進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第18話 夢の残滓 その2

第18話 夢の残滓 その2

 

アイドネウス島から半径20キロは現在連邦軍によって封鎖状態にあった。その理由は勿論ゲッターロボの捜索および、メテオ3の捜索に加え、宇宙で破壊された「レビ・トーラー」が騎乗した大型機動兵器ホワイトデスクロスと命名された「ジュデッカ」の残骸の落下予測区域だったからだ。

 

「ふう、結構ハードね……」

 

R-3パワードから降りたアヤがヘルメットを外して汗を拭う。強い念動力を持つアヤは自身の父ケンゾウから協力要請を受け、本人の強い希望もあり現在は伊豆基地からの出向と言う事でアイドネウス島に仮設された研究基地で落下物の捜索を行っていた。

 

「疲れたな。すまないな、アヤ。お前に負担を掛ける」

 

「お父様……いえ、私は大丈夫です」

 

「アヤ……すまないな。後は休んでくれ、次の捜索ポイントが決まり次第連絡する」

 

「判りました」

 

敬礼し女性寮に向かうアヤの姿をケンゾウは黙って見つめる事しか出来ない。自分が行った非道な研究、そしてその結果が自分の娘を酷く苦しめる事になった。確かに研究者である、だが自分の家族を不幸にした事……オペレーションSRWで己の罪を突きつけられた事によりケンゾウにかつての苛烈さと念動力を解明したいという欲求は薄れ、まだ差ほど歳ではないのに老人のように枯れていた。

 

「ケンゾウ博士。アヤ大尉のおかげで捜索ポイントが大分減りました。残るポイントは……4箇所です」

 

「そうか……ゲッターロボが沈没しているかもしれない海域を中心に捜索しよう」

 

「はい、でも私達は出来れば見つからないで欲しいと思っています」

 

「……生きていて欲しい、そう思っているのだな?」

 

「はい、私は北京方面の支部でして、私達はゲッターロボに、武蔵に救われましたから」

 

にっこりと笑う若い軍人の姿にケンゾウは言葉を失った。最後の戦いの記録は公表されていない、だからこそ生きていると信じている者は多い。

 

(酷な事をする)

 

あの映像を見たケンゾウは理解している。武蔵、そしてイングラムは共に戦死していると、あそこまで機体が潰れ、爆発炎上すれば生存率などある訳が無い。

 

「見つかると良いな」

 

「はいッ!」

 

弾ける笑顔の若い軍人に対してケンゾウは苦虫を噛み潰したような顔で頷く事しか出来ないのだった。

 

『お父様。ポイント4-Q-5に反応はありません』

 

「そうか、ではそのまま北上してポイント4-Q-7の方向に向かってくれるか」

 

残されるポイントが少なくなっていくことを感じながら、ケンゾウはアヤに指示を出す。そのときだった……。

 

『そ、そんな……』

 

「アヤ? アヤどうした!?」

 

突如声を震えさせたアヤの声に気付き、ケンゾウが声を掛けるがアヤからの返事は無い。

 

『げ、げったー……ゲッターロボが……』

 

「ゲッターロボだと!? R-3のモニターをこっちに回せ!」

 

「りょ、了解!」

 

ケンゾウの指示に従い研究員がコンソールを操作する。そしてモニターに映し出された物を見てケンゾウ達は息を呑んだ。

 

「げ、ゲッターロボ……」

 

そこには翡翠の輝きで作られたゲッター1がマントを翻し、空を飛んで行く姿が映し出されていた。

 

「お、追え! アヤッ! 見失うなッ!!」

 

『りょ、了解ッ!!』

 

R-3パワードが全速でゲッターロボを追うが、ゲッターロボに追いつく事が出来ない。その姿を見たケンゾウは座っていた椅子から立ち上がる。

 

「ケンゾウ博士どこへッ!」

 

「サルベージ船だ! 絶対何かがあるッ! ワシはそれを見なければならないッ!!」

 

港に停泊しているサルベージ船にケンゾウが走る中。アヤは空中でゲッターロボと対峙していた。

 

「武蔵……少佐なの?」

 

『……』

 

ゲッターロボからは何の反応も無い、だがその手が開き海を指差す。

 

「そこに何が……い、いないッ!?」

 

その指先を見る為に僅かにアヤが視線を逸らした。その時間は僅かに数秒、だがその数秒でゲッターロボの姿は消えていた。

 

「……まさかここに沈んでいるの?」

 

どうか違って欲しい、武蔵もイングラムも死んでいて欲しくない、そう願うアヤは震える手でゲッターロボが指差した海域にポイントマーカーを打ち込み、サルベージ船が来るのを待った。

 

「これは……ホワイトデスクロスのッ!?」

 

「よ、良かった……ゲッターロボじゃなかった……」

 

サルベージ船によって引き上げられたのはゲッターロボではなかった、だがゲッターロボと同様に連邦が捜し求めているホワイトデスクロスの胸部エリアの残骸なのだった……。

 

 

 

 

月のマオ社のPT開発区画にリョウトの姿はあった。現在月のマオ社では次期量産機の再トライアルに向けて新型の機体の開発を行っていた。そしてオペレーションSRWの時はパイロットとして活躍したリョウトは本人の希望もあり、マオ社の技術者としての進路を歩み始めようとしていた。

 

「……駄目だ。今のままではトライアウトに敗れる」

 

「カーク博士、そんなに気を落とさないでください」

 

「あ、ああ。大丈夫だ……ゲシュペンスト……MK-Ⅲにはこのままでは勝てない」

 

1度はトライアウトで破った相手だが、今では勝てないとカークは考えていた。あの当時はゲシュペンストを旧式と考える上層部や政治家が多いと言うのもカークへの追い風になっていた。だがオペレーションSRWでフライトユニット装備のゲシュペンストとゲシュペンスト・リバイブ、ゲシュペンスト・シグと言う規格外の期待の活躍によって上層部は意見を変えたのだ。

 

「想定していたスペックを5~10%あげなければ……」

 

「でもそれだとフレームが耐えれないですね」

 

「ああ……トライアウトまで時間がない。ここから組み直すというのも難しい……」

 

「でもあくまでリバイブとシグだけでしょう。あれと比べなくても良いのでは?」

 

「……判っている。判ってはいるんだ、あれがワンオフと言うことは……だが私は見てしまった。ならばそれに挑戦せずに諦めると言うこ

とは出来ないのだ……いや、すまないな、少し休む」

 

「はい、後は僕に任せてください」

 

ふらふらと研究室を出て行くカーク。4徹目のカークの目の下の隈を見ればここで1度休むと言い出してくれて良かったとリョウトは思っていた。

 

「リョウト君、今カーク博士が凄い顔で出てきたけど……」

 

「リオ、うん。リバイブとシグに勝てないって随分と思いつめてるみたい」

 

「そうなんだ。それより、はい。夜食」

 

「ありがとうリオ」

 

リオが持ってきてくれた夜食を食べながらリョウトはコンソールの操作を続ける。

 

「トライアウトの機体がシグやリバイブレベルなの?」

 

「う、うーん、流石にそこまでじゃないと思うよ。あれはラドラさんがいて初めて出来るものだからね」

 

ラドラが色々とノウハウを渡したようだが、それでも人間が再現するには限界がある。限りなくシグやリバイブに近いスペックが出たとしても、それでもそれを量産機レベルに落とし込むのは不可能だ。

 

「マグマ原子炉は使えないのよね?」

 

「うん。あれは国連が保持するらしいからね」

 

メカザウルスから摘出した炉心は全部で8つ。そのうちの5つが国連が保持すると発表した、だから今は伊豆基地に1つ、テスラ研に1、そしてここ、月のマオ社に1つ。そして公表されていないがクロガネに2つだけだ。

 

「あれを使えればよかったのに」

 

「駄目だよ、リオ。あれは特注のフレームじゃないと耐えれないよ」

 

新西暦の技術ではあれに耐えれるフレームは作れないとリョウトは笑う。

 

「ご馳走様でした。美味しかったよ」

 

「そう、それなら良かったわ……所でリュウセイ君から気になるメールが来たんだ」

 

神妙な顔をしているリオを見てリョウトが心配そうに尋ねる。

 

「武蔵君を見たって……消えたらしいけど」

 

「……それは」

 

「判ってる。判ってるわよ? 見間違いだと思うの……だけど気になるじゃない」

 

「うん。それは僕も同じだけど……」

 

リョウトもリオも武蔵の死を信じていない。だから武蔵を見たと聞いてもやはり信じたくないと言う気持ちが強い。

 

「……武蔵さんは人を恨むような人じゃない。だからきっと違うと……リ、リオッ!? きゅ、急にどうしたの……リオ?」

 

顔を青褪めさせたリオが抱きついてきてリョウトは赤面するが、その身体が震えているのを見てただ事ではない事を感じていた。

 

「……りょ、リョウト君……あ、あれ……」

 

「……そんな……武蔵さんッ!?」

 

マオ社の通路を歩いていく武蔵を見て、リョウトは慌てて立ち上がる。

 

「リオはここにいて、もしかしたら武蔵さんじゃないかもしれない」

 

「りょ、リョウト君……」

 

エアロゲイターの残兵がなにかしているのかもしれないと思い、リョウトはリオに残るように告げて後を追って走り出す。

 

「武蔵さん! 武蔵さんなんですか!!」

 

『……』

 

呼びかけて走っているが武蔵は返事を返さず、足音を立てず滑るように通路を進んでいく。

 

(おかしい、これはおかしいぞ)

 

これだけ走っているのに誰とも擦れ違わないことに違和感を覚えながらリョウトは武蔵の後を追い続ける。

 

(格納庫……)

 

メンテが行われているR-1のハンガーを通り、そして更にその奥月面で回収された崩壊したゲッターロボの残骸が眠る格納庫の中に武蔵の姿は消える。

 

「……武蔵さんの姿をして何のつもりですか」

 

武蔵では無いと考えたリョウトが護身用のハンドガンの銃口を武蔵に向ける。

 

『気をつけろ、悪意が目覚めようとしている』

 

「……武蔵さん?」

 

『気をつけるんだ。急げ、戦う準備を整えるんだ。時間はもう残されていない』

 

「武蔵さん! 武蔵さんなんですね! 今どこにいるんですか!?」

 

『また会える。いつかな……だから頼んだぜ、リョウト』

 

「武蔵さんッ!!……き、消えた……?」

 

武蔵の姿は閃光と共に消え、武蔵が立っていたコンソールはいつの間にか起動していた。

 

「これは……!?」

 

そこに残されていたのは何かの設計図、そしてゲッター合金の加工方法。

 

「何が起きるって……いや、でもこれはきっと……」

 

地球の事を思っている武蔵の警告なのだと思い。リョウトはそのデータをヒュッケバイン・MK-Ⅲ開発室のPCへと送信する為の操作を始めるのだった……。

 

 

 

 

一方そのころテスラ研でもマオ社と同じ現象が起きていた。

 

「武蔵君!」

 

「武蔵ッ!!」

 

クスハとブリットがその姿を見つけ追いかけて来たが、やはり追いつくことは出来ず。そしてリョウト同様警告を口にして、その姿を消した。

 

「……武蔵君。私達に警告を……」

 

「ああ。絶対に何か起きるんだ」

 

テスラ研のPCにも残されていた研究データ。それはブリットとクスハ同様武蔵を見つけて追いかけて来ていたコウキが確認する事になった。

 

「ブリット、クスハ。悪いが、ジョナサン博士とギリアム少佐達を呼んできてくれ。この情報を元にゲシュペンスト・MK-Ⅲの再改造を行う必要があるかもしれない」

 

コウキの言葉に頷き、ブリットとクスハはプロトゲッターの残骸が眠る格納庫から走り出す。

 

「……武蔵、いやゲッター線の言葉か……きな臭くなってきたな」

 

コウキの目付きが変わった。鋭く、冷酷な人とは思えない目をしたコウキは操作を続ける。

 

「コウキ! 武蔵君が現れたと聞いたぞ!?」

 

「はい、これがPCに残されていました」

 

「……これは」

 

「ゲシュペンスト」

 

「はい、ゲシュペンストの図面です。武蔵が知る由も無いものです」

 

多少行き詰っている事を感じていた部分を全て解決させる情報にジョナサン達は顔を歪める。

 

「どういうことだ?」

 

「恐らくですが……ゲッター線なのではないでしょうか?」

 

「進化を促すエネルギーらしいが、こんな事まで引き起こすのか?」

 

「判りません、ですが、現実にここにデータはあります」

 

ゲッター線が武蔵の姿をして警告に来た。そんなオカルト染みた考えがこの場にいた全員の脳裏に浮かんだ。

 

「……それは使わせてもらおう。私達には時間が無い」

 

「はい、フィリオ達プロジェクトTDのメンバーが来るまで時間もありませんしね」

 

プロジェクトTDは政府からの支援も受けている計画だ。フィリオ達が来ればゲシュペンストだけに集中することは出来ない、この得た情報を元に行動に出る必要がある。勿論プロジェクトTDだけではなく、極秘に動いている計画もあるが、それは表沙汰にすることが出来ないからこそ、今の内に隠蔽する準備に出ることにしたのだ。

 

「武蔵は何と言っていた?」

 

「悪意が目覚めると……そして気をつけろと」

 

「悪意……悪意か……」

 

ギリアムが視線を向けるとコウキは小さく頷いた。ギリアムとコウキだけが判る何かがそこにはあった。

 

「カイ少佐、申し訳無いのですが1度ラングレーに戻り、マリオン達を連れてきては貰えませんか?」

 

「ああ、引き受けよう。ギリアム、お前はテスラ研に残ってくれ」

 

この情報はマリオンと共有する必要があると考えジョナサンがカイにマリオン達をつれてくるように頼む。

 

「コウキ、私は製造ラインを1度止めてくる。情報の精査をギリアム少佐と共に頼んだぞ!」

 

「はい、判りました」

 

ジョナサンの言葉に頷き、カイとジョナサンを見送ったコウキとギリアムは小声で話を始める。

 

「ブライの事か」

 

「恐らくは……気をつけろ、何か必ず裏がある」

 

「ああ。判っている……コウキこそな」

 

「俺はもう鬼じゃない、ブライに従う義理も道理も無い」

 

「違うそうじゃない、戦う剣を用意しておけ」

 

「……そうだな。そうさせてもらおう」

 

武蔵の、ゲッター線の警告が無くともコウキ達は既に備えを始めていた。ブライと言う名前、そして顔を知るからこそコウキとギリアムには確信があった。

 

「あれは間違いない、ブライ大帝だ」

 

「間違いない、エアロゲイターとの戦いとは比べ物にならないほどの鮮血が流れる。俺達がそれを止めなければならない」

 

「ああ、その為に協力してくれ、コウキ……いや、鉄甲鬼」

 

「……判っている。俺には俺で守りたい物があるからな……」

 

フラスコの世界ではまだL5戦役の傷跡も癒えぬ内に大きな戦いの火種が生まれようとしていたのだった……。

 

第19話 夢の残滓 その3へ続く

 

 




次回は前半OG、後半は世界最後の日でお送りしようと思います。前半は簡単に言うとトライアルの話ですね、これもやっておこうと思いまして、折角のオリジナル要素ですしね。そして世界最後の日編も後もう少しで完結予定。どんな結末になるのかを楽しみにしていてください。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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