進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第20話 早乙女の遺産 その1

第20話 早乙女の遺産 その1

 

武蔵にとって早乙女研究所は庭のような物であった。だがそれは本来の早乙女研究所の話であり、この歪められた早乙女研究所の捜索をしている武蔵には自分の知っている早乙女研究所と言う思い込みが重く圧し掛かっていた。

 

「……しいな、ここは警備の待機室だった筈なんだけどな……」

 

格納庫を出てすぐ武蔵が目指したのは、警備兵の待機室だった。恐竜帝国、そして百鬼帝国と言う脅威と戦ったのだから鬼だけではなく、インベーダーにも通用するであろう装備を求めての事だったが、警備兵の待機室だった場所は書類が散乱する研究室になっていた。

 

「……やっぱりあの時みたいに中身が色々と変わってるのかもしれないな」

 

気配を殺しながら、研究室を捜索し鬼もインベーダーもいないことを確認し、深く溜め息を吐いてPCの前に腰掛ける。

 

「頼むぜ」

 

キーボードを操作し、ずっと所持していた自分のIDカードを機械に読み込ませる。音を立ててロックが解除され、PCの画面が切り替わる。

 

「えっと、確か……」

 

うろ覚えなのでたどたどしい手付きでキーボードを操作し、早乙女研究所の通路の監視カメラの映像を映し出す。

 

『うわあああーーーッ! 来るな、来るなあ!! ぎゃああッ!』

 

『ちくしょう! ここはどこ……あ『シャアアッ!!』

 

鬼達が銃を乱射し、インベーダーを攻撃するが、殆ど効果は見られず鬼達が次々にインベーダーに食われるか、同化していく。

 

「ひでえもんだな」

 

だが武蔵はそれに心を乱すことは無い、武蔵が監視カメラの映像を確認しているのは敵の確認の為であり、そして百鬼帝国の悪行も聞いているので武蔵は鬼を助けるという選択肢はなかった。

 

「ロックが掛かってるのは、ここと……ここ……このコードは……オイラのカードキーじゃ駄目だな、参ったな」

 

外に出るための通路に向かうには研究主任クラスカードキーが必要だった。武蔵の所持しているカードキーで大半は開けることが出来るが、外に向かう為の通路には繋がっていない事が判明したのだ。

 

「捜索するにも、やっぱり武装がないと辛いな……」

 

監視カメラの映像、そしてPCに記録されている図面を呼び出しながらどういう進路で進むかを考えている武蔵だった。だが、1つの監視カメラが写している映像を見てその場に静止した。

 

「……これは……」

 

それは開発区画の更に地下、武蔵が特攻する前に無理やり侵入した区画にあるハンガーに固定されたゲッターロボの姿だった。

 

「真ゲッター……いや、これはドラゴンにも似てるな……新型か?」

 

早乙女博士がインベーダーに食われる前に作っていたゲッターロボかもしれない、このまま外に脱出しても、山奥だったりすればタワーに合流する手立ても無い。武蔵は少しそのゲッターを見つめてからカードキーを機械から取り出した。

 

「行くしかねえな」

 

このまま脱出しても、逃げ道がなければ結局ここに戻るしかない。疲弊した状況で戻れば、武蔵であっても死を避ける事は出来ない。武蔵はリスクを承知で地下の格納庫に向かうことを決めるのだった……。

 

 

 

 

 

監視カメラに映っていた通り、地下へは鬼もインベーダーの数も段違いに多かった。それらと一々戦えば武蔵と言えど自殺行為だ、だからこそ武蔵は音が反響する研究所の通路を利用して進んでいた。

 

「足音がしたぞッ!」

 

「またあの化け物かッ!?」

 

響く事を考慮し、足音を業と立てる。物を投げてインベーダーを誘導するという手を使いながら、ゆっくりとだが、確実に地下へと向かっていた。

 

「うわあああッ!!」

 

「ひいいいいッ!!!」

 

「ギシャアアアアッ!!!」

 

肉を咀嚼する不気味な音を背中に背負いながら、4人の鬼がたむろしていた十字路を駆け抜ける。そしてすぐさま通路の影に身を隠し、辺りを窺う。

 

「……B-2か……B-4区画は遠いな」

 

B-3へ続く階段は既に確認しているが、崩れてきた天井で塞がれていて進むことが出来ないでいた。だからこそ、武蔵はリスクを承知でB-2区画の捜索を行っていた。

 

「……後3発か……心元ねえな」

 

ショットガンはもう1発使ってしまい、1発しか残っていない。それにここまで来るのにハンドガンしか使っていなかったが、18発あった弾はもうたったの3発しか残っていない。武装の少なさに溜め息を吐き、振り返ると同時にハンドガンの引き金を引いた。

 

「あがあ……」

 

「ちっ、2発になっちまった」

 

斧を振りかぶっていた鬼の顔面を打ち抜いた武蔵は蹴りつけ、鬼が死んでいるのを確認してからその手が握っていた斧を奪う。

 

「こいつはあれだな、緊急用の奴か」

 

格納庫や通路に保管されている緊急時の武装だ。鬼も訳の判らない場所に放り出され、必死なのは判るが襲ってくる相手を説得する意味など無く、武蔵は躊躇うこと無く鬼の命を刈り取っていた。

 

「ちっ、やべえ」

 

今の銃声を聞いたのかインベーダーの鳴き声が通路に響き始める。武蔵は斧を担いで、慌てて来た道を引き返す。

 

「人間!」

 

「死ねえッ!」

 

「死ぬのは手前らだ、この馬鹿共ッ!!」

 

鬼が放った銃弾を身体に掠めさせながら鬼の間を駆け抜け、助走をつけて足から滑り込む――スライディングで瓦礫の隙間を通り抜け、即座に瓦礫の間に手榴弾を押し込む。その直後に爆発し、通路が完全に塞がる。

 

「ひ! 化け物ッ!」

 

「くそ、くそおおおッ!!!」

 

銃声とインベーダーの鳴き声を聞きながら武蔵は薄暗い通路を歩き始める。

 

「くそ、手榴弾も切っちまったな……ますます不味いぜ」

 

弾薬も通路を進む間に確保した武装も節約しながら進んでいたが、それでもやはり敵に囲まれている状況では使わずにはいられない。

 

「こっちは……何の区画だ……あーもう、訳わかんねえッ!」

 

なまじ早乙女研究所の内部を知っているだけに、ここまで内部がごちゃごちゃになっていることに武蔵は混乱していたが、一箇所に留まっているのは危険と歩き出す。

 

「……少しは休めると良いけど」

 

その通路は一本道でほかに進む道がなかった。しかしその変わりインベーダーや鬼の姿も無く、通路の先に見えた扉の中に身を隠すことにした。

 

「……ここは……はは。なんだなんだ……神様って案外いるんじゃねえのか?」

 

思わずそう笑ってしまっていた。その部屋は食堂だった……何よりも心休まるその場所は通路と異なり、清廉な気配に満ちていた。

 

「……水は出るのか……ありがてえ」

 

蛇口を捻り濁っていない透き通った水が出るのを確認して、タオルを濡らし汗を拭い。そのままグラスに注いで水を飲む、火照った身体に冷たい水が実に心地いい。

 

「何か食えるといいけど……そうだッ! 確か確か」

 

戸棚を開けると缶詰と乾パンが記憶通り収まっていた。それを嬉々として取り出し、缶切りがないのでサバイバルナイフで抉じ開けて牛肉の大和煮を頬張る。

 

「うっめええ、本当は米だともっと嬉しいんだけどな」

 

乾パンを頬張り、水を飲む。少なくとも6時間は水分補給も食事もしていなかった武蔵にとって、食堂に辿り着けたのは幸運だった。

 

「……こいつは……なんでこんな所に」

 

早乙女研究所の前で撮った写真が壁に貼られているのに気付き、裏面を確認する。日付が記されているが、その独特の筆跡に武蔵に覚えがあった。

 

「ミチルさん……そっか、そうだよな」

 

食堂はミチルがよくいた場所。そこにある写真なんて、ミチルの所持品以外無い。そんな当たり前の事に気付けないほどに疲弊していた事に苦笑し、服の中に写真を入れる。

 

「ミチルさん……オイラを守ってください」

 

お守り変わりに集合写真を入れて、壁際を手探りで探す。そして僅かな凹みを見つけ、そこに指を掛けて外装を開いた。

 

「……緊急時の出撃口……」

 

ここから飛び込めばB-3を飛ばしてBー4区画に辿り着ける筈。だが区画がこうも入り乱れていては望んだ場所に辿り着けないかもしれない……。

 

「自分の勘を信じるしかねえわなッ!」

 

ここに来たのは何かの導きのように思えた武蔵はそう叫ぶと、緊急出撃口に身体を滑り込ませた。

 

「おおおおーーッ! おあああああーーッ!?」

 

回転、上下左右から掛かる重力に悲鳴を上げ永遠とも思える暗い通路を抜けた先は……。

 

「あ、死んだ……へぐうっ!?」

 

敷島博士のマッドな発明に満ちた研究室であり、巨大なモーターの上に落下した武蔵は奇妙な呻き声と共に意識を失うのだった……。

 

 

 

 

B-4区画の中に凄まじい銃声が木霊する。勿論それは気絶から復活した武蔵が銃を乱射する音だ。

 

「おらぁッ!!」

 

「ギシャア!?」

 

インベーダーの頭を吹き飛ばし、再生しようとしたインベーダーに肩から下げた余りにも近未来的なデザインの銃の引き金を引く。

 

「あがあたああ……」

 

冷気を伴う光線でインベーダーが凍りついた隙に通路を潜り抜け、輩出されている巨大ブレイカーに体当たりするようにぶつかる武蔵。

 

「ぬぐぐうううッ!!!」

 

質量の差で押し戻されるが踏ん張って、歯を食いしばりブレイカーを押し込む。

 

『バッテリー復旧率75%。残り1つです』

 

「しゃオラァ!!!」

 

監視カメラで見たゲッターロボが収納されている格納庫の前まで来たが、肝心の格納庫の扉のブレイカーが落ちていた上に、巨大なインベーダーが巣食っていた事もあり、通路のあちこちから伸びてくる触手を斧で切り払い、敷島博士特注の規格外のマグナムを打ち込み、冷凍銃でインベーダーを凍らせ、狭い格納庫の中を武蔵は縦横無尽に駆け回っていた。

 

「シャアアアーーッ!!」

 

「くそっ! さすがにあいつはどうしようも……うおったあッ!?」

 

巨大インベーダーの噛み付きに足場を破壊され、向かっていた最後のブレイカーから引き離されてしまう。

 

「なろお、諦めるかッ!!」

 

走りながらマグナムを撃ち、格納庫内の簡易エレベーターへと走る武蔵。

 

「ああああ……」

 

「うああああ……」

 

「邪魔だぁッ!!!」

 

インベーダーに寄生された鬼の首を斧で断ち切り、インベーダーが姿を現すと同時に腹を蹴りつけ距離を取らせ、冷凍銃で凍らせる。

 

「くそ、エネルギー切れかッ!」

 

エネルギーが切れた冷凍銃を投げ捨てエレベーターで上の階へと移動し、最後のブレイカーを押し込む。

 

『バッテリー復旧100%。格納庫を開放します』

 

音を立てて、格納庫がゆっくりと開いていく、だが格納庫に巣食っているインベーダーがその先を見つめているの気付いた武蔵はエレベーターの下を見つめる。

 

「……駄目だなあ、こりゃあ」

 

鬼に寄生されたインベーダーが集まっていて、あれを蹴散らして進んでいては格納庫が開放される前に辿り着けない。そしてこのままではあの巨大インベーダーにゲッターを奪われてしまう……。

 

「しゃっ! 覚悟を決めるしかねえなッ!」

 

ショットガンを投げ捨て、斧を握り締めて助走をつける。

 

「ここから飛んで、あそこの手すりに斧を引っ掛けて……反対側に飛ぶ……はは、失敗したら死ぬな」

 

だがそうするしかないと覚悟を決めた武蔵は雄叫びを上げて走り出し、安全柵の無い部分から思いっきりジャンプした。

 

「うおおおおおおーーーーッ!!!」

 

落ちながら斧を振るい、その刃を崩壊した手すりに引っ掛ける。

 

「うっぐうっ!!?」

 

全体重が両手にかかり、さらには手すりが悲鳴を上げ。インベーダー達が触手を伸ばしてくる。

 

「おおおおおおおーーーーー! 武蔵様を舐めるなあッ!!!」

 

足を振り、その遠心力を生かし斧から手を離し更に宙を舞う。

 

「シャアアーーー!!」

 

「アアアアーッ!!!」

 

「うおおおおおおーーーッ!!!」

 

落ちながら銃をぶっ放し、自分を飲み込もうとするインベーダーを吹き飛ばし、そのまま武蔵は通路に叩きつけられる様に着地した。

 

「うっぐう……げほっ!!」

 

その衝撃で口から吐血するが、武蔵は口元を拭いほんの僅かに開放された格納庫の中に身体を滑り込ませた。

 

「こいつかッ!!」

 

目の前にあるゲッターロボはゲッターロボGを真ゲッターに改造したような、真ゲッターとドラゴンを混ぜたような姿をしていた。

 

「考えてる暇はねえッ!!」

 

格納庫の扉が凹んでいるのを見て、武蔵は慌てて搭乗用のリフトに乗り込み、ベアー号に当たるポセイドン号に乗り込んだ。

 

『これを見つけるのが、竜馬、隼人、弁慶の誰かである事を祈る』

 

「さ、早乙女博士ッ!?」

 

乗り込むと同時に再生された映像記録。そこにはまだ優しい光をその目に宿している早乙女博士の姿があった。

 

『ワシはもうじき、インベーダーに取り込まれ自我を失うだろう。そうなれば、ワシは人類の敵となる。だが……ワシはそんなことは望んでいない。故にここに試作機のゲッターロボを隠す、ワシを……インベーダーを倒すこの力をここへと隠す』

 

その言葉と共にコックピットに光が灯り、音を立ててゲッターロボが起動する。

 

『ワシの意思を継ぐ者がこの力を手にすることを心から祈る。この機体は真ドラゴンのプロトタイプ……その名も……ゲッタードラゴンセカンドッ!』

 

「は、ははッ! なんだなんだ、そんな名前……早乙女博士らしくないぜ」

 

まるでリュウセイかビアン博士みたいだぜと武蔵は全身が痛いのに、それでも昔を思い出したように楽しそうに笑い出した。

 

『本来ならば真ゲッタードラゴンと名付けたかったが、このゲッターはそこまでの出力を持てなかった上に炉心の出力が常に不安定であり、故に真ゲッタードラゴンではなく、ゲッターD2と名付けた、それでも真ゲッターと同等の力を有しているだろう』

 

音を立てて格納庫が吹き飛ぶのとゲッタードラゴン2が起動するのは殆ど同じだった。

 

『どうか、わしを止めてくれ。そして地球を護れ、それこそがワシの……最後の願いだ、そしてどうかワシを許さないでくれ、この罪人を、許すな。最後まで憎み続けてくれ……そうでなけばワシは……ワシは……達人に、ミチルに……そして元気に合わす顔が無い、どうか……ワシを許さないでくれ……頼む』

 

涙を流しながら許すなと言う早乙女博士、その言葉を最後に映像記録は停止した。武蔵は操縦桿を握り締め、ペダルの上に足を乗せる。

 

「大丈夫さ、大丈夫だよ博士。あんたの思いは、願いは……オイラが、いや、皆が継ぐよ。早乙女博士は何も悪くない、だから……止めてやるよ。オイラ達で……止めるよ……早乙女博士……」

 

「キシャアアアアッ!!」

 

雄叫びを上げてインベーダーが格納庫に侵入するのと、起動したドラゴン2の頭部からゲッタービームが放たれるのは殆ど同じタイミングであり、爆発炎上を繰り返す早乙女研究所から真紅のゲッターロボが飛び立つのはそれから数秒後の事なのだった……。

 

 

 

第21話 早乙女の遺産 その2へ続く

 

 

 




武蔵の乗り換えイベント、ゲッターロボアークで登場したゲッターD2を半オリジナルとして登場させます。OG世界に帰還するときはこのドラゴン2で行く予定ですので、あしからず。勿論オリジナルでライガー2、ポセイドン2も登場させる予定です。次回は世界最後の謀略!!摩天楼の決闘!の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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