アンマンのアナハイムのドックに入港したムサシだが、取調室の椅子に座るのは捕虜となりイチカの過去最大級のレベルとも言えたラッキースケベの被害者となったマウアーは目尻に涙を浮かべながらイチカへと叫ぶ。
「ラッキースケベだと言え、私にあんな事されたらお嫁に行けないじゃない!!」
「ごっ、ごめんなさい…」
「流石に今回ばかりは、イチカをフォロー出来ないわね」
イチカに呆れながらも、最終的に腰を自ら振り始めたマウアーにも強く言えないが結果的に中へと出した責任はイチカが取らないといけない事は判ってはいるが、マウアー自身も快楽をイチカに求めてしまった事に理解していた為に責任を取れと直接は言わずに遠回しで言っている時点で同じだと取り調べに同席するあたしは思う。
しかし、この事件は妻達全員に知れ渡り、鈴の部屋にて事件の間接的な原因を作ったあたしが妻会議から外された話し合いとなり、マウアーをどうするのかが議題の妻会議の真最中だと言って置く。
「ティターンズについては全て話すわよ。でも…」
マウアーの言葉は続かず、静かに泣き出す。
あたしがあの後に束さんに頼み、検査器によるマウアーの生理周期を調べた結果が、あの日が最も妊娠しやすい危険日だった事が判り、それが原因で妻会議が紛糾しているとシャロがキレながらメールで知らせる。
明らかに、キレやすいあたしがいても妻会議で更に紛糾するだろうし、あたしがマウアーに避妊薬のピルを飲む事を勧めたが、毒殺されると思われて拒絶しピルを飲んでいない。なら、イチカの子供を身籠るのは確実だと思うが、正妻の鈴はマウアーと今日の夜にでも話し合いの場を設けて話し合う予定だった。
「はぁ、どうしたら…」
「そう言えば、アンだったかしら?」
不意に泣き止んだマウアーがあたしに話し掛ける。
「オリムラ中隊の副隊長のアン・オリムラ大佐よ」
「やっぱり、私をオバサン呼ばわりした声の主はアン大佐だったのね?」
マウアーはアンに言いながらも、着替えとして支給したアクシズの士官用の制服のポケットから一枚のカードを出す。
「これは?」
「私がオバサンでは無い証拠ね」
マウアーのカードはティターンズの身分証明をするカードであり、マウアーの年齢は17歳と表記され、一昨日に誕生日を迎えたあたしと同い年だった。
「なる程、オバサンに見えたのはマウアーは苦労しているからか…」
「それ、どういう意味よ!?」
カードを見て、顔写真と本人を見ながら実直な感想をマウアーに言うと食って掛かる様に叫ぶ。
「だって、マウアーは知らないと思うけど、ティターンズって女性に一番嫌われているの知らない?」
「確かに聞いた事はあるけど、本当なの?」
確かに、女性に嫌われている話は本当の話である。
元ティターンズの女性パイロットであり、イチカの妻となったエマさんとクリスが言っていたのだから間違い無い。
何せ、シャア閣下の協力者のカイさんが手に入れた元ジオン兵で女性パイロットだった彼女の最後の生きていた姿となる映像は、ティターンズの撲滅運動へと繋がった衝撃的な映像の一つだったし、アクシズに未だに増え続ける志願兵の大半は元ジオン兵だった女性パイロットが非常に多かったのも頷ける内容だった。
無論、エゥーゴにも志願兵が多く居るらしく、例の映像を見た一般女性からもエゥーゴに志願したと話には聞いていた。
そんな内容をマウアーに聞かせると、腫れ物が取れたかの様な表情をするマウアーは美しい少女の顔を一瞬だけ覗かせて、二人の会話を見ていたイチカを惚れさせたかのように見えた。
「アン、私はティターンズを捨てるわ」
「そう、なら行き先は鈴の部屋ね」
「鈴の部屋?」
「イチカの正妻の部屋と言えば判るかしら?」
正妻の部屋と聞き、顔を真っ青に変えたマウアー。
無論、叱られる訳では無い。
「ねぇ、気持ちの整理が…」
「今更、却下ね」
「アン、まさか…」
「イチカ、男なら責任くらい取りなさい」
むしろ、マウアーを妻の仲間入りさせた方が良いと思う、あたしの我が儘だった。なら、妻会議で話が拗れる前にマウアーから挨拶させて好印象を妻達に与えた方が賢明だし、イチカがマウアーに責任を取ったと外面も良い。そして、未だにマウアーの件で妻として受け入れを渋るイチカをバッサリと言い捨てながら、鈴との面会を嫌がるマウアーを妻会議の真最中の鈴の部屋へと連行したのだった。
取調室でイチカとアンがマウアーと話している頃、鈴の部屋にはアンを除いた妻達が全員が集結しており、最高齢のシーマを始め最低年齢のミネバも集まる大事になっていた。
無論、妻達の言い分を聞きながら沈黙を護る鈴と現場を観てしまったシャロは、クリスから何故止めなかったと責めを受けてクリスと言い合いとなる。
「クリス、少し黙んなさい」
「「「「「「!?」」」」」」
鈴が正妻の凄みを出して、クリスを一睨みで黙らせる。そして、無言のまま立ち上り部屋の扉を開けるとアンとマウアーが部屋の入り口へ立っており妻達は一斉にマウアーを睨むが、鈴が一瞬だけ振り返り妻達へと凄みを出して睨み強制的に妻達が黙り込む。
「アン、ありがとうね。
そして、マウアー来たわね」
鈴はにっこりと笑い、マウアーを部屋へと招き入れるがマウアーは鈴の笑みに隠れた凄みに恐縮してしまう。しかし、鈴はマウアーの手を引きながら鈴が座るベッドの脇へと座らせる。
「紹介が遅れたわね。
あたしは鈴音と書いてリンイン。
一夏の正妻であり、妻達を束ねて居るわね」
「あっ、あの!!」
「言わなくても、判ってるわよ。
あたしが、あんたを認めるわよ。
それに、馬鹿一夏がやらかしたんだから、責任も一緒に背負うのもあたしの役目よ。なら、あんたもつべこず言わずに一夏の妻の一員に加わりなさい」
「「「「「「!?」」」」」」
鈴の一言に周りは一斉に驚愕した表情をしながらマウアーを見るが、何も言わせずに妻の仲間入りを認められた度量の広さにマウアーは泣いてしまう。
「これじゃ、私が悪者になるじゃない」
クリスが溜息を吐きながら一言だけ呟き、鈴の部屋を退室する。無論、他の妻達もクリスに習い部屋を退室するが、クリスが退室したのは最初から決められた事であり、既に妻会議では満場一致で認められていたオチだった。
マウアーからこの先をどうするのかと聞き、マウアーはモビルスーツのパイロットを望むが、鈴はもしかしたら出来たかも知れないマウアーをパイロットにする気は一切無く、イチカへとメールを送りマウアーは鈴の手伝いとして厨房で働く事が決まる。
「マウアーは厨房で、あたしの手伝いね」
「パイロットは…」
「あんたねぇ、出来たかが実際に判るのは2か月程先だけど、パイロットにはしないわよ。
あたしだって、身重になって厨房での調理は辛いのよ。
だから、あんたはあたしの手伝い。
決定事項だから、これを着てね?」
「…」
マウアーに渡したのは、綺麗な翠色の一着のチャイナドレスだった。鈴は台湾での買い出しの時に様々なサイズの複数のチャイナドレスを買い込み、拡張領域へとしまい込んでいたのが幸いだと思いながらもマウアーに似合うチャイナドレスを選んでいたのだった。
そして、爆誕したドジっ子給仕のマウアーになるのはまだ先の話だったりする。
妻達の一件が片付いた矢先、アステロイドベルトを監視する人工衛星には地球圏へと戻って来た宇宙要塞のアクシズが捉えられ、アクシズの左官以上の士官達はソロモンへと集められ緊急の会議となる。
無論、ジャブローからカルフォルニアベースを再度奪還して、カルフォルニアから宇宙へと上がりソロモンへと戻って来たシャアとハマーンの二人は、アクシズの状況を知り顔色が優れない様子だった。
「まさかな、私が地上に降りた隙を狙うとはな」
「ハマーン、これでグレミー・トトが反乱を起こしたのは確実だと判った訳だが、アクシズに残る戦力が不明だな」
「確かにア・バオア・クー奪還を前に不確定要素ではなるな」
そんな二人は俺を観て腹を括る。
これは、俺達の部隊での強行偵察をするのが確定だと理解した瞬間だが、シロッコの襲撃がなければアクシズへの強行偵察任務はオリムラ中隊が担う予定だっただけに挽回するチャンスだろう。
「俺達、オリムラ中隊が強行偵察を行います」
この一言でアクシズへの強行偵察が決まる。
無論、他のアクシズの艦隊はア・バオア・クー奪還に向けた作戦となるのだが、地上軍のキンバライト基地のモビルスーツ隊にもキリマンジャロ基地攻略へ向けて増強が決まり、地上と宇宙での同時奪還作戦となる。
アンマンにシャトルで戻った俺は、ツキノ中佐へとアクシズへの出撃準備を進める様に命令を下し、ニナさん経由でアナハイムから弾薬の補充を要請する。
「いっくん、言われた通りに増槽タンクが使える様にしたよ」
「ありがとう束さん」
書類整理をしながら、強行偵察に向けた準備を着々と進め、グラナダ防衛戦で損傷したモビルスーツは全て修理が終えたとアナハイムへ出向中のニナさんから通信を受け、修理の終えた機体がムサシへと搬入が始まったと知らせが入る。
そして、物資の搬入作業を含め2日後にムサシはアクシズへ向けて出撃したのだった。
少し前だが、アクシズではカルフォルニアベース奪還の裏でグレミー一派のモビルスーツ隊がオーガスタ研究所の襲撃に成功し、サイコガンダムの後継機のサイコガンダムMK-Ⅱの一号機と二号機を合わせた2機と一緒に専属パイロットの確保までも成功させる。
一人は、ロザミア・バダムと言う少女と、もう一人は幼いながらも黒髪にポニーテールの少女だが、彼女は台湾の宇宙港襲撃の際に戦死していたが、合流したムラサメ研究所の研究員が彼女の血液と肉体の一部を採取して作り上げたクローン人間だった。
そして、運命の悪戯なのか少女の名前はホウキと名付けられ、強化人間のロザミア以上に安定した造られ生まれながらにしてニュータイプだった。
そんな、彼女達も輸送する為にバラしたサイコガンダムMK-Ⅱと共にアクシズへと送られて解析されており、フォン・ブラウンのアナハイムの工場から拉致して来た数十名の技術者を使い、急ピッチで開発され組み立て作業中のサイコミュ搭載型の巨大モビルスーツがアクシズの工廠にて鎮座していたのだった。
無論、拉致られた技術者の中には、束さんに鍛えられてZ計画に参加していた技術者もいた為に可変型モビルスーツのバウやサイコガンダムMK-Ⅱを元に一般兵用に開発されたドーベンウルフやリックドムⅡを発展させ開発したドライセンなどがアクシズに保管されていた資源を使い量産していたのだった。
そんな充実した戦力を保有するグレミー一派になっているとは知らずにムサシはサイド5のコロニー群の宙域を宙域を抜けてアステロイドベルトがギリキリ視認出来る距離まで近付き、暗礁宙域の岩礁群にムサシを隠す様に停泊させてから、監視衛星から送られて来た画像を元にブリーフィングルームにて中隊のメンバー達が集まる。
「思っていたより、早く地球圏に来たわね」
「シャロも、そう思うか?」
画像を見ながら、アクシズの現在地を割り出す事に成功するが、早ければ1週間もしないでゼタンの門まで来るのは明らかであり、アクシズ防衛戦以上に防衛設備が充実しているとシャロは言う。そして、何よりもアクシズ名義で買い付けただろう物資を運ぶ輸送艦が撮影され、頭を抱え出すイチカはシャアが思っている以上に戦力があると理解した理由だった。
そんな時にイチカのスマホが鳴り、電話を掛けて来たのはアクシズの居住区へと旅行者として潜入していたカイさんからだった。
『イチカ大佐で間違いないか?』
「どうして、俺の番号を?」
『あぁ、アナハイムのニナさんから聞いておいたんだ。まぁ、それよりもアクシズ内部はヤバイぜ。俺も含めてだが、住民達の全員がサイド3へ強制疎開させられちまった」
カイさんの一言にイチカは全てを理解する。
「アクシズはグレミー一派に掌握されたんですね?」
『間違い無いな』
カイに肯定され、アクシズはグレミー一派に制圧されたと理解する。そして、強行偵察から威力偵察に任務変更になった意味にイチカは息を飲み、カイさんからの電話が切れると威力偵察に向けて準備を始めたのだった。