進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第10話 疑惑

 

第10話 疑惑

 

南鳥島でのDC、そしてメカザウルスと思わしき攻撃を受けその海域を離脱したハガネは、ウェーク島へと進路を取っていた。

 

「はい、武蔵君。これでおしまいです」

 

「いやあ、すまないなあ。ありがとう、クスハ」

 

メカザウルスと思わしき攻撃の直撃を受けたと言う事で医務室で治療を受けていた武蔵。自分の手当てをしてくれたクスハに頭をかきながらお礼を口にする

 

「駄目ですよ。怪我してるときはちゃんと医務室に来てくださいね」

 

「はいはい、すんません」

 

ゲッターの防御力を過信しているわけでは無い。だが遠距離攻撃の上に防御姿勢をとっていた事もあり平気と言って食堂に向かおうとした武蔵だが、そうはいかないと拘束され医務室に緊急搬送となったのだ。大怪我をしているがアドレナリンで身体の痛みに気付いていないと思われての行動だった、ここでもメカザウルスと戦っていた武蔵と新西暦の人間との認識の差が出たと言うべきだろう。武蔵にとってすれば死んでいないのだから大丈夫と思い、新西暦の人間はあれだけの業火を人間が耐えれる訳が無いと心配したのだ。最初は煩わしいと思った武蔵だが、美少女ともいえるクスハに心配されて手当てもされれば大人しくもなると言うものだ

 

「あんまり調子が悪かったら言ってくださいね。特製ドリンクを作りますから」

 

「へー、そりゃあ楽しみだ。じゃあ今度お願いしようかな」

 

武蔵はクスハの言葉を社交辞令と受け取り、そう返事を返した。だがそれがとある悲劇を後に巻き起こす事となる事を今の武蔵は知る由も無いのだった……

 

「おお? あーっと……ジャーダさんとガーネットさんでしたっけ?」

 

医務室を出た武蔵の前に黒人の男性と赤毛の女性が待っていた。武蔵は少し唸ってから名前を思い出す事が出来てそう尋ねる

 

「ああ、武蔵だったな。礼を言いたくて待っていた」

 

「ありがとう。ラトゥーニを助けてくれて、ほら。ラトゥーニ」

 

「……そ、その……ありがとう」

 

2人の影に隠れるようにして声を掛けてくるラトゥーニ。性別も年齢も違うが、武蔵には早乙女元気の姿が脳裏を過ぎった。忙しい早乙女博士とミチルさん。何時も寂しそうにしている元気を武蔵は気に掛けていたのだから

 

「おおう。怪我は無いようだな、良かった良かった。また危なかったらゲッターを盾にしても良いからな?」

 

武蔵にはこんな少女が戦っている。その事に新西暦は自分のいた時代よりも物騒なのかと思うのと同時に、守ってやらないと思わずにはいられなかった。

 

「そんなこと言うと、俺まで盾にしちまうぜ?」

 

「ははは、大丈夫、大丈夫。丈夫で長持ちの武蔵さんとゲッターは全然平気だ」

 

武蔵の言葉にジャーダは目を丸くしてから笑い出し、その肩に手を回す

 

「良いな、お前。良い男だ」

 

「いやいや、そんな事はないっすよ」

 

短いやり取りだが意気投合したジャーダと武蔵。その気質がよく似ているからか、馴染むまでは恐ろしいほどに速かった

 

「ガーネット、ラトゥーニ。武蔵と一緒に飯にしよう」

 

「そうね。ラトゥーニも良いわよね?」

 

「……う、うん。大丈夫……」

 

良し決まりとジャーダが言いかけたその時

 

「悪いが武蔵は連れて行く、聞く事があるからな」

 

イングラムがその話の中に割り込んでくる。流石に上官が関わってくればジャーダ達も引く事しか出来ず

 

「じゃあ次の飯にな。武蔵、本当にありがとな」

 

「じゃあね」

 

ジャーダとガーネットは武蔵にそう声を掛け、ラトゥーニはぺこりと頭を下げて去って行く。武蔵は3人を見送ってからイングラムの方に向き直る、だがその全身から放たれる怒気はイングラムでさえ、思わず気圧されるような凄まじい物だった……

 

「ついていくのは良いさ、でもテンペストさんの言っていた事が本当なのか、オイラにちゃんと話して貰うぞ」

 

「……逃げはしないと言った筈だ。ついて来い」

 

そして武蔵はイングラムに連れられて、ハガネの通路を歩き出すのだった……

 

 

 

 

ウェーク島に帰還したテンペストは南鳥島で見たゲッター3の脅威を思い返していた。擬似的とは言え竜巻を作り出すその能力、伸縮自在のその両腕に強固な防御力……サイズは20M強とガーリオンやゲシュペンストと大差ないが、40m級のゲッターの力が20mに圧縮されていると考えるとそれは凄まじい脅威となると認識していた。正直、あの竜巻の事を思い出すと今でもその手足は小刻みに震えていた。

 

(……ゲッター1が空戦、ゲッター3が陸戦となると……ゲッター2にはどんな能力が……)

 

アイドネウス島で見たゲッター1は明らかに空戦型。そして南鳥島で見たゲッター3は強固な防御力と攻撃力を持つ陸戦型……残されたゲッター2は恐らく射撃をメインとする中距離戦闘型とテンペストは予測を立てる。なんにせよ、補給を済ませて再度ハガネに攻撃を仕掛けるべきと判断し司令室に向かったテンペストに通信兵が声を掛けてくる。

 

「テンペスト少佐。総司令部のアードラー副総帥から通信が入っています」

 

「……メインモニターに回せ」

 

舌打ちしてからメインモニターに映像を回すように命令する。その顔は忌々しいと言わんばかりに歪んでいた

 

「テンペスト・ホーカー少佐、さしものお前もハガネには手を焼いておるようじゃな?」

 

「……申し訳ありません」

 

馬鹿にするようなアードラーの言葉にテンペストは苦虫を噛み潰したかの表情で謝罪の言葉と共に頭を下げる。だが、その拳は難く握り締められておりアードラーへの敵意を如実にあらわしていた

 

「まあ良い、至急お前はキラーホエール23番艦でアイドネウス島に帰還せよ」

 

アードラーはそんなテンペストを見て鼻を鳴らし、即座に命令を下す

 

「総司令部に帰還? このウェーク島基地で、ハガネ迎撃任務を続行するのではないのですか?」

 

アードラーの指示に解せぬと顔を歪めるテンペスト。だがアードラーはそんなテンペストの姿を見て、再び挑発するかのように笑う

 

「いや、お前には別の命令が与えられる。それにお前が南鳥島で見たと言うゲッター3の戦闘記録データ……それを全て持ち帰ってくるのじゃ」

 

アードラーの言葉にテンペストは舌打ちしながら、顔を上げる

 

「……武蔵には説得の余地があると思いますが?」

 

「ふん、機体さえあれば構わぬわ。良いか、我が軍は今中欧地区制圧の為に戦力を再編成中じゃ、お前にはそれに伴い総司令部で指揮を取ってもらう必要がある」

 

「……ハガネは着実に包囲網を突破し、ウェーク島に接近しております。たった1隻とは言え、その戦力を侮るのは危険です。特にゲッターロボを侮ればこの島は落とされます」

 

基地を離れることを拒絶するテンペストだが、その様子を見てアードラーは更に嘲笑みを深める

 

「心配は無用じゃ、以降の任務はテンザンに引き継がせる」

 

「あの男に? パイロットとしての腕はとにかく、指揮が取れるとは思えませんが?」

 

「お前の帰還命令は総帥が直々に出された物じゃ、早急に帰還せよ。良いな?」

 

アードラーは嘲笑うかのように帰還せよともう1度命令し、通信を終る。テンペストは屈辱に身を震わせながらもビアンの命令では逆らう事が出来ないので司令室を後にしようとするが……その前に司令室の扉が開きテンザンが姿を見せる

 

「さーて、今日から俺がここの指揮官だからな。ちゃんと命令を聞けよ、モブ共がッ!」

 

入ってきていきなりの言葉に司令室にいる全員が顔を歪める。テンペストもまたその1人でテンザンを睨みつける

 

「な、なんだよ! 少佐……まだいたのかよ。早く帰還しないと不味いんじゃねえの?」

 

焦ったように言葉を続けるテンザンにテンペストは無言でテンザンへと足を向ける

 

「総帥があんたを呼んでんだろ? さっさといかなきゃ不味いんじゃないの?」

 

「言われるまでも無い」

 

ふんっと鼻を鳴らし、テンザンに背を向けて司令室を後にする。テンザンは馬鹿にするようにその背中に言葉を投げかける

 

「ま、後の事は任せてくれや、ハガネは俺が手に入れてやるからよ」

 

自分が負けるわけが無いと言う慢心。そして自分が死ぬわけが無いと言う思い込み、戦争をゲームと思っているテンザンにテンペストは怒りを露にさせる

 

「戦争をゲームと思っているお前に出来るとは思えないがな」

 

「へ、いつまでも家族の敵討ちに拘っているあんたに言われたくないぜ」

 

テンペストの逆鱗に触れたテンザンはそれに気付かず、へらへらと笑いながら言葉を続ける

 

「戦争って言うのはなぁ……明るく、派手に殺してこそさ。そうじゃなきゃ面白くねえっての」

 

「ここで死にたくなければ、今直ぐその口を閉じろ」

 

テンペストの殺気を受けてもなおテンザンはへらへらと笑いながら、テンペストへの挑発を続ける

 

「おー。怖い、怖いねえ……復讐鬼って言うのは恐ろしいねえ……それが元教導隊って言うならなおさらだ」

 

テンザンには何を言っても無駄だと判断したテンペストは司令室を今度こそ後にした。

 

「テンペスト少佐」

 

「エルザムか、悪いが俺は先にアイドネウス島へと帰還する」

 

通路で待っていたエルザムの前を通りながら、その手の中にデータディスクを握らせる

 

「……ゲッター3の戦闘データのコピーだ。見たら処分してくれ」

 

「テンペスト少佐。戦場であった武蔵君はどうでしたか?」

 

通り過ぎようとしたテンペストにエルザムはそう声を掛ける。テンペストは格納庫に向けた足を止めて

 

「敵同士になった事が残念だよ……俺の説得は失敗したからな」

 

そう笑って格納庫に足を向けるテンペストをエルザムは無言で見送り、押し付けられたディスクを手にしてその場を後にするのだった……

 

 

 

 

イングラムと共に艦長室を訪れていた武蔵はテンペストが言っていた事が真実だったのか?それをまずイングラム、そしてダイテツに尋ねた

 

「……テンペスト・ホーカー少佐が妻子を失った事件に関しては事実だ。ホープ事件と言われるコロニーの独立運動時に起きた痛ましいテロ事件だ。連邦軍の兵器「ジガンスクード」をテロリストが奪取し、その当時の連邦軍はコロニーの隔壁ごとジガンスクードを破壊することを決定し、スペースコロニーホープの住民はその全てが犠牲者となった」

 

ダイテツの口から淡々と語られる言葉に武蔵は眉を吊り上げる。その目と表情を見れば武蔵の中に激しい怒りが渦巻いているのは明らかだった。

 

「どうしてそんな道をとったんだ。他の道だってあったんじゃないのか?」

 

ダイテツを咎めるような言葉にテツヤが止めに入るが、それはダイテツ自身によって制された

 

「あの当時の連邦軍と言うのはスペースコロニーの独立を認めておらず、またテロリストに制圧されたという事実もまた揉み消したい物であった、だが決してそれが地球と連邦軍の総意では無かったと言う事は信じて欲しい」

 

ダイテツの言葉に武蔵は縛り黙り込むと、すまねえと謝罪の言葉を口にする

 

「感情的になった事は謝るよ。すまない……でも、オイラはあんまり連邦は信用できねえ。DCを……ビアンさんを、エルザムさんを止めたいから協力する。でも、それが終ったらオイラはハガネを出る」

 

「……良いだろう。元々民間人だ、私達には君を縛る権利も権限も無い」

 

利害の一致による一時的な共闘。それをダイテツは認めた、認めざるを得なかった。テンペストの言葉、そしてホープ事件の真相を知り、不信感と疑惑が生まれた武蔵を無理に戦力として取り入れたとしても、それは反発を呼び、そして元々DCに知り合いが多い以上脱走へと繋がり兼ねない。

 

「だが信じて欲しい、全ての軍人がそうではないと言う事を」

 

「……判ってるよ。ハガネの人には世話になっているし、信じたいって気持ちもある。でも……やっぱり、それだけじゃ片付けられないんだ」

 

武蔵にとってこの時代は自分の生きた時代とは全く異なる未来、連邦もDCもどちらにも言い分があり、その言い分を聞くだけではなく、見て判断する。それしか武蔵にはどちらが正しいか判断する術を持たなかった……そうなると世話をしてくれたビアンとエルザムの言い分を信じたいという気持ちはあるが、戦争を起こしている。その一点が武蔵の中で如何しても許容できず、アイドネウス島を脱走することへと繋がっている。だがハガネのクルーもまた武蔵にとって優しい人間が多く、それらが武蔵の中で迷いを生んでいた

 

「それで武蔵。DC撤退後の突然の攻撃についてだが……思い当たる節があるのか? 正直に言おう。俺達にはあの攻撃を見て困惑することしか出来なかった」

 

ゲシュペンストを飲み込むサイズの火球。そんなありえない攻撃に誰もが反応出来ない中、武蔵だけが反応出来た。その理由をテツヤが問いかける、武蔵は暫く黙り込んだ後意を決した表情で喋りだす

 

「……メカザウルスだとオイラは思いました」

 

メカザウルス……それは武蔵の話の中で出てきた恐竜帝国の使う兵器の名前だ。艦長室にいやな沈黙が満ちる

 

「……そう思った理由はあるのか?」

 

「はい、考えないようにしていたんですけど……オイラはニューヨークで何百って言うメカザウルスと戦いました。オーバーヒートさせたゲッターで戦って……全部倒したって思っていたかった。でも、オイラが生きてて、ゲッターも無事。それなら恐竜帝国も同じように、オイラとゲッターと同じく……新西暦の今この地球のどこかにいるんじゃないかって……」

 

武蔵の話は憶測だ。自分が生きているから恐竜帝国が生きているかもしれない、今の段階での証拠と言えば、火球、そして凄まじい速度で海の中へと消えた巨大な影。その2つだけしか証拠らしい物は無い

 

「可能性はゼロでは無い……ですが、こうもあやふやな情報ではリュウセイ達に伝えることも出来ないでしょう」

 

「うむ、恐竜帝国、メカザウルスと言ってもな……」

 

こんな話をすれば気がふれたと思われる可能性がある。異星人の攻撃に晒されているとは言え、巨大な恐竜の化け物と言っても、はいそうですかと言って信用出来ないのが心情だ

 

「……本当にメカザウルスが現れれば、その時に説明を求める。そうして貰えるか?」

 

「はい、オイラも……気のせいであって欲しいってそう思っていますから」

 

重苦しい空気の中、艦長室での話し合いは終わりを告げるのだった……

 

 

 

 

 

艦長室での話を終えた武蔵はその足で食堂に足を向け、大量の料理を注文しそれを机の上に広げていた

 

「あぐあぐ……んぐんぐっ!!」

 

カツ丼をかき込み、ハンバーグを口に運ぶ。凄まじい勢いで消えていく料理の数々を遠巻きに見ている人間は何人もいたが、正体不明の特機を操る青年と言う事で声を掛けてくる人間は誰もいなかった

 

「ぷはあ……ふーふー!」

 

カツ丼を食べ終えて、今度はラーメンの丼に手を伸ばし、嬉しそうに笑いながら息を吹きかけてラーメンを冷ましていた武蔵の前にトレーが置かれる

 

「よっ! 武蔵、一緒に飯にしても良いか?」

 

トレーを置いたのはリュウセイとアヤの2人で武蔵はラーメンを啜り込みながら、OKサインを作る。それを見てリュウセイとアヤも席につき夕食を口に運ぶ

 

「……まだ食うのか?」

 

「んお? んぐう、と言うかリュウセイよ。それだけで足りるのか?」

 

リュウセイとアヤが食べ終わってもまだ食べている武蔵にリュウセイがそう問いかける。リュウセイからすれば、武蔵の食べる量が異常だが、武蔵からすればリュウセイの食べる量が少ないように思えていた

 

「いや、俺腹いっぱいだぞ?」

 

「小食だなあ、イーグル号のパイロットのリョウ……ああ、流竜馬って言うんだけどな。そいつもオイラと同じくらい飯食うぞ? あとなインテリで格好付けが好きな優男もいるけどよ、そいつもめちゃくちゃ飯を食うぜ」

 

マジかよと絶句するリュウセイだったが、次の瞬間には目を輝かせる

 

「あの大雪山おろしだっけ!? あれがゲッター3の必殺技なのか!?」

 

「おうともよ、ゲッター3の最強武器さ、まぁ……あの使い方は本当の使い方じゃないんだけどな」

 

本来の大雪山おろしは相手を捕まえて、その上でゲッターアームを伸ばし回転させる事で生み出した真空状態で相手を引き裂きながら投げ飛ばす。しかし当然ながらリオンやガーリオン相手に使えば完全にオーバーキルだ。だから武蔵は真空状態を作り出し、それを投げると言う試みに挑戦したのだ。そしてそれは大成功し、擬似的な竜巻を作り出した。

 

「あれで本当の使い方じゃないってとんでもないわね」

 

呆れたという感じのアヤだが、武蔵からすれば本来の威力には程遠い上に、子供騙しと言う感じだ。メカザウルス相手に使ってもダメージは期待出来ない、あくまでPTやAMと言うメカザウルスと比べれば小さい相手にのみ有効な技と言うことだ。

 

「まぁ、でもゲッターは今オイラ1人だし、本来の能力と比べれば全然低いんだぜ?」

 

ゲッターは3人乗りだからと告げると、リュウセイが身を乗り出し武蔵の両手を掴む。

 

「そうそう! あのゲッターロボって奴は3人乗りなんだろ!? 俺も乗れたりしないか! もし乗れるなら乗せて欲しいんだけど!」

 

「リュウ! 何を言ってるのかしら?」

 

「あだだだぁッ!!!」

 

ゲッターに乗りたいと興奮した様子のリュウセイの耳を抓るアヤ。そのやり取りを見て武蔵はリュウセイとアヤの関係性を大まかだが把握した、お調子者とそれを窘める先輩って感じと

 

「おいおい、リュウセイ。何を怒られてるんだ? 俺も邪魔するぜ」

 

「ひょおうじょー」

 

イルムがトレーを机の上に置いて、もう椅子に座りながら尋ねる。武蔵は口一杯に唐揚げを詰め込みながら返事を返す

 

「中尉。リュウがゲッターロボに乗りたいと言う物で」

 

「おお、それか。正直俺も興味があるな、で、どうだ? 後2人乗れるなら試しに俺とリュウセイが乗るのは無理か?」

 

リュウセイに続いてイルムまでが便乗した。アヤはそれを止めようとしたが、イルムの目が鋭い光を放っているので、何か目的があると悟り開きかけた口を閉じる。謎の特機を操ると言う事でハガネの中でも武蔵の存在は異質だ、今回のこの質問で武蔵がどういう返事をするかと言うのを確かめようとしたのだ。

 

「乗れるならオイラは全然構わないけど?」

 

武蔵から告げられた余りに軽い言葉に拍子抜けと言う感じのイルムと目を輝かせるリュウセイだが、次の言葉で2人の表情が凍りついた

 

「テンザンとか言うむかつく奴が気絶して、テンペストさんも2分くらいで白目むいて、泡噴いて気絶して、エルザムさんも肋骨に罅入って、鞭打ちになった上に気絶したけど、それでも良いなら」

 

エースパイロットと呼べる2人が気絶し、重症と聞いて絶句するリュウセイとイルムだが、その話を聞いて黙っていられない男がいた

 

「エルザム兄さんはそんな酷い有様だったのか?」

 

ライである。自分の兄がそんな重症と聞いて心配するのと同時に、何故そんな状態で出撃したのか、自分を侮っていたのかと、心配と怒りがない交ぜになった複雑な表情でそう尋ねる。

 

「エルザム兄さん? なんだ! エルザムさんの弟なのか! へーよく見ると似てるなあ」

 

だが武蔵はその表情に気付かず、能天気な表情でそう尋ねる。だがライは複雑な表情で武蔵に答えるように促す

 

「ゲッターには衝撃とかそういうのを紛らわせる機能はついてないんだよ。だから旋回とか、合体とかの衝撃でまぁ……なんだ、普通は気絶とかするらしいんだわ」

 

そう言ってもオイラはゲットマシンの中で昼寝出来るから、全然気にしたこと無いんだけどさと付け加えられた言葉にリュウセイ達が絶句する。

 

「んで、どうする? 乗るか? オイラ的には3人揃った方がありがたいんだけど」

 

リュウセイ、イルム、ライにそう尋ねる。だが3人は目を逸らすので武蔵は残念そうにそうかと呟き、デザートのプリンを飲み込んで手を合わせる。

 

「ごちそうさんでした。いやあ、美味かった」

 

爪楊枝を咥え席を立とうとする武蔵にアヤが手を伸ばす。武蔵はん? と呟き手を差し出された意味を理解していない様子だが、アヤが柔らかく微笑み。

 

「これからよろしく」

 

握手をしようと言っていると理解し、武蔵はその手を握り返す。その瞬間アヤがまるで雷にでも打たれたかのように硬直する

 

「どうかしたかい? アヤさん」

 

「あ、ううん。なんでもないの、随分と大きい手だなあって思ってね」

 

「ああ、そいつはオイラが柔道部だからだろうな。急に硬直したからびっくりしたぜ」

 

武蔵はそう笑うと自分が食べた大量の食器を抱えて、歩いていく。アヤはその背中を見つめ武蔵に差し出した左手を見る……握手した瞬間アヤの視界には凄まじい緑の閃光が映し出されていたのだった……

 

第11話 もう1人の来訪者へと続く

 

 




今回は武蔵の交流会のような話になりました。現状ではDCも連邦も同じくらいに思っている武蔵です、戦争を始めたDCは間違っていると思う物の、ビアンとエルザムにはよくして貰った。テンペストから告げられた連邦の闇を聞いて連邦に不信は抱きつつも、リュウセイ達は良い人と思っているので悩むという感じですね。今後武蔵がどうなって行くのか、そこを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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