この日、ソロモンは歓喜に染まる。
彼方此方が焦げボロボロのアクシズの軍旗をメインマストに掲げた淡いダークグレーに染められた巨大戦艦が母港であるソロモンへと帰還したのだ。
無論、三つ巴の激戦を生き残った戦艦だけに傷だらけの姿を曝した戦艦だったが、乗組員がノーマルスーツ姿で戦艦の最上甲板に一列に並び敬礼しながら入港した姿はソロモンに住む住民やソロモンの位置がコロニーから月面都市への中継地点なだけに騒ぎとなるのは確実だった。
「おい、アレは……ムッ、ムサシだぁぁぁ!?」
「えっ!?」
「まさか…幽霊船じゃ無いよな?」
「あたし達を勝手に殺すな!!」
ズッキュン
「はっ、はっぅ!?」
「股間に狙撃!?
メーデー、メーデー!!
誰か、衛生兵!!」
「馬鹿だなぁ…アレだけの狙撃が出来るは、元シーマ艦隊のアマゾネス隊だけだよなぁ…」
一人の兵士が幽霊船だと呟くが、ムサシの右舷対空監視所から敬礼する女性士官に偶然にも聴こえたのか、空砲用のマガジン入りのライフルのマガジンをゴム弾入りのマガジンへと替えてからスナイパーライフルを股間へと放ち、呟いた男性兵士が両手で股間を押さえながら悶絶して倒れる。
そして、ムサシは宇宙港の誘導艦の指示を受けながらムサシ級専用のドックへとゆっくりと入り、数回スラスターを吹かしながら微調整した後にドックに固定される。
「ムサシ、投錨開始せよ!!
甲板作業員はドックへの固定作業に入れ!!」
歴戦の艦長化したツキノがブリッジでは檄を飛ばしながら入港作業の指揮を取り、通信員はアクシズの管制コントロールルームへと連絡を密に取りながら艦長へと報告したのだった。
「ハッ、ハマーン様!!」
「ニー、執務中に騒がしいぞ!!」
「執務中に失礼しました。
しかし、そっ、ソロモンにムサシが帰還しました!!」
「なっ、何だと!?
ニー、シャアをドックへと呼べ!!」
同じ頃、ソロモンの自宅にてムサシのソロモンへの帰還の報告を側近のニー・ギーレンから受けたハマーンは執務中だったのも関わらずに決済報告の書類を執務机に放り投げて執務室を飛び出してドックへと向かう。
無論、ハマーンの邸宅は大騒ぎとなるのだが、慌てて出て行こうとするハマーンをナタリーは窘める。
「ハマーン様、その様な格好で何方に?」
「ナタリー、ムサシが帰還したのだ!
そこを退いて貰おう!!」
自宅の執務室だからとジャージ姿のハマーンはナタリーからしたら、そのジャージ姿は流石に情けない。だが、ハマーンはイチカの世界から持ち込まれたジャージでいる快適さに自宅のみだが、ジャージ姿で過ごすのが多いと側近のギーレン兄弟が頭を悩ます一因だった。
「せめて、ジャージ姿はやめなさい!!」
「ジャージだと?
はっ!?
しっ、しまった!?」
気付くの遅くて玄関は開放されており、ハマーンの今の姿は投稿期限がギリギリで漫画を書き上げる漫画家の様な頭にはバンダナをリボンの様に使い髪を上げており、PC用眼鏡の姿にナタリーは呆れながら注意されたハマーンは慌てふためきながら軍服へと着換えたのは言うまでも無い。
そして、着換え終えたハマーンと呆れ顔のナタリーは要人などが送り迎えで使用される黒塗りの高級車に乗りドックへと向かったのだ。
「ニー、オリムラ中隊用のモビルスーツの補給要請の数が少ないな。何か報告はあるか?」
車内にてムサシから送られたモビルスーツの補給要請の数の少なさから疑問に思うハマーン。
「はい、オリムラ中隊のア・バオア・クー奪還作戦での詳しい被害報告はこちらに」
ハマーンはニーから受け取ったムサシの被害報告に眉を顰める。パイロットでの戦死者は二名のマシュマーとキャラのみだが、ムサシの乗組員の行方不明者と戦死者が非常に多くて約400名の乗組員の戦死と行方不明の乗組員の名簿に目を通して行くが、乗組員の補充は旧シーマ艦隊旗艦だったアカツキからの脱出した乗組員を充てた事も記載されていた。
「激戦区だったSフィールドで、ムサシでも中破なのだな。それにしても、マシュマーとキャラは逝ったのか…」
オリムラ中隊の中でもイリア小隊の中核を担うパイロットだっただけに惜しい人材を無くしたのだと改めてハマーンは被害報告書を読みながら思う。三つ巴による傷痕はジワジワと毒の様に周りながらも独立戦争の生き残ったベテランパイロットや指揮官の損失から来るアクシズでの人材不足に頭を抱える。
「ハマーン様、イチカ大佐が帰還されたのであれば…」
「フロンティアサイドの調査か?」
「ニナ大尉からの情報では、アナハイムではブラックローズⅡの技術を元にした小型化したモビルスーツの開発と高出力のジェネレーターを用いた機体の開発が始まった情報とフロンティアサイドの企業が小型化したモビルスーツの開発に成功したと報告にあります」
「だが、量産型のブラックローズⅡよりは性能は低いのだろ?」
「はい、作業用らしくて実用性はかなり低いかと…」
しかし、実情は違いブラックローズⅡに近い性能のモビルスーツを開発している情報はハマーン達は掴んではいなかった。だが、帰還したイチカ達の目的はサイド2への核攻撃の阻止だ。
モビルスーツの開発速度が急上昇したのは束さんが要因だとは口が裂けても言えないが、アクシズのモビルスーツもロールアウトしたばかりのザクの後継機とも言えるザクⅢを原形に小型化した一般兵向きのモビルスーツの開発が始まり既に試作段階だとニナは報告していた。
「それにしても……」
ハマーンが何かを言い掛けると、一人の黒髪の女性が車の前に飛び出して来てハマーンの乗せた車が止まる。
「危ないじゃないか!!」
「ふふふ…」
運転手は窓から顔を出して叫ぶが、女性は軽く笑う程度だった。しかし、ニュータイプ能力の高いハマーンは宇宙空間に飛び出して来た女性と二人でいる錯覚に陥るが、正気に戻ると女性の姿は車の前から消えているが、彼女もニュータイプだと気付き周りを見渡すが姿も無かったのた。
「一体、彼女は何者なのだ…」
だが、その女性は再び合う予感しかしないのは気のせいだとハマーンは思いたいのだが、彼女はイチカと合流した後に再び邂逅する運命である事になるとは知らないのだった。
ドックに入港したムサシは、三つ巴の戦いからの被弾による損傷に加えて縮退機関の消失からの損傷が加わり被害は甚大だったが、シャングリラでの緊急修理により自力航行は可能だった。しかし、武装の全体の4割しか使えない状況と機関損傷から出力低下を招いた超高出力のジェネレーターはソロモンのドックか建造したアンマンのアナハイムのドックでしか修理が出来なかった。
「ほら、さっさと修理を始めるよ!!」
「「「了解!!」」」
入港した早々から束さんはつなぎ服を下に着ながらノーマルスーツに巨大なスパナを担いだ姿でムサシの機関部を解体しながらも、自身が技術最高顧問の地位を利用してムサシのジェネレーターの再製造をソロモンの工廠をフル稼働させながら修理を始めたり、主砲の第二砲塔や対空対艦両用型でビーム砲と実弾が使用出来る60口径20.6サンチ三連装副砲や破損や欠落した副砲と同じくレーザーと実弾の両用型の三連装の対空レーザー砲などの製造を始めたりしていた。
「束大尉!!」
「おっ、ニナちゃんじゃん♪」
そんな、ムサシの修理の最中にノーマルスーツを着た女性が束さんに抱き着くのは副顧問のニナさんだった。しかし、ニナさんが抱き着いたのは束さんに渡す機密書類を渡す為のカモフラージュでしかないが、束さんは苦労を掛けたニナさんを優しく抱き止めながらも機密書類を瞬時に全て読み切り返すのは人外チートの束さんだけだろうかと思う。
「へぇ、やっぱりなんだ…」
「はい、元アナハイムの社員だっただけに…」
読み切った書類はアナハイムがしていただろう横流しの調査報告だった。無論、三つ巴の戦いの後に押収したネオ・ジオンの機体は全てソロモンへと運ぶ様に指示を出し、精神世界で横流しをしていたオサリバン常務もこの世界でも絡むと睨んだ束さんはシャングリラから秘密回線により調査命令をニナさんに出しており、調査結果は束さんが睨んだ通りの結果にニナさんは申し訳無さそうに謝る。
「でも、流れたのがゼータガンダム系列じゃ無くて、メタス系列の機体で良かったよ。でも、エゥーゴ向けのフォーミュラ計画の機体の一部が流れたのは予想外だったなぁ…」
「私も束博士の言われた通りに警戒はしましたが、フォーミュラ計画の一部が流れたのは…」
「まぁ、あの機体はアナハイムが開発中のジェガン系列の機体を小型化した機体だからね」
「でも、高出力のジェネレーターの開発出来なければ…」
「うん、ゴミ以下の機体しか開発出来ないと言い切れるかな…」
しかし、技術顧問二人には知られてはいないが、アナハイムはメタス系列の最高峰の機体であるZⅡの開発に成功を既に収めており、小型化は出来なかったが高出力のジェネレーターの技術は既に修得していた事を二人は知らない。
無論、ニナさんが責任者となり設計したフォーミュラ計画のF-90から得た技術はアナハイムへと流れており、ジェガンを小型化したヘビーガンとGキャノンの開発は返還されたジャブローを中心とした連邦軍の基地で密かに行われ、連邦軍の宇宙艦隊にはジェガンタイプの機体の配備が始まりつつある情報はアクシズの特殊部隊から入る事になる。
一方、ムサシから下艦したイチカ達は艦隊艦政本部へと足を運び、解体されたシーマ艦隊についての説明とオリムラ中隊の扱いについての話し合いとなるのだが、独立部隊化していたオリムラ中隊は部隊の解散はせずに新型の巡洋艦であるムサカ級のミョウコウとナチとアシガラにハグロを加えた5隻の艦隊を一つの部隊とする話しが出ていた。
「だがら、オリムラ中隊に艦隊の配備は不要です!!」
アンが机を叩きながら艦隊の配備を拒むが、艦政本部の司令となったとある人物は頑なに配備を推し進めようとする。理由は確かに新人パイロットの育成も兼ねてはいるのは納得は出来るが、最前線で常に戦う事の多いオリムラ中隊からしたら足手まといも甚だしい。しかし、人材不足に悩むアクシズからしたらイチカ達の帰還は育成に拍車が掛かるだろうと睨む艦政本部の人間からしたら嬉しい誤算だった。
「何を騒いでいる!!」
「「ハマーン様!?」」
アンが艦政本部の役人と騒いでいる最中、ハマーンがイチカ達が向かった艦政本部にて合流する。ハマーンもイチカ達のオリムラ中隊は単艦での任務が主流であり艦隊を組ませるのは足枷にしか成らない事など百も承知だった。
「貴様、オリムラ中隊に艦隊は不要だと言った筈だが?」
「しかし、イチカ大佐やアン大佐にシャーロット中佐の歴戦のパイロットを一纏めにするのは…」
「ほぅ、貴様は帰還した英雄をバラバラに配備するか、艦隊を組ませて新人教育をやらせると?」
「いえ、確かに練度の高いパイロットを一纏めにするのはとアン大佐に言っただけで…」
「確かに貴様の言い分は判るが、オリムラ中隊はこの面子だからこその戦果であろう。なら、オリムラ中隊は単艦での任務は、私が認めるとするが構わんよな?」
ハマーンの一喝により、艦隊が組まれる事は無かったが、代わりに新人パイロットを数名を配属させる事で艦政本部の役人は引き下がったのだったが、パイロットはエゥーゴからの志願兵だとハマーンは隊長のイチカには教えたのだ。
「ルー・ルカ士官候補生とレズン少尉か…」
「男性パイロットは居ないのかな?」
「男性パイロットならこちらに成りますね…」
艦政本部で渡された名簿には数名の士官候補生や少尉階級のパイロットがピックアップされるが、めぼしいパイロットはこの二名位しか居なかった。まぁ、理由は判ると思うが娘達を邪険にしない者に限ると条件付けにした為だが、男性パイロットでも問題が無ければ選んだだろうパイロットはリョウ少尉位だったが性格に難がある事から除外している。
しかし、新人パイロットの他にベテランパイロットを希望した所、カラバ経由で一名の女性パイロットが回されるらしい。
だが、俺は名簿を見た瞬間、顔が強張り固まる。
「うっ、嘘だろ…」
彼女はア・バオア・クー決戦で死んだ筈だったのに何故?
そんな風に思考をしていたら、ムサシのモビルスーツデッキで騒ぎが起こる。
「キィぃぃぃ!!
アン、貴女ねぇ!!
私が死んだと思って、イチカに抜け駆けかまして結婚ですって!!
ふざけんな、クソアマ!!」
「ギャァァァ!?
いっ、痛いってばミチル!?
髪を引っ張るなぁ!?」
「ちょっと、ミチル!?」
「あら、おっぱいだけは乳牛並みに成長したシャーロットさん、何か御用かな?」
「「ギャア!?」」
と言いながらも、アンの髪を掴みながら引っ張りシャロの顔面に回し蹴りを入れるミチル。無論、顔面に蹴りが入ったシャロはモビルスーツデッキを漂う様に気絶する。
あぁ、旧オリムラ中隊ではお馴染みの肉体的会話による俺を巡る醜い争いと言えるが、他に俺の嫁であるクリスとエマはミチルに真っ先に伸されたのかモビルスーツデッキを漂いながら気絶しており、ヴァルキリー小隊の面々は妊婦である為、衣服がズタボロになった鈴に庇われながらデッキ奥へと退避して居たのだった。
「何故、こう成った…」
無論、カラバ経由での補充パイロットがミチルなら、地球に降りたら絶対にアムロを殴り飛ばしてやりたいと思うのはこの光景のせいだと思いたかった。
「貴様、新人の癖にいい加減に!!」
「イリア、あたしの髪が掴まれてんだから待ちなさい!?」
「見え見えよ!!」
「ギャァァァァ!?
イリアの馬鹿!!」
「かっはぁ…」
そんな、嫁達に容赦なく殴り飛ばすミチルと相対するのはイリアだったが、イリアの放ったパンチは寸で躱され、カウンターのアッパーを逆に喰らい膝から堕ちる様に崩れ落ちて気絶したのだった。勿論、アンは髪を掴まれたままだったので躱した際に更に引っ張られてイリアに叫びながら悲鳴を上げる。
「全く、弱く成ったのは、幸せ太りでもしたんじゃないのかねぇ、アン?」
「うっぐぅ…髪は…引っ張るなって言っているでしょうが!!」
未だにアンの髪を掴みながら引き摺り、ミチルはアンの脇腹を掴みながら掴んだ脇腹の肉を上下に振りながらアンを甚振る。
「ついでに胸も成長したかしら?」
「うっがァァァ!!
胸がメロンのミチルに言われたく無いわよ!!」
既に戦意を失ったアンだったが、ヴァルキリー小隊の面々を束さんに預けて戻って来たのは、仲間であり妻仲間の頂点に立つ鈴はミチルを睨みズカズカと歩み寄る。
「あんたねぇ、娘達の世話も在るのに全員を伸してさ、ざけんじゃないわよ!!」
「鈴、まだあたしはやられてないわよ!?
でも、ミチルに勝てないから止めなさい!!」
「うっさい馬鹿!!
最初に伸されたアンには言われたく無いわよ!!」
諫める様にアンが叫ぶが、ブチ切れた鈴は拡張領域から青龍刀を取り出して鞘をから抜いて鞘を放り投げて剣先をミチルに向ける。無論、ミチルも艦内に掛けられた足場の足場材である鉄パイプを掴みながらもぎり取り、鈴に鉄パイプで槍の型を構える。
「へぇ、イチカの正妻さんでも……」
「えっ!?
アンタ、その構えは…宝蔵院流槍術ですって!?」
戦国武将の福島正則などが使ったとされる槍術であり、現在では殆どの型が失伝している。しかし、ミチルの本名はミチル・サオトメであるが、母方の名字はホウゾウインであり宗家の孫娘だったりする。
「寝てなさい!!」
「あたしだって、少林寺拳法の門下生で師範代まで登り詰めたのよ!!
舐めるなァァァ!!」
二人が激しくぶつかり合うが、一合二合とぶつかり合う内にモビルスーツデッキの壁やモビルスーツの装甲は鉄パイプに突かれては穴が開き、青龍刀に斬られてはモビルスーツの脚部やウェポンラックのビームライフルが斬れてズレ落ちたりしていた。
無論、アンはミチルから放り投げられたが、鈴とミチルの激闘に巻き込まれて衣服が全て細切れにされて下着姿だったと言って置くが、二人のマジなぶつかり合いをどうにかしないと死人すら出る予感に止めに入ったのは千冬姉だった。
「貴様ら、いい加減にしろ!!」
「うっげぇ、千冬さん!?
いっ、いだだだだだ!?
アイアンクローは…」
「えっ!?
うそ…」
「二人共、頭を冷やせ!!
ふん!!」
「「ギャァァァァ!?」」
二人の間に割り込み、鈴とミチルの顔面を片手で掴み止ながらも、二人の顔面にアイアンクローを決めると全力の力を入れて鳴らしてはいけない音が二人の頭から響き、ダランと力無く二人は垂れ下がり気絶したのだった。
「一夏、私も操縦訓練を終わらせて来たぞ!!」
二人を放り投げ、俺へと戻って来た千冬は見えない犬の尻尾をブンブンと振りながら褒めて褒めてとする表情に溜息しか出なかったのだった。