そして 誰もいなくなった   作:たゆてー

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そして 誰もいなくなった 第3話


そして 誰もいなくなった 第3話

霊夢「やめてッ!」

 

フラン「お姉様ッ!」

 

無慈悲に棒が振り下ろされる。

 

強い衝撃音がした。

 

霊夢はその瞬間を見たくなくて目をつぶっていた。

 

 

 

 

 

しばらくして目を開けると、目の前には腕で頭を抱える咲夜と、棒を床̀に̀叩̀き̀つ̀け̀た̀レミリアがいた。

 

レミリア「…………」

 

咲夜「…………え?」

 

レミリアは棒を捨て、こちらを向く。

 

レミリア「今の咲夜は時を止めれないわ。よって能力は使えない。これが証拠でいいかしら?」

 

霊夢はその場の状況を理解できず、ただ立ち尽くしていた。

 

皆が唖然としている中1人だけ冷静に見ていた幽々子が答えた。

 

幽々子「そうね。それで充分だわ」

 

フラン「…もう、お姉様ったら、驚かさないでよ」

 

レミリア「ごめんなさいね。多分これしか方法がなかったんじゃないかしら」

 

レミリアの目はさっきとは打って変わって優しい目になっていた。

 

咲夜「お嬢様…」

 

レミリア「私は、貴女が3人を殺していないって信じてるわ」

 

レミリアはそれだけ言うと、席に戻った。

 

信頼が強い。こんな不利な状況にたたされようともレミリアはまだ咲夜を信じている。霊夢は少し感心した。

 

魔理沙「……まあ、これで咲夜が犯人だという可能性は低くなったが、まだ無くなったわけじゃない」

 

魔理沙の一言で霊夢は現実に引き戻された。そうだ。まだ犯人が決まったわけじゃない。ようやく、私を脅かしてきた犯人が判るんだ。

 

でも、と霊夢は思う。

ここで犯人を特定してしまったら、その人はどうなるのだろう。拘束される?いや、ここまでの非人道的な事をしておいて生かされる訳がない。確実にどちらかが死ぬ。

 

もし、咲夜が死んでしまったら。

咲夜は紅魔館に侵入するにあたってすごく邪魔だったけど、話してみると案外天然で面白かった。邪魔者だけど、失いたくない人。

 

もし、妖夢が死んでしまったら。

きちんとしていて、私がだらけるとすぐに注意してくるけど、世話好きでとても話しやすかった。

もともとだらだら生活していた私だけど、たまに料理作ってくれたり家事を手伝ってくれたりする妖夢は、私にとって大切な友達。

 

 

どっちも死んでほしくない。

 

 

でも、この館から出る前にどちらかが死ぬ。

胸がギュッとなる。

お願い、死なないで————

 

 

レミリア「私からの意見だけど」

 

ハッと霊夢は我に帰る。

 

レミリア「一応言っておくけど、別に従者だから、とか自分にとって大切だから、とか今からする発言に全く関係はないわ」

 

霊夢は息を呑んだ。

レミリアは話を続けた。

 

レミリア「私が怪しいと思っているのは妖夢。貴女よ」

 

妖夢「………ッ!」

 

幽々子「……なんの根拠があってそう言ってるの?」

 

レミリア「もし、自分が犯人で、誰かに殺されそうになるなどして目的を途絶えされられようとした時、貴女達はどうするかしら?」

 

一瞬の沈黙が流れる。

それは決まってるじゃないか。むしろこれ以外ないだろう。

 

霊夢「そりゃ全力で逃げるか戦うわ」

 

レミリア「そうよね。私もそう思うわ」

 

レミリアは頷いた。魔理沙が催促した。

 

魔理沙「それで?何が言いたいんだ?」

 

レミリアは魔理沙のほうを鋭く見る。

 

レミリア「さっき咲夜を殺そうとしたけど、逃げるそぶりもなく、受けようとした。私が言いたいのはこれ。目的のある者がする行動ではないという事よ」

 

誰も反論できない。確かにそうだ。目的を持つという事は生きようとしていることと同義。自分が死んだら目的も何も意味がない。そんな中、容疑がかけられそうになった妖夢が否定した。

 

妖夢「わっ、私はやってませんッ!」

 

レミリア「なら証拠、上げてみなさいよ!」

 

レミリアが叫んだ。必死になっているようだ。これは予想だけど、さっき関係ないと言ったがやはり咲夜をかばいたいが為だろう。

 

妖夢「……ッッ!」

 

またもや沈黙が流れる。が、さっきのような一瞬ではなく、長い沈黙だった。

 

 

 

 

 

 

レミリア「………決まりね。犯人は妖夢。妖夢だわ!」

 

妖夢「…そんな……私は…やってないです……!信じてください!」

 

誰も答えない。答えられない。

 

妖夢「……ッッ!」

 

妖夢の顔が悲しみに歪む。

それを見た霊夢はとても心苦しくなった。殺されちゃうのかな。嫌だ。魔理沙。魔理沙。貴女は咲夜を疑って———

 

霊夢はハッとした。魔理沙は帽子のつばを自分の目の高さまで引き、目を隠している。口元が震えている。

 

霊夢は他に犯人がいる可能性を上げようとした。妖夢が死んでしまうかもしれないなんて事実、疑いたかった。でも思い浮かばない。解明できない。だれか反論して。お願い。

 

その時、幽々子が口を開いた。

 

幽々子「レミリア。貴女、証拠に捉われすぎじゃないかしら?」

 

レミリア「だから何?」

 

幽々子「世の中には証拠が有っても無くても犯罪者である者もいる。この場にしかない証拠を頼りにして犯人を探すのはいい判断ではないと思うわ」

 

幽々子がゆっくりと顔を上げる。

 

幽々子「チルノがやられた理由を少し調べてみましょう。それから決めても遅くはないわ。選択肢が咲夜と妖夢だけだなんて事は無い筈」

 

幽々子「それと妖夢。犯人でないというなら強くその意思を持ちなさい。私は貴女が犯人だなんてどんな事になっても思う事は無いわ」

 

妖夢「………はい、幽々子様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから魔理沙とレミリアで1時間ほどかけて調べた。食堂に残る霊夢、幽々子、妖夢、咲夜、フラン。

 

皆、ただ待ち続けていた。酷く辛い緊張感の中。妖夢はふるえていた。咲夜もだ。フランはまた何かを恐れてる。

妖夢が今現在一番疑わしい事になっている。

妖夢の顔が歪んでいる。多分、気が狂いそうな程怖いはずだ。

 

幽々子は、というと、しっかりとふるえる妖夢の手を、ずっと握っていた。

 

 

 

 

 

魔理沙「結果が出たぜ」

 

皆がバッと魔理沙の方を見る。

 

レミリア「まず口の中。毒の反応は無かったわ」

 

そして魔理沙が続けた。

 

魔理沙「次に、衝撃を受けた場所を調べた。だが、その跡はどこにも無かった」

 

緊張はまだ解けない。

 

レミリア「それから、というより恐らくこれが原因でしょうけど…」

 

 

 

 

 

 

緊張が高まる。咲夜の視点が一点に集中している。妖夢の目が見開いた。次の言葉を逃さんとばかりにレミリアを凝視している。

 

が、その言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「背中に肩から足までの大きな切り傷が円形に深く入っている。犯人は長い刃物を持ったもので間違い無いわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢を絶望に落とす言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢の歪んでいた顔がさらに歪む。

幽々子の目が大きく見開く。

 

 

妖夢「そんな…………!私は———」

幽々子「そんなわけ無いわッ!」

 

かぶせ気味に幽々子が否定した。

 

レミリア「……………」

 

幽々子「妖夢はそんな事しないわッ!絶対にやるわけが無いッ!」

 

幽々子は叫んだ。

先程まで表情を変えなかった幽々子だが、今は一変し、悲痛な表情になっている。

 

幽々子「妖夢はそんな事できないッ!できるはずがないッ!妖夢は犯人じゃないわッ!」

 

幽々子「それに、他の誰かが長い刃物を持って切った可能性だって———ッ!」

 

魔理沙が冷静に諭す。

 

魔理沙「幽々子、普通の人間がこんなに綺麗に切れるわけが無いんだ。相当訓練していないとできない芸当だ」

 

幽々子はそれを聞くと、力無く椅子に座り頭を抱えた。

物悲しい声で否定し続けた。

 

幽々子「そんなはずは無い………妖夢は……そんな事………」

 

妖夢「ゆゆ…こさま……」

 

幽々子は首を振った

 

幽々子「もうやめましょう……私は………これ以上大切な人を………失いたく無いの………」

 

幽々子は悲痛な声でそう言った。

 

そうだ。幽々子は既に、親友である紫を失っていたんだった。

 

きっと妖夢が最後の希望なのだろう。レミリアはため息をついた。

 

レミリア「結果が出た以上、妖夢はこのままにしては置けないわ。明日まで待ってあげる。今日はもう解散しましょう。妖夢は1人か幽々子と寝て。もし本当に犯人だったら私達が危ないもの。他の人達は皆で交代で仮眠をとって寝ましょう。」

 

レミリアはそう言い放ち、フランを連れて二階へ行った。皆もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

食堂には妖夢と幽々子が残った。

 

妖夢「幽々子様……」

 

妖夢が不安げに幽々子を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

幽々子「………大丈夫。明日私が何とか貴女の疑いを晴らすわ。今日はもう一緒に寝ましょう?」

 

幽々子は優しく笑ってそう言った。

 

妖夢「ゆゆこさまぁ……っ!………ッッ!」

 

幽々子「ほらほら泣かないの。寝室まで移動しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

まだ薄暗い朝。何かドタドタと音が聞こえる。

なんだろう?

 

霊夢がドアを開けて廊下に出ると、走ってきた魔理沙にぶつかった。

 

霊夢「いったぁ…!」

 

魔理沙「!霊夢、食堂に急いで来い!」

 

魔理沙の切羽詰まった表情に霊夢は押され、急いで走っていく魔理沙についてった。

 

二階の廊下…階段…館のロビー…食堂…その奥の調理場まで走った。

 

調理場に入る前、魔理沙はクルッと私の方を向いた。

 

魔理沙「霊夢…中は見ないほうがいいぜ」

 

霊夢「え?」

 

魔理沙はそれだけいうと調理場の奥まで行った。霊夢は少し奥に進んでみた。みんな集まってる。幽々子が膝をついてる。その横には———血?

 

血だ。

 

血が辺りに飛び散ってる。

 

幽々子「うぅうぅぅう………ッ!」

 

幽々子が泣いている。初めて見た。

 

レミリアが冷静に話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「"働き者がまき割をして

自分を割って6人になった"ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢はその言葉を聞き、咄嗟に想像した。

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか……

 

 

妖夢が真ん中から………

 

 

 

強烈な吐き気。

 

 

 

 

霊夢「うぶッ!おぇえぇぇえぇ………」

 

魔理沙「!霊夢!しっかりしろ!」

 

魔理沙が霊夢の元に駆け寄る。

 

 

 

 

わかんない。

 

 

わかんない。

 

 

わかんないわかんない。

 

 

わかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイワカンナイ。

 

ワカリタクナイ。

 

 

 

 

 

幽々子の悲痛な叫びが響く。

 

幽々子「だから言ったじゃないッッ!!!妖夢は犯人じゃないってッッ!!!」

 

レミリアがうつむく。

 

幽々子「あぁあぁぁあぁあぁ………ッ!」

 

幽々子は立ち、皆に向かって叫ぶ。

 

幽々子「貴女たちのせいよッ!!!貴女たちが妖夢を殺したのよッッ!!!貴女たちがぁ…………ッッ!!!」

 

幽々子は再び力無く膝をついた。

 

 

幽々子「うぅッ……妖夢ぅ……ッ!どうして貴女までッ………!」

 

 

 

 

幽々子「私をッ……1人にッ……しないでよッ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢が……

妖夢が死んだ?

妖夢が?死んだ?

妖夢?が?死んだ?

 

わかりたくない。

理解したくない。

認識したくない。

 

嫌だ。嫌だ。

 

嫌だ嫌だ嫌だ。

 

嘘だと言って欲しい。夢なら覚めて欲しい。

 

再び吐き気。

 

妖夢は…

妖夢は…

妖夢は……

ヨウムは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は意識を失った。

悲痛な声が響く早朝。

しんみりとした空気が館内を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「霊夢、霊夢。

 

 

 

 

—————?誰かの声が聞こえる。

 

 

 

 

???「霊夢、霊夢、助けて。

 

 

 

 

助けて?どうやって?

 

 

 

 

???「霊夢、こっち。後ろだよ。

 

 

 

 

後ろ?

 

 

 

 

霊夢は後ろを振り向いた。そこには。

 

 

 

 

???「レイム、シンジテ、タスケテ?

 

 

 

 

そこには、半分しかない妖———

 

 

 

 

 

 

霊夢「うわぁあぁぁあぁぁあぁあッ!?」

 

ここは?

目の前に毛布が。床が柔らかい。ベットの上だ。どうやら二階の私の部屋だ。

 

横を見ると、魔理沙が椅子に座って本を読んでいた。

 

魔理沙「お、気づいたか。大丈夫か?」

 

霊夢「魔理沙……」

 

霊夢は時計を見た。午後の一時。

気を失っていたようだ。

何かが頭をよぎる。

 

霊夢「妖夢………」

 

大切な友達。もう、この世にはいない。会うことさえ、できない。

 

魔理沙「……妖夢には、悪い事をしてしまったな………なんであの時、あんなに焦っていたんだろう……まだ可能性があったのに」

 

霊夢は否定した。

 

霊夢「しょうがないわ……みんな、怖かったんだもの。正常な判断ができないのも無理なかったのかもね」

 

でも、それが妖夢を死なせていい理由にはならない。幽々子が叫んだ、あの言葉。

 

『貴女たちのせいよッッ!貴女たちが妖夢を殺したのよッッ!』

 

私達が妖夢を殺してしまったんだ。自分に罪を着せられたくないが為に。

 

全て妖夢に押し付けてしまったんだ。

 

霊夢「…幽々子は?」

 

魔理沙「会いたいならやめとけ。今の幽々子には何言っても聞こえないぜ。部屋にいるが、ずーっと何処かを見つめたまま。見ているのかどうかすら分からんけどな」

 

幽々子にはダメージが大きすぎる。紫、妖夢。この2人ほど幽々子と密に接触しているものは他にいないのではないだろうか。

 

もし、私が大切な人を全て失ったら、どうなってしまうのだろう?

 

紫、妖夢、咲夜、レミリア、フラン、魔理沙。

 

その内紫と妖夢はもういない。

 

2人を失っただけでも相当辛かった。全て失ったら私は………

 

霊夢はこれ以上考えを進めるのをやめた。とりあえず、みんなに会ってこよう。霊夢は布団から身を乗り出した。

 

魔理沙「あっ、ちょっと待つんだぜっ」

 

霊夢「へ?」

 

魔理沙は頭をかいた。

 

魔理沙「まあ、その、なんだ。霊夢の上の服その他諸々だけどさ、ちょっと汚くなっちゃったから今洗って乾かしてるんだ。それまで待っててくれ」

 

霊夢は下を見た。目の前には2つの膨らみが露わに………

 

霊夢「はわわっ!」

 

咄嗟に布団に隠れる。

 

魔理沙「まあ、なんだ。そこで大人しくしててくれ。ちょっとお前の服の様子みてくる」

 

魔理沙が席を立って、部屋を出てった。

 

 

 

 

 

 

霊夢「はぁ………」

 

早く帰りたい。

この殺人鬼の島から早く脱出したい。

でも、まだ方法がない。

 

霊夢は無気力になりつつあった。

 

あるのはいつ襲われるかもしれない恐怖だけ。

 

 

怖い。

 

 

そんな事、誰だって思ってる。

 

だって怖くないわけがないんだ。

 

霊夢はベットに横向きになった。何か聞こえる。下の階かな。沢山の人が喋ってる。

 

気になる。行ってみよう。

 

霊夢は起き上がろうとし、再び上半身が裸だったことに気づき苦笑した。

 

扉の開く音がした。

 

魔理沙「おーい、乾いたぜ。そらよっ」

 

魔理沙によって投げられた服が霊夢の顔に被さる。

 

霊夢「普通に渡しなさいよ……」

 

霊夢は服を着て、下の階に下りた。そこでは幽々子以外のメンバーが集まっており、何か話していた。

 

レミリア「フラン、落ち着きなさい。咲夜は犯人じゃないわ」

 

フラン「だって妖夢死んだ!残るの咲夜だけじゃんか!」

 

ああ、そうか。消去法で咲夜に矛先が向くわけだ。でも、なんだか私、今は冷静に物事を考えれてる。

 

霊夢は3人の元に歩み寄り、口出しした。

 

霊夢「みんなちょっと黙って。何も咲夜と決まったわけじゃないでしょう。また妖夢みたいな事になっても良いの?」

 

3人、それを聞いてうなだれる。

 

霊夢「ほら、昼食にしましょう?まだ食べてないんでしょ?」

 

フラン「うん……」

 

霊夢「じゃ、魔理沙。昼食の準備手伝ってて。私は幽々子を呼んでくるわ」

 

魔理沙「わかったぜ」

 

レミリア「一応私もついていくわ。単独行動は危険だし。フランと咲夜は魔理沙と一緒にいて」

 

咲夜「はい。お嬢様」

 

フラン「わかったよー」

 

霊夢「それじゃ、行くわよレミリア」

 

階段を上る。霊夢はなんだか今なら幽々子の説得もできる気がした。謎の自信が湧いてきた。

 

幽々子の部屋の前に到着。ノックする。

 

コンコン。

 

霊夢「幽々子ー?」

 

…………………

 

返事がない。

 

レミリア「あんたねぇ、返事なんかできるわけないでしょ。かなりショック受けてんのよ?幽々子、入るわ」

 

ガチャ。

 

部屋の中を見ると、幽々子は椅子に座ってぼーっとうつむいていた。

 

幽々子の前に立つが、一向に顔を上げず、ただただ下を向いている。

 

 

 

 

 

レミリアはため息をついた。

 

レミリア「…幽々子。ごめんなさい。私の勝手な判断で…こんな事になってしまって。もう、私は貴女の言う事に何も口出ししないわ。とても許してもらえる事じゃないのはわかってる。だから償いをさせて?」

 

幽々子「……………」

 

沈黙が流れる。

長い長い沈黙。

霊夢は耐えきれなくなった。

 

霊夢「あーもう!いつまで落ち込んでんのよ!たしかに幽々子は相当なショックを受けたと思うわ。でもね、そうやって落ち込んでても、何も始まらないじゃない!」

 

霊夢は幽々子の肩を掴む。

 

霊夢「ほら、昼食食べるわよ。早く来なさい」

 

冷たい。

 

霊夢「うわぁッ!」

 

幽々子の首元に針が刺さっている。

 

レミリア 「……どういうこと………?」

 

 

 

幽々子が死んでいる。

 

 

 

霊夢「"食いしん坊がハチミツなめて

ハチに刺されて5人になった"よね……これ……」

 

レミリア「霊夢、貴女………」

 

レミリアから疑いの目が向けられる。いつもなら焦って理由もなく否定したが、なぜか頭が冴えている。

 

霊夢「いいえ。私じゃないわ。今ここでやったとしても冷たくなるには早すぎる、多分3時間ぐらい前だわ。とにかく一旦食堂に戻りましょう」

 

レミリア 「え、ええ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に戻った2人は、事情を説明した。

 

フラン「3時間前……?その時3人で議論してたよね?」

 

魔理沙「私は霊夢の服洗濯してたぜ。レミリア見ただろ?」

 

レミリア「ええ。貴女が1人だから何かしないか見てたわ。でも、特に何もしなかった」

 

咲夜「その間霊夢は気を失っていましたね。魔理沙が何回か様子を見てたでしょ?」

 

魔理沙「ああ。10分おきに見てた。その10分で部屋から出て、幽々子の部屋まで行って抵抗する幽々子を殺して帰ってくることなんて不可能だ」

 

全員のアリバイが確立する。

 

レミリア「もしかして…」

 

もしかして、じゃない。これしかない。

でもこの考えは、初めから考えられた事。

 

いや、最初から考えていたけれど、今まで誰も裏付けることができなかった事。

 

 

 

霊夢「館内に、私達以外に誰かが潜んでいるわ」

 

 

 

 

誰かがいる。見知らぬ、誰か。

 

大妖精、紫、チルノ、妖夢、幽々子を殺した、恐ろしい殺人鬼が。

 

考えただけでも恐ろしい。逢わずに逃げたい。しかし、そんな訳にはいかないようだ。

 

でも、これが分かったとして、どうする?みんなで探す?いや、手分けすることができない今、この案は無理だ。

じゃあ—————

 

レミリア「みんなで探しましょう。一度入った部屋、通路にガムテープとかで封じるのよ。今日から食堂で寝ましょう。先に布団類を移動させて、それから行動するわよ」

 

さっきの2組にわかれ、布団を移動させた。

 

次に全員で館内を動き、次々にガムテープで封じていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ある部屋で。

 

魔理沙「?変だな。この部屋開かないぜ」

 

霊夢はビクッとした。何か殺人鬼の真相に近づいてしまった気がしたからだ。

 

レミリア「…破壊しましょう。ちょっとどいて」

 

レミリアは思いっきり扉を攻撃した。

 

扉は倒れ、中の様子が見えるようになった。

 

咲夜「お嬢様。この部屋………」

 

レミリア「………」

 

小さな部屋。物置のごとくあたりに置かれている木の棒、絨毯、布団。

 

霊夢「物置みたいね……」

 

フランが指を指す。

 

フラン「お姉様、あそこ……」

 

指された場所には、レコーダーがある。

 

レミリアはそれに近づいた。

 

レミリア「このレコーダー、既に何か入ってるわね」

 

レミリアは再生ボタンらしきものを押す。それは再生された。

 

 

霊夢「うわぁッ!」

 

館内に大音量で鳴り響く。耳をつんざくような大きな音。霊夢は咄嗟に耳を手で抑えた。

 

皆突然の音に驚き、レミリアが慌てて音量を下げる。

 

レミリア「な、なんなのよこれ……」

 

咲夜「…!お嬢様、これは……」

 

あの詩だ。初日の食堂で流れた曲だ。

 

《……人の仲良し妖怪さん。ねぼすけ小僧がねぼうして。ねむったままで8人になった。8人の仲良し妖怪さん。舟出ししようと浜に来て……》

 

思い出される、それぞれの死。霊夢は胸が苦しくなってきた。

 

《…5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった…》

 

これが、次の詩だ。

次のターゲットはこの死に方をする。

 

しかし、ここで異常を感じた。

 

《…5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。…》

 

なぜかこの部分だけ、繰̀り̀返̀し̀流̀れ̀て̀い̀る̀。

 

音̀量̀を̀上̀げ̀て̀い̀な̀い̀は̀ず̀な̀の̀に̀、な̀ぜ̀か̀大̀き̀く̀な̀る̀音̀。

 

《…5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人になった。5人の仲良し妖怪さん。しっかり者が周りを探索。魔物に襲われ4人に…》

 

霊夢「止めてッ!」

 

フラン「止めてぇッ!」

 

霊夢は耐えきれなくなって叫んだ。

 

怖い。

それはフランも同じのようだった。

 

曲がとまる。突然訪れる静けさ。

 

レミリアが口を開いた。

 

レミリア「…犯人はなんのつもりで……ッ!」

 

口調から怒りの感情が感じ取れる。

 

咲夜「………」

 

咲夜がその姿を不安そうに見つめる。

 

レミリアは振り向いた。

 

レミリア「…この部屋も封じましょう。次の部屋に行くわよ」

 

そうして、その後も通った通路にガムテープを貼り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残る部屋は食堂のみとなった。

 

レミリア「さて、あとは定期的にガムテープが破られてないか見るだけね。あとは——」

 

レミリアは何かを取り出し、魔理沙に渡した。

 

魔理沙「?これは何だ?」

 

レミリア 「昨日言った"拳銃"ってやつよ。使い方は取っ手の側についている引き金を引くだけで良いわ」

 

魔理沙「引き金?」

 

レミリア 「このカタカナの"ノ"の字になってるやつ。手前に引けば弾が出るわ。反動が強いから貴女の十八番を撃つ感覚で制御しなさい」

 

霊夢「あんた達も持ってるの?」

 

レミリア「いいえ。この一丁だけ。私とフランと咲夜は肉弾戦に問題は無いわ。魔理沙は霊夢を守りなさい」

 

レミリアの言葉には、凄く"重み"があった。

 

魔理沙「お、おう。わかったぜ」

 

現在の時刻は午後の3時。もうすぐすれば日が暮れる。霊夢は一層怖くなってきた。1日に1人以上が確実に死んでいるから。

次は私かもしれない。こうしてガムテープを貼って安全性を高めているけど、今までからして安全な場所などどこにもない。

 

レミリア「グループわけするわ。私と咲夜、霊夢と魔理沙で交代して見回りするわ。フランは食堂で待っていなさい」

 

フラン「え……でも……」

 

レミリア「貴女はダメよ、フラン。これは私情になるけど…」

 

レミリアはフランに近づき、両肩に手を置いた。

 

レミリア「最悪、また誰かが殺されるようなことがあっても、貴女だけは絶対に守るから。私がいる限り貴女に手を出させないわ。だから安心してここで待っていて。いい?」

 

レミリアはフランの目をまっすぐみてそう言った。

 

フラン「…うん」

 

レミリア「良い子ね」

 

レミリアはほのかに笑ってフランの頭を撫でた。そしてすぐに翻し、咲夜に指示を出した。

 

レミリア「咲夜、行くわよ。十分注意なさい」

 

咲夜「かしこまりました。お嬢様」

 

そうしてレミリア達は見回りに出かけた。

 

霊夢「…レミリアって、良い面もあるのね」

 

人は危機的状況に陥ると本性を現すと言うけど、レミリアの本性がさっきの行動なら、私なんて————

 

魔理沙「レミリア、口に出さないが普段あんな感じだぜ?ただ霊夢は食料を盗む害悪だったからあまりいい態度取られなかったんじゃないか?」

 

霊夢「……そうね。あんなに心配してもらえるなんて、部下達は幸せね。ちょっと紅魔館に住んでみたくなったわ」

 

魔理沙「それは食料にもありつけるからか?」

 

魔理沙がからかってくる。でも、霊夢は本心からそう思っていた。

 

霊夢「…そんなわけないじゃない。少しそう思っただけよ」

 

霊夢は静かに答えた。魔理沙はそれを見て、少し笑った。

 

魔理沙「さて、多分戻ってくるのは30分くらい後だし、ゆっくり休むか」

 

フラン「そうだね。フラン少し寝ても良い?」

 

魔理沙「ん、構わないぜ。おやすみ」

 

そう言うとフランは布団に横になった。しばらくして、寝息が聞こえてきた。今日の朝から昼にかけてとてもハードな体験をしたし、すごく疲れているのだろう。

 

魔理沙「さて。私達はのんびり待つとするか。一応拳銃は机の上に置いておこう」

 

霊夢「そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分が経過した。

2人は喋ることなく、静かに座っていた。

いつ襲われるかもしれない恐怖と、魔理沙が一緒に見張ってくれている安心感が入り混じって、心臓の音が落ち着くことは無かった。

 

ふとフランを見る。

私たちと違って、私が待った時間に比べれば、寝ているフランにとっては一瞬なんだろうな。緊張感のかけらもない寝息。その状態が少し羨ましい。

 

ここに来て2日目。

もう、5日後にくる舟の事など期待していなかった。

 

食堂の入り口の方から足音。

 

霊夢の視点はフランから入り口へと変わった。

 

レミリア「終わったわ。次、魔理沙と霊夢よ」

 

魔理沙「おう。あと、フラン疲れて寝てるから、静かにしてやってくれ。というか静かにした方が犯人が近づいた事が分かりやすいかもしれない」

 

レミリア「わかったわ。それじゃ、見回り頼んだわ」

 

魔理沙は拳銃を持ち、霊夢を呼んだ。

 

魔理沙「ほら、霊夢行くぞ」

 

霊夢「う、うん」

 

なんだか、肝試しに行くような感覚だ。入り口を超えると、食堂にいた時とうってかわって、空気が重くなった。いつ、どこから出てきてもおかしくはない。

 

霊夢「魔理沙…」

 

魔理沙「ん?」

 

霊夢は魔理沙の袖をつかんだ。怖い。

 

魔理沙「なんだ霊夢。怖いのか?それにしても、私の袖を掴んでくるなんて、なかなかかわいい事するじゃないかー」

 

魔理沙は何時ものおちょくるような顔でからかってきた。いつもはその顔に腹を立てていたけど、今はなんだか安心する。

 

霊夢「うっ…うっさい…!黙って歩きなさいよ」

 

魔理沙「ほぅほぅ、これが噂のツンデ霊夢ってやつか。ごちそうさまです」

 

魔理沙はそう言うと私の腕を振りほどいた。

 

霊夢「…え?」

 

魔理沙は私の手を掴んだ。

 

魔理沙「この方がはぐれないし安心だな!」

 

ここで不覚にも魔理沙に変な感情を抱いてしまった事に少し後悔した。

 

 

 

 

 

 

次々とガムテープの貼ってある場所を見ていく。どこも破られてない。魔理沙は私の手を掴んでどんどん歩いていく。

 

魔理沙も怖いのだろうか。

 

魔理沙の手が微かに震えている気がした。

 

死んだ人達は全部一室に纏めている。各地にだらんと置いている姿を見るのは誰だっていい気分ではない。

 

その部屋の前を通る。

 

そこだけ、なんだか空気が違った。私は幽霊などたくさん見てきたが、なんだか怖い。この部屋で私の友達が眠っている。そう考えるだけで怖いのか、それとも悲しいのか、わからない。

 

魔理沙の手の力がギュッと強くなる。

 

魔理沙はアウトドア派だったし、たくさんの人と関わってきたと思う。多分、私より辛いはずだ。

 

それなのに、魔理沙は私を励まし続けている。

 

…魔理沙は私にとって、大切な、一番の親友。

 

失いたくない。失う所を見たくない。

 

もし、死んでしまうなら、私が先に……

 

 

魔理沙「全部見終わったぜ霊夢。さ、戻ろうか」

 

魔理沙の顔に安心感が灯る。私もその顔をみて安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「おーい、終わったぞレミリアー!」

 

レミリア「ご苦労様。交代ね」

 

再び食堂に戻ってきた。フランはまだ寝ている。

 

魔理沙「はーっ、ったく、いつになく疲れたのぜー」

 

レミリア「もう、あんまり気をぬくのはやめなさいよ?いつ襲われるか分からないんだから」

 

魔理沙「わかってるぜー。霊夢、私少し目瞑ってるから、代わりにみててくれ。なんか異常があったら呼んでくれ。起きてるから」

 

霊夢「わかったわ」

 

レミリア「よし、それじゃ行くわよ咲夜」

 

咲夜「はい。お嬢様」

 

こうして、深夜になるまでそれを繰り返した。

 

 

—続く




次回で最終回です。
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