う。若干、三歳ながらも母親の閣下に似た女王様気質と鋭い戦略眼は、ナツキが閣下の娘だと再度認識させられるが、ナツキが元々の能力の高いニュータイプだけに戦場に出したくないのは閣下の愛娘を護りたいと思う副官としての願いだった。ただ、不安なのは母親に似て、ドSに育つのではと思うばかりだったのは母親の閣下には口が裂けても言えない。

 

 『シーマ閣下じゃないか。

 

 今、第八通路方面を侵攻してて忙しいんだが?』

 

 「ジョニー中佐、そりゃあ丁度良いじゃないかい」

 

 『何か凄く嫌な予感がする命令が来そうなんだが?』

 

 「おやおや、察しが良くて助かるさねぇ。愛娘のナツキがイチカをルナツー内部で察知したさね。

 

 だから、イチカの回収を頼みたいさね」   

 

 『おっ、行方不明だった、あの坊主と嬢ちゃんが見付かったのか!?』

 

 「あっ!?お兄ちゃん!!」

 

 『おっ、ナツキちゃんじゃないか。そんなに、慌ててどうしたんだい?』

 

 「うん、早くしないとパパが死んじゃうよ!!」

 

 『おい、パパって、まさか!?』

 

 ジョニー中佐はヒヤッと背中に冷たい汗を流しながらナツキの父親に察しが付き、シーマとナツキの顔を交互に見た後、ナツキの顔がそっくりな人物がイチカだと気付く。そして、イチカが居るのなら必ずしもパートナーであるアンが一緒に居るとジョニー中佐は思ってしまう。

 

 そして、ジョニー中佐は、この後にはアンとシーマによる女の修羅場すら予想していたのだった。

 

 「「ふふふ…喋らない方が賢い選択さねぇ…」」

 

 『おっ、おう…(やべぇ、やべぇ…ナツキちゃんは段々と母親に似て来たなぁ…凄みが半端ねえ…)』

 

 ナツキが母親と同じ口調で同時に言った言葉に凄みを感じたジョニー中佐は、父親だと思うイチカの名前を出す事に完全に躊躇い、自分の命が惜しいからと口を閉ざして制圧したルナツー港湾部で確保したランチを引き連れ、イチカ達の回収に向かったのだ。

 

 

 

 

 同じ頃、イチカとアンは専用機の敵味方識別コードをIS学園の識別コードから旧ジオン軍の識別コードに替え、シャロもアクシズの教導大隊の識別コードに替えた為と最初にジムⅡを撃破した事により、侵入者として守備隊であるジムⅡなどが含む部隊からビームライフルやマシンガンを撃たれながら襲撃される。

 

 「本当、しつこい男は嫌われるわよ!!」

 

 「グッァァァ!?」

 

 「くっ!?アン、動力部は狙うな!!

 

 機体の爆発の余波でシールドエネルギーが削られる!!」

 

 そして、ジムⅡを撃破したアンが見たのは、最奥部から増援で来たモビルスーツの部隊。それは、光るモノアイからザク型のモビルスーツだと判る。だが、先に大型ビームライフルから放ったビームがジムⅡの動力部に直撃したのか爆発した余波や破片によりシールドエネルギーが削られながら、色こそ青紫だが連邦軍にザクがいる事にアンは驚愕していた。

 

 「くっ!?

 

 何で、ザクが居るのよ!?」

 

 「何だと!?」

 

 「アレは、連邦とティターンズのモビルスーツのハイザックよ‼」

 

 「シャロ、そうなのか!!」

 

 「戦後に接収されたザクを元に開発された、連邦とティターンズのモビルスーツだけど、カラーリングが連邦軍仕様の機体よ!!」

 

 だが、ハイザックとは知りつつも、ザクらしきモビルスーツを見たイチカとアンはシャロが来た時の言う通りにジオンが敗北したのだと理解しながらも、ジオンのシンボル的モビルスーツだったザクを連邦とティターンズにハイザックとして使われた事に怒りを感じていた。

 

 「なら、連邦やティターンズにザクが使われる位なら!!」

 

 「速すぎる!?

 

 グッワァァァ!?」

 

 無論、ここが無重力空間なだけにSEが無くなれば、どうなるかさえも理解していた。だが、ザクを使われた怒りにアンがビームサーベルを抜き、瞬時加速を用いて小型である利点を活かして懐に入りハイザックのコクピットに突き刺し、コクピットをやられたハイザックはモノアイの光が消えて力無く通路内に漂う。同時にイチカもビームソードでハイザックの懐へと肉薄して、ビームソードをコクピットへと突き刺して撃破する。

 

 「糞が!!」

 

 「グッアッ!?」

 

 全員が専用機を展開しながらも、束さんと鈴には一切の宇宙での戦闘経験が皆無な為に戦闘には参加する事が出来ずに襲い掛かるモビルスーツからの攻撃に対して回避行動に専念し、転移前の迎撃によるエネルギーの使い過ぎで残りが半数以下となったアンとシャロは残りエネルギーの問題から、鈴と束さんの二人の護衛に専念する事になる。

 

 その中で俺は、エネルギー消費が装備の中では最も少ないビームソード付きビームライフルを片手にビームソードへと変形させて、瞬時加速で小型のサイズである事を利用して一気にコクピットへと近付き、動力部を破壊しない様にコクピットのみをビームソードで突き刺して離脱する一撃離脱戦法を選択してそれに徹していた。

 

 そして、消費するのがエネルギーパックだけなので、アンとシャロからはビームライフル用の予備のエネルギーパックを貰ってはいるが、ジムⅡやハイザックから放たれるマシンガンやビームライフルに当たれば絶対防御は無意味で貫かれての即死は確実で、逆にシールドエネルギーが切れれば無重力空間では即死となり、モビルスーツの動力部を爆発させれば爆発エネルギーの余波と破片によるダメージでシールドエネルギーが削られるといった、非常に厄介な戦闘に一夏は精神的に消耗し始めていた。

 

 「イチカ、大丈夫?」

 

 「あぁ、ア・バオア・クーと比べたらまだマシだな」

 

 敵モビルスーツ隊を駆除した後には、心配するアンはエネルギーを使い過ぎた事に悔やみ、空間戦闘では力に成れない鈴と束さんが落ち込んでいた。

 

 「一夏、戦力に成れなくてゴメン」

 

 「仕方ないさ」

 

 「束さんもゴメンなのだ。

 

 でも、束さんの夢がこんな形で叶うとはね…」

 

 確かに、束さんの夢は事故だったが叶っていた。

 

 「束さん、仕方ないですよ」

 

 「イチカ、右側からモビルスーツ反応よ!!」

 

 「真紅のゲルググ…シャロ、アレは味方だ!!」

 

 右側の通路から現れたのは、ランチをワイヤーで牽引して来た真紅のゲルググであり、それはジョニー少佐の機体だった。そして、戦闘でうっかりしてて気付かなかったが幸いにも通路には空気があり、専用機の展開を解除してランチへと搭乗してから休息となり、ジョニー中佐と一部の部下達も交代での休息でランチ内へと入って来たのだ。

 

 「よう、敵のモビルスーツが少ないと思ったら、坊主と嬢ちゃんが片付けていたようだし、あの戦いからは生きて居たようだな!!」

 

 「「ジョニー少佐、お久しぶりです」」

 

 「今の俺は昇進して中佐だよ。イチカ中佐にアン中佐?」

 

 「やっぱり、俺とアンは大尉だったア・バオア・クーの戦いから昇進してたんですね…」

 

 「なにせ、俺達が戦死者を出さずにア・バオア・クーから撤退出来た理由が、二人が最後に突撃した艦隊が偶然にも連邦軍のジオンへの残存艦隊への追撃艦隊で、艦艇の半数以上を撃破して追撃を不可能な被害を与えて、俺達がアクシズやサイド3に撤退出来たのが大きい理由での、二階級特進だ。全く、羨ましいぜ」

 

 「私も居ますけど、ジョニー中佐?」

 

 「うっげぇ、アクシズ防衛戦で行方不明になった教導大隊のシャーロット少佐までも居るのかよ!?」

 

 「うっげぇの意味にかなりの含みを感じましたが?」

 

 「だってよ…って、左薬指に見える指輪って、まさか!?」

 

 「ふふふ、私とアンに鈴を入れた三人は結婚してイチカの妻よ!!」

 

 『なっ、何だってぇぇぇ!?』

 

 助けに来たジョニー中佐の部下からは、二人が結婚していた事実を知り、絶叫に近い驚きの叫びを上げられ、アンとシャロは美少女ながらも絶対に結婚出来ない女だと言う事をジョニー中佐達に思われていたと知り、こめかみに青筋を浮かべてジョニー中佐と部下達を睨む。

 

 「まっ、マジかよ…」

 

 「確か、アン中佐とシャーロット少佐って、お嫁さんにしたくないランキングじゃあ、トップ10入りしていたよな…」

 

 「それが、二人ともイチカ中佐の嫁さんだと!?」

 

 『マジ、二人の結婚が有り得ねぇ…てっ、言うよりも、旦那になったイチカ中佐にご愁傷様だな…』

 

 「「あんた達、どう言う意味よ!!」」

 

 『おっ、鬼嫁が出たァァァ!?』

 

 「「おっ、鬼嫁!?」」

 

 無論、ジョニー中佐の部隊の隊員からの『鬼嫁』と言われながら驚愕の声が丸聞こえだったし、束さんに限っては、二人がお嫁さんにしたくないランキングではトップ10入りをしていた事実を知り、お腹を抱えて『ちーちゃんの学園時代と同じだ』と言いながら爆笑をしてしまい、ジョニー中佐が妻である鈴を見て『なんだ、イチカ中佐の嫁は小学生か?』と小学生と言われた事に対して『これでも、あたしは麗しの16歳よ!!』と叫びながら鈴がブチ切れて、無重力空間ながら見事な飛び蹴りをジョニー中佐の顔面に食らわす珍事件を起こし、それを見ていた部下達が『隊長は本当に馬鹿だなぁ』と言いながら大爆笑する事態となる。

 

 そして、ジョニー中佐の部下が乗るゲルググ改の2機に護られながら掃討戦が終了した港湾部から、キマイラ艦隊所属のムサイ改へと乗り換えてシーマ艦隊へと移動となった。 

 

 無論、シーマ艦隊の旗艦に着いてムサイ改のクルーから支給されたノーマルスーツに着替えてからランチに乗りグワジン級戦艦へと移動となるのだが、シャロと束さんだけがたわわな胸のせいでノーマルスーツのチャックが胸元から上が閉まらずに着替えられず、発艦ハッチを一度閉めてからランチに搭乗するハプニングがあったが、真っ赤な戦艦のグワジン級へと移動となる。

 

 グワジン級戦艦の収容ハッチから入った俺達は、シーマ大佐と久しぶりに会うことになったのだ。

 

 「相変わらず、グワジン級はでかいわね」

 

 「だが、ドロス級の方がでかくないか?」

 

 「イチカもグワジン級に乗った経験あるの?」

  

 「ソロモンでデラーズ閣下からディナーに呼ばれた時以来だな」

 

 無論、ディナーに呼ばれたのは、デラーズ閣下からの部隊への引き抜きだと知っていた。閣下の抱えるエースとも言えたパイロットはガトー少佐のみで、後はベテランパイロットや新米ばかりの部隊だったし、当時最新鋭のゲルググが配備され支給されているのはガトー少佐専用だけだった。

 

 だから、デラーズ閣下はキマイラ隊やシーマ艦隊に次ぐ、ゲルググタイプの配備数が多かったドズル閣下の直属部隊のオリムラ中隊が欲しかったらしい。

 

 もし、受け入れて居たら、部下達の戦死は無かっただろう。

 

 シーマ閣下の部下に案内され、ブリッジに入ろうと扉が開き、中からはノーマルスーツを着た小さな少女が叫びながら俺に抱きついた。

 

 「パパァァァァ!!」

 

 「グッハァ!?」

 

 「「「イチカ!?」」」

 

 そして、頭でグリグリしながら甘えようとするが、ノーマルスーツのヘルメットが邪魔らしくて出来ずにヘルメットを脱ぎ投げ捨てて露わになる少女の顔は、俺を幼くして少女にした様な、俺にそっくりな少女だったのだ。

 

 「ナツキが一夏にそっくりですって!?」

 

 「うん、少女にしたイチカだね…」

 

 「特に目付きが似てるね…」

 

 「あっ、シャロさん!!」

 

 鈴やアンがあまりに俺に似ている事に驚愕し、シャロはメイドだった事もあり抱き付くナツキの頭を撫でたのだ。

 

 「おやおや、イチカ中佐にアン中佐。そして、シャーロット少佐。

 

 ご帰還、ご苦労だねぇ」

 

 イチカに愛娘が甘える姿にほっこりしながらも、帰還を祝うシーマ閣下だった。そして、鈴がシーマ閣下を見るなりズカズカと歩き言葉を掛ける

 

 「あんたが、シーマ閣下!?」

 

 「おやおや、珍竹林娘が二人さ増えたねぇ」

 

 「「誰が、珍竹林娘よ!!」」

 

 「あっはははは!!

 

 面白い、玩具が増えたさね。

 

 いろどりみどり、楽しいさねぇ」

 

 「「むっ、がぁぁぁ!!」」

 

 大人の余裕を魅せながらも、鈴とアンを手玉に取り遊ぶシーマ閣下と弄られてキレる二人の構図はコントをやっている様にしか全く見えず、ナツキはムギュウと抱き着きながら帰還した俺に目一杯甘えるのだった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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