「一夏…」
腐海の様な自室の片隅、ガリガリに痩せ細り髪は艶も無くボサボサに蹲るのは一夏の実姉の織斑千冬本人だった。無論、充電器に繋いだままのスマホには着信履歴が数百件あり、一番新しい着信は山田先生からの教師へ緊急招集を知らせる着信だった。
千冬がこう成るのは二回目であり、一度目は一夏が独立戦争を舞台にした宇宙世紀の世界へと飛ばされた以来だろうか。
そんな千冬が蹲り覇気も無いまま部屋へと引き篭もってから約八ヶ月目の今日の学園全体を揺らす地震には気付いており、港から響くアサルトライフルの発砲音を聞きながらもブラックラビット隊のクラリッサが何とかするだろうと思い放置していた。
夕方になり、私の部屋へと近付く足音が約20人ほど近付くのに気付く。
『この部屋に義姉の千冬義姉さんが居る筈よ』
聞き覚えがある声の主には聞き覚えがあるのだが、まさかだと思いながら出るに出られないほどに衰弱していた事実に気付く。
ガチャリ
「全く、八ヶ月も掃除もしないで放置して酷い有り様ね!?
アン、大量のゴミ袋を用意!!
シャロは大量のバケツに水を汲みに行きなさい!!
サクラとケイトにカエデとカナデにサラはシャロの支援!!
クリスとエマにシーマにミネバは娘達を食堂へと避難させて娘達の引率して、全く、子供達に見せられる環境じゃないわよ!!
ツキノ、妻会議で仲間に入れるようにしてあげるから、あたしと一緒に腐海に突入するわよ!!
じゃあ、みんな散開!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
「へっ?
私が鈴さんと突入!?」
鈴の号令の下、妻達は一斉に散らばりながら指示された内容を実行する為に動き出す。鈴は寮の間取りを思い出しながらも突入して窓にいち早く移動して窓を開けて換気し、ベッド脇に蹲る彼女を発見するが、千冬義姉さんの酷い衰弱状況から近くを通り掛かった新一年生だろう色のリボンをする生徒を捕まえてストレチャーを持って来させるのだった。
そして、千冬義姉さんは医務室へと緊急搬送されて病気かと思えば重度の栄養失調だと判り、妻達一同はイチカの妻だと挨拶が出来るし、娘達も紹介できると見当違いさも甚だしい思惑の最中で安堵はするのだが、この部屋の片付けには妻達全員で取り掛かりながらも終わった時間が深夜の0時になる頃まで片付けが掛かり、綺麗な部屋へと生まれ変わったのだった。
無論、妻達と娘達はアン達の寮の広い部屋で眠ろうと考えたのだが、まさかの1025室のあたし達の寮は無くなり元の三部屋への寮部屋へと戻っていたとは気付かずに向かったら、アン達の寮部屋は新一年生の部屋になっていたらしくてムサシへと戻る事になったのだった。
翌日、あたし達は生徒会室へと呼ばれ、4人の復学の手続きに加えてイチカの処遇について話し合ったのだが、イチカは束さんの居る本社に24時間体制の完全看護で寝かされており、例の計画の準備ができ次第にクロエ副社長によるワールドパージによるイチカへの救出作戦の始まりだと生徒会会長の楯無会長へ説明する。そして、元に戻された寮部屋に付いても問い質していた。
「精神崩壊か…」
紅茶を飲みながらの楯無会長も向こうでの事は、以前にも説明してある為に納得はするがイチカのニュータイプ同士による戦いの結末が精神崩壊した理由には、流石のIS世界の住人とも言えた楯無会長には『ニュータイプなんて非科学過ぎるわよ』と言われ納得はできない内容らしい。
「一応、あたし達は救出作戦までは復学するしかないのよね…」
「うん、まぁ三人の成績なら一週間の予定で補習授業をみっちり受けては貰うけど、実技試験で合格なら進級した上での復学は可能ね」
「で、あたし達を相手をする試験官は誰なのよ?」
楯無会長はニヤリとしながら、扇子に浮かぶ人物は『元アメリカ国家代表!』と達筆に書かれていたのだった。無論、専用機の使用は認められており、鈴にしたら因縁の相手だったと言えるだろ。
会長との話し合った後は、娘達の世話をメイドになったツキノ艦長の妹のユキノさんに面倒を見てもらいながら本社へと向かう。しかし、鈴はイーリスさんとやり合い負けた事を引き摺っていた。
「鈴、元アメリカの代表って…」
「確実に、私兵部隊の第三中隊隊長のイーリスさんね…あたしは、一度負けてるわね…」
「鈴、あたしと違って死にかけた訳じゃないし、あたし達の専用機はバージョンアップするって束さんから連絡が来てるから、それから考えるわよ?」
「あたしだって、イーリスさんと殺り合って死にかけたのは事実よ。それに…」
鈴が言い切る前に現れた人物を見て鈴は固まる。
「よう、お前等、いつ帰って来たんだよ?まぁ、あたしが実技試験の試験官だから、あたしを楽しませろよな!!」
噂をすれば何とやらで、三年生の実技の授業を終わらせて、生徒会室に呼ばれて来たイーリスさんだった。無論、本人には悪気は全く無いのだが、自他共に認める姉御肌のバトルジャンキーなのが玉にキズなのだが、鈴にしたら因縁の相手である事には変わらない。
「本人来ちゃったわよ…」
「何も言えないわ…」
「あたしもよ…」
ガッハハと豪快に笑いながら生徒会室に入って行くイーリスさんを尻目に何とも言えない空気と学園の人達とのエンカウント率の高さに呆れるしか無く、重い空気が三人から漂うのだった。
そんな最中、ムサシに搭載されていた電気自動車をアンが運転しながら本社へと向かい、本社の第七格納庫へと向かう。八ヶ月しか経っていないのが嘘の様に思える程に社内の敷地には真新しい建物が建ち並び、今ではIS業界では世界一位のシェアを誇るホワイトラビット社の本社だと言われてしまえば納得出来る光景に目を奪われる。
「やあやあ、みんな来たね!!」
束さんがつなぎ服姿で第七格納庫の前にて歓迎する姿は既にムサシのモビルスーツデッキではお馴染みの姿だった。無論、社長である束さんには本来なら相応しく無い格好であるが、バージョンアップの為に預けた専用機の些細な改修作業をしていたと思われたのだった。
「鈴さん、待ってました」
「あれ、なんでイリアが居るのよ?」
「私もIS学園に編入が決まりまして、専用機の操縦訓練ですよ」
と言いながら、イリアの機体はイチカのモビルスーツと同じ、ブルーローズMK-ⅡをIS化した機体の名前も同じ専用機を纏い訓練をしていたらしいが、束さんがモビルスーツの技術を最大限取り入れた専用機らしい。
「ところでイリア、マウアーとフォウは見なかった?」
ムサシを降りて以降、マウアーの姿を見ていなかった為にイリアに聞くと、イリアから信じられない事実を知る。
「マウアーならムサシを下艦して直ぐから悪阻が酷くて、本社に出来た織斑邸の自宅で横になってますよ。フォウはカミーユとファを連れてレゾナンスに買い物中ですが?」
「「悪阻?」」
「まさか、マウアーが妊娠したのね…」
あの事件で、マウアーが妊娠した事実を知り驚くアンとシャロだが、あたしは妊娠するのは経験上から確実だと思っていたからそんなには驚かないが、イチカの実子とも言える子供はシーマの娘の夏希とあたしの娘の彩芽に続き三人目となる。本来なら、マウアーも17歳だからイリア同様に学園に入れる積りだった。
「実質、学園にいくのはあたし達とイリアにフォウを加えた5人だけね…」
イリアも一緒に格納庫の奥へと束さんに案内され、IS用のハンガーに固定された機体はブラックローズⅡのIS版とも言える機体が用意されていたのだった。だが、用意されているブラックローズⅡの機体の数は2機とフォウ専用のブルーローズMK-Ⅱのみで、機体番号からアンとシャロの機体だと判るが、あたしの機体が無い事に気付いた。
「あたしの機体は束さん?」
「鈴ちゃんの機体は別の場所に在るんだよね。イリアちゃん、二人のフィッティング作業を任せても構わないかな?」
「束さん、任されました」
イリアが二人のフィッティング作業を始めると、あたしは更に奥に案内される。途中、天井が直された跡は一夏が以前に壊したらしい。そして、第七格納庫の最奥には肩のアーマーの装甲にはアクシズのマークが入り、大きな両肩のアーマーには内蔵型のスラスターが付けられた赤く染めれた機体。
無論、ハンガーの脇のホワイトボードに貼られた元の図面にはニナさんのサインが入ったモビルスーツの図面が貼られていて、ニナさんが設計した機体だと判る。
「束さん、この機体まさか…」
「うん、元になった機体はガンダムタイプの機体だよ。何せ、ニナちゃんの最高傑作の機体に束さんのブルーローズシリーズの技術をてんこ盛りにしながら開発したし、ハードポイントで2つの換装バーツもあるから」
「あっははは…」
まさかのZ計画の機体だとは思わず、あたしは乾いた笑いしか出なかったが、ISコアの朱雀をサポートする為の人工知能の『ALICE』が搭載され、実機のモビルスーツは25m程らしいが、束さんの技術で更に17mまで小型化して高性能化した図面と必要なシステムを全て纏め上げた上で、更に超小型で高出力のジェネレーターを直列配置で4基搭載した化物化したモビルスーツをアンマンのアナハイムであたし専用にと仕上げていたらく、この小型化して完全させたスペリオールガンダムを束さんは、更に昇華させた形でIS化したらしい。
無論、妊娠してなければ受領していた機体だったらしい。
そんな、スペリオールはブラックローズⅡと同じビームシールドは標準装備だったり、ハイメガビームランチャーを連射可能な様に出力を落として開発された熱核ロケット装備のバックパックに4基のメガビームカノンが装備された機体だった。その他には、ブラックローズⅡ専用のロングレンジスナイパーライフルを高出力のビームライフルへと発展させた、メガビームスマートガンやビームサーベル兼ビームカノンとして使用可能な両腰のアーマーに装備されたビームカノン。ノイエ・ジールの有線クローアームの技術を元に準サイコミュシステムを搭載した有線式のインコムが装備された重装備で高機動のISとして完成させていたのだった。
「どうかな」
やり過ぎ感丸出しのスペリオールを見ながら、あたしは受領するしかない事実と小型化高性能化した第六世代のISと言う事実に板挟みになり、意識を捨てて倒れたかったが束さんが許す訳も無いのは昔からの付き合いで体験済みだった事から受領して直ぐに、帰還初日に阿呆な事を仕出かしたブラックラビット隊の面々を訓練相手にスペリオールの換装ユニットのブースターユニットで超高機動戦闘による大立ち回りをしながら、懲罰訓練中のブラックラビット隊を追い回したのだった。
「クラリッサ、待ちなさい!!」
「ヒェェェ!?」
インコムを使い、逃げ道を潰しながらメガビームスマートガンを放ち追い回す鈴のスペリオールのブースターユニットの姿を見ていたあたしは、クラリッサに手を合わせながらご愁傷様と思うが、演習場の彼方此方に落とされたブラックラビット隊の隊員達は一対多数で鈴のスペリオールと戦ったのに、まさかの全滅をしての敗北に落ち込むのだった。
「スペリオール自体が強すぎるし、流星改の性能じゃあ無理だね…」
「アン、ブラックローズⅡだったら?」
「シャロ、あたしなら近接戦闘で五分の勝率で遠距離戦闘に持ち込まれたら、かなり落ちて三分ね…」
そして、鈴のスペリオールは4基のメガビームカノンを一斉に放ちクラリッサの流星改に直撃させて、クラリッサを落とすのだった。