第4話 早乙女研究所奪還作戦
正直アクセルとヴィンデルはこの奪還作戦に置いて武蔵は案内人程度の認識だった。軍人としての指導も訓練も積んでおらず、敬語も覚束ない。ただゲッターロボと言う特機を操れるだけの民間人と言う認識だった。イングラムとカーウァイが気を掛けているのも、発動条件も判らないが転移が出来るからだと考えていた。だがいざ、アインストとの戦いに入るとその認識は嫌でも改める事になった。
「■■ッ!」
「おせえっ!」
アクセル達が動くよりも早く、それこそ獣のような俊敏さで背中に背負った日本刀を抜き放つと同時に突きを繰り出し、アインストのコアに皹を入れるとそのまま硬く握りこんだ拳でコアを殴り砕いた。
「~~~~ッ!!」
声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちるアインスト。武蔵はそれを見つめながら握りこんだ拳を開き、笑いながら振り返った。
「なんだ。全然脆いじゃないですか、これなら全然楽勝ですね!」
(こいつ……何者だ)
アインストの弱点であるコアは何十人、いや、何百人の犠牲の元漸く得た情報だった。だがそのコア自身も非常に固く、それこそPTの装甲の合金レベルの強度だ。それを素手で殴り砕いた……いや、そもそもの体捌きのレベルから武蔵は桁違いだった。
「無茶をするな、いきなり動くから驚いたぞ」
「はは、すいません。でもこいつらってあんまり怖くないんですよね。恐竜帝国の方がもっとやばいって言うか……うーん、敵意はあるけど、殺意は無いって言うか……」
恐竜帝国と言う訳の判らない言葉が出てきた事にヴィンデルとアクセルも首を傾げるしかない。
「恐竜帝国と言うのは旧西暦に存在した人型に進化した爬虫類の事だ。武蔵はそれと戦っていた、いうならば化け物退治のエキスパートだ」
「ますますオカルト染みて来たな、これがな」
人型に進化した爬虫類……口で言うのは簡単だが、それを見たことが無いヴィンデルとアクセルはその姿を想像するしかない。だが判る事が1つだけあった、武蔵は案内しか出来ない足手纏いではなく、自分達以上に怪物と戦いなれていると言う事だった。
「脆いか?」
「んーオイラからすれば脆いですね。カーウァイさんはどうですかね?」
砕けたコアを拾い上げ、カーウァイに渡す武蔵。カーウァイはそれを握り顔を顰め、そのままコアをイングラムに手渡す。
「……馬鹿力め、お前達のような人外と一般人を一緒にするな」
「それ酷くないですか?」
「事実だ。ゲッターパイロットの身体能力が異常だというのを理解しろ。重力装備も、衝撃装備も無い。それでマッハで飛ぶ機体で昼寝できる人間がいると思ってるのか?」
重力装備も衝撃装備も無い機体でマッハと聞いてアクセル達はぎょっとする。確かに、ここにいる全員は加速力のある機体に乗っている。だがそれでも重力装備は当然のように搭載されている。それを生身で耐えると言うのは本来不可能だ。それこそ肉塊になりかねない、機動兵器のGと言うのは上下左右からそれこそ縦横無尽に襲い掛かる。故にパイロットの生存を第一に考えるのは当然の事で、それらの安全装備が無いと聞いてゲッターロボの製作者の正気をヴィンデル達は疑った。
「……リョウと隼人がいますけど……」
「それはお前の同類だろう……とにかくだ、お前は自分が常人とは違うと理解しろ」
ふあーいっと気の抜けた返事をし、再び日本刀を背中に背負い武蔵は通路の先の階段を指差す。
「じゃあ行きますか、時間を掛ければ敵が増えるでしょうしね」
そう言って先陣を切って進んでいく武蔵。その姿からは想像出来ないほど俊敏な動きだった。イングラム達は複雑に入り組んだ早乙女研究所で武蔵を見失う訳には行かないと武蔵の後を追って走り出すのだった。
バリソンとエキドナの治療、そして機体の修理の為にギャンランドに残ったレモンはアクセルの装備に付けられているカメラからの映像を見て、呆れたような溜め息を吐いた。
「アクセルより強い男はそうはいないと思ったんだけどねえ」
鎧騎士のようなアインスト――「ナイト」は蔦ー―「プラント」や骨のアインスト――「ボーン」の上位種でそれこそ、10人単位で当たってやっと互角に戦える。それなのに武蔵はスライディングでナイトの足を払い引っくり返すと刀で鰻のように通路に固定すると足の鎧を力任せに粉砕し、そこから内部にリボルバーを入れてコアを砕いてあっという間に沈黙させる。
「これ明らかに慣れてるわね」
自分よりも巨大で、そして力の強い相手と戦いなれている。旧西暦にいた異形と戦っていたらしいが、それを差し引いても武蔵の戦闘力は異常だった。
『そっちは大丈夫ですか?』
『ああ、問題ない。それよりもすまないな、ナイトを1人で相手させて』
『全然大丈夫ですって、爬虫人類やインベーダーと比べれば全然弱いですから』
『弱いか……ふっ、お前も大概だな。武蔵よ』
『いやいや、オイラなんて大したこと無いですよ。リョウや隼人の方がもっと強いですからね』
『あいつらは強いが、協力性とか皆無だろう? そう考えればお前の方が良かったと思う』
『そうだな。私も見たが……あの2人はどこまで行っても独断専行を止めないだろう』
『ま、それは認めますけどね。さてと、そろそろ研究室ですけど進んでも大丈夫ですかね?』
「膂力だけじゃなくて、スタミナも化け物ね。完全にアクセル以上かしら?」
肩で軽く息をしているアクセル達と異なり、平然としている武蔵にレモンは驚愕を隠せない。
「旧西暦の人間って化け物だったのかしらね」
失われた時代、空白の時間と呼ばれる旧西暦の一部の歴史。今まで興味を持たなかったレモンだが、旧西暦の生き証人である武蔵を見て、初めてその時代に興味を持ったが今はもうその知識に触れる事は出来ない。
「惜しい事をしたわね」
ジュネーブにいくつか資料があったはずだが、インベーダーの巣窟になっているジュネーブに乗り込むわけにも行かず。無事に戻って来たら武蔵から話を聞こうと決めて機体のメンテナンスと平行してエキドナのメンテと、バリソンの治療を行う。
「あら?」
エキドナのメンテをしている時にエキドナ――W-16の脳に何らかの異変が起きている事に気付いたレモンだったが、それを見てレモンは笑みを浮かべた。新しい種を作ると言う目的を持つレモンにとって脳に変化が起きていると言うことは喜ばしいことだった。
「W-17とデータを比べれると良いわね」
今はまだ培養液の中で調整をしているWシリーズの最高傑作であり、レモンの娘であるW-17……「ラミア・ラヴレス」の名を与えられる筈の美女と既にロールアウトし、自我が芽生えない物かと観察を続けているW-16……「エキドナ・イーサッキ」そのどちらが自我が芽生えるのか、それともどちらとも自我が芽生えないのか、はたまた両者とも自我が芽生えるのか……?
「ああ、こんな状況だけど楽しくてしょうがないわね」
むしろ何時死ぬかもしれないから楽しいかしら? と呟きレモンは作業を再開する。ギャンランドのステルスは高性能ではあるが万能ではない。
「早く動力とやらを復旧してくれると良いんだけどね……」
アインストは早乙女研究所の中にいる。個にして群のアインストは既にレモン達が日本にいることを把握している、大群が押し寄せてくる前に早乙女研究所のバリアを再起動する事が生き残る第一条件だが、レーダーに既にアインストの反応が出ている。残された時間はそんなに多くない……表情こそ飄々としているが、レモンの額から汗が一滴零れ落ちるのだった……。
レモンからの報告を聞き、アインストの群れが早乙女研究所に向かっていると聞いた武蔵達はアインストに発見されるリスクを承知で、通路に足音を立てて、研究所内を走っていた。
「武蔵! 第3研究室と言うのはまだ先かッ!」
「~~~~ッ!」
ポーンの胸部のコアをトンファーで殴り砕きながらアクセルの怒声が通路に響き渡る。
「もうちょっと先なんですよ! 重要区画なんで……邪魔すんなッ!!!」
プラントを両断する武蔵だが、ダクトや開いている部屋からどんどんアインストが姿を見せる。
「ちいっ! 一々相手をしていると時間が無くなるぞ!」
「イングラムさん! これ!」
「ッ! この場は任せるッ!」
アクセル、ヴィンデル、カーウァイ、武蔵、イングラムと言う面子の中で最も電子系に強いのはイングラムだ。武蔵は自身のカードキーを投げ渡しイングラムに先に行くように促す。
「おらっ!!」
「「「!?」」」
道中で拾ったショットガンをぶっ放す武蔵にアクセルが顔をゆがめる。
「散弾銃で遠くを狙うな」
「大丈夫って判ってますから、でもすいません」
少し間違えば自身が蜂の巣になっていたから顔を歪めるアクセルだが、謝罪と共に頭を下げられればそれ以上追求も出来ず不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「まぁ良いだろう。今は時間がないからな」
アインストの大群が来るまでに動力を再起動出来るかは賭けに近い、最悪の場合、これだけ苦労したのにギャンランドで逃亡しなければならない可能性もある。
「この苦労が無駄にならなければ良いがな」
「全くだッ!!」
「せいッ!!!」
「どりゃあッ!!」
銃声が早乙女研究所の通路に響き渡り、それから遅れて武蔵とアクセルの気合に満ちた声が響く、砕かれ、両断されアインストの残骸が通路を埋め尽くしていくが、研究室に向かったイングラムはまだ戻ってこない。
「研究室にもアインストがいたんじゃないのか!? やはり1人で行かせたのは無謀だった!」
「あそこは常にバリアが展開されてるから安全度で言えば一番安全なんですよッ!!って! あぶねえ! 全員頭を抱えて通路に寝転がれッ!!!」
武蔵の怒声に反射的に全員が頭を抱えて伏せた瞬間。天井と通路が開き、そこから姿を見せたガトリングが火を噴いた。
『……すまん。防衛装置を起動させたんだが……』
研究室から放送で謝罪するイングラムに立ちあがった武蔵が珍しく敬語ではなく、本気で怒った様子で怒鳴った。
「馬鹿かッ!? 警備責任者は敷島博士だぞ!? まともな警備装置なんてねえよッ!?」
『……すまんとしか言いようがない』
イングラムが武蔵達を助けようと起動した防衛装置だが、それは一歩間違えば全員蜂の巣だった。
「……死ぬかと思ったぞ」
「ああ。一瞬走馬灯が見えたな……」
「……あのマッドめ、もう少し常識の範囲で開発しろ」
一歩間違えば全滅だったが、ガトリングの掃射で無限に沸いているアインストは一時的にしろ姿を消した。これは紛れも無い好機だったのもまた事実。
『武蔵! LV5のカードは見つけたッ! そのまま出撃用の通路へ向かえ!』
「シュートを使うつもりですか!? もしそこにアインストがいたら全滅ですよ!」
『だがこのまま地下に向かっていたら間に合わない、動力が復旧しなければどの道全滅だ。自分達の運に賭けるぞ!』
扉が乱暴に開く音がする。イングラムも出撃用のシュートに向かっているのだろう。武蔵はがりがりと頭を掻いて、日本刀とショットガンを背中に背負う。
「ええい、行きますよ! オイラ達の悪運に賭けます!」
走っていく武蔵の後を追ってアクセル達も走り出す、自分達がこの階にやってきた通路の影にアインストの姿を見て、戻る事は不可能と悟ったからだ。それならリスクは承知で、シュートを使うしかないと判断したのだ。
「やけくそだ、出たとこ勝負で行くぜッ!!」
先にイングラムが飛び降りたのか、口を動かしているシュートの中に武蔵が飛び込み姿を消す。
「この中にアインストがいたら全滅か」
「らしくないな、ヴィンデル。どの道1度死んだと割り切れば問題ないだろう」
「……そうだな、先に行く」
ヴィンデルがシューターの中に姿を消す。あまり間もなく入ればそれこそシューターの内部で詰まってにっちもさっちも行かなくなる。それが判っているから、アクセルとカーウァイはその場で待機し、アインストの襲撃に備える。
「ふ、またこうしてカーウァイ少将と同じ戦場に立てるとはな、事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。これがな」
「そうだな、私もそう思う。いろんなことを経験してきたからな」
「これを切り抜けたら話を聞いても?」
「構わないさ、アクセル。先に行くか?」
「冗談、少将に殿を任せる訳にはいかん。先に行ってくれ」
アクセルの言葉に頷き、カーウァイもシューターの中に飛び込み姿を消す。1人残されたアクセルはあちこちから聞こえてくるアインストの足音を聞きながら目を閉じて意識を集中させていた。
(……ベーオウルフ……お前は必ず俺の手で……)
だがその研ぎ澄まされた意識の中でアクセルが考えていたのは、研究所を奪還することではなく、憎む怨敵の事を考えていた。武蔵から聞いた話によればソウルゲインに乗ってアクセルは向こう側に移動した。だがそれは勝利したとはいえないボロボロの姿と聞く……それを聞いたアクセルは転移の際に必ずやゲシュペンストMK-Ⅲを……そしてベーオウルフを倒す事を誓う。
「さてと俺も行くか」
手榴弾のピンを抜いてシューターに飛び込むアクセル。その直後に背後から響いてきた爆風と振動を感じながら長い坂を下り降りる。
「来たか! アクセルも手伝え!!」
「後3つ!!」
動力を復旧する為に巨大な電源を体当たりの要領で押し込んでいるのを見てアクセルは苦笑し腕を回す。硬く閉ざされている扉の外からアインストの鳴き声と、扉を粉砕しようとする音が響いている。時間はさほど残されていないが、ここまで来たら何としても早乙女研究所を奪還すると気合を入れるアクセルは、武蔵達同様全身を使って排出されている動力炉に体当たりを叩き込む。
「最後の大仕事かッ! 早く復旧させろよッ!!!」
「言われなくても判ってるッ!!」
「ぬ、ぬああああああーーーッ!!」
「合わせろ」
「「1、2の3ッ!!!」」
武蔵とアクセルに膂力で劣るヴィンデルとカーウァイは2人で1本の動力を押し込み、全員が必死の形相で早乙女研究所の動力の復旧を試みる。
「これで……どうだッ!!!」
動力炉が音を立てて起動し、ゲッター線バリアが再構築され薄暗い通路に光が灯り、扉の外を叩いているアインストの気配も消えた。
「ふへえ……つ、疲れたぁ……」
「ま、全くだ。身体が鈍っているな……」
「司令官と言ってふんぞり返って……いるからだ。ヴィンデル」
「……ギリギリだったが……やり遂げたか」
疲労困憊の5人はその場にへたり込み、やり遂げたと言う充実感を感じながらその場に倒れるように寝転がるのだった……。
浅間山の早乙女研究所の復活。これはアクセル達が安全な拠点を手に入れる為に必要な事であったが、それがこの崩壊した世界の終焉を更に加速させる事となる事をアクセルは勿論、武蔵達も知る良しもなかった。
「「「キシャアアアアアーーーッ!!!」」」
ジュネーブの上空に出現した時空の裂け目。そこから無数に出現し続けるインベーダー、出現しては消滅し、出現しては消滅しを繰り返しインベーダーは何十、何百と言う進化を繰り返す。
「「「シャアアアーーッ!!!」」」
そんな中突如この世界に広がったゲッター線の波動にインベーダーは歓喜した。自分達の餌が出現したと、そして更なる進化を遂げることが出来るとジュネーブを埋め尽くしていたインベーダー達は次々に歓喜の声を上げる。そんな中、ジュネーブの崩壊した連邦軍基地が凄まじい地震……ではない、大地を砕く巨大な豪腕によって粉砕され、インベーダーを押し潰しながら地下から巨大な特機が姿を見せる。ゴーグル様な頭部パーツ、全身がひび割れ、火花を散らす異形の特機……それは旧西暦で武蔵達に敗れたメタルビースト・SRXの姿だった。早乙女研究所の動力が復旧したことにより発生した大量のゲッター線反応を感知し、休眠から目覚めたのだ。
「■■■ーーーーッ!!!」
音として認識出来ない異様な咆哮がジュネーブに響き渡り、メタルビースト・SRXの全身から伸びた触手がインベーダーも、破壊されたPTも建造物もおかまいなしに取り込み、全身を繭の様な物体に包み込み沈黙する。ジュネーブの大地に不気味な鼓動が響き、一方南極へと飛ばされたベーオウルフはその目を真紅に光らせ、雪原を駆けていた。
「……進化の使徒よ。その力、その英知を我らに捧げよ!! 我らアインストこそが新たな生命の源であるッ!!!」
狂った孤狼は日本を目指す、その地に再び目覚めたゲッター線を手中に収める為に……。
武蔵達がこの世界に辿り着いてしまった事で、この世界の崩壊は爆発的に加速する。ゲッター線……そしてゲッターロボD2を基点に、インベーダー、アインスト、そして人類の生存競争は更に激化していく事になるのだった……。
第5話 休息
不穏なフラグはばら撒いていくスタイルです。とりあえず転移するまでのボスとしては、インベーダーサイドは「メタルビースト・SRX」&「メタルビースト・クロガネ」。アインストは「????」&「ベーオウルフ」「アインスト・ハガネ」でお送りします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い