ハマーンとの一戦をした後に母艦であるアカツキへ戻ると、シーマ閣下はぐしゃりと握り潰した命令書を片手にイチカが戻るのをイライラしながらモビルスーツデッキで待っており、ハマーンとの一戦から戻ったイチカに怒鳴り散らし、ヘルメットを取った俺の頭に拳骨が落ちる。
「全く、イチカは何て事をやらかしてくれたんだい!!」
ゴッチン
「あっ、痛!?
まさか、ハマーン様との一戦を見てた?」
「見てたじゃないよ、このお馬鹿!!
試作型とは言え、ハマーン様の駆るキュベレイと同等の戦いを仕出かした事に問題があるんさね!!
あたしが、ハマーン様の所にブルーローズとブラックローズの詳細な報告書を上げといたさ。だから、文句は来ないとは思うがね、アカツキ艦内で製作した最新鋭の3機は下手したらアクシズの工廠行きさね!!」
ハマーンとの一戦はハマーンから奇襲されたに近く、理不尽ではあるが凄まじい形相で怒鳴り叱るシーマ閣下が言うには、ブルーローズとブラックローズはアクシズに運ばれ、最悪は解体されながら調査する可能性があるらしい。
「つまり…」
「そうさね。あんな、最新鋭技術の塊の機体なんさ、ニュータイプ至上主義者のグレミーのお坊ちゃんが黙っているとお思いかい!!
唯でさえ、アクシズは未だに一枚岩じゃ無いんさね。
それを見越したハマーン様が送り付けた、イチカへの命令書が来たから待って居たさね!!」
「命令書?」
ぐしゃりと握り潰した命令書を拡げ、シーマは読み上げる。
「良いかい、お聞き‼
イチカ・オリムラ中佐を本日付けで大佐として昇進し、シーマ艦隊所属の独立機動中隊、オリムラ中隊のモビルスーツ隊隊長とする。それに伴い、アン・オリムラ中佐並びにシャーロット・オリムラ少佐両名を、アン・オリムラ中佐を大佐として昇進してモビルスーツ隊副隊長とし、シャーロット・オリムラ少佐を中佐として昇進してイチカ・オリムラ大佐付き副官とする。
また、ソロモンにてミネバ様との謁見後、保護した以下の子供の3名をイチカ・オリムラ大佐の養女として引き取られたし」
「昇進はわかるけど、養女として3名を引き取る!?」
「ハマーン様は、ミネバ様のお気に入りで遊び相手だった、ニュータイプの12姉妹の長女と次女に末女の三人だけは、その子らがミネバ様の所に遊びに来た際にグレミー・トトから保護したさね。
それでも、他の姉妹はコールドスリープされて救出は無理だったさね。
一応、養女の件は先に正妻の鈴には伝えたけどねぇ、三姉妹は保護をカモフラージュする為にさね、ソロモンに着いたらイチカの養女として引き取る事は、ハマーン様の中では多分だけどさね、ミネバ様の『お嫁さんになる』の対抗措置で決まったさね。これなら、流石のミネバ様もご友人から『ママ』って言われるのは嫌だろうさね」
「了解しました、シーマ閣下」
いきなり、ナツキの姉妹が出来ている事に驚愕しながらも、シーマ閣下から渡された姉妹のプロフィールにある三姉妹の名前は、長女のエルピー・プル、次女のプルツー、末女のプルトゥエルブだった。
そして、姉妹の全員が七歳と幼かった。
もちろん、三人の少女を養女として引き取るのは構わないが、シーマ閣下から口に出したグレミー・トトによって試験管ベビーのプル達の妹達はなんとかして助けたいとは思うが、普通に産まれたプルとプルツーを除き、その名前はラウラの様な試験管ベビーに付けられた物としての名前であるとシーマ閣下から知り、俺はきちんとした娘の名前として改名する事を決めたのだった。
そして、報告書を書き上げ整備科に提出後に自室の俺達の士官室に戻ると、部屋の床には様々な名前が書かれた紙が散乱し、鈴達が頭を抱えながら娘達の名前を書き上げては紙を丸めてゴミ箱へ捨てて、シャワーを浴びたアンがバスタオル一枚の姿で鈴と悩み、シャロに至っては裸Yシャツ姿だった。
「一夏、シーマ閣下から、あの話を聞いたのね?
一応、これなんかどう?」
「あぁ、養子として引き取る事が正式に決まったな。
で、なになに…プルには『千秋』プルツーには『千春』、プルトゥエルブには『千夏』か…これ、良いんじゃないか?」
「そう、一夏?
一応、千冬義姉さんから、女子会の時に織斑家の命名の基準を聞いといたから、試しに書いたけど?」
「あぁ、三人にしっくり来る名前だよ」
こうして、三姉妹の名前が決まり、アカツキはソロモンへと入港する。係留されたアカツキからは鹵獲された連邦軍カラーのハイザックや捕まった捕虜達が降ろされて行く。俺達5人はランチへと乗り、ハマーン様やミネバ様の座乗するグワダンへと移動したのだった。
そして、グワダンに移動しながらだが、グワダンの隣に停泊するのは何故か、三隻の連邦軍とは色違いの対空兵装強化型のサラミス改が係留され、大量の物資が積み込まれていたり、降ろされていたのだった。
「シャロ、アレって?」
「多分、エゥーゴの艦船ね。
アンマンからの物資を降ろしているから、アナハイムで受領した何かが在るのかもね」
そして、グワダンのモビルスーツハッチからランチが入り、モビルスーツデッキのキャットウォークに立つ金髪の男性は忘れもしないシャア大佐だった。
「大佐!!」
俺は思わずランチのハッチを開けて飛び出し、キャットウォークに居るシャア大佐へと飛ぶ。
「イチカくんじゃないか!?」
「お久しぶりです、シャア大佐!!」
「ふっ、今は昇進してシャア・アズナブル中将だがな。だが、久しぶりだ、イチカくんいや、イチカ大佐かな?」
思わず、シャア閣下との再会に嬉しくなり泣きそうになる。だが、同じく飛び出した束さんだが、シャア閣下も気付き挨拶をしようとするが、拳を握りシャア閣下に一発だけ殴り飛ばしたのだ。
「へえ、君がいっくんの…」
「報告に受けた、ISの開発者の…グッハア!?」
「束さん!?」
「この、大天災の束さんを利用したからには、一発は受けて貰うから」
「つっ……確かに、私は君に悪い事をしたのだろう。だから、甘んじて受けさせて貰ったさ」
「やっぱり、食えない人だったよ…」
「最高の誉め言葉としておくさ」
シャアは軽く唇を切り、血を流してはいるが束さんからの一発を甘んじて受けたらしい。確かに、人から利用される事を嫌う束さんは、シャア閣下に利用された事に一概の怒りを持っていた。
「ねぇ、いっくん。
アレをお土産に渡しなよ」
「アレ、ですね」
「?」
束さんに言われて拡張領域から出したのは、サイコフレームのサンプルだった。無論、束さんも仕様書や製造方法を記した一冊の本を取り出し、サンプルと一緒にシャア閣下に渡す。
「これは?」
「サイコミュをチップ化して、金属に混ぜて作ったサイコフレームのサンプルだよ。既に、君から送られた図面を元に製造したブルーローズにはサイコフレームを使っているけどね」
「ほぅ……やはり、大天災は伊達では無いようだな」
シャア閣下にサンプルを渡して別れてアン達と合流した後、ミネバ様に謁見したのだった。
グワダンの居住スペースでも、ザビ家の居住スペースは豪華絢爛と言う言葉が似合う程、中世ヨーロッパのアンティーク調の品々が並び飾られて豪華さを醸し出していた。
無論、そんな生活と全く無縁だとも言えた俺達は目を惹かれたり、ホワイトラビット社から貰っていた給料では買えない様な骨董品は一体いくらなのかと思ってしまう。
「流石に緊張するな」
「あたしでも、欧州に居た自宅よりも豪華過ぎるわよ…」
「私なんか、パパのコレクションが猟銃ばかりよ?」
「あたしなんか、実家はただの大衆食堂よ。一般人だから、居辛くて仕方無いわよ…」
「いっくん、不思議の国のアリスのお城みたいだね…」
「……」
それぞれ、廊下を歩きながら感想を述べながら謁見の間へと辿り着く。
「イチカ大佐並びにアン大佐のご帰還である!!」
と誰かの叫びの後に扉が開くが、中の光景に目を疑う。
「ハマーンの馬鹿!!
私の友達がイチカの子供に成ったら、友達からは『ママ』って呼ばれたくないから、イチカのお嫁さんに成れないじゃんか!!
直ぐに取り消せ!!」
バッキィ ドッガァ
「グッハァ!?
ミッ、ミネバ様!?
せめて、お殴りになるなら、フライパンはお止め下さい!?」
「じゃあ、釘バットで殴る!!」
「何処から釘バット!?
ひっ、酷くなってる!?
シャ、シャア、見てないでミネバ様をお止しろ!!」
「シャア、ハマーンは助けなくて良い!!」
バッキィ ドッガァ バッキィ
「ギャァァァ!?」
『……』(「」の人数が多すぎる為、省略)
そう、俺達が開いた謁見の間で見た光景は、先の命令書による三姉妹を養女として引き取る事を知ったミネバ様が怒り、ハマーン様をフライパンで殴る光景に呆然となる。
そして、ミネバ様から殴れタンコブだらけのハマーン様が叫び、先に謁見の間に居たシャア閣下に助けを求めたが、ミネバ様の怒りのボルテージのMAXを振り切り、いつの間にか何処からか出した釘バットでハマーン様は滅多打ちにされていたのだった。
「シャア閣下、助けなくても?」
「シャーロット中佐、君は私に死ねと言いたいのかね?」
「妻を助けるのは、夫の努めだと思いますが?」
「そうね。シャロの言う通りね。
でも一夏、ミネバ様の『イチカのお嫁さんになる』についてはしっかりと説明して貰うわよ!!」
「鈴!?」
「ちょっと、待ってなさい!!」
「キャア!?」
「助かったぞ。
って、ミネバ様!?」
「ハマーン様、ミネバ様を借りるわよ」
「ちょっと、あなた!?」
そして、ここでも正妻化した鈴と俺に対する尋問が始まり、未だにハマーン様をタコ殴り中のミネバ様へと縮地で背後に周り首根っこを掴みながら、イチカの隣に正座をさせる暴挙に出た鈴。
しかし、急な出来事に本来の少女らしい口調の素が出てしまったハマーン様。
「イチカ、お帰り!!」
「ミネバ様、久しぶりだな」
「うん!!」
そして、ミネバ様はイチカの隣へと連れて来られたが、嬉しさの余りイチカへと抱き付くと言う、鈴に喧嘩を売る様なミネバ様の鈴への挑発。
謁見の間は、鈴とミネバ様による修羅場となり、素が出てしまったハマーン様は恥ずかしさの余り、顔を真っ赤にしながら顔を手で覆い隠し、シャアは現状を理解しようとするが、終いには恥ずかしさから泣き出したハマーン様に抱き着かれて、カオスに成り果てたのだった。
無論、シャア閣下の第二夫人のナタリーが謁見の間へと入り、一喝してカオスと言う騒ぎは終結するが、鈴とミネバ様がアンの淹れた紅茶を飲みながら数時間に及ぶ話し合いの末、終始ニコニコ顔なミネバ様と青筋を何本も額に浮かべた鈴の二人。
結論から言えば、ミネバ様の粘り勝ちと言っても過言では無く、せめて成人したら迎え入れると、鈴が折れて決まったらしい。
無論、三姉妹は命令通りに引き取り、織斑家の一員として養女としたのだった。
新たにソロモンでは、シーマ艦隊所属の独立機動中隊として再編成されたオリムラ中隊の補充要員に来たのが、シャロの教え子達の三人が配属され、中隊としては定数割れをしていが、母艦としてシーマ艦隊の元旗艦だったザンジバルⅡ級のリリー・マルレーンが母艦となったのだった。
そして、ハマーン様から受けた命令は、地球降下作戦の一陣として降下し、台湾の宇宙港を拠点とする連邦軍の排除とティターンズの巨大モビルスーツの開発が噂される日本のムラサメ研究所への襲撃が初任務となったのだった。
無論、母艦がソロモンに来るまでは、新人三人を鍛えるべく、ソロモンの士官用宿舎へと新人三人を迎えに行くのだが、三人が曲者揃いだった。
そう、一人は男性だった。
「ハマーン様の命令を受けて、配属になったマシュマー・セロ中尉である!!」
「げっ、新人ってマシュマー!?」
「なっ、教官!?」
久しぶりの再会に二人して驚愕し合う。
そして、残りの二人は女性だった。
「キャラ・スーン中尉だよって、教官!?」
「キャラまで…」
既に、教え子だった事に哀愁感が漂うシャロ。
「シャーロット教官、お久しぶりです。私はイリア・パゾム中尉、よろしく」
「もう、嫌!!
まともなのは、イリア中尉だけだよ…」
三人を見たシャロが完全にゲッソリしながら疲れ果てる姿に、二人は苦労するだろうと俺達は思った瞬間だった。
「シャーロット中佐、その左薬指の指輪は…」
「結婚したに決まってるじゃん」
「なっ、何とぉぉぉ!?
あの、暴力教官が結婚だと!?」
「暴力教官は余計よ、マシュマー!!」
バッキィ
「グッハァ!?」
「あははは!!マシュマー、教官に叱らてやんの」
「キャラ、うるさい!!」
結婚した事に驚き、余計な事を言ってシャロにぶん殴られるマシュマーと、それを爆笑するキャラ。
そして、操縦訓練では豹変するキャラにどうしたら良いのか苦労するアン。
「あっははは!!
身体が熱いのよ!!」
「イチカ、もう嫌…」
三人に不安を抱きながら、母艦であるリリー・マルレーンがソロモンへと到着する。無論、三人の機体は地球での活動を考えて配備された機体の、ゲルググ改だった。無論、娘のナツキと引き取った娘達も乗船して、一路地球に向けてソロモンから出港したのだった。