本社の第八格納庫に着いたあたし達はクロエの案内の下、ワールドパージする為の装置へと着くのだが、束さんはイチカの子を身籠っていた事実は隠しようが無く、あの時の箒が戦死した台湾での精神的ショックからイチカに慰めて貰った時だと束さんは自白する。
無論、自白して直ぐに調べたのだが既に安定期を過ぎており、妊娠7ヶ月になるまで本人がただの体調不良だと思いながら気が付かなかったと語る。
イチカの救出後に開かれるだろ妻会議は紛糾するのは確実だと思い、鈴はゲンナリしながらノーマルスーツに着替える。
「モビルスーツの脱出用ポットね…」
「だね…」
いち早く着替えたアンとシャロはケーブルに繋がれたモビルスーツ用の脱出用ポットを見ながら思うのだが、内部はブラックローズⅡのコクピットと差程変わらず、唯一の違いと言えばフィット感あるシートへと変わっていたぐらいだった。シートに座りながらもパネルを操作するとブラックローズⅡのコクピットで間違いなかった。
「シャロはどう?」
「コクピットがブラックローズⅡね」
とシャロは答える。
「俺のは、アンマンでテスト操縦したゼータガンダムなんですが?」
「カミーユがゼータ?
あたしのは、スペリオルガンダムのブースターユニットよ!?」
「グッスン…私の機体なんかブルーローズMK-Ⅱじゃ無くて、クインマンサだったわよ…」
「「「「うっわぁ…」」」」
どうやら、5人にはそれぞれの機体がインストールされており、コクピットも違うらしく、唯一同じなのはアンとシャロのブラックローズⅡのみで、鈴とカミーユはゼータ系列のゼータガンダムとスペリオルガンダム・ブースターユニットだったが、イリアだけはアクシズ潜入の際にデータだけを取ってきたクインマンサだった。
無論、イリアは嫌そうな表情をしながらブルーローズ系列の機動力が高いモビルスーツでは無くて鈍重なクインマンサだと半泣きしていた。
「ハマーンちゃんからのデータ取りの依頼だったから、イリアちゃん頼んだよん」
「ハマーン様から!?」
まさか、IS世界でクインマンサの評価実験ついでだったと聞いたイリアは、いじけたくなったのは言うまでもない。
そして、クロエが脱出ポットに入り、繋げられたケーブルが光出す。
「皆様、準備は良いでしょうか?」
全員から何時でもと返事を返すと、クロエは自分の本来の専用機の黒鍵を展開してワールドパージが始まったのだ。
宇宙空間に漂う6機のモビルスーツは、アンとシャロのブラックローズⅡにカミーユのゼータガンダム、鈴のスペリオルガンダムブースターユニットにイリアのクインマンサ。そして、クロエの乗る機体はFAZZが浮かぶ。
「これが、イチカの精神世界…」
「あたしの居た世界かと思ったわよ…」
そう、言われてしまえば納得出来るが、アンとシャロが呟く様に宇宙世紀の世界と変わらない宇宙空間が広がり、出た場所が岩礁宙域だったのが幸いしてはいるが、宙域から出て直ぐの場所には地球連邦軍の最新鋭の巡洋艦のクラップ級が数隻おり、Lのマークに二つの鐘のマークのあるアーガマに似た艦にアンは嫌な予感を覚える。
「シャロ、戻るわよ」
「手を出さない方が懸命ね」
岩礁宙域の岩礁の影から艦隊を覗いていたアンとシャロは自機のコクピットに素早く戻り、鈴達が待機する場所へと移動するがスラスターを一切使わずに岩礁を蹴った反動のみで移動したのだった。
もう一方の岩礁宙域では、青いギラ・ドーガ改のパイロットのレズン少尉率いるギラ・ドーガ隊はロンド・ベル隊別働艦隊を奇襲する以前に鈴達を見付けており、イリアのクイン・マンサを見て驚愕していた。
「なっ、何故反乱軍の旧ネオ・ジオンの機体と旧エゥーゴの機体が!?」
「隊長、どうしますか?」
「ちぃ、やるしか無いじゃないかい!!」
レズンは己の不運を呪いながらも数が少ない鈴達への奇襲を考え、シュツルムファーストを納めるシールドを構え鈴のスペリオルガンダムブースターユニットへと狙いを定める。
「つっ!?みんな散開!!」
「襲撃かよ!?」
「まさか、この感覚!?」
「モビルスーツに慣れて無いのですが…」
やはり、鈴はニュータイプへと覚醒していた為に脳裏に走る様な雷と悪意に満ちた感覚を同時に感じ取り、フットペダルを踏み込みながらスラスターを吹かすといきなり飛んで来たシュツルムファーストを回避する。
「ちぃ、奴はニュータイプかい!?」
「友軍機を攻撃なんて、どういう積りよ!!」
鈴は、友軍機から攻撃されるとは一切思って無かったが、シュツルムファーストの威力は三つ巴の戦いでの経験で知っでいた故にスペリオルガンダムでも当たれば只では済まない事は熟知していたし、肩のアーマーにはアクシズのマークがあるから問題ないと思っていた自分に怒りすら覚える。そして、メガビームスマートガンをギラ・ドーガ改へと放ち反撃する。
「友軍から攻撃かよ!?」
既に旧式化しつつあるゼータガンダムに乗るカミーユもビームライフルを放ちながらギラ・ドーガへと反撃するが、ダミーバルーンを展開したギラ・ドーガには当たらない。しかし、素人同然の動きしか出来ないクロエのFAZZを護らなくてはいけない為に離れられない苛つきもあり、ストレスが貯まる一方だった。
「ビームなんか!!」
イリアもクインマンサのIフィールドを張りながら、メガ粒子砲を放ち反撃する。無論、両肩のバインダー内のファンネルを展開しながら味方機に援護をするが、クインマンサのデカさ故に一番被弾率が高いとも言える。
「まごまごしてると、ロンド・ベルの連中に気付かれるよ!!」
レズンは部下達に叫びながら、鈴のスペリオルガンダムへとビームサーベルを抜き斬り掛かるが、ギラ・ドーガ改とスペリオルガンダムとの間には、鈴達へと先行偵察から戻って来たシャロが放ったハイメガビームランチャーのビームが通り過ぎレズンは動きを止める。
「誰だい!!」
「あら、レズン。
教官だった、私を忘れたかしら?」
「まさか、この声は…」
レズンはシャロの声を聞き、歯をガタガタ鳴らしながら怯え出して顔を真っ青にする。レズン本人にしたら士官学校時代の恐怖の対象であり、故人のラカン大尉と並び畏れられた教官の一人のシャーロット中佐だとは思いにも依らず、レズンはコクピット内で膝を抱えながら完全に怯えていたのだった。
無論、味方同士の戦いはレズンより上位の上官に当たるアン大佐の『撤退するわよ!!』の一言で収まり、アンとシャロの2機のブラックローズⅡに腕を掴まれながら挟まれて拘束されたレズンのギラ・ドーガ改はモビルスーツ隊隊長のレズンの案内の下、母艦の数隻のムサカへと案内して貰うが、他のギラ・ドーガのパイロット達もアン大佐の眼の笑っていない笑顔を見て凍り付いて怯えたのは言うまでもない。
「さて、鈴達を攻撃をした理由を聴こうかしらね?」
「さあ、答えなさいレズン少尉!!」
ムサカのモビルスーツデッキに着き、ギラ・ドーガ改のコクピットから引き摺り出された上にキャットウォークに正座をさせられたレズンは小さく成りながらアンとシャロから尋問されていた。無論、答えなければアンが持ち出して来たビームマシンガンのエネルギーパックを膝の上に置くぞと暗に発しており、レズンは素直に話すしか道は無かった。
「あれが、イチカ准将の奥さん達かよ…怖えぇぇ…」
「アン大佐とシャーロット中佐は独立戦争からの生き残りだろ?マジ、半端ねぇ…」
「しかも、あの三つ巴の戦いもだろ?」
「レズン少尉、ご愁傷さまだよな…」
「「アンタ達も一緒にお説教よ!!」」
「「「「「「そっ、そんなぁ!?」」」」」」
アンとシャロのレズン達へのお説教は続き、本拠地のソロモンへと戻る頃には足が痺れて動けないレズン達が出来上がるのだった。
ソロモンに入港したムサカは宇宙港に係留され、ランチから移動して旗艦のシラネへと案内されるが、鈴とアンにシャロはシラネ内に入るなりイチカの探索を始めるが、直ぐにイチカをモビルスーツデッキにて見付ける。
「イチカ、見付けたわよ!!」
ゴム弾仕様のアサルトライフルをイチカへと構えながらアンは叫び、イチカは驚愕しながら驚く。
「うっげぇ、アン!?」
しかし、反対側から出て来たヤンデレ化したイリアが、ガンダリウム合金製の鎖とそれに繋がる首輪をイチカの首に嵌めようと持ち伏せしながら現れる。
「ふふふ…イチカ見付けた…」
「いっ、イリア!?」
「逃さないよ!!」
無論、アンとイリアだけでは無く、シャロも鎖付きの手錠を振り回しながら現れてイチカはさらにピンチとなる。
「しゃ、シャロ!?」
そして、イチカはモビルスーツデッキを逃げ回るが、最後に現れたのは真剣でありガンダリウム合金製の青龍刀を握る鈴だった。鈴はイチカを見付けるなりニッコリと笑うが、眼が一切笑っていなく縦長の紙と墨が着けられた筆を投げ渡しながら叫ぶ。
「一夏、辞世の句の準備は済んだ?」
「鈴までって、辞世の句って切腹かよ!?」
「そうね、あたしの知らない内に浮気したんだから切腹いえ、斬首が妥当よ!!
この、馬鹿一夏の浮気者!!」
と叫び、ブルーローズMK-Ⅱが握ったままのビームライフルを一振りしたガンダリウム合金製の青龍刀で八つ当たりの様に斬り捨てる。
「こっ、殺される!?」
4人に見付かったイチカは、ブルーローズMK-Ⅱのコクピットハッチを蹴り反転すると、涙目の鈴からの切腹しろとの叫びの声に顔を真っ青にしながらモビルスーツデッキから逃げ出す。無論、鈴達はイチカを追いかけ始めて、シラネが就航してから初めてとなる追いかけっこによるデス・マーチの始まりだった。
「まっ、まさか…束さんとの一件がバレた!?」
「「「「待ちなさァァァァい!!」」」」
「やっ、ヤベェ逃げるしか無い!?」
逃げ回るイチカとイチカを追う妻達の攻防は、シラネのメカニック達からしたらソロモン以来の何時もの光景かも知れない。しかし、鈴が青龍刀で斬り捨てたビームライフルを見ながらメカニックは思う。
「なぁ、コレって斬れる物なのか?」
「いや、知らん。だが、次の出撃に備えて修理が先決だろ?」
「いや、そうだけどさ、普通は斬れねぇだろ!?」
「サカイ少尉、鈴音夫人には絶対に逆らうなよな?」
「なっ、何でだよ?」
「キレたら、ハマーン様でも止めるのが難しいからだ!!」
「おっ、なるほど…」
そんな会話をするメカニックの会話を他所にしながらもデス・マーチは続く。
「イチカくん…」
「シャア閣下、逃げますよ!!」
「何故だ?」
「「「「待ちなさァァァァい!!」」」」
「私はナナイに急用が!!」
「シャア閣下!?
ハマーン様に浮気を言ってやるからな!!」
首を傾げながら疑問に思うシャアだったが、通路の角から現れた四人に真っ青になり、シャアはナナイの自室へと逃げ込みながら鍵を閉める。無論、イチカはナナイ艦長の部屋へと逃げ込もうとするがシャアから閉め出される。
無論、ハマーン様へと浮気を報告してやろうと決意したイチカだった。
そして、逃げ回る事30分後には4人に捕まり、廊下にはイチカへの制裁に満足した4人とボロ雑巾の様にボロボロになったイチカが宙に浮いていたらしく、ブリッジから自室に戻る途中のナナイが見付けたらしい。