一夏様達が行方不明となって八ヶ月が過ぎ、姉の千冬様と妹のマドカ様は精神的ショックにより学園の自室に籠もったまま出て来なかったり覇気が無かった。そして、私もホワイトラビット社の社長代理となりながらも束様の帰りを今か今かと待ちわびる日々を送る。
そして、今日も占領したアメリカに対する会議と私兵部隊の戦死者達の遺族に対する保障の話し合いにも参加しなくては行けないために疲れが溜まる一方だった。
「束様…」
学園を護る為だと言いながらも、ホワイトラビットの私兵部隊の精鋭と私は学園の寮の一部を借りており、製造ラインを止めないようにしながら会社を運営し、学園の生徒達の臨時教員として教鞭を取るのはスコールさんが行っている。
「社長代理、疲れている様ね」
「スコールさん、束様と比べたら…」
言い切る前にスコールさんにお姫様抱っこされた私は、ソファーへと寝かされる。
「頑張るのは美徳だけど、社長代理が倒れたら元も子もないわよ」
私はスコールさんに寝かされると後頭部に柔らかい感触はスコールさんの太腿を枕にして寝かされた意味をしていた。
「時間があるから、少しは寝てなさい」
「はい…」
少しだけ、スコールさんに甘えながら眠る事を選んだのだった。
「お兄ちゃん…」
部屋の片隅、毛布一枚だけ羽織りながらお兄ちゃんが居なくなってからの事を思い出していた。
「絶対に糞モップは殺す…」
そう、呟きながらもマドカが殺したいと思っている彼女は、既に向こうの宇宙世紀の世界で起きた台湾宇宙港の防衛戦の際に戦死している事はマドカは知らない。だが、一夏とシャロの養女となり娘となった箒のクローン人間の幼いホウキを見たらマドカは躊躇なくナイフ片手に襲い掛かるだろうと、マドカにしたらお兄ちゃんの一夏が行方不明となった原因と見ていた箒は憎む存在だった。
そして、マドカはルームメイトの山谷さんが仕入れてくれるお弁当を食べて、浴室に向かうと髪はボサボサでやや顔も窶れていた事に気付くが、シャワーを浴びるだけでベッドに潜り込み眠るだけだった。
そんな時、学園全体が地震の様に揺れ出したのだ。
人工島のIS学園が揺れる事はまず無いと判断したマドカはお兄ちゃんから託されたオリムラ中隊の面々をアメリカ戦以来のオリムラ中隊への緊急招集を掛ける。そして、学園の揺れが酷くなる一方、空も黒い雲に覆われて行く事に一抹の不安がマドカには過るが、そんな事よりもお兄ちゃんが帰る場所だけは護りたい気持ちが強く出て、部屋から飛び出したのだった。
「お兄ちゃんの帰る場所は私が護るんだ!!」
久しぶりに手に握った専用機の黒式の待機状態の小手を嵌め、揺れから津波の予測をしながら屋上へと上がると黒い穴から500m位はあるだろ戦艦が煙を吐きながら落ちて来る光景と落ちて来る戦艦は、前部のニ基ある内の第二砲塔が何らかの攻撃で吹き飛び無くなっており、針鼠の様な対空砲座の対空砲はあちこちの砲が拉げたり、脱落して無い場所が在るくらいに戦闘直後だとマドカは観て思う。
「一体、何なんだ?」
呟きながら観ていると、スラスターを吹かしながらあの巨艦とも言える艦を海へと静かに着水させた腕前から艦長は只者ではないと思う。
「マドカ隊長代理、来たぞ」
「マドカさん、お久しぶりですわ」
屋上に集まったのは2年生に進級したラウラとセシリアのみだったが、他のメンバーのシャルロットと簪は生徒会役員となり生徒会による生徒への避難誘導で来れないと連絡があり、アメリカ戦後は部隊の縮小により、イギリス本国へ一時帰国で帰った卒業生のサラ先輩は居ないし、クロエ社長代理のボディーガードで居ない乱音も今は学園には居ないのだ。
そんな最中、学園に待機中のブラックラビット隊が謎の戦艦へと向かい、普通は通信による停船命令を出すのだが、戦艦への攻撃を始めてしまう。
「クラリッサ隊長は、若手を抑えられ無かったか!?」
「大丈夫なのか?」
「だが、あんな戦艦ならクラリッサなら沈めるだろうな…」
ラウラの予想と読みは外れ、水上を高速航行しながら円を描き回避行動しながらも、クラリッサ達のブラックラビット隊の攻撃を躱して行き、戦艦は損傷が嘘だと思いたい様な凄まじい対空射撃による弾幕を形成する。
「ラウラ、気付いたか?」
「クラリッサ達が完全に遊ばれているな……」
「あんな巨艦でしたら、回避行動による操舵は難しい筈ですわよ!?」
「だが、良く見てみろ。
弾幕で使われている弾丸は全てペイント弾だ!!」
「えっ、本当ですの!?」
セシリアもハイパーセンサーを遠望モードにして、クラリッサ達を見れば、確かに対空砲の弾はペイント弾でクラリッサ達は怒りながら何かを叫んでいる様だが、凄まじい弾幕によりブラックラビット隊の面々はペイント弾のピンク一色に染まる。マドカ達三人は何故と思いながら考えに更けるのだった。
時間は少し遡り、オリムラ中隊の本拠地のソロモンへと帰投中のアン達が乗るムサシの進路上に突如開いた黒い穴に回避する間も無く入り込み、ムサシが出た先は地球の何処かの空中であり、ミノフスキークラフトにてムサシを浮かせて無い事から艦首から落下している事に気付いた艦長のツキノはスラスターにより姿勢制御をしながら静かに着水する。
「艦内の被害状況知らせ!!」
「艦内上部に異常無し!!
しかし、右舷の被弾箇所の水線下に多少の浸水あり!!」
「右舷の第八通路の隔壁を閉鎖しなさい」
ツキノは淡々と命令を下しながら、医務室に眠る負傷者達やベッドに寝かされ精神崩壊したイチカ隊長と隊長の家族だけは護りたいとより一層に集中する。
ブリッジに上がって来た、鈴とアンにシャロの三人に鈴が抱えるのは産まれたばかりの鈴の娘の彩芽だった。
「やっぱり、IS学園が見えるわね」
「IS学園ですか?」
「まぁ、簡単に言えばイチカの産まれた世界ね」
「では…」
「イチカの世界に来ちゃったみたいね」
「あたしは戻れたが正解ね」
「鈴音さん、では学園に?」
「西側に停泊出来る港があるから停泊すれば大丈夫でしょ?」
「鈴、学園に連絡が先でしょ!!」
「久しぶりだから、忘れてたわ…」
天然にボケる鈴音をジト目で睨むシャロは学園に連絡が先だと言いながらも、三人のこの世界のスマホは使う事が無いだろうとソロモンの自宅の机に仕舞ったままであり、コアネットワークを使ったオープンチャンネルによる通信もアンとシャロはモビルスーツに乗っていた期間が長く忘れており、鈴も厨房での仕事が多忙で同じ事を言えていたりする。
無論、医務室で負傷兵やクルーの治療に当たる束さんをブリッジに呼ぶしか無いのだが、束さんを呼ぶと言う事に肝心な事を忘れていた三人だったのだ。
そんな最中、レーダー要員のクルーが学園から飛翔する機体をレーダーで捉える。
「艦長、レーダーに感あり!!
数は15機でデータに該当は無しです!!」
「くっ、対空戦闘用意!!」
「ツキノさん、ちょっと待って!!」
アンが見張り員の双眼鏡を奪い、双眼鏡から見ると黒とシルバーに染めらた流星改にアンは見覚えが在った。それは、ホワイトラビット社の私兵部隊のブラックラビット隊の機体カラーだと気付き、ツキノへと下命する。
「ツキノ中佐、本艦はペイント弾よる対空戦闘訓練を実施するわよ。主砲は威力が有り過ぎて不味いけど、確か三連装の対空レーザー砲は実弾とレーザー砲を使い分けが出来たわね?」
「はい、実弾とレーザーとの使い分けは使用可能ですね。なら、対空レーザー砲は実弾式へと変更し、ペイント弾へ弾種変更ですね」
「帰って来たと思ったら、生温い編隊飛行に周囲警戒も疎かだわね。
シャロ、あたしと一緒にモビルスーツデッキに行くわよ。
ブラックラビット隊に再教育して来ましょう!!」
「了解、隊長代理」
二人がモビルスーツデッキへと向かい、鈴はブリッジへと残る。
無論、ムサシに残るモビルスーツはイチカ機の隊長機仕様のブルーローズMK-Ⅱを除けば、カミーユとフォウにイリアのブルーローズMK-Ⅱが3機だけだが、実際に戦闘に使えるのは損傷が少ないイリア機だけで、ブラックローズⅡに至っては殆どが撃墜されて喪失し、小破したシャロ機と出撃しなかったケイト機に姉妹の搬送で離脱した無傷のサクラ機に武装を戦闘で失ったクリス機とエマ機を加えた5機だけだった。
そして、隊長代理のアンはモビルスーツを使う気は全く無く、自機の専用機でIS版のブラックローズだけで充分だとアンとシャロは思って居たのだった。
ツキノ中佐は艦内のCICへと入り、生き残った各対空砲座をレーダーと連動させながらレーダーへと目を光らせる。
「艦長、対空戦闘準備良し!!」
「ご苦労。これより、対空戦闘訓練を実施する。艦内は第二種戦闘配置に着け!!」
ムサシの戦闘配置へと移行する警報がなるが、訓練だと言いながらモビルスーツのパイロット組に間違えてもモビルスーツで出撃しない様に命令を下す。
「水上第二船速!!」
「了解、第二船速!!」
艦底のサブスラスターを起動させ、ムサシは水上速力の27ノット位に航行する。無論、到着したブラックラビットは通信からの停船命令を出す事なく、ムサシへの対艦攻撃を始めてしまう。
「弾幕射撃を開始!!
撃ち方始め!!」
ツキノ中佐の号令に対空戦闘を始めたムサシは、三つ巴のモビルスーツ戦でムサシに近付くバウやハイザックを強力なムサシの弾幕射撃で数基の対空レーザー砲が破壊されたに過ぎ無かったが、ムサシの被害の殆どはネオ・ジオン艦隊とティターンズの艦隊との殴り合いと言う艦隊戦を望んだ結果の被害だった。
「お〜も〜か〜じ〜!!」
隊長機と思われる機体から、対艦用兵装の対艦バズーカを放った事にいち早く気付いたツキノは面舵を切る様に叫び、反応した操舵手は舵を切りムサシはゆっくりと右側に進路を変えて隊長機が放ったバズーカを躱す。
『鈍足な戦艦が躱すだと!?』
バズーカを放ったクラリッサは驚愕しながら艦長の指揮に舌を巻き、部下達が一斉にバズーカをムサシへと放つが、再び面舵を切られてムサシはバズーカの弾頭を躱され、クラリッサの部下達へとお釣りだと言わないばかりにムサシからの強烈な対空射撃を食らい、この世界のオリムラ中隊の隊員で元隊復帰したブラックラビット隊にサラとケイトにマリアの三人は弾幕からの対空射撃を浴びてブルーマンならぬ、ピンクマンへと弾頭がピンク色のペイント弾だった為に全身に染まる。
「「「うっ、ぎゃあ!?」」」
「ビスマルクⅡでの対艦攻撃訓練よりも弾幕がキツイぞ!?」
そう、叫ぶクラリッサも弾幕に捕まり、三人組と同じ運命のピンクマンへと変わり果てたのだった。
そんな事を知らないツキノは、水上での回避運動が楽しくなり、彼女はブリッジ最上部の対空指揮所に上がりポートモレスビーでイチカが言っていた伝説の艦長の姿とも言える、肩に上着を羽織りながらサンダルを履き、タバコが吸えない代わりにシュガーポットを口に加えて対空指揮所で海風に当たりながら指揮を継続する。
「艦長、その格好はどうしたんですか?」
「あら、伝説のヤマトの艦長のモリシタ艦長よ?」
クルーは呆れて何も言えないが、双眼鏡を片手にクラリッサのブラックラビット隊の動きを監視する。
「艦長、敵機直上!!」
「面舵一杯!!」
ツキノは面舵のみを言い、ムサシは右に周りながら回頭して再び攻撃を躱す。
「艦長、面舵ばかりですが、大丈夫なんですか?」
「ほら、見なさい。
馬鹿共は、次は取り舵を取ると山を張って、見当違いの場所に攻撃をしているわよ!!」
ツキノが指を指す方向は、確かに取り舵を取るだろうと山を張ったブラックラビットの一斉射撃によるバズーカの攻撃で水柱が生じ、再び面舵を取ったムサシからしたら見当違いも甚だしいのかも知れない。
見当違いにバズーカを放ったブラックラビット隊の面々は顔を真っ赤にしながら山を外した事に恥ずかしながらも、ムサシへの攻撃を辞めなかった。
そして、ムサシの強烈な弾幕を前に隊員達全員がピンクマンになる時間は、そう掛からなかった。
「くっ、これでは良い笑い者ではないか!!」
「クラリッサ隊長!!
戦艦より、出撃する機体が見えます!!」
「あっ、あの機体は!?」
「クラリッサ隊長?」
ムサシのカタパルトに接続された機体は、この世界のアンとシャロの専用機のブラックローズだった。
「まっ、不味い!?」
「クラリッサとあんた達、よくも停船命令も出さずに攻撃して来たわね!!」
「うっ、ギャァァァ!?
あっ、アン副隊長!?」
「全員、海に落として上げるわよ!!」
クラリッサが二人の専用機だと気付いたが、射出されたアンとシャロの専用機のブラックローズ2機は、ビームソード付きビームライフルをビームソードへと変形させながら、ブラックラビット隊ならぬピンクマン部隊の流星改へと突撃しながらスラスターユニットだけを斬り刻みながら行き、ブラックラビット隊の面々はシールドエネルギーと失いながら海へと落下する。
「シャロ、合わせなさい!!」
「了解、アン!!」
「しまった、逃げられない!?」
「「必殺、クロスボンバー!!」」
「ギャァァァ!?」
そして、最後まで絶叫しながら逃げ回るクラリッサは、逃げ道を塞いだ二人からのクロスボンバーを食らい、海へと落下したのだ。
無論、ムサシの乗員達はアン達だと知ったズタボロのクラリッサが学園の港へと案内しながら先導して学園の港へと無事に入港したのだった。