「アーチャー、貴様の治める法とやら。実におもしろきことよ。その治世が崩れ滅びる様を見届けられなかったことが誠に残念だ。貴様の死に際の表情はさぞかし屈辱に満ちた表情をするのだろうな。」
「なっ!?……」
アインツベルンの城で、王としての問答を始めてから、ライダーとアーチャーの王道を聞いていたセイバーが口にした感想は正に外道の一言に尽きた。
流石にこの発言はアーチャーの予想を超える物であったらしく顔を引きつらせたまま固まっている。
まさか自身の不幸が愉悦の肴になろうとは、本来であればその不敬を断罪し、粛清に乗り出すのだが。
あまりにも邪悪なセイバーの笑みが背筋に走る怖気と共にみを凍らせ、動きを止める。
「せ、セイバーよ、貴様は聖杯にどのような願いを託すのだ?」
「決まっている。私の願いは今まで私にまずい食事を出していた料理人を、謀ってきた臣下どもを皆殺しにすることだ。」
「……………」
「……………」
二人の王がセイバーの浮かべる邪悪な笑みに、一層凍りついた。
「この時代の食事を、我が舌で味わい、悟った。――――あの食事は一体何だったのだ。どいつも皆口を揃えて『美味い、おいしゅうございます。』だと!?決して許してはおけん。」
眉間に皺を寄せ不機嫌そうに、呪詛の様な恨み言を吐き続ける様子に
「そ、……そうか………」
食い物の恨みは怖いな。
とライダーは最早これ以上議論してはならない空気を悟ったが、遅い。
アーチャーと共に絡み酒を案じた。
* *
「導師。何も殺人鬼を討伐せずとも、私や父との作戦がばれたのなら堂々と令呪を増やしても良かったのではありませんか?」
言峰綺礼は今更ながらの意見を口にしたのは雨竜龍之介を討伐した後のことだった。
「………」
「……………」
「………」
璃正神父も流石に今回の件は不思議に思っていたが、聡明な時臣氏ならではの策があると思い何も口を挟まなかったのだが
どうやら今代の遠坂も彼の呪いがあるらしい。
簡単に言ってしまえば『うっかり』だ。
彼らの血統は恐ろしいまでに優秀であり、生まれてくる次代もたぐいまれなる才能を有した子孫を輩出する、代が浅いにも係わらず既にその名は名門に連なる程である。
魔法使いの弟子に附き、その系譜に連なる彼らは一見は完璧の二文字が似合うが……
ここ一番と言うときや、周到な策を練る場合において、根幹を破綻させかねないミスを犯すのだ。
第3次も遠坂はこの呪いの様なうっかりで敗北の原因を作った訳であるが、璃正神父にとってはそのうっかりによって先代の遠坂に救われた恩がある。
思えば息子の綺礼は常に何かを欲するように鬼気迫る雰囲気だったが、優秀であった為、どのような苦難苦行も一人で乗り越えてしまい、老齢で授かったとはいえとても手のかからない息子であった。
そこにうっかりな時臣氏を見ていると無性に掻き立てられる父性は神に仕える身として中々の愉悦であった。
正に聖人の愉悦とはこのことだろう。
言峰璃正は聖母の様な笑みで遠坂時臣と言峰綺礼に令呪を8画、6画と移した。
「これでアーチャーをいざというときでも完全に支配できよう。綺礼については令呪本来の使用用途のほかに、使い捨ての魔術刻印の代用としても役立つであろう。」
刻印を渡された綺礼は心の奥でほくそ笑む。
これで衛宮切嗣に会うことができる。
* *
「舞耶、ありったけの弾薬と爆薬を今すぐ用意してくれ。教会と遠坂邸を潰す。」
セイバーさんの酒乱会は夜明けまで続きました。
やったねたえちゃん!令呪をゲットしたよ!
綺礼は勝手に暴走フラグON