俺達が新型機の慣熟訓練に勤しむ頃、シャア閣下指揮下のジャブロー攻略部隊はジャブローの密林へと降下して連邦軍の守備隊であるモビルスーツ隊と激戦を繰り広げ、降下から半日で飛行場と宇宙船ドックを制圧して配下に収める。
「ティターンズのモビルスーツ隊が居ないな…」
「ティターンズのモビルスーツが居ない事に不満かシャア?」
制圧した飛行場に設けられたテントの中では、第二次降下作戦で合流したハマーンがシャアにホットコーヒーを手渡しながらシャアへと質問する。
「いや、連邦軍の本隊だけって言うのが引っ掛かってな…」
「まさか、連邦軍の本隊が囮だと言うまいなシャア」
シャアとハマーンの予感は当たり、ジャブローには連邦軍のモビルスーツ隊のみしか居らず、ティターンズの狙いは別であり、この時のティターンズの主力は全て宇宙に上がり、月周回軌道に近いサイド7のアクシズに襲撃され破壊されたグリーンノア2のコロニー付近にて集結中だった。
それでも、先に前の大戦でジャブローの入り口を知っていたシャアは別働隊としてサイクロプス隊のアンディ達をジャブローに潜入させており、潜入調査により地下施設からはジャブローの連邦軍基地にティターンズにより自爆用に設置された核弾頭のMK-85を見付けて解体させて処理していた。
無論、アクシズとエゥーゴの連合によるモビルスーツが投入された数は独立戦争時より少ない86機が投入され、抵抗を続ける連邦軍のモビルスーツの総数である230機と数的には不利だったが、第一世代のモビルスーツが大半の連邦軍と第二次降下作戦で投入された最新鋭の量産型のブラックローズやマラサイなどを扱うベテランパイロットの活躍により、既に本部付近を守備する60機程度までに数を減らしていたのだった。
それでも、地上からの入り口を死守する連邦軍の抵抗は激しく、台湾を守備するシーマ艦隊の第一次降下作戦の部隊を呼び出そうかと悩むシャアではあるが、軌道上にて待機するアーガマからの通信により霧散する。
『シャア閣下、ブライトだ。
月面の守備艦隊からの緊急信により、グラナダへとティターンズの主力艦隊が向かっていると知らせが入った』
「動ける艦隊はあるのかブライト?」
「イチカ大佐の精神状況がそのままなら、イチカ大佐の部隊の投入は避けたいが、オリムラ中隊の他の隊員と母艦のムサシはソロモンに待機中だな」
先日の戦闘では、オリムラ中隊への壊滅判定と新造艦であるムサシの中破の知らせにシャアでも流石に慌てた。
それでも、オリムラ中隊はシロッコと名乗る木星帰りのモビルスーツと数機のモビルスーツから襲撃されて、イチカ大佐の機体は大破しながらもシロッコを退けたらしいが、妻の仲間入りを果したジュンコ少尉がイチカ大佐を庇い戦死し、妻のアン大佐も撃墜され瀕死の重傷だと報告から聞いていた。
無論、オリムラ中隊のモビルスーツ隊は、この戦闘により半数以上が酷く損傷しながらもパイロット達だけが無事だった事が幸いしたのだが、実戦に耐えられ可動出来るモビルスーツの大半を失った理由により部隊の壊滅判定とシャーロット中佐が自ら判断を下して、宇宙要塞のアクシズへの強行偵察任務を中断し、ソロモンへと撤退したらしい。
「シャア、イチカ大佐の心配か?」
『ハマーンも地球に降りていたのか!?』
「ほう、シャアからも聞いていたが、木馬の艦長だったブライト艦長がアーガマの艦長だとは皮肉な物だな」
「それよりも、ムサシは別としてだが、イチカくんの部隊は動けるのか?」
『ちょっと待って下さい。
トレース。
判った伝える。
イチカ大佐から動けるとムサシから通信があった』
オリムラ中隊が動ける事に安堵するシャアとハマーン。グラナダを失えば、エゥーゴとアクシズはモビルスーツを入手するにはソロモンの工廠と小さいながら製造ラインがあるルナツーに頼るしかない。だが、資源はグラナダ経由でしか入らない。
それでも、シャアはグラナダの未来はイチカ大佐のオリムラ中隊に託すしか無かったのだった。
ソロモンでは、オリムラ中隊の母艦であるムサシが急ピッチで出撃準備を進めていたのだ。モビルスーツデッキでは、オリムラ中隊の最新鋭のブルーローズMK-ⅡやブラックローズⅡがモビルスーツハッチが開き行き来する作業用ポッドでの搬入作業に追われ、食料や弾薬などは物資専用の搬入経路から次々とコンテナが運び込まれ艦内は戦場化していた。
「搬入班、もたもたしてんじゃないわよ!!」
ブリッジでは、ツキノ中佐がこめかみに青筋を浮かべながら激を飛ばして搬入班のクルーへと急がせる様にと命令する。そして、大量に消費をするだろう、ヘヴィマシンガンの弾丸も大量に生産され、出来た物からコンテナに詰められてはムサシへと搬入される。
「くっ、修理と改装で物資を全て降ろしたのが裏目に出たわね…」
「ツキノ、艦長の君が慌てるなよ」
「イッ、イチカ大佐!?」
「グラナダとアンマンにはアクシズとエゥーゴの守備艦隊が居るし、アンマンにはノイエ・ジールを受領して訓練中のガトー中佐もいる。それに、カミーユが束さんから教わりながら設計した例のモビルスーツも完成したらしいから大丈夫だろう」
「Z計画のモビルスーツが完成したんですか!?」
「まぁ、アナハイムには束さんの大親友のニナさんが出向して居るし、ブルーローズMK-Ⅱに搭載されたバイオセンサーやバイオコンピュータをアナハイムで開発が決まった段階で送りつけたからなぁ…」
アンマンのアナハイムの工場では、エゥーゴの地上軍とも言えるカラバ向けの可変型モビルスーツが、Z計画に基づいて開発されたデルタガンダムとゼータプラスを主力機とした部隊がアンマンに居るらしく、ゲルググ改とリゲルグから機種変更したキマイラ隊もアナハイムからその計画されたモビルスーツを受領して訓練中だったとニナさんから聞いていた。
多分、その部隊がそうだろうなと俺は思う。
それでも、ムサシの出撃には後数時間は掛かると見ている。だが、今回の出撃はムサシが旗艦を努めながらもソロモンにて待機するシーマ艦隊の旗艦のアカツキとムサシ級の二番艦のヤマシロの3隻にて艦隊を組み出撃する予定だったが、軌道上からはアーガマとシーマ艦隊の艦艇を入れた4隻がソロモンに急行中であると知り、改装されたムサシだけが急行する形でグラナダへと先行して向かう。
そんな最中に束さんはソロモンのラボでは、今回の新型機を製造させる為だけに量子変換でパーツを製造する、IS技術の塊とも言える専用のパーツの製造機を十数台を作り上げて製造ラインに配備していた。
無論、このラインで製造に携われるのは束さんと面接を受けた技術者のみで、受かったのが殆どが女性技術者だっが数名の男性技術者以外で、この工廠を顔パスにて入れたのはアーガマのメカニックチーフのアストナージさんただ一人だけだった。
五時間後には、搬入班の奮闘と頑張りのお陰で終わりムサシはグラナダへと進路を取り出撃するが、ソロモンから離れて直ぐからモビルスーツ反応があり、アンがクリスとエマを連れ確認の為に出撃する。
「アン、ブラックローズⅡ出るわよ!!」
「エマ、ブラックローズⅡ行きます!!」
「クリス、ブラックローズⅡ行くわよ!!」
ムサシのカタパルトから射出された3機のブラックローズⅡはレーダー反応がある宙域へと向かうが、見えた先の岩礁から逃げているだろう、一筋のスラスターの光が見え、アンほスラスターを全開してその光を追うが、従来機とは違いリニアシートに押付けられる様なGがアンを襲う。
しかし、IS技術を用いた対G防御技術に関してはノーマルスーツの改良へと繋がり、従来のブラックローズのフル加速で起きるGを十分の一以下まで軽減する新型のノーマルスーツまでも束さんの手により作られ、ブラックローズⅡのロールアウト以降のアクシズのノーマルスーツはこのG軽減型のノーマルスーツへと変わる事になる。
そんな、凄まじいGの中で加速を続けるアンのブラックローズⅡは偵察していたハイザックのバリエーション機のアイザックへと追い付く。
「見付けたわよ!!」
『何だ、いつの間に!?』
アイザックのパイロットが驚愕の表情に染まりながらも、120ミリマシンガン改をブラックローズⅡへと放つが、ブラックローズⅡはビームシールドを展開しながら更に加速し、ショットランサーを構えたアンのブラックローズⅡが凄まじい加速をしながらマシンガンの弾丸をビームシールドで受け止め、アイザックから一度消えた様に見せる為にフェイクで瞬時に後ろに周り、アイザックのカメラの死角である股下から一気に近付き構えたショットランサーを射出してコクピットを貫きアイザックを撃破する。
無論、アイザックのパイロットはショットランサーのランスに貫かれて即死するが、この日はパイロットの妻の誕生日でもあり結婚記念日だった。
アン達のモビルスーツが帰還した後、ムサシは最大船速まで加速してグラナダへと向かう。
そして、ソロモンから出撃してからムサシの最大速度により2日でグラナダが遠望出来る距離まで到着し、ムサシのレーダーからはグラナダを挟んだ向こう側から迫るティターンズの艦隊を補足する。
「イチカ大佐、ティターンズの艦隊をレーダーにより補足!!」
「モビルスーツが出るには遠い。
なら、艦隊戦を用意しろ!!」
「対艦戦闘用意!!
ムサシはこれより、ティターンズの艦隊へ長距離射撃による艦砲射撃を実施する!!
主砲、撃ち方用意!!」
艦長のツキノ中佐の号令により艦内は第一級戦闘配備に変わり、艦内の隔壁は閉じられて居住区の娘達は鈴が居る食堂へとノーマルスーツに着替えて避難する。無論、MS隊員達もモビルスーツデッキの待機室へとノーマルスーツに着替えて集まり、艦内は臨戦体制へとなったのだった。
「艦長、戦闘準備良し!!」
「撃ち方始め!!」
ムサシの主砲の連装型のハイメガ粒子砲が眩い光を出しながらティターンズの艦隊へと放たれ、アウトレンジからの長距離射撃を実施する。
「観測班から、前衛のサラミス改へ直撃を確認!!」
「ティターンズの艦隊の有効射程に入るまで、撃ちまくりなさい!!」
ティターンズの前衛艦隊のサラミス改は、ムサシのハイメガ粒子砲が船体を貫く様な直撃により大爆発をして轟沈する。
無論、ティターンズの艦隊もムサシへと反撃に転じるのだが、ムサシからの自軍艦隊の射程距離外からの長距離射撃ではただ殴られるだけの状態になり、再び放たれたハイメガ粒子砲は前衛艦隊の旗艦のバーミンガム級戦艦のブリッジへと撃ち込まれ轟沈してティターンズの前衛艦隊は更なるパニックを起こす事になるのだった。
ただ、数隻のサラミス改を盾にしながら突き進む、アレキサンドリアに座乗するのはティターンズのバスク大佐の腹心のジャマイカン少佐だったが、二隻のサラミス改の犠牲を払いながらアレキサンドリアの有効射程距離内へと入る事に成功する。
「アレキサンドリア、急速接近!!」
「副砲の有効射程距離内に入りました!!」
「アンチビーム爆雷を投下し、副砲も応戦開始!!」
サラミス改とアレキサンドリアからのメガ粒子砲がムサシへと襲い掛かるが、メガ粒子砲はアンチビーム爆雷により無効化され、ムサシの副砲も射撃を始めた為にアレキサンドリアを護るサラミス改は瞬く間に撃沈されてしまう。
「主砲、撃てぇぇ!!」
そして、ムサシの副砲の第七射目にはアレキサンドリアを捉え、前部のカタパルト付近に副砲のビーム砲が着弾する。
「ジャマイカン少佐、カタパルトに被弾!?」
「うっ、撃て!!」
アレキサンドリアがメガ粒子砲を放っても、ムサシのアンチビーム爆雷により無効化されている事実を認めたくないジャマイカンだったが、ムサシの主砲がアレキサンドリアに向きハイメガ粒子砲を放たれた後、アレキサンドリアにムサシから放たれた六条のハイメガ粒子砲が全問命中をして、アレキサンドリアは轟沈しながらサラミス改を巻き込み大爆発したのだった。
そして、前衛艦隊が壊滅するが、ドゴス・ギアを旗艦とするティターンズ本隊との激しい砲撃戦となるのだが撃ち合うのは同じ射程を持つムサシとドゴス・ギアだけであり、アンチビーム爆雷を使いながらドゴス・ギアの砲撃を無効化し、ムサシも主砲を撃ち返す。
「ツキノ、慌てたら負けだ。落ち着いて行けよ」
「はい、イチカ大佐」
ツキノ中佐は、ドゴス・ギアへの砲撃を辞めて周囲の艦艇へと狙う様に命令を下し、ドゴス・ギアからの砲撃はアンチビーム爆雷で無効化が出来ている距離だと安心しながらも距離には注意する様にと観測班へと命令しながらバーミンガム級戦艦へと砲撃を始めたのだった。
しかし、ドゴス・ギアも砲撃を辞めた事に疑問に思ったが、答えは直ぐに判る。
「イチカ大佐、アンマンからの防衛艦隊です!!」
「判った。通信班、防衛艦隊には距離7万以降には入るなと送れ!!
ドゴス・ギアからの砲撃で沈むぞ!!」
「りょ、了解!!」
アンマンからの防衛艦隊の司令官はムサシからの通信により、距離八万で停止してムサシの砲撃が邪魔にならない距離の維持を努めながらもベースジャバーに載せた量産型のマラサイの出撃準備を始める。
「ツキノ、ムサシの指揮を任せる」
「イチカ大佐、ご武運を」
ツキノ中佐が敬礼しながら見送り、俺はモビルスーツデッキへと向かう。既に隊員達はコクピットに入り出撃命令が俺から出るのを待っている状態だった。
「オリムラ中隊、全機出撃!!」
『了解!!』
モビルスーツハッチが開き、俺のブルーローズMK-Ⅱがカタパルトに接続され、反対側のカタパルトにはアンのブラックローズⅡが接続されていた。
「イチカ、ブルーローズMK-Ⅱ出る!!」
「アン、ブラックローズⅡ出るわよ!!」
隊長機のブルーローズMK-Ⅱが射出されたのを皮切りに次々とモビルスーツ隊が射出され出撃する。
無論、ドゴス・ギアでも俺達の出撃を察知してモビルスーツ隊を出撃させる。そして、シロッコに拾われたジェリドも新型機のガブスレイに乗り、ドゴス・ギアからのモビルスーツ隊と共に出撃したのだった。