ムサシへの人員の引っ越しと物資の積み込み作業に一週間は取られたが、ソロモンにて束さんがニナさん達に合流して完成させたシャア閣下の専用機のナイチンゲールをモビルスーツデッキへと搬入してハンガーに固定し、ムサシのモビルスーツデッキにはブルーローズ系統のモビルスーツとギャン改にゲルググ改でひしめき合いながら搭載されており、ガザDからブラックローズ改へと機種変更したヴァルキリー小隊の面々はシャロによる機種変更に伴う地獄の訓練を受けていた。
「ひゃぁぁぁぁ!?」
「モビルアーマー形態より早い!?」
「ウップゥ…吐きそう…」
「なぁ、マイクロミサイルポッド内蔵型大型ブースターをマイクロミサイルポッドだけにした支援型にしてやった方が良いんじゃないか?」
「そうなると機動力はかなり落ちるのよね…」
モニターを見ながら、ムサシの周囲で訓練を行うヴァルキリー小隊の機種変更による慣熟訓練では、急激なGによる悲惨な悲鳴と女性としてはイケない様な惨状がモニター越しに見える為に二人は頭を抱える。
無論、低コストによる量産化に成功したブラックローズはアクシズからソロモンに派遣されているベテランパイロット達には高い定評があり、ゲルググ改とリゲルグから順次機種変更をしながら配備数を増やしていたのだ。
ただ、オリムラ中隊仕様は量産型とは違い、IS技術を盛り込まれて製造されており大気圏内ではドダイ改を使用しなくとも空中戦が可能となっている。
ヴァルキリー小隊仕様のブラックローズはカラーリングは純白になっており、高出力のビームサーベルを腰のアーマーに装備し、専用のビームライフルはビームソード付きビームライフルではなくビームソードを外したタイプのビームライフルとしている点が唯一の違いだったりする。
それでも、ヴァルキリー小隊仕様のブラックローズは量産型に近い性能にリミッターを掛けて落としてあるのは技量の低いヴァルキリー小隊を心配する束さんの仕業だったりするのだ。
だが、性能を落としてあっても、ヴァルキリー小隊の面々はアンマンに着くまでには扱える様に厳しく訓練をすると心を鬼にすると決めたシャロだった。
翌日、全ての作業が終わりソロモンの宇宙港からムサシがサイクロプス隊の母艦であるムサイ改の二隻を伴い、アンマンへと針路を変えて出撃する。
両脇にムサイ改が護衛する形で暗礁宙域を巡航速度で航行中ではあるが、リリーマルレーンの旧式のレーダーの時とは全く違い、最新鋭の高性能レーダーを積んでいるムサシは連邦軍の艦隊を捕捉する。
「イチカ大佐、連邦軍の艦隊を捕捉。
如何しますか?」
「やり過ごすには暗礁宙域がベストだけど、ムサシの主砲の有効射程圏内なんだろ?」
「はい、有効射程圏内である距離は49000ですね。
左舷砲撃戦に移行しますか?」
「当たるか?」
「砲術長のナカシマ大尉の腕前なら確実に…」
「なら、艦種の特定は済んでいるか?」
「はい、サラミス改級が三隻ですね」
艦長のツキノ中佐が淡々と報告しながら、連邦軍のサラミス改をどう撃沈するかを話し合いながら詳細を決めて行く。そして、ツキノ中佐は航宙艦ではタブーとされる腹を見せる行為となる左舷砲撃戦を提案し、Tの字戦法による航路阻害しながらのムサイの主砲の三連装の大口径のメガ粒子砲によるアウトレンジ攻撃を行う旨を伝える。
「砲撃指揮はツキノ中佐に任せる」
「ハッ!
これより、左舷砲撃戦を取る!!
転舵一杯、主砲戦闘用意!!」
「「「了解!!」」」
ツキノ中佐による号令により、艦橋上部の主砲の射撃指揮所と連動しながら前部のニ基の三連装メガ粒子砲と後部の一基の三連装メガ粒子砲の主砲が可動してサラミス改へと狙いを定める。
『照準良し!!』
「撃ち方始め!!」
ナカシマ大尉からサラミス改への照準を定めた報告が入り、ツキノ中佐は主砲の射撃命令を下す。
サラミス改でも、ムサシの存在にはメガ粒子砲による砲撃で気付いた様だったが、時差射撃による九条のメガ粒子砲による砲撃を回避する間もなく、楔形に展開するサラミス改に吸い込まれる様に艦橋へとメガ粒子砲が直撃して艦橋が吹き飛びながら腹を見せた所で時差射撃による止めとなる三条のメガ粒子砲が突き刺さり一隻のサラミス改は轟沈する。
『何処からの砲撃だ!?』
『艦長、距離49000からの砲撃です!!
艦種不明!!
アクシズの新型艦です!!』
『何だと!?
撃ち返せ!!』
『敵の砲撃は本艦の射程距離外からで反撃不可能です!!』
ブリッジクルーの女性クルーが叫び、サラミスの艦長は錯乱する。既に、僚艦だったサラミス改級のソルトレイクシティはメガ粒子砲の直撃により轟沈し、片方の僚艦のシカゴは連装のメガ粒子砲を放つが有効射程距離外なのもあるが、ムサシからのアンチビーム爆雷を使われ、メガ粒子砲が無効化され有効打すら出せないのだった。
無論、艦隊戦の最中にモビルスーツ隊を展開するのは危険極まり無く、シカゴからモビルスーツ隊のジムⅡを出そうと慌てふためき艦首のカタパルトから出そうとするが、ムサシの主砲と副砲による全門斉射にジムⅡに副砲のビームが直撃して貫通して対空射撃用の支柱を吹き飛ばしながらシカゴの艦橋に着弾して下層にいたブリッジクルーが船外へと吐き出される惨状となる。
『アズサ艦長、降伏を…』
サラミス改級のパナマのクルーでレーダー要員の女性士官のキサラ少尉はシカゴの惨状を通信で確認した後に艦長に降伏を促す。
『あぁ、降伏しよう。
全責任は私が取ろう…』
サラミス改級のパナマはムサシへと降伏を通信で伝えて降伏する。無論、ムサシとムサイ改に囲まれながら武装解除を行い、大破漂流中のシカゴへと救助隊を出してクルーを救助を行い、クルーをパナマへと移すとムサイ改に牽引される形でアンマンへと向かったのだった。
アナハイムのアクシズのモビルスーツを手掛けるのは、本社のある月面都市のグラナダに次ぐモビルスーツ工場を構える月面の工業都市にしてエゥーゴの本拠地でもあるアンマン。
そして、アンマンのアナハイムの工場ではエゥーゴの最新鋭の重モビルスーツのリックディアスとマラサイが急ピッチで製造が進められ、別の工場ではアクシズ向けのゲルググ改とリゲルグ並びにガザDが製造されていた。
無論、エゥーゴの最新鋭の強襲揚陸艦のアーガマ級の一番艦のアーガマとラーディッシュ級戦艦のラーディッシュも就航して、エゥーゴは月面のティターンズと連邦軍を排除した時以上に戦力が回復しつつあった。
「クワトロ大尉、リックディアスが完成しましたな」
「アポリー、エゥーゴがアクシズの下部組織になった以上は、私はシャア・アズナブルだよ」
「そうでしたな、閣下」
「それに、リックディアスの完成に漕ぎ着けたのは、イチカくんのブルーローズの稼働データのお陰だよ」
「それと、回収したジムⅡのデータを元にネモとジムⅢの開発に入れたのは大きいですね」
「おや、ドレッサ技士はソロモンからお早いお帰りだな」
「あら、愛しいウラキ中尉の為に自宅の部屋を掃除したいと思いましたので、イケませんか?」
「……」
シャア自身もドレッサ技士がこうまでもやり手だとは知らなかった。ガトー少佐のガンダム強奪の成功の裏にはドレッサ技士がニナ技術技士とガトー少佐の復縁を成功させた事からあまり強くは言えず、ソロモンではウラキ中尉を慰めたり手料理を振る舞い落したらしい。
ドレッサ技士は足早にモビルスーツ格納庫から工場の事務所へと上がり姿を消し、残された三人は既婚者故に女性の怖さを改めて実感した瞬間だった。
そして、リックディアスのコクピットに入り、慣熟訓練をしながらイチカ達の到着を待ったのだ。
3日後、アンマンのドックにはアクシズからの増援が到着し、アーガマの脇にはムサシが係留されたのだ。
「かなり、デカイ艦だな」
「ヘンケン艦長?」
アーガマのブリッジからムサシを眺め、あまりのデカさに驚愕しながらもムサシもアナハイム社製の艦だったと思い出す。それでも、前部に背負い型に配置され後部にもある巨大な三連装のメガ粒子砲の主砲をアーガマに向けられたら轟沈するだろうなとつい思ってしまうが、戦艦以上の火力が在りながらも艦載数が脅威だと思う。
「あぁ、そんな時間か…」
ヘンケンはモビルスーツデッキへと急ぎ、ムサシから搬入されるモビルスーツを確認に急ぐのだった。
「ほう、これがナイチンゲールか…」
「えぇ、閣下」
「ハマーンにもか?」
「はい、ソロモンの工廠では急ピッチに組み立て作業中です」
ニナがシャア閣下にムサシから降ろされ、アーガマに搬入されたナイチンゲールの説明をしながら、最終調整を束さんと推し進める。
ムサシからも人員移動かあり、アーガマへと移るのはカミーユ、ファ、ウラキ中尉、キース夫妻となる。
無論、カミーユ達のモビルスーツはカミーユ機のブラックローズ改とウラキ中尉とキース中尉のゲルググ改が移動となるが、ゲルググ改の代わりに二人にはリックディアスが支給される予定だった。
そんな忙しい最中、一人のアクシズの高官が束さんに殴られ吹き飛ぶ。
「是非、君を…」
バッキィ
「グッハァ!?」
「近寄るな蛆虫!!」
束さんに殴られた男性にシャアは見覚えがあった。
「グレミー・トトか…」
彼女を靡かせるのは、シャア自身でも不可能に近い。それは、イチカ大佐を大切にしているのは彼女でもあり、シャア自身もイチカ大佐を経由。いや、利用したにすぎない。それでも、殴られただけで済んだのは運が良かったのもあるだろ。
それに、イチカ大佐の身内には養子にしているエルピー計画の5つ子姉妹がいる。
唯でさえ、イチカ大佐の妻達からも嫌われているに彼女を引き抜こうと声を掛ける事自体がシャアからしたら自殺行為に等しいと理解して欲しいと思うのだった。