一夏がシャアに拾われた件について   作:ロドニー

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戦士再び

 

 

 あのセシリアの発言の翌日、アンはあれから両親を思い出してしまった事とオーストラリアに向かう途中の客船から観てしまった宇宙(そら)から落ちてくるコロニーの恐怖から部屋のベッドでは、可愛い寝顔を晒したまま眠っている。

 

 無論、束さん特製の睡眠薬を飲ませて眠らせているに過ぎないが、アンの心がコロニー落としの恐怖から壊れるよりはマシだった。

 

 それだけ、コロニー落としでコロニーがオーストラリアに落ちて、現地で仕事中の家族を客船から見たオーストラリアを前に失った精神的ダメージが大きかったと言える。

 

 だから、俺はセシリアに怒った。

 

 朝から第三アリーナを企業名義で貸し切り、寝起きのミューゼル先生を呼び出して最終決戦時の勘を戻すべく授業には参加しないで訓練に明け暮れた。

 

 それは、士官学校で行なった宇宙空間での操縦訓練よりもハードな内容を俺は黙々と熟していた。

 

 「一夏、パターンAからMで数は40の的よ」

 

 「了解」

 

 ア・バオア・クー決戦ではC型装備が手に入らず使うことが無かったBC-OC型(フル装備型高機動パック)での一対多数の回避と近接に射撃を混ぜ合わせた高機動訓練。

 

 高出力レーザーキャノン付きの高機動パックのスラスターをスロット全開で加速し、マシンガンを乱射しつつ的を撃ち抜き、ドローンからのバルカン砲をイグニッションターンブーストで複数のドローンから避けつつバレルロールを描き弾丸を躱し、ラピッドスイッチで弾切れのマシンガンをレーザーライフルに替えて回避予測射撃で回避位置を予測しながら的を撃ち抜き、高出力レーザーキャノンでドローンごと的を撃ち抜く。

 

 白式の動きは、あのア・バオア・クーの最終決戦を連想させる戦い振りだった。

 

 「授業に全く来ないと思ったら、なぜ一夏はあんな無茶をする?」

 

 管制室で一夏の訓練を見守るミューゼル先生に千冬は質問する。

 

 「当たり前じゃないの千冬?

 

 彼、アンの事でかなり怒っているもの。それに、一夏ならレベルSSのこの訓練を普通にこなしているわ」

 

 「だが、あの動きは宇宙での動きだ」

 

 「社長から一夏が何処で戦い、どの様に過ごして来たのかは聞いている筈よ」

 

 束から聞いた、誘拐され一夏が飛ばされた宇宙世紀の世界を聞いた時は束の頭を疑った。

 

 しかし、アンの証言と一夏の携帯のカメラで数々の写真を残していた中の一枚には食堂で撮ったのだろう、今は亡き一夏とアンの部下だった少年少女達が笑いながら一緒に写る集合写真だった。

 

 その写真の事を一夏から聞いた話では、ソロモンと言われた宇宙要塞に転属して部下として地上戦線を支えて来たベテランのパイロット達だった。

 

 一夏の直属の上司に当たるドズル・サビ中将は、キシリア・サビ中将が試験的にエースパイロットを集めたキマイラ隊の運用のノウハウを得る為に設立したのが、ソロモン方面防衛師団所属343突撃宇宙大隊所属で、本来ならキマイラ隊配属予定だったエースパイロット2名(一夏とアン)と12名の比較的に二人の歳が近いベテランパイロットを集めたのが一夏とアンが居たオリムラ中隊だったと聞いていた。

 

 そして、もう一枚の写真の裏には『ア・バオア・クーにて』と書かれ、ハンガーでは一夏とアンのツーショット写真のバックに写る2機の白と蒼の巨大なロボットは、ソロモンでシャア大佐と共に受領して最終決戦まで乗り続けた先行試作量産機、YMS-14B高機動型ゲルググのカスタム機でMS-14B-OC高機動型ゲルググカスタムと言うモビルスーツと言われる兵器だった。

 

 「あぁ、あの動きを見たら信じざるを得ないな」

 

 「全くだわ」

 

 鬼気迫る一夏の白式BC-OC型はツインレーザーナギナタを振り回し、3機のドローンを同時に紙吹雪の様に斬り刻む姿を観た私は、もし暮桜で挑んだとして実戦経験がある弟に勝てる要素は全く無かった。

 

 

 アリーナの客席の影から眼鏡を掛けた一人の少女はこの訓練を覗いて観ていた。

 

 「このランクSSのハード訓練を無傷で乗り切るなんて!?」

 

 未だに続く彼の訓練から感じた強さに目を惹かれていた。

 

 「どうして、彼はそんなに強いの?」

 

 そして、最後の残り1機のドローンがレーザーライフルで撃ち抜かれ爆散していた。だが、彼女の疑問は風と共に掻き消されたのだった。

 

 

 

 

 クラス代表決定戦当日、第三アリーナには男性操縦者である織斑一夏を観ようと殆どの学年の生徒が集まっていた。

 

 ピットで控えるイチカは集中する為に瞑想中だった。

 

 あたしは、あの日から3日間を睡眠薬を飲まされてベッドに無理矢理寝かされた。

 

 理由はわかる。

 

 だから、イチカから感じる怒りに、あたしはイチカに申し訳無いと思ってしまう。両親の事は、いつかは向き合わなくてはいけないのは判っている。

 

 だけど、宇宙(そら)から落ちてくるアレだけはどうにも出来なかった。

 

 「アン、大分顔色が良いようだな?」

 

 「織斑先生、何とかですがね」

 

 「そうか。だが、今はプライベートの話だ。

 

 アンと鈴は私の義妹だ。

 

 一夏のあの顔は二度と見たくないから無理だけはしてくれるなよ?」

 

 「お義姉さん、イチカに何か?」

 

 「一夏の瞑想を邪魔はしたくない。試合を観て感じろとしか言えんな」

 

 お義姉さんに謎を残されたあたしは、イチカの邪魔をしないようにピットを出ようとするのだが入口に箒が立っていた。

 

 「何故、貴様がいる!!」

 

 「居たら悪い?

 

 イチカの次はあたしの試合なのよ?

 

 それ位、普通は判るわよね?

 

 それに、イチカは集中する為に瞑想中よ。

 

 関係者以外は立ち入り禁止だから箒はここから出てくれるかな?」

 

 「私は一夏の幼馴染だ!!」

 

 「それが免罪符になると思わない事ね。ここのピットはホワイトラビット社が借り切っているし、社員ではない箒が来る所でも無い。最悪、貴女が産業スパイとして拘束されても文句は言えないわよ?」

 

 「私は篠ノ之束の妹だと言ってもか!!」

 

 「箒、残念ね。ホワイトラビット社の社長は束さんよ。さぁ、あたしに撃たれるのが嫌ならさっさと出て行きなさい!!」

 

 私はレーザーガンを抜き箒に銃口を向けるが、それよりも先にピットには千冬義姉さんが居たのだったのを忘れていた。

 

 「アン、そこまでだ。全く、問題ばかり起こすな義妹。篠ノ之、アンの言う通りピットはホワイトラビット社の関係者のみだ。産業スパイとして捕まっても学園では庇い切れないからピットから出ろ。良いな?」

 

 「そんな!?」

 

 千冬義姉さんに連れて行かれ箒はピットから追い出されたのだった。

 

 

 時間となりイチカが瞑想を解く。

 

 瞑想を解いたイチカの目付きは隊長だった時の鋭く鋭利な刃物の様な目付きだった。

 

 「来い、白式」

 

 イチカが白式を展開して纏うと、あたしが初めて見る白式の姿だった。

 

 バックパックはC型で1基の高出力のレーザーキャノンに左腕にはシールド付き三連ロケットランチャー、右腕には内蔵型の30ミリ機関砲ポッドに手にはレーザーライフルを握っていた。

 

 「イチカ・オリムラ、出る!!」

 

 そして、母艦だったザンジバル級のカタパルトから出撃する様に片足だけを載せ、カタパルトから射出されたのだった。

 

 「イチカ、頑張って…」

 

 イチカの無事を願いながら、アリーナへ向かったイチカに頑張ってと呟いたのだった。

 

 

 アリーナにはセシリアがブルーティアーズを纏い空中に待機していた。

 

 「逃げずに来ましたのね。肩の悪趣味なマークに穴を開けて差し上げますわ」

 

 セシリアの一言に更に怒りの火が着いた。

 

 このジオンのマークは俺がシャア大佐に拾われて生きて来た証だった。

 

 「御託はいい。セシリアには俺の300機目の撃墜記録になって貰う」

 

 「ひっ!?」

 

 俺が放つ殺気に小さな悲鳴を上げるセシリア。

 

 それだけ、アンを泣かした事にキレていた。

 

 スタートの合図にセシリアは

 

 「おっ、お別れですわ!!」

 

 勇気を振り絞ったのだろう。

 

 開始早々からレーザーを放つが、そんな馬鹿正直な射撃では躱して下さいとしか聞こえない。

 

 マニュアル操作で肩のスラスターだけを軽く吹かして、白式を右に逸してレーザーを躱す。

 

 「なっ、それを躱しますの!?」

 

 そんなレーザーのスピードなど、アムロ・レイが駆るガンダムから放つビームライフルのビームと比べたら遅い。

 

 「今度は俺からだ!!」

 

 レーザーライフルのレーザーで三点予測射撃をする。セシリアも回避行動するが肩と右脚に直撃する。

 

 「くっ、ブルーティアーズ!!」

 

 「無駄だ!!」

 

 「何故、当たりませんの!?」

 

 「見える!!

 

 そこぉぉ!!」

 

 「ブルーティアーズが全て落とされたですって!?」

 

 射出されたビットに対してはバックパックのスラスターをフルスロットで加速し、空中でバレルロールを描きながらブルーティアーズのレーザーを躱しレーザーライフルを撃ち正確にブルーティアーズを撃ち落とす。

 

 「お前は、俺を怒らせ過ぎた!!

 

 落ちろぉぉぉ!!」

 

 レーザーライフルをラピッドスイッチで仕舞い、量子変換した斬艦刀をコールしてセシリアのブルーティアーズに斬り掛かる。

 

 「いっ、嫌ァァァ!!

 

 いっ、インタァァァセェェェプゥゥゥタァァァ!!」

 

 「無駄だ!!」

 

 ポッポポン

 

 「キャア!?」

 

 「貰ったァァァ!!」

 

 インターセプターを出したセシリアに対して三連ロケットランチャーが火を吹き、ロケット弾をセシリアに直撃させる。インターセプターを手放したセシリアのブルーティアーズを斬艦刀で斬り裂いたのだ。

 

 そして、斬り裂かれて落下するセシリアのブルーティアーズはまだシールドエネルギーが残っていた。

 

 「コイツでトドメだ!!」

 

 「キャァァァァァ!?」

 

 放たれた高出力のレーザーキャノンのレーザーがブルーティアーズに直撃し、損傷判定がFレベルが確定のダメージを受けて地面に落下するとブルーティアーズは強制解除され、気絶したセシリアがグラウンドに転がって居たのだった。

 

 そして、無機質なアナウンスが流れたのだ。

 

 『ブルーティアーズ、シールドエネルギーエンプティ。よって勝者、織斑一夏』

 

 

 

 そして、イチカの試合は勝利したがセシリアのブルーティアーズが損傷レベルがFレベルを越えた大破の為、あたしとセシリアとの試合は中止となった。

 

 ブルーティアーズは多分、修理不能だろう。

 

 ピットにイチカが戻ると同じくして、次の試合の為に鈴が入ってきた。そして、何故か鈴はイチカに謝っていた。

 

 「一夏、ゴメン。

 

 黙って居たけど、次の試合はあたしの両親の仇討ち。

 

 だから…へッ?

 

 一夏?」

 

 「知っていたさ。

 

 だから、思っ切りやれ」

 

 「うん!!」

 

 羨ましいけど、鈴はイチカに優しく抱き締められていた。

 

 『仇討ち』

 

 そうか、向こうのピットから見える生徒が鈴の両親の敵なんだ。

 

 鈴も紅式を展開し、カタパルトでアリーナへと舞い上がった。

 

 

 

 鈴と中国の国家代表候補生の試合。

 

 試合開始前なのに、衝撃砲を放つ代表候補生の生徒。

 

 「あんた、あたしが甲龍のスペックを忘れる訳無いじゃん!!

 

 それは、あたしが候補生になった時に専用機として乗る機体よ?

 

 舐めるな!!

 

 三下!!」

 

 あたしは指1本を立てて宣言する。

 

 一分で勝つと。

 

 それを観たあの生徒は激昂する。

 

 「アンタなんか潰してやる!!」

 

 「宣言通りにしてやるわよ!!

 

 単一仕様『EXAM』を起動よ!!」

 

 紅式の全体が紅く発光する。

 

 それはEXAMが起動した意味でもある。

 

 一夏から聞いていた。

 

 あたしの紅式の元になった機体はMS-08TXイフリート改と言われたジオン軍の悪魔のモビルスーツ。そして、この機体にはEXAMシステムというのが積まれていたらしい。

 

 だから、こんな素敵な機体はあたしにピッタリだった。

 

 そして、脳内に響くのは無機質な声。

 

 『EXAMシステム、スタンバイ』

 

 右のモニターには3:00とタイムリミットがタイマーで付き、限界活動を意味している。

 

 そして、このシステムを組んだらしいのが、あたし達3人の専用機のコアの悪戯らしくてブラックボックス化している。

 

 だから、あたしは紅式のコアに名前を着けた。

 

 「一緒に行くわよ!!

 

 朱雀!!」

 

 『うん、鈴!!』

 

 誰かの声が聞こえたが、両手に構えるヒートソードを手に瞬時加速で甲龍の懐へと加速する。単一仕様を使うと通常時とは違う凄まじい加速力にあたしの身体は凄まじいGで潰れそうになる。

 

 「そんな真っ直ぐな攻撃は衝撃砲の餌食にって、どんな装甲してるのよ!!」

 

 効くわけがない。

 

 一対多数を想定した重装甲と凄まじい加速力を前に、そんな物などあたしには効かない。

 

 「ゼリャァァァァァァァ!!」

 

 「キャァ!?」

 

 すれ違いざまに甲龍の左半身を斬り刻む。脚を前屈してスラスターを全開にして、無理矢理空中でターンをする。

 

 口の中が鉄の味がするが関係ない。

 

 反応出来ない甲龍を背中から斬り刻み、両足の展開装甲を展開させて装甲内に内蔵させたマイクロミサイルと両腕のグレネードランチャーをぶっ放す。

 

 「甲龍、ゴメン。

 

 アンタをぶっ壊してさ。

 

 だから、あたしの両親の仇だぁぁぁ!!」

 

 全弾命中し、ズタボロの甲龍を斬り刻みシールドエネルギーを根こそぎ奪い去ったのだ。

 

 EXAMの残り時間は残り2分。

 

 そして、その生徒は何も出来ないまま、あたしに斬り刻まれて強制解除されたその生徒は空中からアリーナのグラウンドに落ちて両足を骨折したのか変な方向に曲がっていた。

 

 そして、中国から来ていた中国の特別警察がアリーナに入り込み、その生徒をその場で逮捕したのだ。

 

 無論、罪状は試験官への収賄とあたしの両親への殺人。束さんが中国に証拠を流した結果だった。

 

 

 「ひっくぅ…何でかな?

 

 何で、虚しく感じるんだろう…うわぁぁぁぁ!!」

 

 あたしは両親への仇討ちが出来たのに、虚しくなるのは何故と思い声を上げて泣きながら涙を流したのだ。

 

 

 

 

 

 

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