そして 誰もいなくなった   作:たゆてー

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そして 誰もいなくなった 第1話


そして 誰もいなくなった 第1話

ある幻想郷の晴れた日。

博麗神社の巫女、博麗霊夢は紅魔館に向かっていた。

 

霊夢「さて、今日はどこまでいけるかな?」

 

紅魔館への食料調達。紅魔館のメイド、十六夜咲夜に見つからずに食料を盗むという、霊夢の毎日の日課である。

素早く紅魔館の中に忍び込むと、食料庫までサササッと飛んでいく。

 

霊夢「この時間帯でついさっき紅魔館の二階の窓に咲夜が見えたって事は多分あのかりちゅまを起こしに行ったわね。ということは食料庫までノーマークで突っ切る事が出来るという事ね。こりゃラッキー♪」

 

すっかり平和になった幻想郷の春。数々の異変を解決した霊夢は憑依異変を最後に、食糧難に見舞われこうやって紅魔館に食料調達に行くのが最近の習慣になっている。

 

霊夢はとんでもないスピードで食料庫に突っ込んだ。扉は壊れ、埃が舞い上がる。

 

霊夢「さて、とうちゃ───」

 

???「そこまでだよ!霊夢!」

 

霊夢「!?」

 

埃の中から声が聞こえ、霊夢は心底驚いた。だんだん埃が薄くなり、声の主の姿を確認できるようになった。

 

霊夢「………なんだチルノか。てっきり咲夜かと思ったじゃない」

 

そこにいたのは氷の妖精、チルノと、その横にオドオドしている大妖精がいた。チルノはムッとなり、

 

チルノ「なにをう!何だとは失礼ね!あたいがいるからにはこの食料庫からは盗ませないぞ!」

 

霊夢はめんどくさそうな顔をした。

 

霊夢「はいはい、お遊びは外でやりなさいね。私にとってこれは死活問題なの!それでも止めるというのならあんたがもう一度生まれ変わることになるよ?」

 

妖精は死ぬと、すぐに生まれ変わる事が出来る。

 

チルノ「上等だね!その言葉を後悔させてやるから!行くよ!大ちゃん!」

 

大妖精「チルノちゃん、やっぱり危ないよ…。霊夢さんに立ち向かうなんて…」

 

チルノ「大ちゃんは弱気だなぁ。大丈夫!あたいがついてるから!うおりゃあああああ!!!」

 

チルノはそういうと、霊夢に突っ込んでいった。

 

大妖精「あっ!待ってよチルノちゃん!」

 

大妖精はチルノが霊夢に向かっていき、見事に返り討ちにされるのを見ているしかなかった。霊夢は容赦なくチルノに攻撃を食らわせた。チルノは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

 

チルノ「ぐっ……あがっ…!」

 

衝撃からか、背中や頭から血が流れ出てきた。大妖精はすぐにチルノのもとへ飛んでいき、介抱しようとした。

 

大妖精「だからやめとこうって……チルノちゃん!大丈夫!?」

 

チルノは今にも消えてしまいそうになっていた。かなりの致命傷のようだ。

大妖精は霊夢の方をバッと振り向いた。

 

大妖精「霊夢さん!こんなに強く攻撃しなくたって………」

 

霊夢「死活問題に首突っ込んできたあんた達が悪いんでしょう?それに妖精なんだから死んじゃってもすぐ生き返れるでしょ?大丈夫よ」

 

大妖精「でも………!」

 

霊夢「何?あんたもそうなりたいなら相手になってあげるわよ?あと、ほらこの御札」

 

霊夢は大妖精に御札を突き出した。大妖精は恐る恐るそれを受け取った。

 

大妖精「あの…これは?」

 

霊夢「移動用の術式が組み込んであるわ。行き先は永遠亭になってるからそこで治療でも何でもしてきなさい?

じゃ、私はこれで」

 

霊夢は大量の食料を背負い一瞬にして消えた。

後に残された大妖精はしばらく立ち尽くした後、御札を使いチルノと永遠亭まで移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数分後––––––

 

朝食を心待ちにしている紅魔館の当主、レミリア・スカーレットとその妹フランドール・スカーレットは、突如として現れた咲夜から食料庫についての報告を受け、驚愕していた。

 

咲夜「お嬢様、またあの巫女にやられたようです。食料の大半を奪われました。このままではお嬢様の朝食が大変なことになります」

 

レミリア 「な、なんだってー!」

 

フラン「えぇ…?またぁ……?」

 

レミリア「じゃあ咲夜…これからのご飯は……?」

 

咲夜は瀟洒に答えた。

 

「はい。当分無くなります」

 

レミリア 「〜〜〜〜ッ!あの巫女絶ッ対にしばき倒してやるわ!」

 

フラン「お姉様うるさい」

 

 

 

 

 

 

一方その頃、霊夢は神社にたどり着いていた。

 

霊夢「っふ〜、重かったわね。って魔理沙じゃない。どうしたのよこんな朝早くから」

 

神社の縁側に座っていたのは、普通の魔法使い、霧雨魔理沙だった。

 

魔理沙「お前こそこんな朝っぱらからどこ行ってたんだよ?紅魔館か?」

 

霊夢はそれを聞き、警戒した表情になった。

 

霊夢「なんでわかったのよ」

 

魔理沙「お前の日課だろ?んで私の質問の答えは?」

 

霊夢「あー、毎日同じ時間に行ってると警戒されてバレちゃうからね。こうやって時間を変えて行かないとあそこの箱入りお嬢様に見つかって捕まりかねないし。それで魔理沙、私の質問の答えは?」

 

魔理沙「今日は珍しく早起きな魔理沙さんだからだぜ。お前を起こしにいってやろうと思ってな。でもその必要もなさそうだけどな。ところで、霊夢」

 

霊夢「何?」

 

魔理沙「私はまだ朝食をとってないんだぜ」

 

魔理沙はにやにやしながら霊夢が背負っている風呂敷を見てそう言った。

 

霊夢「……あげないからね」

 

魔理沙「それ紅魔館から取ってきたんだろ?別に良いじゃないか」

 

霊夢「これはもう私の物なの!」

 

魔理沙はため息をついた。

 

魔理沙「じゃしょうがない。私もちょうど食料が残ってないんだ。ここは弾幕勝負と行こうか」

 

霊夢は首を横に振った。

 

霊夢「嫌。それをして私に何のメリットがあるってのよ」

 

魔理沙「私が今日霊夢に食料をねだることが無くなるってメリットさ」

 

霊夢「……はぁ、仕方ないわね。それじゃ、さっさとやりましょう」

 

お互いは上空まで移動し、弾幕を展開し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、魔理沙が落ちてきた。弾幕勝負は終わったようだ。

 

霊夢「私の勝ちね。魔理沙」

 

魔理沙「あたたたた……しょうがないなぁ。諦めてやるよ。しっかし霊夢、少しは弾幕の威力を下げないと私が死んでしまうぜ?弾幕は威力は弱くても当たれば勝ちなんだから」

 

霊夢「だって速度が速い弾幕を撃つのに少し力がこもっちゃうからしょうがないじゃない」

 

魔理沙「ウワーンイタイヨー」

 

霊夢「あーはいはい私が悪かったわね!ほら、食料ならちょっとだけなら分けてあげるから…」

 

魔理沙「お?そうなのか?じゃ、遠慮なく……」

 

霊夢「………やっぱり帰れ!」

 

その瞬間、魔理沙は箒に素早く乗り霊夢に突っ込んでいった。

 

霊夢「なっ、あんた何のつもりよ!」

 

魔理沙「うわっとっとっと!少しだけ回収成功〜〜っ!邪魔したぜ霊夢! 彗星「ブレイジングスター 」!」

 

魔理沙は勢いよく上空に上がると、スペルカードを使いあっという間にいなくなってしまった。

 

霊夢「待ちなさーい!……全く魔理沙の奴ったら、油断も隙もないわ!」

 

霊夢は神社の縁側に座り、魔理沙が勝手に入れていたお茶をすすった。

 

霊夢「…いつもより味が濃いわ…。魔理沙の奴お茶葉多めに入れたのね。もったいない」

 

???「その割には結構嬉しそうな顔してるわね」

 

霊夢はビクッとなり、その声の主の方を向いた。

 

そこにいたのは幻想郷の妖怪の賢者、八雲 紫だった。

 

紫「ハーイ、霊夢。また紅魔館から取ってきたのね?もう、貴女をコソ泥に育てた覚えは無いわよ?…って霊夢、人の話は最後まで聞きなさい」

 

霊夢は声の主が紫と判断した途端、めんどくさそうな顔をし、いそいそと朝食の準備を始めた。

 

紫「ちょっと霊夢?これは貴女のために言ってるのよ?コソ泥を働いたことに対しての良心の呵責があるのは充分わかっているけど……」

 

霊夢「んなもんないわよ!どうしてもやめて欲しかったらお小遣い増やしてよ!あんなんじゃ毎日まともに食事が取れないじゃない!」

 

紫「んまっ、なんてお行儀の悪い言葉!そんな子にはお仕置きが必要です!」

 

紫はスキマで霊夢に急接近すると、霊夢の額にデコピンを食らわせた。

 

霊夢「あっ!ったぁ………!」

 

紫「もう、これに懲りたらコソ泥なんてやめて、真っ当に生きるのよ?霊夢?(笑)」

 

霊夢「うるっさい!真っ当に生きてないあんたが言うな!あと喋り方が気持ち悪い!」

 

霊夢は怒ってお祓い棒を紫に向かって振り回した。がしかし、紫はそれを華麗にかわしながら霊夢をおちょくっていた。

 

紫「ほらほら〜こっちよ霊夢〜♪まだまだ修行不足なんじゃないの〜?」

 

霊夢は顔を真っ赤にして怒鳴った。

 

霊夢「うるさい!だいたい私は修行しなくても充分だもん!とっとと帰れ!」

 

紫「これで充分だなんて嘘ばっかりついちゃってぇー?じゃあその強さを見せてみなさいよ〜?…って貴女、何取り出してるの?」

 

霊夢は懐から御札を取り出した。

 

霊夢「これでもっ……くらえっ!」

 

霊夢はやたらめったらに御札を投げつけてきた。

 

紫「あらあら霊夢〜?その御札、私に当たったら消滅しちゃうわよ?生活費はどうするのかしら(笑)。だめよ、そんな危ないもの向けちゃ」

 

霊夢「黙れっ!大人しく死ねっ!」

 

すると紫はスキマで霊夢の背後に回り、霊夢の手を掴んだ。

 

紫「悪いのはこの手ね?めっ!」

 

と、子供扱いするように言い、しっぺを放った。

 

霊夢「あいたっ!」

 

紫「貴女にはその御札はまだ早すぎるものね♪」

 

霊夢「〜〜〜〜〜っ!馬鹿にしてぇ……!もう許さない!待ちなさい紫!」

 

紫「あ、そうだったわ。今日の晩ここで宴会するつもりだから準備よろしくね〜。食材は各自でもってくるから心配しなくても貴女のを取ったりしないわ」

 

霊夢「はぁ!?そんなの急に言われても……!」

 

霊夢が喋っている途中に紫はサッとスキマの中に消えていった。霊夢は息を切らしながら、しばらくブツブツ呟いていた。

 

霊夢「ったくなんだってのよ、もう。…………もういいや、朝ごはん食べよ…」

 

霊夢は諦めたように台所に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、予定通り博麗神社で宴会が行われた。たくさんの妖怪妖精鬼などなど集まり、わいわい騒いでいた。霊夢は一人で博麗神社の裏で呑んでいた。

 

しばらく一人で呑んでいると、そこにどんちゃん騒ぎから抜け出してきた魔理沙が隣に座った。

 

魔理沙「よう霊夢、スキマ妖怪みたいな真似してないでこっち来て呑まないか?」

 

霊夢「結構よ。全く、みんな自分勝手なんだから…」

 

魔理沙「でも楽しいだろ?」

 

霊夢「楽しいわけないじゃないの。むしろ邪魔くさいわ」

 

魔理沙「素直じゃ無いな、霊夢は。ん?」

 

魔理沙はやれやれといった風に首を横に振った。

 

霊夢「はぁ……本当は一人で誰とも関わらずゆっくり過ごしたかったんだけどね」

 

 

 

 

 

 

しばらく時間が経ち、静かに呑んでいると、不意に魔理沙が口を開いた。

 

魔理沙「なあ霊夢。もし、私が死んだらどうする?」

 

霊夢「はぁ?どうしたの突然」

 

魔理沙「いいから」

 

霊夢は俯いて少し考えた。

 

霊夢「まあ…、少し静かになるからそれはそれでいいんじゃない?」

 

魔理沙「冷たいなぁ霊夢。うーん、じゃあ、スキマ妖怪は?」

 

霊夢「あいつは死ね。頼むから」

 

魔理沙「わお。あいつにどんな恨み抱えてんだよお前は」

 

霊夢「お小遣いも少ないし、毎日ここに来てはからかうしもう老害に付き合ってたらろくなことがないわ」

 

魔理沙「なんだか妙に納得しちまうなぁ。何考えてっかわかんないしな。裏で何か変なことやってそう……あぁ!思い出した思い出した。これ聞こうと思ってたんだ」

 

霊夢は不思議そうに首をかしげた。

 

霊夢「なによ」

 

魔理沙「紅魔館が食料難に陥ったってさ。当分飯にありつけないって話だぜ?それでよ霊夢、少しぐらい返してあげたらどうだ?もうお前のもんって言っても元々は紅魔館のもんだったしさ?」

 

霊夢「嫌よ、絶対に。苦労してとったのをわざわざ返すだなんて。どうせ紅魔館お金持ちなんだしすぐ回復するに決まってるでしょ?」

 

魔理沙「やれやれ。こと食料に関するとお前は守銭奴だなぁ。まあいいさ、そんじゃそろそろ私は戻るよ。また後でな」

 

魔理沙はゆっくり立ち上がった。

 

霊夢「はいはい。また後でね」

 

それに対して霊夢は手をひらひらさせて応えた。魔理沙は宴会の中心に戻っていった。

 

霊夢「はぁ。疲れた」

 

霊夢はそのまま一人で飲み続けた。境内のどんちゃん騒ぎが静まる頃には、霊夢は寝てしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「んぅ…………」

 

眩しい光。目の前がぼやけている。だんだんとはっきりしてくる。

 

霊夢「………ああ、そうか。いつのまにか寝てしまってたのね」

 

霊夢は起き上がり、境内の方へと向かった。いつもの宴会ならそこら辺に妖怪たちが気持ちよさそうに寝ているものだが、なぜかいなかった。

 

霊夢「珍しいわね。みんな昨日のうちにちゃんと帰れるなんて」

 

霊夢は日課である紅魔館に行こうとした。

 

霊夢「………いや、今日はいいか。どうせ行っても何もないだろうし。食料にも困ってないしね」

 

霊夢は朝食を作ろうと境内に引き返し、なんということもなくお賽銭箱を見た。何か封筒が乗っている。霊夢はそれに気づき、それを手に取った。

 

霊夢「……何これ?」

 

霊夢は封筒の封を切った。中には一枚の紙が入っていた。手紙のようだ。差出人は不明。霊夢はその手紙を読んでみた。

霊夢「『拝啓 博麗 霊夢 様。 晩秋の候いかがお過ごしかと思います。こちら…………』」

 

手紙の内容は、離れた孤島に豪華な館が建設された。その記念に選ばれた人たちの中から一週間豪華な生活を楽しんでもらう企画を立案した。ちょうどその中の一人、博麗霊夢が選ばれたので是非ご来館してほしいとの事。

 

霊夢「ふーん。めんどくさそう……」

 

霊夢は少し考えた。確かにめんどくさいけど少し耐えれば豪華な食事にありつける。しかも三食全て。

 

霊夢「……まあ、行くのもアリか。せっかくタダなんだし」

 

霊夢は軽く身支度を終えると、手紙に書かれている指定の時間に合わせ、集合場所に飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢がそこに着くと、目の前には海が広がっており、大きな船があった。

 

霊夢「ふーん?幻想郷に海なんてあったっけ…?」

 

船の中でなにやら喋っているのが聞こえた。

 

霊夢「うげ、他にもいるの……?」

 

船に乗り込むとそこには、とても見知った顔がいた。

 

魔理沙「よう霊夢!お前も呼ばれてたのか」

 

霊夢「え?あ、そうね。めんどくさそうだったけどせっかくだし」

 

すると魔理沙はニシシと笑った。

 

魔理沙「どーせ食べ物目当てだろ?」

 

霊夢「悪いの?」

 

魔理沙「そんなわけないぜ。聞くところによるとかなり美味いらしい。期待してていいぜ」

 

霊夢「それは楽しみね♪」

 

他にも見知った顔はたくさんいた。というか赤の他人など一人もいないようだった。

 

チルノ「おぉーーーっ!霊夢がいる!霊夢も届いたのか!?えーっと、なんだっけ大ちゃん!」

 

大妖精「招待状だよチルノちゃん。もう、はしゃぎすぎだよー」

 

紫「楽しみね〜♪早く出航しないかしら」

 

妖夢「紫様の能力を使って行けばすぐなんですけどね」

 

幽々子「妖夢はわかってないわね〜、こういうのははやる気持ちを抑えつつ待つのが良いのよ?」

 

妖夢「そう……なんですか?」

 

レミリア 「本当にこれは良い機会ね。存分に楽しみなさいね、フラン?」

 

フラン「うん!まだ行かないのかなー?」

 

咲夜「妹様、あそこの亡霊がその気持ちを抑えつつ待つのがいいと言っておりますよ」

 

フラン「なんでー?楽しいことはすぐにやったほうが楽しいよー?」

 

咲夜「ふふっ、そうですね。妹様の言う通りです」

 

霊夢「結構知ってる顔ばかりね…骨が折れそう」

 

魔理沙「賑やかでいいじゃないか。こりゃ楽しくなってきたぜ!」

 

しばらく談笑していると不意に船が動き始めた。

 

チルノ「わー!動いたよ大ちゃん!」

 

大妖精「そうだね…!チルノちゃん」

 

レミリア 「見て見てフラン!動いてるわ!」

 

フラン「お姉様子供っぽい…」

 

幽々子「ほら見て妖夢〜、船ってなんだか風情があるわね〜」

 

妖夢「初めて乗ったのに風情とかわかるわけが…」

 

各々が船の出航で盛り上がっていった頃、霊夢は初めての感覚に戸惑っていた。

 

霊夢「う…………」

 

魔理沙「ん?どうした霊夢?」

 

霊夢は口元を手で押さえた。

 

霊夢「吐きそう………」

 

魔理沙「はぁ!?」

 

それを聞いた魔理沙は大慌てで霊夢を船の手すりまで運んでいった。

 

紫「あらあら、霊夢は船が苦手だったのね」

 

妖夢「いつも空飛んでるからこういう感覚に慣れてるのかと思ってました」

 

チルノ「あたいもそう思ってた!」

 

船は曇り空の中、静かに目的地に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

船に揺られること6時間半、ようやく船は目的の地に着いた。

 

霊夢「地獄だった…もう船に乗るのはごめんだわ」

 

一行は船を見送った後、館に向かって歩き始めた。

 

見渡す限りに荒野が広がる。その中心と言える所に大きな屋敷が建っている。

 

妖夢「なんだか不気味ですね幽々子様」

 

幽々子「そうね〜、幽霊が出るかもしれないわね〜♪」

 

妖夢「……冗談でもやめて下さいね」

 

幽々子「やあね妖夢。あなたの隣にいるじゃない?」

 

妖夢「…幽々子様が、ですよね?」

 

霊夢「本当に豪華な食事が出るのかしら。なんだか不安になってきたわ」

 

魔理沙「まあ、とりあえずあの屋敷まで行ってみようぜ」

 

一行は屋敷にたどり着く。魔理沙はゆっくりと扉をあけ、中に入った。すると、パッと照明がつき、アナウンスが流れた。

 

『この度は、この館にお越しいただき、ありがとうございます。突然で申し訳ないのですが、従業員が諸事情で急遽来ることが不可能となったため、この館には使用人が一人もおりません。ですが、食料や設備などは十分整っておりますので、ゆったりとおくつろぎいただくことは可能でございます。どうぞごゆっくりお過ごしくださいませ』

 

アナウンスが流れ終わった。

 

紫「随分非常識なのね。ま、その方が気楽でいいのかもしれないのだけど」

 

霊夢「私はこの方がよっぽど良いけどね。変に気を使わなくて済むし」

 

チルノ「広いね大ちゃん!あたいものすごく楽しみになってきた!」

 

大妖精「あはは……、私もチルノちゃんと同じ気持ちだよ」

 

レミリア 「ふうん……中の上といったところね。まあいいんじゃない」

 

フラン「何気取ってるのさお姉様?」

 

レミリア 「う、うるさいわね。この方がかっこいいでしょ」

 

妖夢「それにしても使用人がいないってことは食事も自分たちで作らなきゃいけないんですよね?」

 

咲夜「そうね。もうすぐ夜になるし、早めに作っておきましょうか。キッチンはどこかしら」

 

妖夢と咲夜がキッチンを探そうとすると、霊夢がそれを止めた。

 

霊夢「ちょっと待って。あの部屋からめっちゃいい匂いがする」

 

霊夢はその部屋に入った。すると、目の前には大きな縦長のテーブルに人数分の料理が並べられていた。

 

霊夢「わぁーーー♪ご馳走ね!みんなも早く来てさっさと食べましょう!」

 

魔理沙「やれやれ、霊夢の嗅覚は常軌を逸してるというかなんというか…」

 

チルノ「あたいこんなご馳走食べるの初めてだよ!」

 

全員は席に着き、各自で談笑しながら食べ始めた。

 

霊夢「おいひい!ひはひふりにほんなおいひいほほはへはは!」

 

魔理沙「霊夢ー、口ん中片付けてから喋らんと何いってるかわからんぜ?」

 

霊夢「んっく…はー、これが毎日かあ…………!来て正解だったわ!」

 

魔理沙「ほんとげんきんな奴だなぁお前は…」

 

紫「ほら霊夢、その肉まだ残ってるわよ?ちゃんと命に感謝して隅々まで食べなさいね?」

 

霊夢「めんどくさいから嫌よ。食べづらいし。それにまだ沢山あるんだしこんくらい大丈夫でしょ。あー幸せ〜♪」

 

魔理沙「ふむふむ…反抗期真っ盛りの子供とそれを制す親か………」

 

霊夢「魔理沙?聞こえてるわよ」

 

魔理沙「いや!別に霊夢のことを言ったわけではないぞ!ははは…」

 

紫「え〜?私はそれでも一向に構わないわよ?むしろ大歓迎♪」

 

霊夢「はいはいワロスワロス」

 

紫「っ!霊夢!そんな言葉どこで覚えてきたの!ダメよそんな言葉使っちゃ」

 

霊夢「うるさいわっ!どこでだっていいじゃない!」

 

魔理沙「やれやれだぜ…」

 

 

 

 

幽々子「ほら妖夢、こういう場でこそ礼儀正しく振舞わなければダメなのよ?」

 

妖夢「幽々子様が食べる量をおさえて下さればすぐにでもその言葉に納得がいきますけどね…」

 

幽々子「あら妖夢。たくさん食べておかないとこの先飢え死にするかもしれないじゃない」

 

妖夢「貴女はとっくに死んでるでしょうっ!」

 

幽々子「あら〜、そうだったかしら〜?」

 

妖夢「とぼけないでください!」

 

 

フラン「おいしいね!いくらでも食べれそう!」

 

咲夜「ええ、本当にそうですね妹様。はぁ……」

 

フラン「ん?どーしたの咲夜ー?」

 

咲夜「私が作る料理がこの料理に負けてしまった気がしてしまいまして…」

 

フラン「そんなことないよー!咲夜の料理だってすっごくおいしいよ!」

 

咲夜「ありがとうございます、妹様っ!」

 

レミリア「……随分浮かれてるのね咲夜」

 

咲夜「いかがなされましたかお嬢様?料理が口に合いませんでしょうか?」

 

レミリア「……咲夜、この味よく覚えておきなさいね」

 

咲夜「かしこまりました、お嬢様」

 

フラン「美鈴も連れてこれれば良かったのにねー」

 

咲夜「本当にそうですね。あの子ならすっごく喜ぶでしょうし」

 

 

 

チルノ「ガツガツガツガツ………」

 

大妖精「チルノちゃん、あまりがっついて食べると喉詰まらせちゃうよ?」

 

チルノ「ガツガツ……んんっ!?」

 

大妖精「!チルノちゃん!」

 

チルノ「ぷはー、もうちょっとで詰まる所だったー」

 

大妖精「もう、だから言ったじゃない………」

 

和やかな雰囲気。飛び交う笑顔。そんなとても暖かい中。その雰囲気に無理矢理入るようにどこからともなく曲が流れ出した。

 

霊夢「……ん?なに、この曲…」

 

一同はしばらくその曲を聴き続けた。

 

紫「………繰り返し同じ詩が流れてるわね」

 

レミリア「随分と変わった歌詞ね。ちょっと不気味な感じもするわ」

 

歌詞の内容は大まかこんな感じだった。

 

仲良し妖怪さんが10人

あわてん坊がごはんたべて

のどを詰まらせ9人になった

 

9人の仲良し妖怪さん

ねぼすけ小僧がねぼうして

ねむったままで8人になった

 

8人の仲良し妖怪さん

舟出ししようと浜に来て

ひっくり返って7人になった

 

7人の仲良し妖怪さん

働き者がまき割をして

自分を割って6人になった

 

6人の仲良し妖怪さん

食いしん坊がハチミツなめて

ハチに刺されて5人になった

 

5人の仲良し妖怪さん

しっかり者が周りを探索

魔物に襲われ4人になった

 

4人の仲良し妖怪さん

優しい妖怪世話をして

疲労で倒れて3人になった

 

3人の仲良し妖怪さん

力自慢はっけよい

勝負に負けて2人になった

 

2人の仲良し妖怪さん

いたずら坊主が焚火して

火種がはぜて1人になった

 

1人の寂しい妖怪さん

さいごの1人が火種を飛ばし

とうとうお山はだあれもいない

 

 

 

幽々子「変な詩ね。この館に似つかわしくないわ。少しセンスを疑うわね」

 

魔理沙「確かにな。もっとマシな歌あっただろうにな」

 

霊夢「ま、何でもいいわ。私はご飯が食べられれば何でも」

 

大妖精「あはは……うっ」

 

その瞬間、大妖精は一瞬歪んだ表情を見せ、その場に倒れこんだ。

 

一同「!?」

 

チルノ「大ちゃん!どうしたのさ!」

 

大妖精は喉を抑え、苦しそうにもがいている。

 

大妖精「チル……ノ…ちゃん……これ……ど………気を………つ……………」

 

大妖精は口から泡を吹き始め、そのまま動かなくなった。

 

チルノ「大ちゃん?大ちゃん……大ちゃん!大ちゃん!」

 

紫は素早く大妖精のもとに移動し、確認をした。もちろん、生きているか、もしくは…

 

紫「……死んでるわ」

 

他「!?」

 

妖夢「そんな……一体どうして!?」

 

幽々子「……毒ね。舌に色が出てる」

 

チルノ「そんな………大ちゃん!死なないでっ!」

 

チルノは心肺蘇生を始めた。

 

紫「…………無理よ。チルノ。毒が回ってしまっているわ。治療法がない以上…………」

 

チルノ「うるさい!大ちゃんは死なない!死ぬわけがない!」

 

チルノは人工呼吸をしようとした。その瞬間、紫に取り押さえられた。

 

チルノ「っ!何すんのさ紫!大ちゃんはまだ……」

 

紫「やめなさい!人工呼吸なんてしたら、貴女にまで毒の被害が出てしまうわ!」

 

チルノ「でもっ………!このままだと大ちゃんが!」

 

霊夢「何をそんなに焦っているの?妖精なんだからすぐに生き返るでしょう?」

 

紫「……まだ気づいていなかったのね。貴女、いま自分の能力が使えるの?」

 

霊夢「そんなの当た……、あれ?浮かない……どうなってるの!?」

 

紫「ここではなぜか能力が封じられてる上に幻想郷の理が通じない。おそらく魔力も使えなくなってるわ」

 

霊夢「……………」

 

紫「つまり、今、大妖精がこういうことになるという事は………」

 

チルノ「言わないでっ!大ちゃんはまだ死んでない!」

 

チルノ「これでお別れなんて絶対に認めない!」

 

チルノは再び心肺蘇生を始めた。紫は悲しそうな顔をした。

 

紫「可哀想だけれど、無理よ。諦めない」

 

チルノ「嫌だッ!絶対に諦めるもんか!」

 

チルノの声がうわずっている。

 

チルノ「大ちゃんはこの前……死にかけたあたいを永遠亭まで運んでくれて、命を助けてもらったんだ!」

 

霊夢「っ!」

 

チルノ「大ちゃんはあたいの命の恩人なんだ!なのに……あたいの時だけ助けられないなんて嫌だよ……」

 

霊夢はチルノの顔を見た。だんだんと目に涙が溜まっていっているのが見えた。

 

チルノ「だからっ………あたいがっ…………助けなかったらっ……ダメなんだよぉっ………ううっ………」

 

だんだんとチルノの手がゆっくりになっていく。やがて限界を迎えたのか、チルノは腕を動かし続ける事が出来なくなった。

 

 

 

チルノ「はぁっ………はぁっ………」

 

 

チルノは俯いた。チルノの目には大粒の涙が溜まって、今にも溢れ出しそうだった。

 

 

 

チルノ「大ちゃんっ………ごめんっ………はぁっ………ごめんねっ…………助けて……あげられなかったっ……………ぁっ、……うぁっ………」

 

チルノの泣きそうな声がシンとした館内に響く。誰もが動き出せず、ただただその有様を見ていた。

 

そんな中、紫は静かに、チルノの頭に手を置いた。

 

紫「貴女は頑張ったわ。辛いけど、せめて静かに見送ってあげましょう?」

 

その言葉を聞き、チルノは涙が止まらなくなった。

 

チルノ「ぅああぁあぁぁーーーーーー………っ!…………ああああぁあああぁーーーーー………」

 

悲しい雰囲気に包まれ、しばらくチルノの泣きじゃくる声が館に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「ひっく………、うぅ………っ!………うっ…………」

 

紫「………落ち着いた?」

 

チルノ「………ん………」

 

紫「そっか。チルノは強いわ。今日はもう寝なさい?」

 

チルノ「……ん」

 

紫「………さて、幽々子、チルノを寝室まで連れて行ってあげて?」

 

幽々子「………わかったわ」

 

幽々子は館の二階にある寝室にチルノを連れて行った。

 

咲夜「大妖精は私が運ぶわ、紫」

 

紫「そう…じゃあお願いするわ」

 

続いて咲夜も大妖精を抱えて部屋の外へ行った。紫は複雑な顔でその背中を見つめた。

 

妖夢は何やら震えていた。

 

妖夢「………………!」

 

紫「?大丈夫?妖夢?」

 

妖夢は俯いたまま答えた。

 

妖夢「はい……少し驚いてしまっただけです……」

 

魔理沙「おい、みんな」

 

皆一斉に魔理沙を見る。

 

魔理沙「今のところ、毒を入れる可能性があるのはこの料理を用意した使用人とここにいる人だけだ」

 

霊夢「ま、魔理沙……何をするつもりよ」

 

魔理沙「わからないか?霊夢。この先また被害者が出るかもしれないんだぜ?」

 

魔理沙は静かな目で霊夢を見た。霊夢はいつも見せられたことのない魔理沙の目を見て霊夢は戸惑った。

 

魔理沙「いいか、誰が毒を入れたかだが、犯人が使用人である確率はとても少ない。なぜならそれをするメリットが何1つなく、ましてや幻想郷の強い部類の勢力に手を出す事はまずありえないからだ。つまり、この中の誰かということになる」

 

それに対し、レミリアが口を開いた。

 

レミリア「そうね。そしてまず、妖夢とフランは確実に外されるわね。どちらも大妖精に接点を持たない位置に居るもの。つまり、犯人と疑われるのは、霊夢、魔理沙、紫、咲夜、私ということになるわ」

 

突然の展開に、霊夢は理解が追いつかない。全員の目つきが変わる。

 

霊夢「……………」

 

魔理沙「……………」

 

咲夜「……………」

 

紫「……………」

 

魔理沙「私が一番疑わしいのは、紫、お前だ」

 

紫「………どうして?」

 

魔理沙「そもそも能力などが使えない現象は紫、お前の能力で再現することができる。それと、幻想郷で一番皆とかかわることが多い。その過程で大妖精が障害となることでもあるのかもしれない。第一、お前の能力で料理に毒を仕込むなんて事は造作もない事なんだよ」

 

霊夢「ちょっと待ってよ魔理沙。紫がそんなことするわけないじゃない。第一、さっきまでチルノを慰めて…」

 

魔理沙「霊夢は甘いぜ。それも策略のうちかもしれないだろ」

 

紫「………私からしたら魔理沙。貴女が怪しいわ。そこまで焦ってする必要もない犯人探しを突然始めたり、私の能力をそこまで知っていたり。私は貴女にそんな事を話した覚えはないわ。貴女、初めから私を犯人に仕立てたくてそういう事を言ってるのではなくて?」

 

魔理沙「白々しいぜ。霊夢の前で何度もやっている癖に」

 

霊夢「ちょっと、やめなさいよ二人とも。確率は少ないにしろ、使用人がやった可能性も捨てられないわ」

 

霊夢は不安になってきた。このままエスカレートすれば殺し合いに発展する気がしたからだ。その時、レミリアが口を開いた。

 

レミリア「私からしたら、霊夢が一番怪しいのよね。貴女最近、私の館の食料庫でチルノと闘ったそうじゃない。その時一緒にいた大妖精に説教されかかったそうね。貴女のことだから、自由を縛るような説教はとても嫌うはずだわ。その復讐なんじゃないの?」

 

霊夢「そんなわけないでしょ!」

 

違う。断じて違う。私は絶対にやってない。やるわけがない。霊夢はそう思った。しかし突然言われた為かそれ以外に弁護する言葉がでなかった。レミリアの疑いは晴れなかった。

 

レミリア「返す言葉が無いようね。危険分子はこの場でご退場いただいた方が良さそうかしら」

 

レミリアの目が変わった。紛れも無い殺気。霊夢は少し後ずさった。

 

霊夢「なっ、何する気よ!私は絶対にやってないわ!大体、あんたも紫の言う通り私を犯人に仕立てたくて言ってるんじゃないの!?」

 

紫「貴女達もその辺にしておきなさい。明日、改めて事態を整理するわ。今日はもう解散しましょう」

 

レミリア「……そう。わかったわ」

 

魔理沙「……ふん」

 

レミリアはフランと、魔理沙は妖夢をつれて部屋から出て行った。残される霊夢と紫。

 

霊夢「…………」

 

紫「…………」

 

しばらく沈黙が続いた。

 

やがて、紫が口を開いた。

 

紫「さて、私はもう寝ることにしましょうか。霊夢も早く寝て疲れを取った方が良いわ」

 

紫は食堂から出て行った。足音を響く。やがて、霊夢も静かにこの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は自分の寝室に入ると、すぐに布団に潜り込んだ。静まり返った真っ暗な部屋の中。聞こえるのは霊夢の呼吸だけだ。霊夢は考えていた。どうしてこんなことに巻き込まれたのか。ここに来るまでみんな楽しそうだったのに。どうして、誰からも恨みを持たれないような大妖精が殺されたのか。魔理沙が言っていた『紫が大妖精を殺した』という言葉。紫は時として怖いけれど、相当な害をなすものじゃなければ殺すなんてことしないはずなのに………。

 

あるいは、レミリアが言っていた、『霊夢が大妖精を殺した』という言い分。もしかしたら無意識のうちにやっていたのかもしれない。

 

霊夢は生まれて初めて"殺人"という最も恐ろしい罪を疑われた事で自分を信用できなくなってきていた。私はたしかに大妖精に憤りを感じていた。でも、殺すなんて考えたこともなかった。

 

霊夢「………ありえない。……私は…やってない…。大妖精を殺すはずがないわ…………」

 

頭の中でよぎる。大妖精が喉を抑え倒れる。今にも壊れてしまいそうな歪んだ表情。息の途切れる瞬間————

 

霊夢「………ダメね。これ以上考えたら頭がおかしくなりそう。明日紫が事態をまとめてくれる。その時にもう一度考えよう……」

 

霊夢は目を瞑った。目を瞑ると余計に思い出してしまう。霊夢はそれを無視し続けた。いつしか眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉をノックする音で、霊夢は目が覚めた。

 

魔理沙「霊夢ー!朝だぞー!」

 

霊夢「…………」

 

見慣れない部屋。ここはどこだっけ?ああ、そうか。お屋敷のご馳走を食べに来たん———

 

その瞬間、霊夢に昨日の出来事が頭をよぎった。心臓がドクンとなった。

 

魔理沙「霊夢ー?まだ寝てるのかー?」

 

霊夢「……朝から元気ね。魔理沙。私はもう起きたわよ」

 

魔理沙「おーそか。そんじゃ早く食堂に来いよー。朝食できてっから」

 

霊夢「…わかったわ」

 

遠ざかる足音。霊夢は完全に目が覚めた。霊夢はいつもの服に着替えようとして、昨日いつもの服のまま寝てしまったことを思い出し苦笑した。

 

霊夢「折り目付いちゃったわ。着替えとけばよかった」

 

霊夢はそのまま食堂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に着くと、ほとんど揃っていた。誰も何も喋ろうともせず、霊夢もそれを察したのか無言で席に着いた。

 

レミリア「…………」

 

フラン「…………」

 

咲夜「…………」

 

幽々子「………」

 

妖夢「………」

 

チルノ「………」

 

魔理沙「………」

 

霊夢「………」

 

無言のまま静かに時が進んでいく。

 

誰も俯いたまま。

 

その時、腑抜けた音が聞こえた。皆は音のなった方向を反射的に見た。

 

チルノ「あはは……ごめんね。お腹空いちゃって」

 

チルノが苦笑いしながら軽く謝った。それを見て、幽々子がふふっと笑った。

 

幽々子「このままだと冷めちゃうし、私とチルノと妖夢は先に頂くことにするわ」

 

妖夢「ええっ?私もですか!?」

 

幽々子「妖夢ったらお腹鳴るのを必死に我慢してるんですもの。これ以上見てたら笑いを耐えきれなくなっちゃうじゃない」

 

妖夢「わ、わかってたんですか………って、人前で言うのはやめて下さい!」

 

少し雰囲気が明るくなった。

 

魔理沙「そんじゃま、私も食べるとするぜ。霊夢もほら、とっとと食おーぜ?」

 

霊夢「え?あ、うん……」

 

魔理沙「なんだ…?食欲でも無いのか………?ならこれは頂きだぜっ!」

 

霊夢「あっ、ちょっ、返しなさいよ!」

 

魔理沙「これはもう私のものだぜ!」

 

霊夢「このっ、おかず泥棒!そんなことが許されると思ってるの!?」

 

レミリア「あははははっ、霊夢貴女、毎日私の館から食料盗んでるじゃない!人のこと言えたもんじゃないでしょ?」

 

霊夢「うっ……それとこれは話は別よ!」

 

雰囲気が明るくなり、会話がはずんだ。やがて朝食が終わった。レミリアはおもむろに立ち上がり、さっきとはうってかわった様に真剣な口調で話し始めた。

 

レミリア「さて、それじゃ昨日の事態を整理するわ。先に言っとくけど、チルノ。辛かったら今のうちに席を外しても良いわよ?」

 

チルノは少し暗く、が、しっかりした声で言った。

 

チルノ「……ううん、あたいはもう大丈夫だよ」

 

レミリア「そう。わかった。それじゃ、始めるわ。昨日、大妖精が毒で亡くなった。まだ犯人はわからないけど、そこで私は気になった事があるの」

 

咲夜「気になった事……ですか?」

 

レミリア「えーっと、幽々子、昨日の詩、覚えてる?」

 

幽々子「ええ。覚えてるわよ」

 

レミリア「最初の方教えてくれるかしら」

 

幽々子「………『仲良し妖怪さんが10人 あわてん坊がごはんたべて のどを詰まらせ9人になった』だったわね」

 

レミリア「そうね。ちょうど呼ばれた数も10人。最初の1人、大妖精だけれど、これによく類似していると思わないかしら」

 

フラン「………ほんとだ。と言うことはお姉様、悪い奴は……」

 

レミリア「そう。おそらくこの詩になぞらえて大妖精を殺害した。それともう1つ。この詩はまだ続いているわ。つまり———」

 

魔理沙「………まだ被害者が出る可能性があるわけか…」

 

幽々子「次は『9人の仲良し妖怪さん

ねぼすけ小僧がねぼうして

ねむったままで8人になった』ね。この場合、夜にでも犯人が襲いかかってくる可能性があるわ」

 

レミリア「その通りね。今日はみんな固まって順番に仮眠をとって見張りをしましょう。次の船が来るのは6日後。それまで頑張って耐え—」

 

霊夢「ちょっとまって。紫は?」

 

幽々子「…そう言えば朝から見てないわね」

 

魔理沙「あのスキマは寝起きだけ悪すぎるからなあ。昼ぐらいに起きてくるんじゃないか?」

 

フラン「……まってよ!二つ目の詩が…………!」

 

皆が一瞬固まった。誰もがその意味を考えていた。

 

妖夢「……幽々子様」

 

幽々子「わかってるわ。私は大丈夫。急いで行かないと!」

 

皆は急いで紫の部屋に行った。ノックをする。

 

幽々子「紫!起きて!紫っ!」

 

魔理沙「やめとけそんなんじゃ絶対に起きないぜ。ドアを破る。チルノ、手を貸してくれ」

 

チルノ「わ、わかったよ」

 

ドンッ!ドンッ!バギィィッ!

 

幽々子「紫っ!」

 

紫は布団に入っていた。寝ているようだ。

 

霊夢「……はぁ、変な心配させないでよ全く……」

 

霊夢は紫をゆすった。

 

霊夢「ほら紫、起き———」

 

冷たい。

 

霊夢「ーーーーーッ!?」

 

幽々子「霊夢……どうしたの……?」

 

霊夢は震えた。信じられない。こんな事が………

 

霊夢「つっ……つっつめ……たっ……い…………」

 

一同「!?」

 

幽々子「そ、そんなッ……、どうしてッ……!」

 

幽々子はその場に崩れた。妖夢が幽々子を支えた。

 

妖夢「幽々子様!しっかりしてください!」

 

レミリア「………2人め…、か………」

 

チルノ「紫………」

 

皆は俯いた。その中でも、霊夢は一番動揺していた。

 

霊夢「なん……ッ、でッ…………!」

 

嘘だ。

嘘だ嘘だ。

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

霊夢の声は震えていた。

 

霊夢「紫っ………変な冗談はやめてよ………?ねぇっ、紫…………」

 

まるで眠るような死顔だった。霊夢は泣きそうになった。でも、泣くわけにはいかない。霊夢は少し半狂乱になっていた。

 

そうだ。別にいいじゃないか。毎日私をおちょくってきたり、巫女としての立場を押し付けてきたり。生活の邪魔ばっかりしてきたじゃないか。これからは邪魔されない。自由になれる。気にすることはない。

 

霊夢は手を握りしめた。

 

霊夢「………食堂に戻りましょう。もう一度話し合いをした方が良いわ」

 

霊夢「今度は、犯人探しも含めてね」

 

—続く




次話は少し短いかも
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