一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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散る乙女は一輪の花

 

 修理を簡易ながら終わらせたリリーマルレーンが夕方には合流し、簡易ながらも軽い整備と補給をしている。無論、鈴は妊婦という事でパイロットから外されて本来の厨房で鍋を振るう。ただ、妊娠三ヶ月と言う事もあり、俺としては気が気ではない。

 

 そして、新たに来た海兵隊の尽力もあり台湾宇宙港は使える様になり、軌道上のシーマ艦隊からは娘二人が送られており艦内は娘達が騒いで居たりする。

 

 無論、3機のモビルアーマーは沖縄本島の連邦軍基地からは動いていないと潜水艦からではあるが、監視は継続中だった。

 

 「なんで、これだけなんだよ!!」

 

 「はぁ!?

 

 あんたねぇ、食料の補給がまだ来てないの判んないの?

 

 嫌なら、食うな!!」

 

 「くっ…」

 

 厨房のカウンターでは、鈴とカミーユがやり合う光景は三度目だった。食料の補給がシンガポール経由で来てはいるが、レイテとグアムの連邦の制空権内を飛行しなくてはならず、フィリピンの陸路からの輸送と潜水艦による補給で賄うしか無い状況でもあった。

 

 「カミーユ、カッカするな。

 

 これでも、鈴が何人かを連れて朝市から仕入れた食材だ。

 

 鈴、俺には焼き魚定食を頼むわ」

 

 「一夏には悪いけど、焼き魚はメザシになるけど構わない?」

 

 「十分だな」

 

 だが、食料事情もだが第二次降下部隊はシーマ閣下の指揮の元、レイテとグアムを落としてシンガポールから台湾を結ぶ補給路を作るべく部隊の編成中でもあったし、ホンコンのルオ商会から大量の食料の買い出しをシーマ閣下から許可を貰い補給に向かう予定でもあった。

 

 だが、そんな事すら許さないティターンズの襲撃を知らせる艦内に鳴り響く警報に少しばかりかイライラする俺は鈴特製の握り飯を握って貰い、食いながらモビルスーツデッキへと急ぐ。

 

 「アン、沖縄本島のモビルアーマーか?」

 

 「イチカの思った通りになったわよ。モビルアーマーでなくモビルスーツみたいで数は3機だけど、ガトー少佐の報告だとビーム兵器は無効化されたと来てるわ」

 

 「ちぃ、ビームコートかIフィールド持ちかよ。各機体は実弾装備での出撃準備と技量の低いヴァルキリー小隊は母艦の護衛が妥当だな」

 

 アンと部隊編成について話していると、固定作業中の鈴のブラックローズが動き出した事に気付く。

 

 「おい、鈴のブラックローズに誰が乗ってんだ?」

 

 「あたしに聞かないでよ。

 

 えっ、あのガキが乗っているですって!?」

 

 メカニックから鈴の妊娠中の為、モビルスーツハンガーに固定作業中の鈴の近接戦闘特化型のブラックローズ改にカミーユが勝手に乗り込み出撃したと作業中のメカニックが叫ぶ。

 

 「ちぃ、カミーユかよ!?」

 

 「直ぐに出られるパイロットは?」

 

 「あたしとシャロだけね」

 

 「戻ったら、絶対にカミーユをシメてやる!!」

 

 俺達は自分の機体へと乗り込み、ウェポンハンガーからジャイアントバズーカを取るとカミーユを追って出撃したのだった。

 

 

 

 

 現在、台湾に向け向かう3機のサイコガンダムだが、戦後にアナハイムとアクシズが密かに共同開発したムーバルブフレームシステムの技術が連邦へと流出した事と一年戦争の終戦時に制圧したア・バオア・クーの工廠にて九割が完成していたが頭部だけが無いパーフェクトジオング二号機を密かに回収し、ムラサメ研究所にて分析され開発スピードが予定より二年早くロールアウトした機体がこの試作型のサイコガンダムだった。

 

 そして、この試作型のサイコガンダムはパーフェクトジオング二号機をベースにガンダム化して改良して開発されている為にパーフェクトジオングと同じく38mの大きさにも関わらず、近接戦闘も可能な様にハイパービームサーベルを装備している。

 

 無論、試作型の3機が占領された台湾を灰燼に帰す為だけでは無く、ムラサメ研究所の放棄とオーガスタ研究所への撤退をする為の時間稼ぎを意味していた。

 

 「あぁぁぁ、頭が…痛い…」

 

 酷い頭痛に悩まされながらも試作型サイコガンダム3号機の頭部のコクピットは生体モジュール化しており、液体が満たされたカプセルの中には、捨て駒として破棄が決まって更に強化された箒。

 

 「こんな奴、使えるのかよ?」

 

 そして、試作型サイコガンダム1号機に乗り込み箒の監視役となった強化人間のプロト・ゼロ。

 

 「ふん、知るもんか!!」

 

 試作型サイコガンダム2号機に乗り、同じ箒の監視役であるプロト・ゼロに噛み付きながら文句を言うフォウ・ムラサメ。

 

 この3機は、ロケットブースターの一段目を切り離すと台湾に向けて加速して行くのだった。

 

 

 こちらも、台湾上空付近にてロケットブースターを切り離したモビルスーツを発見する。

 

 「アン、アレか?」

 

 「そう見たいね。

 

 大きさ的には、シャア閣下の独立戦争時のア・バオア・クーで見たパーフェクトジオングと変わらないわね」

 

 だが、発見と同時に3機の巨大な敵モビルスーツから拡散メガ粒子砲を放ち牽制してくる。

 

 「各機、散開!!」

 

 「「了解!!」」

 

 『「!?」』

 

 散開した瞬間だが、ニュータイプなのか強化人間なのかは判らない。だが、『01』と書かれたあの機体のパイロットは危険だと稲妻が走る様に感じたのだ。そして、1号機のパイロットであるプロト・ゼロも蒼と白で染められたブルーローズのパイロットをニュータイプだと確信して、最大の脅威だと二人して同時に認定したのだ。

 

 そして、先行して無断出撃したカミーユのブラックローズだが、『02』と書かれたサイコガンダムと戦闘に突入していた。

 

 「ちょこまかと、ネズミがぁ!!」

 

 「くっ、この機体は親父が開発したマークⅡより扱い辛い!?」

 

 胸部の拡散メガ粒子砲を放つサイコガンダムだが、グリーン・ノアの工廠で一度だけ親父の目を盗み操縦したプロトタイプのガンダムマークⅡよりも扱い辛いと叫びながらも、大型スラスターを上手く使いながら拡散メガ粒子砲を躱してビームライフルを放つがIフィールドにビームを弾かれるだけだった。

 

 アンとシャロは連携を組みながらも、箒のサイコガンダムと対峙しており、イチカの妻達VS箒と言う構図となり、箒は記憶を抹消されながらも、唯一消えなかったイチカへの恋する想いと邪魔する3人から感じる感覚だけは消えずにイライラを募らせる。

 

 「ぐっ、アァァァァ!?

 

 貴様等か!!

 

 貴様等が居なければ一夏は、私の物だったのに!!」

 

 「まさか、箒なの!?」

 

 「マッ、マジで!?」

 

 「うわァァァ!?

 

 消えて無くなれぇぇぇ!!」

 

 「「やっ、ヤバァ!?」」

 

 「泥棒猫がちょこまかと!!」

 

 「うっわぁ、完全な逆恨みだよ!?」

 

 「シャロの意見には賛成ね!!」

 

 箒の操る試作型のサイコガンダムの全身から放たれる拡散メガ粒子砲とビーム砲はアンとシャロのブラックローズへと襲い掛かるが、二人はスラスターを全開にしながら散開してビームを躱して、反撃にジャイアントバズーカを放つがサイコガンダムの強靭な装甲に阻まれていたのだ。

 

 「ちぃ!?」

 

 「ニュータイプか!?」

 

 こちらでも、イチカとプロト・ゼロによるモビルスーツ戦を展開するが、試作型のサイコガンダムからの振り回すハイパービームサーベルと拡散メガ粒子砲を躱しながらカウンターにファンネルを展開してビームを放つがビームは弾かれたりジャイアントバズーカは箒のサイコガンダム同様に効果は無い。

 

 

 そして、完全な膠着状態となりイチカ達は後退を余儀なくされ、後退を繰り返す内にサイコガンダム3機に台湾の市街地に押し込まれる形となり益々戦況が悪化する事態となる。

 

 「落ちろネズミが!!」

 

 「くっ、住人達が!?」

 

 「ギャァァァ!?」

 

 「ママァァァ!!」

 

 フォウの操るサイコガンダムの拡散メガ粒子砲により、市街地のビルや露店が吹き飛び逃げ惑う住人達へとビルの残骸やメガ粒子砲が襲い、市街地は地獄へと変わる。だが、それはイチカ達も同じでイチカは辛うじてビームソード付きビームライフルのビームソードでプロト・ゼロのサイコガンダムに瞬時加速して肉薄してハイパービームサーベルを握る右腕を切り落としたが、再び拡散メガ粒子砲を放たれ離脱を繰り返し、アンとシャロは箒のサイコガンダムの両腕の肘関節にジャイアントバズーカを撃ち込み、両腕の破壊には成功する。

 

 「ニュータイプが落ちろ!!」

 

 「被害が!!

 

 南無三!!」

 

 「なっ!?」

 

 「貰ったぁ!!」

  

 「サイコガンダムが倒れる!?

 

 だが!!」

 

 「腕が!?

 

 だが、これで!!」

 

 拡散メガ粒子砲を放ったスキをビル伝いに回避し、瞬時旋回加速で地面スレスレを飛びながら急接近して、ゼロのサイコガンダムの左脚の膝関節を斬り裂きサイコガンダムを転倒させるが、ゼロのサイコガンダムが意地で放った左手のビーム砲のビームがブルーローズの左腕を直撃してシールドごと左腕を吹き飛ばす。

 

 「グッワァァァァ!?」

 

 左腕を失いながらも、ゼロの倒れたサイコガンダムビームソードを股に突き刺しながら股から頭部へと加速しながら斬り裂き、ゼロはビームソードのビームに焼かれて即死し、斬られたサイコガンダムは数棟のビルを巻き込みながら爆発したのだ。

 

 無論、爆発に巻き込まれた住人はほとんどが即死する被害を出して…

 

 そして、カミーユとフォウにも決着が着きつつあり、鈴のブラックローズ改の扱い方を理解し始めたカミーユは、加速しながらフォウのサイコガンダムの両腕を鈴のブラックローズ改の専用装備の大型のビームソードを抜くとビームソードで左腕と胸部の拡散メガ粒子砲を斬り裂く事に成功するが、カミーユとフォウだが、戦っている内に惹かれ合った様で、カミーユはフォウに説得を繰り返していた。

 

 「フォウ!!」

 

 「カミーユ!!」

 

 「俺はフォウを助ける!!」

 

 「あぁ、腕と胸部が!?」

 

 「逃がすかよ!!」

 

 フォウのサイコガンダムの頭部のバーニアを吹かしてフォウは脱出を試みるが、カミーユのブラックローズ改が咄嗟に出来た瞬時加速で脱出を図るサイコガンダムの頭部を捕まえて頭部を地面に降ろすと、コクピットハッチを開けてフォウの下に行く。

 

 「フォウ!!」

 

 「カミーユ、来ないで!!」

 

 パンッ

 

 「ぐっ!?

 

 でも、フォウ!!」

 

 「あぁぁ…」

 

 「もう、大丈夫だからフォウ…」

 

 カミーユは肩に拳銃で撃たれるが、フォウを優しく抱き締めるとフォウは力無く拳銃を落として戦わなくて良い事に理解するとサイコミュの呪縛から解けて、カミーユの胸の中で震えながら小さく声を上げながら泣くのだった。

 

 「一夏は私の物だ、泥棒猫がァァァ!!」

 

 「やばぁ、躱しきれない!?」

 

 「アン!!」

 

 「グッハァ!?

 

 ………」

 

 そして、アンとシャロだが共同で両腕の破壊には成功するもののサイコガンダムが胸部の拡散メガ粒子砲をアンのブラックローズの両脚に食らい、脚部を失いビルに制御を失う形で突っ込み、ビルに刺さるブラックローズは大破してアンはコクピット内で気絶する形で離脱する。

 

 「箒、よくもアンを!!」

 

 「泥棒猫がもう一匹居たか!!」

 

 「キャァァァ!?」

 

 アンをやられて逆上したシャロは、ブラックローズを瞬時加速してサイコガンダムへとビームサーベルを抜き肉薄しながら地面スレスレを飛ぶが、健在なサイコガンダムの脚でシャロのブラックローズを蹴り飛ばすが、咄嗟に投げたビームサーベルは蹴り飛ばした脚へと刺さりサイコガンダムの右脚は大破する。

 

 そして、蹴り飛ばされたシャロもアンと同じくビルに激突したブラックローズのコクピット内部でシャロは、ビルに激突した衝撃でシートから飛ばされる様に球体モニターへと頭からぶつかり、ノーマルスーツのヘルメットのバイザーが砕けて顔を切り血を流しながら気絶したのだった。

 

 ゼロを撃破したイチカは、アンとシャロに間に合わなかった事を悔やみながらも箒を自分の手で殺す事を決断する。

 

 「箒、ゴメンな…」

 

 「あぁ、この感覚は一夏なのか!?」

 

 ブルーローズのバックパックのラックに掛かる雪片弐式を抜くと、カプセルから抜け出してコクピットハッチから箒が出て来て手を振るが、いつの間にか流れ始めた涙と共にリミッターを切り最大出力でビームを展開した雪片弐式で箒が見えるサイコガンダムの頭部から胸に掛けて雪片弐式を振り下ろしたのだ。

 

 「箒、恨むなら俺を恨んでくれても構わない。

 

 可哀相だけど、直撃させる!!」

 

 「一夏……」

 

 そして、サイコガンダムは頭部から胸を斬られて爆発し、コクピットハッチから出ていた箒は俺が振り下ろした雪片弐式のビームに焼かれながらノーマルスーツは弾けて行き、全裸になった箒はにこやかに笑いながら『一夏、ありがとう…』と呟きながらビームに完全に焼かれて蒸発したのだった。

 

 「箒の馬鹿野郎!!」

 

 俺は、ブルーローズのコクピットを開けて未だに燃え続けるサイコガンダムに叫ぶのだった。そして、戦場になった場所には一輪の花が綺麗に咲き誇っており、まるで箒へと送る別れの花の様に見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

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