一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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旅への門出

 

 ムサシ出撃の当日、IS学園の港ではムサシが横付けされておりタラップからムサシのクルーが乗り込みながら出撃の準備を進めていた。無論、今回の出撃にはいつ帰るのか不明な為に絶対に着いて行くと聞かず自主退職して来たた千冬姉や更にブラコンを拗らせた上に自主退学の道を選んだ妹のマドカとシャルロットとは別に食堂へと隠れながら密航してイチカを未だに狙うラウラとセシリアが乗り込み、シャルロットはムサシへと密航しようとしたらスコールさんに捕まり、連行された上で副社長となる。

 

 そして、ホワイトラビット社からはクロエが秘密ドックから乗り込んでおり、改修は済んではいたのだが主砲と対空レーザー砲の修理は材料の精製が実質不可能な為に済んではおらず、応急処置的に装甲板で塞いだに過ぎなかった。

 

 「相変わらず、バカでかい艦よね」

 

 「そうだな…」

 

 タラップを上がりながらアンは、ムサシの大きさにゲンナリしながら登る。イチカも目覚めてから初めて知るムサシの被害状況に宇宙での活動は大丈夫かと心配にはなるが、改修ついでに破孔は塞ぎ済で気密性には問題は無い。

 

 だが、クルーとイチカ達が全員がムサシへと乗り込んだが、水色の癖毛のある最高学年の女性が密航して隠れて居るとは誰も知らない。

 

 

 「ムサシ、抜錨!!」

 

 艦長のツキノ中佐が指揮を取りながら、ムサシの艦首部分の錨を繋ぐ鎖が巻き上げられタグボート並みの大きさの錨が上がっていく。収納され、錨が固定さるれるとバウスラスターが海中で点火しながらゆっくりと埠頭から離れて行く。

 

 「微速前進、赤黒上下無し」

 

 ムサシは沖合に向けて出港したのだった。

 

 「イチカ大佐、予定通りにシズオカ沖に移動次第ミノフスキークラフトを作動させて高度14000まで上昇した後に大気圏離脱ブースターを点火し、大気圏を離脱します」

 

 「ツキノに任せるよ」

 

 「ハッ、各員は大気圏離脱のシーケンスに入れ!!」

 

 ツキノが叫び、クルーの一部はノーマルスーツへと交代で着換え始める。無論、オリムラ一家もノーマルスーツに着換え、離脱の為に自室脇の待機所の座席に座りベルトを締め始めた時だった。

 

 「イチカ大佐!!

 

 艦内に侵入者を捕縛!!」

 

 艦内のクルーで警備科のミナミ伍長が三人の女性を拘束しながら連れて来たのだ。

 

 「むっ、離せ!!」

 

 「痛いですわよ!?」

 

 「あらぁ…私でも見つかるなんて…」

 

 「へっ?

 

 ラウラにセシリアなら判るが、何故に楯無さんが!?」

 

 「異世界が楽しそうだからに決まってるじゃん」

 

 楯無さんの一言に一斉に全員がずっこけるが、下手をすれば死ぬかもしれない事実を知るアンはベルトを外してツカツカと楯無さんへと無言で近づく。

 

 「ちょっと、アンちゃん顔が…ヘッゴッ!?」

 

 「このバカを囚人房に入れて置きなさい!!」

 

 無論、無言でも近付いたアンを首を傾げていた楯無さんだったが、目の前に来た時点でかなり怖い形相をしながら拳を握ると鳩尾を殴り上げる。

 

 楯無さんは囚人房へと連行されて収監され、先に素直に謝った二人にはシャロが軽くお説教した後に座席に座らせてベルトを締めさせたのだった。

 

 ムサシは順調に高度を上げた後、大気圏離脱用ブースターが点火して大気圏から離脱し、機関部で作業する束さんは縮退機関を稼動させながら向こうの世界へと行く準備を完了させていた。

 

 「ブースター点火!!」

 

 「さて、あの世界に戻るんだな…」

 

 俺は大気圏を離脱するムサシの舷窓から宇宙を呟きながら見たのだった。

 

 

 同じ頃、IS学園では姉に纏めた書類を運んでいた簪は生徒会室へと足を運ぶ。

 

 「お姉ちゃん、書類…って、駄姉がぁぁぁぁ!!」

 

 テーブルの上に置かれた一枚の置き手紙には、『楽しそうだがら付いて行くね  By 更識楯無』とあり、それを読んだ簪はブチ切れながら手紙を破り捨てて叫んだのだ。

 

 無論、一夏君達がいつ帰るのか未定な為に実家の更識家へと急ぎ帰り幹部を全員を召集し、簪は18代更識楯無を継ぐ破目となり、まず最初の仕事は駄姉である刀奈を更識家から当主権限で除名処分としたのだった。

 

 

 

 

 サイド1のシャングリラでは、宇宙活動ではお馴染みの作業用ポッドがアポジモーターを使いコロニーの外側にてジャンクパーツやモビルスーツの残骸を回収していた。

 

 「イーノの情報通りだな」

 

 ジュドーは巧みに作業ポッドを使いながらモビルスーツの残骸を見定めながら高く売れそうなパーツを探す。無論、今の年齢なら学校に行かなくてはイケないのだが、両親の仕送りだけでは食べて行くのは大変であり、幼い頃から使い慣れた作業ポッドを使いジャンクパーツを回収する仕事を妹のリィナに秘密でしていた。

 

 そんな時だった。

 

 丸い球体が点滅しているを気付き、ジュドーはフットペダルを巧みに操作しながら近づく。

 

 「おっ、新品同様のリニアシートでお宝じゃん」

 

 無論、高値で取り引きされるジャンクパーツであるが、AE社製のリニアシートであるなら妹を山ノ手の学校へと行かせるのは可能かも知れない。しかし、ジュドーが見付けたのはアナハイム社製では無く宇宙要塞アクシズで作られたタイプにガックリと項垂れるが、リニアシートがまだ生きている事に気付くのだった。

 

 「ちぃ、生きてる奴かよ…まぁ、回収するしかないな」

 

 リニアシートをワイヤーで固定してコロニーへと戻るのだが、作業ポッドを何時もの場所に隠し終えた所で回収したリニアシートをトラックに乗せて直ぐに悪友の仲間の二人にに捕まる。

 

 「げっ、モンドとビーチャかよ!?」

 

 「黙って、仕事したんだから没収だからなジュドー!!」

 

 「マジかよ!?」

 

 「じゃあ、運んじゃうねぇ」

 

 「エルまで!?」

 

 トラックにはエルが乗っており、ジュドーは骨折り損の草臥れ儲けとなったのは言うまでも無かった。無論、スクラップ屋へとエル達が運び売ったのだが、二束三文の価値しか無いアクシズ要塞製のリニアシートでは仲良し五人組が一週間分食べて行ければマシな程度の金額にしか成らなかった。

 

 なんとか謝り通して分け前を得たジュドーは自宅へと帰るのだが、お玉を肩に掛けながら鬼の様に待ち構えていた少女が居た。

 

 「お兄ちゃん!!

 

 また、学校をサボって!!」

 

 「うっげぇ、リィナ!?」

 

 炊事洗濯などの家事を受け持つジュドーからしたら出来の良い妹のリィナだった。無論、性格はかなり真面目だが怒らせるとジュドーでも頭が上がらない。

 

 この後、ジュドーがリィナに何をされたかは知らないが、酷い目に遭ったとしか言いようが無い。

 

 

 

 宇宙へと出たイチカ達を乗せたムサシは縮退機関による宇宙世紀へと戻る事には成功する。しかし、転移直後に最大級のピンチを迎えていた。

 

 「次元跳躍に成功!!」

 

 「通信班、アクシズへの通信は?」

 

 「本拠地のソロモンへと通信、繋がりました!!」

 

 「モニターに出せ!!」

 

 ツキノの指示にモニターが映り、モニターに映し出された人物はハマーンだった。

 

 『イチカ達は戻ったか…』

 

 「ハマーン様、イチカ大佐以下全員帰還しました」

 

 『まぁ、良い。

 

 ムサシはどの辺りを航行中なのだ?』

 

 ハマーンからどの宙域なのか聞かれた瞬間だった。

 

 「「「「!?」」」」

 

 メキメキ…ズッガァァァァン

 

 縮退機関が積まれた後部の機関室上の甲板が捲り上がり、中から出て来たのは縮退機関だった。縮退機関は重力に押し潰される様にメキメキと言いながら潰れて行き消滅したのだった。

 

 「被害状況知らせ!!」

 

 『何が起こった!?』

 

 「ハマーンちゃん、ゴメン。

 

 帰る為の束さん特製の縮退機関が消滅しちゃった…」

 

 「機関部の縮退機関が船外へと出て消滅!!

 

 破孔部から数名が投げ出された模様!!」

 

 「救助隊を急がせなさい!!」

 

 ブリッジで混乱極まる状況にハマーンは、イチカ達が帰還したのは良いのだと思うのだが、出迎えの艦隊を向かわせようかと悩む内に通信が切れた事に不安を感じざるをえなかなった。

 

 無論、投げ出された数名は無事に救助したのだが、機関部の損傷からソロモンへの帰還は不可能だと判断したツキノは最も近いコロニーへと入り機関を修理すると指示を出したのだが、そのコロニーがシャングリラだとは思わず、ため息を吐くのだった。

 

 「よりによって…」

 

 「まさか、シャングリラじゃ無いわよね?」

 

 「アン大佐、まさかですよ…」

 

 「治安最悪なコロニーじゃん…」

 

 アンもゲンナリしながらもブリッジから見えたコロニーに不安を抱くのだった。


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