暗礁宙域から出撃する3機のモビルスーツは、イチカのブルーローズMK-Ⅱとアンと案内役のシャロが乗るブラックローズⅡはダミーバルーンを宇宙に浮かぶ岩礁に見立てて展開してアクシズへと調査に向かう。
『イチカ、アレがアクシズよ』
「アクシズか…」
『あたしもアクシズに行くのは初めてね。シャロ、任せたわよ』
『エスコートは任せなさい』
熱核ブースターに火が灯りながら、ゼタンの門へと移動するアクシズへとシャロの案内で密かに近付き、アクシズの左官級でも教官にしか知らないハッチから俺達はモビルスーツごと侵入を果たす。
『ここは、私みたいな教官にしか知らない内部に侵入出来るハッチよ。でも、内部って言ってもアクシズ内部のモビルスーツデッキの側の廃棄施設だけどね』
ゆっくりとスラスターを吹かしながら通路を進み、内部へと向かう。そして、開けた場所に出ると大量に破棄されたモビルスーツの残骸や試験中に壊れて破棄された黄色い機体にミサイルポッドを積んだモビルスーツ。
「やっぱり、ズサの開発も進んでいるみたいね」
シャロが、ブラックローズⅡを屈ませ、コクピットハッチを開き降りると破棄された試作機を触りながらコクピットハッチを開けるボタンを見付けて開けるとコクピットに入りながらUSBメモリーを刺してデータを引き抜き、ブラックローズⅡへと戻る。
「データがあったのか?」
『かなり、酷い管理ね。破棄する機体にデータを残して置くなんて、普通なら懲罰ものね』
破棄施設で粗方のモビルスーツのデータを抜き取りながら周囲を散策しながら偵察する。そして、破棄施設にモビルスーツを隠し私服に着替えて街中を偵察する。
「やっぱり、変わらないわね」
「人気が無いな。やっぱり?」
「強制退去が原因ね。あぁ、イチカ達にあの美味しかったパスタの店のパスタをご馳走したかったのに」
「それは残念だった」
「シャロが美味しかったって言うなら食べて見たかったかも」
「アンもそう思うでしょ」
シャロは悔しがりながらもアクシズの居住区を三人で見回りながら言う。そして、再び破棄施設に戻る途中でモビルスーツ製造する工廠へと潜入に成功しながら製造中のモビルスーツを写真に収めてから工廠から離脱する。
「アン、直ぐに束さんに秘匿回線で通信を入れて、量産型ブラックローズの製造の強化を頼む事とこの写真を送ってくれ」
「工廠で見たモビルスーツがヤバかった?」
「あぁ、かなりヤバイな。
マラサイだと歯が立たないかも知れない性能のモビルスーツだったし、あの工廠で量産中だと言う事は配備されている証拠だ。それに…」
「イチカ、この子どうしよう…」
「「はぁぁ!?」」
シャロの頼りない言葉に振り向くと、いつの間にか着いて来ただろう黒髪でポニーテールに纏めた一人の5歳か6歳くらいの幼い少女がシャロの私服のスカートの裾を掴み立っていた。
「ママァ、誰なの?」
「「ママ!?」」
「アクシズで浮気して、作った隠し子じゃ無いからね!?」
「じゃあ、この人が私のパパなの?」
「「パパ!?」」
幼い少女は俺に指を指しながらパパだと言う。何故か、誰かに似ていると思いながら気付いたのだが、剣道の道場に通っていた時の幼い頃の気弱な箒と似ていた事に気付く。そして、シャロは隠し子ではない事を全力で否定しながらも幼い少女の手を握るのは、その子に対して母性が目覚めていたのもあるが、ウチの娘達が危なっかしい事を仕出かす為に反射的に手を繋いだのだと理解したのだった。
「(まさか…ニュータイプか!?)
あぁ、パパだ。
一緒に家に帰ろう」
「うん!!
夕飯は甘い卵焼きが良い!!」
だが、住民が居ないのに少女だけだという事の意味にイチカは気付き少女を保護する事を決める。
「アンにシャロ、情報は充分だから一時撤退する」
「はぁ、束さんがぶちギレても知らないわよ」
「いや、この子の保護を優先するよ」
「イチカ、帰る時にモビルスーツデッキを破壊しながら帰る?」
「いや、第二次偵察時に威力偵察を加えながら、工廠へ襲撃するさ」
「まさか…」
アンはイチカが何をやろうとするのかを瞬時に理解して顔を真っ青にする。無論、イチカの表情は何時も通りだが、密かに燃え上がる怒りを感じ取り、第二次偵察時にアクシズ内でリミッターを切った最大出力のハイパーメガビームランチャーを撃つ積りだと思うのだった。
そして、少女に合うノーマルスーツが無くてブカブカの成人用のノーマルスーツを着せたイチカは、リニアシートのシート裏に補助シートを出して少女を乗せてベルトで固定をする。
「アン、シャロ準備はどうだ?」
『何時も行けるわ』
『私もよ』
「じゃあ、家に帰ろう」
「うん、パパ!!」
少女を乗せたまま、来た通路を飛びながら移動してアクシズから脱出すると、イチカは機体を反転させてバックパックのハイパーメガビームランチャーを展開する。
『イチカ、何をする気!?』
まさかの予想を裏切るイチカにアンは慌てた様に叫ぶが、キレたイチカを止める手段は無い事は理解していた。
「いや、宇宙に出たら怯えだしたから元凶を破壊する」
『はぁ、仕方無いわね。
シャロ、イチカの機体の曳行準備よ』
そして、白星に記憶させたモビルスーツデッキの位置と嫌な感じを感じた位置が判り、両方を巻き込む様に位置調整を完了するとハイパーメガビームランチャーのリミッターを切り最大出力のハイパーメガビームランチャーを撃ったのだ。
「娘を怖がらせる物なんか、無くなれぇぇぇ!!」
アクシズの外壁部の岩石を砕きながら内部へと貫き工廠へとハイパーメガビームが襲い、製造していた巨大モビルスーツは一瞬でビームに飲まれて破壊され、研究者や技術者に加えてグレミーの配下の兵士達が漏れ出した空気と一緒にアクシズに空いた穴から吸い込まれて外へと投げ出される。そして、元凶を破壊して怯えなくなり少女は眠くなったらしくてシートでは寝息を立ててスヤスヤと眠るのだった。
無論、最大出力で放ったハイパーメガビームランチャーは先端部が溶けて壊れてしまい、取り付け部からパージして破棄する。
そして、少女の負担にならない程度に加速し、ムサシへと帰還を果たしたのだった。
イチカ達がアクシズから離脱した後、アクシズに空いた穴を塞ぐ為に急いで出撃したモビルスーツ隊はトリモチ弾を放ち穴を塞ぎ、製造中だったクイン・マンサと一緒にデータの移植作業で横付けされたサイコガンダムMK-Ⅱ二号機が破壊されて失くした事に酷い癇癪を起こすグレミー。
「おのれ!!」
「グレミー様、落ちついて下さい!」
側近のオーギュストはグレミーを宥めながらも、技術者や研究者達を多数失った事が大事だと口が裂けても言えないでいた。無論、被害は工廠全体に広がり、モビルスーツの製造は完成した分を除いても全く足りない戦力をどうにかしないとと思案するが、既にアクシズでは工廠を破壊された煽りでモビルスーツ製造が不可能な状態となっていた。
「これではハマーンを殺せぬではないか!!」
未だに収まらないグレミーの癇癪に呆れるオーギュストだった。
ムサシへと帰還したイチカは、束さんの下に少女を連れて行く。無論、束さんがイチカを殴るのは確定だと思いながらもアンとシャロは二人の後ろに着いて行く。
「束さん、ちょっと良いか?」
「どうしたの?
いっくん、そんな物を束さんの前に連れて来んな!!」
バッキィ
「グッァ!?」
「パパ!?」
「「イチカ!?」」
二人の予想通りにイチカは束さんに殴られ、整備用のパーツが入るコンテナへと吹き飛び背中を強打する。無論、イチカは束さんから殴られるのは最初から判ってはいた。だが、束さんに連れて行ったのはイチカなりのけじめだった。
「どうして、箒ちゃんが居るんだよ!!
束さんの可愛かった箒ちゃんは死んだというのにさ!!」
子供の様に泣き喚きながら、イチカを睨む束さん。
「だから、束さんに連れて来たんだ。既に、この子は俺とシャロにパパ・ママと呼んで懐いているし、俺はこの子を養女として引き取るから、けじめに来たんだ」
「ねぇ、君の名前は?」
「パパを殴るオバちゃんはキライ!!
でも、私はホウキだよ!!」
「オバちゃん!?
でも、いっかぁ。
じゃあ、ホウキちゃんって呼んでも良いかな?」
「うん!!」
「ひっぐぅ…ひっぐぅ…ホウキちゃんが帰って来たよ!!うわぁァァァァァン!!」
「束お姉ちゃん、何処か痛いの?」
束さんはホウキを優しく抱きしめるとワンワンと泣き出す。そして、幼い頃の箒が束さんへの呼び方をした『束お姉ちゃん』は束さんの箒を亡くしてから止まっていた時を動かし始めたかの様に見え、未だにホウキを抱き締めて泣く束さんはいつまで泣き続けたのだった。
補給と整備を終えた3機は次の出撃に備えていた。無論、ホウキの一件は鈴に報告してからは母親としてシャロの養女となり娘達と食堂で仲良く遊び、姉妹関係は良好に見えた。
第二次偵察部隊は威力偵察も行うために、メンバーは初期メンバーの俺とシャロにアンは確定とし、クリスとエマにカミーユにフォウに加えて、はぐれた時のメンバーにイリアを加えた八人で行う事となった。
そして、奇襲を掛けるかのように再度、出撃したイチカ達はアクシズへと向かうのだった。