第9話 復讐鬼 その1
「んぐはああーーーよーく寝たなあ。ん?なんでオイラ。ベッドから落ちてるんだ?」
胡坐をかいて背伸びをする武蔵。だが自分がベッドから落ちている事に気付き、不思議そうに首を傾げる。だが自分の寝相の悪さを知っていたので、寝相で落ちたんだなと解釈し立ち上がる。
「良しッ! 絶好調♪」
食事と睡眠で体調が回復し、凝り固まった筋肉を解していると音を立てて扉が開き、イングラムが姿を見せる。
「すまないな。巴武蔵、知っての通り戦闘があった。なんの連絡も無く不安に思っていたと思うが問題は無事解決した」
「……え? 戦闘? オイラ、今まで寝てたんですけど?」
イングラムから戦闘があったと聞いた武蔵は目を丸くする。だが考えてみても欲しい、武蔵は操縦性が劣悪なゲットマシンで飛行中に爆睡出来るような男だ。つまり1度寝ると決めたらそう簡単に起きるような性格ではない、それは仮に戦闘によって地震のように揺れる戦艦の中であっても変わりは無いのだ。
「寝ていたのか? かなり振動とかがあったはずだが?」
戦闘があったと言う事が信じられない武蔵と戦闘があったのに寝ていたと言う事が信じられないイングラムの間に嫌な沈黙が満ちる。
「ま、まぁ良い。怪我などをしていなければそれに越したことは無い。ハガネの中を出歩く許可が出た、クルーに紹介するからついて来い」
その沈黙に耐え切れなかったのはイングラムのほうだった。話を切り上げ、本来の目的だったクルーに武蔵を紹介すると言って部屋を出る。
「わ、判りました。今行きます」
武蔵は慌てて上着を肩に掛け、イングラムの後を追って与えられた部屋を後にした。
「それで戦闘があったそうですけど、大丈夫なんですか?怪我をしている人とかは?」
戦闘があったと聞いて何があったのかを知りたい武蔵が矢継ぎ早にイングラムに質問する。
「それに関しては問題は無い、潜水艦による強襲で出撃出来なかったからな。その代わりハガネが損傷し、現在南鳥島へと向かっている」
「南鳥島……そこに何かあるんですか?」
「いや、何も無い。だがハガネのエンジンの修復が必要でな、そこで一時的に停泊する予定だ。その間にお前の紹介を済ませておくべきと判断した」
状況を聞いてなるほどと頷いた武蔵。動き出せば否が応でも戦闘になる、一時的とは言え停泊するのならばそれを利用して顔合わせを済ませるのは理に叶っている。
「呼んだら入って来い、軽くお前の事は紹介しておく。だが早乙女研究所と言う名前は出すな、その研究所は存在していない。お前は試作兵器を持ち出し、DCと戦おうとしている民間人として紹介する。余計なことを言うんじゃない、分かったな」
イングラムの強い口調に武蔵はやや怯えながら、判りましたと返事を返す。イングラムがブリーフィングルームに入るのを見て疲れたように溜息を吐き窓の外を見る。
「ん? なんだあれは」
美しい海と青い空を見つめ、気を落ち着けていた武蔵だが遠くに見えた黒い影に目を凝らす。だが一瞬過ぎった黒い影は雲の中へと消えた。
「カモメにしちゃあ……でかかったな。なんだありゃあ」
普段ならば大して気にすることでもない事なのだが、今姿を見せた鳥が気になって仕方ない武蔵が窓の外に目を凝らす。直感とでも言うべき何かが今姿を見せた何かを確認しろと訴えていた……だが間が悪いことに扉が開き。
「武蔵。入って来い」
「え、あ。すいません、今行きます」
イングラムに呼ばれた武蔵。自分を紹介するために時間を割いてくれているのに、たかが鳥かもしれない物が気になるとは言える訳が無く。イングラムに返事を返しブリーフィングルームへと足を踏み入れる。だがこの時、もう少し窓の外を見ていればと後に武蔵は後悔する事になる。武蔵がブリーフィングルームに入ると同時に窓の外からハガネを覗き込む何者かの姿があったのだから……
「やっと見つけたぞぉ……巴……武蔵ぃぃ……我らが怨敵……」
そしてその黒い影は憤怒の表情を浮かべ、ブリーフィングルームの扉を睨みつける。暫くそうしていたかと思うと黒い影はマントを翻し、海へと飛び込んでその姿を消すのだった……
ブリーフィングルームは騒がしかったが、イングラムと武蔵が入室したことで一気に静まり返る。全員の視線が自分に集まり、武蔵は思わず小さく呻いた。
「これからハガネに同乗してもらい、アイドネウス島に向かう「ムサシ・トモエ」だ。彼の持ち出した特機「ゲッターロボ」は今回の作戦で非常に有力な戦力となるが、彼は軍属ではなく、善意の協力者と言う事だ。こちらから出撃を強制することは無く、要請と言う事になる。更に彼に命令することも許されない、あくまで彼は善意の協力者だ」
イングラムの言葉はかなり無理があった。あれほどの戦力を持つ特機のパイロットを善意の協力者として押し通すのは明らかに無理だ。
「あー、えっと、ムサシ・トモエです。武蔵って呼んでくれると嬉しいです」
ぎこちない表情で頭を下げる武蔵。その姿は確かに民間人だ、確かに筋肉などは付いている。だがそれは軍人の物ではなく、あくまでスポーツ選手のような、何かの競技にあわせた筋肉の付き方だ。
「俺、リュウセイ! リュウセイ・ダテッ! なぁ! お前の乗ってる特機について教えてくれよッ!」
「お、おうッ! ゲッターロボのことなら何でも答えるぜ」
「よっしゃッ! 俺さ、スーパーロボットとか大好きなんだよ!」
だがリュウセイの楽しそうな声でブリーフィングルームの嫌な空気は吹き飛ぶ。イングラムはその姿を見て小さく笑う、その笑みは計算通りという感じの笑みだ
「これから共にDCと戦うんだ。少しは会話などをすると良い」
イングラムが出て行った事で席に座っていたハガネのクルーも席を立ち、武蔵に近寄る。
「俺はイルムガルド、イルムガルド・カザハラだ。イルムで良いぜ」
「あ、イルムさんですね。よろしくお願いします」
イングラムに次ぐ地位であるイルムがフレンドリーに話しかけた事で次々と自己紹介をしていく、武蔵は頑張って名前を覚えようとしていたが、目を白黒させて両手を突き出す
「いやいや、待って、待って、えっとだれが誰? えっとぉ?」
一気に何十人に挨拶され、目を白黒させている武蔵……その姿にブリーフィングルームに笑い声が満ちる。
「別に無理して一気に覚える必要は無いから、これからよろしくね」
赤毛にそばかすの活発そうな女性が武蔵の肩に手を置いて笑う、武蔵はうーんうーんっと暫く唸ってから
「はい、えっと……アヤさん?」
「あはは、違うわよ、私はガーネットよ。アヤはこっち」
ガーネットはそう笑い、肩をむき出しにしたセクシーな女性の手を引いて武蔵の前に立たせる。
「私がアヤよ」
「え、あ……すんません。オイラあんまり記憶力とか良くなくて」
すいませんと言いながら謝る武蔵の首に腕を回す、黒人男性。武蔵は少し驚いた表情をするが、元は体育系の武蔵だ。こういうスキンシップには慣れており、むしろその黒人男性の行動に慌てていた気分が落ち着いた様子だ。
「俺はジャーダ、ジャーダ・べネルディだ。ジャーダでいいぜ、で、武蔵お前は音楽とか聞くのか?」
「へ? お、音楽ですか? いやあ……そういうのは全然」
「なにぃ、それは良くないな。よっし、後で音楽CD貸してやるから聞いてみな」
フレンドリーなジャーダの対応で武蔵の顔に浮かんでいた緊張の色は消える。こういう時に明るいジャーダの対応は、緊張している相手には非常に効果的だったのだ。
「あ、ラトゥーニ、挨拶くらいしてあげて」
「……ラトゥーニ・スゥボータ」
その明るい雰囲気を崩すように、暗い声で告げて眼鏡を掛けた少女がブリーフィングルームを出て行く。
「あ、おい。ライ!」
「大尉が紹介してくれればいいです。では失礼します」
ラトゥーニに続いて、ライディースまでブリーフィングルームを出て行く、その姿に武蔵は困惑した表情を浮かべる。
「オイラ、嫌われてます?」
「いやいや、ライはちょっと堅物だからよ。大丈夫、俺も最初あんな感じだったから、それよりゲッターロボだっけ? そいつの話を……」
「駄目よ、リュウ。ビルドラプターの調整が残ってるでしょ? まずはそっちからよ」
「ええーそんなぁーッ! む、武蔵! 後で! 後で話を聞かせてくれよ! じゃあなッ!!」
アヤに制服の襟を掴まれ、ブリーフィングルームを出て行くリュウセイ。その姿に武蔵は噴出してしまうのと同時に、アヤの姿にリョウや隼人、そして自分が喧嘩しているときに仲裁に入ったミチルの事を思い出し、楽しそうに笑うのだった……
武蔵がハガネのクルーへと自己紹介しようとしている頃。ウェーク島のDCの基地ではキラーホエールによって損傷したハガネへと追撃に向かう為急ピッチで出撃準備がされていた。
「テンペスト少佐」
ダークブルーのガーリオン・カスタムへと向かうテンペストをエルザムが呼び止める。
「エルザムか、どうした?」
パイロットスーツに身を包み出撃間近の兵士に通常声を掛ける馬鹿はいない。これから戦場に出ると言う事で集中力を高めているパイロットの集中を削ぐような真似は普通はしない、勿論エースパイロットと呼ばれるエルザムがそれを知らないわけが無い。だがそれでも声を掛けてきたと言う事でテンペストはその足を止める。
「私は伊豆基地で武蔵君……そしてゲッターロボと戦った。その時のことを伝えておこうと思ってね」
「……武蔵か、彼の事は残念だ」
連邦への復讐の念だけでDCに参加したテンペストからしても、武蔵、そしてゲッターロボの事は惜しいと残念だと思っていた。
(彼は礼儀正しかったしな)
テンペストは心の中でそう呟いた。テンザンとは異なり、礼儀正しく、そして年上を敬うという姿勢も見せていた。同年代なのにこうも違うかと思い、そして少し抜けているところはあるが真面目な性格はテンペストから見ても好意的に見る事が出来た。だからこそ、武蔵がアイドネウス島を脱走したと聞いた時は少なからず動揺してしまっていた。
「彼は連邦という訳ではありません。例えハガネに乗っていたとしてもです」
「……確かに彼は裏切り者と言うわけでは無い」
元々はビアン総帥の知人の孫と言う設定を信じているテンペストはエルザムの言葉に頷く。裏切り者、スパイと言う者は確かにいる、だが彼は民間人であり、軍人でもDCの兵士でも無い。だから裏切り者と言う言葉は武蔵には当て嵌まらない、テンペストが頷いたことに安堵したエルザムだが、脇腹を押さえて呻く。
「大丈夫か?」
アイドネウス島に帰還する筈のエルザムがウェーク島にいるのは、ゲッター3のパワーと正面からぶつかった事が原因である。ゲッター1への変形で負傷していた肋骨を更に痛めた事もあり、長距離航行には耐え切れないと判断したキラーホエールの船医の判断で1度ウェーク島の基地で痛み止めとコルセットによる肋骨の固定をする為だ。エルザムは冷や汗を流し、青い顔でゲッターの事をテンペストへと伝える。
「え、ええ……大丈夫です。伊豆基地の事ですが、まるで戦車のような姿をした状態をゲッター3と武蔵君は呼んでいました。私達が見たのはゲッター1、恐らくゲッター2と言われる形態があるはず」
アイドネウス島でテンペスト達が見た鬼のような姿のゲッター1、そしてエルザムが見た戦車のようなゲッター3。その命名の法則からゲッター2と呼ばれる形態があるのは明白だ。つまりゲッターロボとは3機のゲットマシンの組み合わせによって、能力を変える万能型の特機である。それがエルザムの出したゲッターの分析結果だった。
「ゲッター3の特徴は?」
ゲッター1はテンペストも見ていたので、その特徴は理解している。リオンやガーリオンよりも遥かに高い機動力、高い攻撃力と防御を兼ね備え、近~中距離に特化しつつも、戦艦の主砲並のビームを搭載している。テンペストの分析をもってしても、危険と言える能力を兼ね備えている。だがそれとは違う形態があるのならば、その情報を得ようと思うのは当然の事だ。
「重装甲と凄まじいパワーです。飛行能力は持ち合わせていないようで、飛び道具はミサイルだけ、戦闘は格闘戦のみなのですが、ソニックブレイカーで漸く相打ちになるほどの防御力と重量を持っています。近接は不利ですが、距離を取れば伸縮自在の腕で捕まえてきます、そのパワーはリオンを簡単に握り潰すほどです。恐らくガーリオンでも危険かと」
DCの最新鋭の機体でも危険である。その言葉にテンペストの顔が険しくなる、だが緊急発進していくリオンを見てこれ以上話し込んでいる時間は無いと判断して話を切り上げる。
「なるほど、話を聞いて、ますます武蔵が敵になったのが惜しいよ。だが情報感謝する、可能ならば説得しアイドネウス島に連れ帰ろう」
テンペストはエルザムにそう笑いかけ、ヘルメット被りガーリオンのコックピットへと潜り込み、リオンとシューベルトの部隊を引き連れウェーク島の基地から飛び立って行くのだった……
ハガネのクルーとの自己紹介をすませた武蔵はハガネの格納庫へと足を向けていた。その理由はゲッターの事が心配と言う事もあったが、もう1つ、回りの視線に耐えられないという理由があった。
「いやあ。オイラああいう目で見られるのはどうも苦手だなあ」
イングラムがとある科学者の孫で、試作機だったゲッターを持ち出してDCと戦おうとしている民間人と紹介した。だがそんな苦しい言い訳が通用するわけも無く疑いの目で見られていた武蔵はブリーフィングの後に逃げるようにブリーフィングルームを後にしたのだ。頭が良くないと言う自分でも苦しいと思うくらい厳しい内容だったのだから、賢い人にはイングラムの嘘も自分の嘘もバレているんだろうと思い。ベアー号のコックピットに逃げ込もうとしていた。
「男の癖に受身なんて! 自分から行きなさいよッ!!!」
「うおっ!?」
格納庫に入るなり聞こえてきた怒声に思わず身を竦める武蔵。声の聞こえたほうを見ると美しい黒髪を3つ編みにした少女に茶髪の少年が怒られていた。武蔵はうーんと唸りながら、2人の名前を思い出す。ブリーフィングルームで顔を見ているが、名前と顔が一致せず。暫く唸って思い出せた。
「まぁまぁ、リオもそんなに頭ごなしに怒ったら駄目だぜ。話くらいは聞いてやろう」
喧嘩を見過ごすと言う事は武蔵には出来なかった。竜馬と隼人が喧嘩した時の仲裁に入るのは武蔵の役目だった事もある。それに何よりも武蔵は基本的に揉め事が好きでは無い、降りかかる火の粉は払うが、決して暴力を振るうタイプでは無い。
「え、あ、武蔵君だっけ」
「おうともさ、それで何があったんだ? 格納庫中に声が響いているぜ」
周りを見ろよと身振りで示すと整備兵がリオとリュウセイを見つめていて、リオがその視線に気付き顔を赤く染める。
「ぜ、全然気付かなかった」
「ははは、そう言う事もあるさ。で?どうしたんだ?」
改めて何があったのか?と武蔵が問いかけるとリオが事情を武蔵に説明する。
「なるほど、リュウセイよ。そりゃあおめえが悪いぜ。幼馴染が心配って言うのは判るさ、でもな人の気持ちを真っ向から否定しちゃあいけねえ。まずは話し合ってみな……っと言ってもオイラみたいな新参者に言われてもうるせえだけかも知れねえけどなあ」
朗らかに笑う武蔵。確かに武蔵は新参者だが、その言葉にはリュウセイの事を思いやる気持ちがあり、リュウセイも素直に頷きかけたが背後から誰かがぶつかってきて姿勢を大きく崩す。
「あっと……ご、ごめんよ。大丈夫かい?」
リュウセイにぶつかってきたのは白いゴスロリ服を纏った少女で、リュウセイが謝るが少女は顔色を変えて走り去ってしまう。
「んーなぁ、リュウセイにリオ。あんな子いたかあ?オイラブリーフィングルームで紹介された時、あんな子見なかったんだけどなあ」
武蔵が能天気な様子で2人に問いかけた時。ハガネに警報が鳴り響き、凄まじい衝撃が襲ってくる。
「きゃあっ!」
「うおっ!」
「おっとお! 大丈夫か?」
倒れかけた2人を受け止めた武蔵は2人をしっかりと立ち上がらせる。
「どうも敵襲みたいだな。リオは確かオペレーターだったよな! オイラも出るって伝えてくれッ!」
武蔵はそう叫んでゲットマシンへと走り出す。リュウセイも弾かれたように動き出しロバートの元へと走り出す。
「3機だけだと……!? どういう事だッ!?」
スクランブルの警報の後出撃したのは3機のPTのみ。ブリッジでそれをみたテツヤが格納庫に通信を繋いで何故3機しか出撃しないのかと問い詰める。
「すまない、大尉! 他の機体は発進までもう少し時間が掛かる! 後6分……いや! 4分で何とかしてみせる!!」
ロバートからの報告にダイテツが顔を歪めながらも指示を飛ばそうとした時、格納庫から走ってきたリオが息を切らしながらブリッジに飛び込んでくる。
「む、武蔵君がゲッターで出ると伝えてくれと……はぁ……はぁ……」
ゲッターの出撃。その言葉にブリッジに緊張が走る……伊豆基地でのゲッターの力も見ている。だがそれと同時にアイドネウス島から脱出してきたと言う事もあり、どうしてもスパイ疑惑が付き纏っているからだ。
「……武蔵。聞こえるか」
『その声はダイテツさんか! 早く整備員になんとか言ってくれ! 出撃は認められないって言うんだ!』
『降りろ! 勝手な出撃など許されないッ!』
通信機から聞こえてくる声には武蔵だけではなく、武蔵をベアー号から引き摺り下ろそうとしている整備兵の怒声も響いている。ダイテツは目を閉じ少し考える素振りを見せてから通信機に手を伸ばす。
「艦長命令だ。武蔵君の出撃を許可する、早急に出撃準備を整えさせるんだ。武蔵君、他の機体は出撃まで時間が掛かる、3機のPTと協力してハガネの防衛を任せても良いか?」
力してハガネの防衛を任せても良いか?」
『おうさ! オイラに任せてくれよ!!! しゃあッ!!行くぜええええええッ!!!』
ハガネの格納庫が開き3色のゲットマシンが飛び出していく。
「艦長宜しいのですか?」
「ハガネは落ちるわけにはいかんのだ、大尉。力を貸してくれると言うのならば、それを拒んでいる余裕など無い。それよりも早く他の機体の発進準備を急げッ!」
テツヤの疑いの視線と言葉を一喝し、ダイテツはモニターに視線を向ける。その視線の先では空中でゲッター3に合体したゲットマシンが地響きを立てて着地する姿があるのだった……
ハガネから出撃した3機のPT。だがその中でゲシュペンストは1機であり、残りの2機は伊豆基地で搬入された新しい機体だった。初の可変式PT「ビルドラプター」に乗るのはリュウセイであり、もう1機の機体はバニシング・トルーパーと言う忌み名を持つヒュッケバインの後継機である「ヒュッケバイン009」の2機の間に地響きを立ててゲッター3が着地する。
「……伊豆基地でも見たが、どうなってんだあれ……どう見ても機械の変形じゃねえぞ」
ヒュッケバイン009を駆るイルムが信じられんと呟く。だがそれは決して間違いではなく、ゲッター合金と言う特殊な金属で形成されているゲットマシンは鉄でありながら、驚異的な柔軟性を持つ。その柔軟性があるからこそのゲットマシンはゲッターロボへの合体を可能としていた。
「でも今は味方ってことで信用するかね。それじゃあ、頑張ろうぜ、ラトゥー二ちゃん」
今までの思案顔から一転し、軽い感じでゲシュペンストへと通信を繋ぐイルム。この時彼の脳裏にあったのは野暮ったい眼鏡姿の少女の姿だったのだが、通信機に映し出されたのはゴスロリ姿の美少女の姿
「だ、誰!?」
女好きを公言するイルムは見たことも無い美少女の姿に動揺しそう叫ぶ。
「え?」
ゲシュペンストのパイロットが困惑する中。イルムは流れるような口調で問いかけた。
「……お嬢さん、前にどこかでお会いしましたっけ?」
「……い、いつも会ってる」
ゴスロリ服の少女はイルムのそのトーンに動揺しながらもそう返事を返す。
「うーむ……美人の顔は忘れないようにしているんだがな……名前は?」
「ラトゥー二・スゥボータ」
「な、何だってぇーッ!?」
イルムがそう絶叫する。敵が攻めて来る中、棒立ちするヒュッケバイン009にリオンの放ったミサイルが迫る。
「おい、今はそんなことをしてる場合じゃないんじゃないか?」
ゲッター3が腕を伸ばしミサイルを握り潰し、イルムを庇う。更に降下してきたリオン目掛けてミサイルを放ち、リオンの接近を防ぐ。
「す、すまん」
イルムも武蔵を疑っていた1人だが、こうして庇われてしまえば素直に礼を言うしかない。ゲッター3は腕を動かしキャタピラで森林を薙ぎ払いながら前に進む。
「リオンとか言う奴は引き受けた、戦闘機は頼むぜぇッ!!!」
砂煙を上げて走り出すゲッター3。その鈍重な外見からは想像できない俊敏な動き、それは完全にリオンのパイロットの虚を突いていた。まるで蛇のような動きで伸びた腕はリオンの足を掴み、凄まじい力で自身へと引き寄せる。リオンはブースターを噴かして逃れようとしているが、ゲッター3はそんな事はお構いなしでリオンを空中から地面へと引き摺り下ろす。
「死にたくなかったら脱出しなぁッ!!!」
腕を大きく振り上げるとそう叫びながらリオンを海面に叩きつける。伊豆基地での暴れっぷりを見ていたのか叩きつけられる前にリオンのパイロットは脱出装置を起動させ、飛び出していく。武蔵はベアー号のコックピットで満足そうに頷き、両腕を自在に伸ばす、その姿はまるで準備運動をしているかのような姿だった。
「リュウセイ! ビルトラプターを変形させてシュヴェールトを頼む! ラトゥー二ちゃんは俺と一緒に武蔵の支援だ!」
イルムは武蔵の思惑を理解して即座にそう指示を飛ばす。DCにとっても武蔵とゲッターロボの存在は脅威であり、何時機体を掴まれ引き摺り下ろされるかと警戒し、攻め込みたいが思うように攻め込む事が出来ない。それはリオンの最大の武器である、機動力と飛行能力を最大限に生かす事が出来ないと言う事だ。そしてゲッター3はその巨体と伸縮自在の腕を駆使し、リオンの動きを阻害する。その動きを見れば馬鹿でも判る、武蔵は先陣を切る振りをして支援をしている事に、ならばその隙を突かない理由は無い。
「そうそう好きにはさせないぜッ!!!」
ゲッター3の腕を避けたばかりのリオンにヒュッケバイン009の構えたライフルの弾が放たれる。放たれた銃弾はリオンの胴体を貫き爆発させる。
「ターゲットロック……そこッ!」
「舐めるなッ!!!」
ラトゥー二の駆るゲシュペンストが放ったメガビームライフルはリオンを捉える事は無かった。だがそれは彼女にとっては計算の範囲の事だった。
「おらあッ!!!」
「う、うわあああああッ!?」
避けた先に伸びてきたゲッターアームがリオンの脚部を掴んで、地面に引き摺り下ろし突き出された右拳がリオンの頭部を殴り飛ばす。ゲッターロボ、武蔵にも確かに疑惑はある。だがこうして肩を並べて戦うことを考えればこの上ない味方となる。
「ゲッターミサイルッ!!!」
武蔵は冷静に戦況を見極め、1人でシュヴェールトと戦っているリュウセイの支援も忘れない
「そこだ!」
ゲッター3の巨大なミサイルを回避すれば、ビルドラプターの射撃が襲う。特機であるゲッター3を主軸にした戦闘は数の不利を覆し始めていた……
「すげえ、これがゲッターロボか」
伊豆基地では出撃する事が出来ず、見ていただけのリュウセイは戦闘中ではあるが、興奮を隠し切れなかった。アニメや漫画の中から飛び出て来たかのようなゲッターロボ。無骨で、決してスマートな戦い方では無い。だがその無骨な戦いには見るものを引き寄せるパワーがあった……リュウセイは純粋に凄まじいスーパーロボットと戦えることを喜び……
「……あのロボットは異常」
ラトゥー二はリオンの放ったレールガンをゲシュペンストを後退させることでかわし、その直後に伸びてきた腕がゲシュペンストの頭部モニターの横を通っていく姿に冷や汗を流しながらゲッター3を観察していた。
(あの腕の動きは明らかにおかしい)
ブースターを全開にして逃れようとしているリオンをお構い無しに引き摺り下ろすパワーも異常だ。だがそれは特機だからと言う理由でギリギリ納得することが出来る、だがあの伸縮自在の腕……ブースターが付いているわけでも無いのに、恐ろしいスピードで伸びる。だがそれだけではなく蛇のような柔軟性もある
(あれは本当に試作型の兵器なの?)
ブリーフィングで告げられた試作兵器とそれを持ち出した民間人と説明を受けた。だが試作機、そして民間人と言うには武蔵の能力は高すぎた……元々怪しいと思っていたが、今回の戦闘で共に戦いその疑惑はますます強くなってしまう。だがそれと同時に辛い過去を持つラトゥー二はもしかして自分の同類なのではと言う考えが脳裏に浮かぶのだった。
「まじであれ何処で作られた特機だ」
見た目は出来の悪いブリキ人形と言っても良いのに、変形し、合体する。そしてそれでいて凄まじい攻撃力と防御力を有している。こんな特機を民間人が作れるか?100歩譲って作れるとしよう、だがそうなると更なる問題が浮上する。それはあれだけの特機を作る予算は何処で用意されたのかと言う疑問。そしてこれだけの特機を作れる科学者が無名と言うのがイルムには信じられなかった。あまり好きな親では無いが、自らの父にしてテスラ研の所長である「ジョナサン・カザハラ」も夢見て挫折した、可変式の特機……それが目の前で暴れている姿は信じられないと言う気持ちに繋がり、更に武蔵が何者かと言う疑惑へと繋がる。
(イングラム少佐も相変わらず何を考えているのかわからねえし)
少し探れば粗が出る。それを堂々と説明したイングラム、そこに何か目的があるのか?自分達に探らせる事が目的なのか?
「チッ、少しは真面目にやるか」
スパイの疑惑も捨てきれない、だがDCとも思えない。祖父の遺産を持ち出し、DCと戦おうとした民間人……それらを到底受け入れることの出来ないイルムは舌打ちと共にゲッターに視線を向ける。戦いの中で武蔵の真意を探ろうとしていた。
そして三者三様の思惑が入り混じる中。ハガネのブリッジから警報が鳴り響くのだった……
第9話 復讐鬼 その2へ続く
今回は導入回なのでやや短めの話となりました。それと話を切るのに丁度良いタイミングでしたしね、次回はテンペストとの戦闘を頑張って書いてみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い