第9話 邪悪な大樹/太古の魔龍
そのアインスト達には他のアインストにはない明確な意思があった。だがそれは意思と言うには余りに邪悪で、そして醜悪だった。
「適合セズ……」
「廃棄」
「処分セヨ……」
本来ならばアインストは同類を増やすと言う真似をしないはずだった。だがインベーダーの存在を感知し、更にゲッター線があるとなれば話は変わってくる。
「進化進化」
「進化ノ光」
「我ラ二……」
インベーダーとの生存競争に勝つ為に、そして自らがゲッター線に認められ、新たな種となる為に日本を脱出しようとする者を捕らえ、アインスト化させると言う事を繰り返した。
「非適合態ヲ捕食スル」
「新タナ進化ヲ」
適合した個体はアインストへと変異し、その搭乗機ごとアインストになる。だが非適合の個体はアインスト達の胸部、両腕にある異形の口で捕食、吸収される。海岸に群生するトレントと呼称されたまだ未熟な変異途中の「アインスト・レジセイア」達は戦艦をPTを喰らい、そして変異した同胞を喰らい、より強いアインストへと変異を続ける。
「?」
「何ダ?」
「振動?」
突如海岸に走った振動にレジセイヤ達が困惑した直後。大地が砕け、その巨体が大地の中に沈む。
「ゲッタァアアアドリルッ!!!!」
大地を砕き、空へと舞い上がった蒼い光にアインスト達は歓喜する。
「進化ノ光ッ!」
「ヲオオオオオーーッ! 我ラ、我ラ二光ヲッ!」
「新タナ種トシテ認メヨッ!!!」
異形の両腕から触手を伸ばし、ライガーを捕らえようとするレジセイア達だが、その直後に横から凄まじい攻撃を叩き込まれる。
「貴様らに渡す物など、何一つ無い」
「押し通らせてもらうッ!!」
ASRSを展開していたギャンランドからR-SOWRDを初めとしたPTが降下してくる。
「作戦の第1段階は成功。このままトレントを粉砕し、日本を脱出する」
『了解しました。ヴィンデル大佐』
『考えなしの馬鹿で助かる。速攻で決めるぞッ!!』
グルンガストに乗るヴィンデルの指揮の元、シャドウミラー隊の日本脱出作戦が幕を開けるのだった……。
地割れの中に飲み込まれるトレントを見つめて武蔵が驚いた様子でそれを見つめていた。
「まさかここまで上手くいくなんてなぁ」
時間は少し遡り、ギャンランドのブリーフィングルームでは、ヴィンデル、レモンの両者からの作戦説明が行われていた。
「えっ、倒さなくて良いんですか?」
「ええ、とは言え、完全に撃破しなくていいってことで戦わなくていいって事じゃないわ」
レモンはモニターにトレントの姿を再度映し出す、下半身が完全に大地と融合しており、トレントの名のとおりその姿は樹木のように思える。両腕・胸部には鋭い牙の生えた口を思わせる部位が拡大される。
「この中にコアがあるのよ。このコアにダメージを与えて、アインストを活性化から非活性化状態に持ち込めば、活動を休止するからその間に強行突破するわ」
全長100Mと越えようと言う巨大な相手を完全に倒すというのはアインストの性質上難しい、だがアインストコアは肉体と比べて再生能力が劣るのか、それとも重要機関なので回復が難しいのかは定かでは無いが回復速度が遅いという性質がある。
「作戦は理解した、だがこの巨体だ。コアを狙うのも難しいだろう、そこはどうするつもりだ?」
「あら、アクセル判らないの? 相手が大きいなら、こっちの得意の領域まで引き摺り下ろせば良いのよ。ね、武蔵」
「え? オイラですか?」
「そ、この日本脱出作戦の要は貴方とライガーよ。ライガーで地面を砕いて、このポイントのトレントを地中に引きずり込む、そして高さが低くなった所を……」
「集中砲火か」
「ええ、トレント同士は思考を共有してるみたいだし、時間を掛ければ取り囲まれてお陀仏。速やかにコアを破壊して、離脱って所ね」
「バリアの出力低下を狙うといっていたが、何体潰せばいい」
「最低3体、4体ならなおよしって所ね。さ、そろそろ海岸が見えてきたわ。武蔵、先行よろしくね?」
レモンの言葉に頷き、レモンから与えられた資料を頼りに言われていたポイントの岩盤を砕いた武蔵。それはレモンの計算通り、トレントの足場を崩し、その巨体を地中に引きずり込んでいた。
「でもやっぱり、何もかも計算通りとは行かないわなッ!!」
高速で突っ込んできた量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅱのジェットマグナムをかわし、チェーンでゲシュペンスト・MK-Ⅱを捕らえる。
「どっせーいッ!!!」
「!?!?」
捕らえた量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅱをトレントの口目掛け投げ込み、噛み砕かれた量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅱの爆発に紛れ、急降下と同時にドリルをトレントの口に突き刺すライガー。
「あ、アアアアアアアーーーッ!!」
甲高い女性の悲鳴に似たそれに顔を歪めながら、片腕のアインストコアを砕くのに成功する武蔵だが、砂浜から姿を見せた半壊したPTやアインストから伸びる触手にそれ以上の追撃が不可能だと判断し、即座に空中に逃れる。
『武蔵! もう少し積極的に攻撃は出来ないか!?』
「無茶言わんといてください! こっちはこっちで手一杯ですよッ!!」
アインストの集中砲火を受けている武蔵は隙を見て攻撃するので手一杯でとてもではないが、出撃前の計画通り1体のトレントを速やかに破壊するということは出来ないでいた。
「ドリルミサイルッ!!!」
「サセヌ」
隙を見てドリルミサイルを胸部のコアに向かって打ち込む武蔵だが、バリアで弾かれドリルは辛うじて体表に傷をつけるのがやっとだった。
「飛び道具は駄目か、ならオープンゲットッ!! チェンジ、ポセイドンッ!!」
上下左右から伸びる触手をかわし、急降下しながらポセイドンへとチェンジし、トレントの巨体との真っ向から後から勝負を挑む武蔵。
「ぬぎぎぎいいッ!! エキドナさんッ!!」
胸部の口に自ら飛び込み、閉じようとする口を両腕、両足で押さえ、閉じかけている口を内部から無理やり抉じ開けトレントの巨大なコアを出現させ、エキドナの名を叫ぶ武蔵。
「ああッ! そのまま押さえていろッ!! コード入力! ファントムフェニックスッ!!」
機械翼を広げたプロトアンジュルグが腰にマウントしていた弓矢を構え、作り出したエネルギーの矢を番える。
「行けッ! 紅蓮の不死鳥よッ!!!」
放たれた矢に込められたエネルギーが羽ばたく不死鳥の形をとり、急降下し、ポセイドンの前にあるアインストコアに迫る。不死鳥の嘴がポセイドンを貫く、そう思った瞬間――。
「オープンゲットッ!!!」
ゲットマシンに分離し、爆発的な加速でファントムフェニックスを避ける武蔵。ファントムフェニックスはアインストコアを貫き、一体のトレントの目から光が消える。
「よっしゃ! まず1体ッ! さすがですね!」
「いや、お前の援護のお陰だ。このままカーウァイ大佐とイングラム中佐の支援に入る」
「了解ッ! 行きましょう!」
ドラゴンとプロトアンジュルグがそのまま別のトレントを相手しているイングラム達の支援に入るが、実際はその必要は殆ど無かった。
「ターゲットロック、撃ち抜くッ!」
「ギ、ギィイイーーーッ!!」
巨体と言うのはそれだけで武器になる。だがそれは逆を言えば素早い出入りに対応出来ないという欠点を持っている。そしてPTを駆るイングラムとカーウァイの最も得意とする戦術はインファイトしかも、高機動の物となれば動けないトレントはただの的に過ぎなかった。
「カーウァイッ! 決めろッ!!!」
ケルベロスモードでひたすらにトレントをかく乱し、ヒット&アウェイでその両腕のコアを砕いたイングラムがそう叫んだ。
「言われなくともッ! 最大出力で決めてやるッ! ブラスターキャノン発射ッ!!!」
「お、オオオオオオーーッ!?」
腰を深く落とし、最大出力のブラスターキャノンの反動に耐えながら放たれた熱線がトレントの胸部のコアに命中し、2体めのトレントが断末魔の雄叫びを上げて沈黙する。
「2体めが沈黙、バリアの出力が落ちてきたわ! アクセル、ヴィンデル急いでッ!」
ギャンランドからのレモンの声にアクセルとヴィンデルはそれぞれのコックピットで笑みを浮かべる。確かにトレントは強大で真っ向から戦うことが難しい相手だ、だが足場を崩され、移動することが出来ず。攻撃方法が両腕を振り回す、触手を伸ばすだけになればエースパイロットであるイングラム達が苦戦する訳が無かったのだ。
「もう決着もつく、計都羅喉剣……暗剣殺ッ!!」
飛び上がったグルンガストの真っ向唐竹割りを防ごうとしたトレントが右腕をそのまま両断され、両腕を失ったトレントの胸部の口が大きく開かれる。
「狂風がお前を切り裂く……行けいッ!!!」
ヴァイサーガは白兵戦に特化した特機である。その性質は刀剣を用いた近~中に特化し、その攻撃力の高さはグルンガストに匹敵すると言っても過言ではない。そして5大剣「地」「水」「火」「風」「光」の5要素に分かれた剣術モーションを組み込まれており、白兵戦に特化しながらも、その戦闘能力は極めて柔軟であり、どんな戦いにも適応するといった相反する能力を持っていた。
「はあああああーーーッ!!!」
抜刀と同時に作り出されたカマイタチを5大剣で打ち出し、口を閉じようとしたトレントの口を風によって封じる。
「風刃閃ッ!!!」
コアを護る為に伸ばされた触手が伸びるよりも先に、ヴァイサーガの刃はトレントの胸部のコアを貫いていた。
「失せろ、この世界からなッ!!」
5大剣を引き抜くと同時に罅割れたコアを蹴りつけ、ヴァイサーガは残像を残しながらトレントの胸部の口から脱出する。
「バリア消滅確認! 全員帰還して! バリア復活まで90秒! ブースト・ドライブで脱出するわよッ!」
レモンの声を聞き、アクセル達はギャンランドへと帰還し、バリアが閉じきる前にブースト・ドライブによって日本を脱出するのだった……。
ブースト・ドライブで日本を脱出したギャンランドはそのままASRSを展開し、太平洋を進んでいた。
「思ったよりも上手く行きましたね」
武蔵が良かった良かったと笑う。地表を砕き、下半身の大半が地面に埋まったトレントはその巨大さを利用した攻撃も思うように出来ず、コアも狙いやすい位置にあった。だから短時間でのコアの破壊に成功していた。
「本当だな。武蔵がいなければ、こうも簡単に脱出できなかっただろう。お前がいてよかった」
「え、あ。いやあ、なんか照れるなあ」
エキドナに褒められ照れると笑う武蔵。それ自体は微笑ましい光景だったが、レモンには驚きの光景だった。命じられたことしか出来ない、エキドナが自分で考えて、武蔵を褒めた。
(これ本当なのかもしれないわね)
進化を促すエネルギーと言うゲッター線。それもあながち嘘ではないかもしれないとレモンは考えていた。バイオロイドである筈のエキドナに自我が芽生える……それは新たな生命を生み出したと言う事に繋がる。
(やっぱり武蔵と一緒に行動させた方がいいかもしれないわね)
そうすればもっとエキドナの自我を芽生えさせる事に繋がるとレモンは笑みを浮かべた。
「それでヴィンデル。ギャンランドの目的地は何処になる?」
「シャドウミラーの基地があるアラスカまたはカリフォルニアを目指すつもりです」
「太平洋を抜けて一番最初に辿り着くアメリカ大陸か」
早乙女研究所で十分な補給をしているとは言え、このままテスラ研に向かうのは自殺行為だ。イングラムもそれが判っているからヴィンデルの目的地の説明に納得する素振りを見せる。
「補給の目処はあるのか?」
「一応地下基地だから見つかってないと思うし、それになによりも、シャドウミラーの新型の開発拠点でもあるのよ。だからそこで戦力と
生き残りのパイロットが居れば回収したいって思ってるわ」
「なるほど、では聞くが連絡は?」
「……通じてないわ。アメリカはインベーダーに占拠されているしね……」
「望み薄と言うところか」
「溺れる者は藁でも掴むって言うでしょ? 僅かな可能性に……きゃあッ!? な、何ッ!?」
アメリカに辿り着いたら何をするかと言う話し合いをしていると突如ギャンランドが激しく揺れた。
「むっッ!?」
「とっと!? エキドナさん、大丈夫ですか!?」
その突然の衝撃に倒れかけるエキドナの腕を掴む武蔵。そして手すりや備え付けの家具を掴みバランスを保ったイングラム達の耳に凄まじい雄叫びが響き渡る。
「「「「ガアアアアーーッ!!!」」」」
「なんだあれは!?」
「インベーダー、いや、アインストでもない。なんだあの生き物は!?」
ギャンランドのモニターに映し出されたのは紫色の身体をした龍の様な生き物が海中から首を伸ばし、その牙でギャンランドを攻撃している光景だった。
「ちょっ、ちょっとこんなの想定してないわよッ!?」
インベーダーやアインストならわかる。だがこんな化け物は想定していないとレモンが叫び声を上げる。
「レモンさん! ドラゴンで出ます! 何とか振り切れるか試してみてくださいッ!!」
言うが早く武蔵がブリーフィングルームを飛び出していく、エネルギーを補給している最中のR-SOWRDなどは当然出撃できず、唯一出撃出来るドラゴンがあの首を迎撃しない事にはギャンランドはここで沈む。武蔵はそれを防ぐ為に、格納庫が完全に防がれる前にドラゴンで外へと出撃して行った。
「シャアアアーーーッ!」
「マジモンの化け物かよ! ダブルトマホークッ!!」
ギャンランドに巻きついている3本の首をそのままに2本の首が伸びてくる。それを紙一重でかわし、ダブルトマホークを振るうドラゴン。だがそれは体表に当たると油で滑るかのように受け流された。
「げっ!? マジかッ!?」
「「シャアアッ!?」」
「たっ、ととおッ!?」
両サイドから襲ってきた牙を旋回し回避し、武蔵はドラゴンが手にしている斧を見て眉を顰めた。刀身がてらてらと光り、その脂で完全にその切れ味を失っているのが一目で判った。
「メカザウルス……ってわけじゃねえよなッ!! ぬうっ!?」
大口を開けて噛み付こうとしてきた龍の牙を両手で受け止め、両手足を使い口が閉じようとするのを防ぐ。
「ゲッタァアアビィィーームッ!」
「!?!?」
大口をひらっきぱ無しの龍の口の中に頭部ゲッタービームを打ち込む、その熱量で爆発する頭部から脱出し、ダブルトマホークを新たに取り出し、ギャンランドに巻き付いている龍の目玉に突き立てる。
「ギャァアアアアッ!?」
「うっし、流石に目玉は効くかッ! もう1発ッ!!!」
「ガアアアアアーーッ!?」
急所である目玉を切り裂かれ苦悶の雄叫びを上げる龍。その龍の首目掛け追撃のゲッタービームを打ち込む。だが次の瞬間武蔵の顔は驚愕に染まった。
「は、弾かれた!?」
腹部より出力が低いとは言え、生きている生き物にゲッタービームを弾かれた事に武蔵は驚愕した。
『武蔵! もう1本の首も攻撃して! 今は勝てないわ! 逃げるわよッ!』
「ッ! 了解ッ! スピンカッターッ!!」
「ギシャアッ!?」
両腕の側面についているチェーンソーで龍の眼を潰すドラゴン。それによりギャンランドを縛り上げていた龍の拘束からやっと逃れる事が出来た。
『よし! 武蔵、どこでも良いから掴まって、一気に離脱するわよ!』
「りょ、了解!! 掴まりましたんで大丈夫です!」
『OKッ! ASRS展開、ブースト・ドライブッ!!!』
眼を潰された痛みに龍が暴れ悶えている内にギャンランドは再びブーストドライブに入り、一気にその場を離脱するのだった……。
「シャアアアーー!」
「アアアアーーッ!!」
ギャンランドが姿を消してから数時間後。太平洋に巣食っているメタルビーストがゲッター線に引かれ、武蔵と龍が遭遇した海域に集まってくる。
「ギャアアアアーッ!?」
「ギイイイイイーーッ!?」
だが海面を割り姿を現した龍に船体に巻きつかれ、海底へと引きずり込まれていく、ゲッター線に誘蛾灯のように誘き寄せられたメタルビースト、そしてインベーダーは太平洋に巣食うにナニかにとってはただの餌に過ぎなかった。
「ガバアアッ!!!」
そして海底から姿を現した巨大な口にメタルビーストは引きずる込まれ、船体ごとインベーダーを咀嚼する不気味な音と、海底から紅く輝く瞳はギャンランドが逃げた方向をいつまでも睨みつけているのだった……。
第10話 写し身に続く
今回の話は2面構成、1面目の勝利条件はアインストレジセイア×3体に5万のダメージを与える。2面目は龍×5体に1万以上のダメージを与えると言う感じで特定のダメージを与えるとイベント進行するエリアでした。前回の戦闘話に続き逃走と言う形になりますが、基本的には逃走するしかない戦力差なのでこういう展開になります。次回は写し身と言う事で、ウォーダンを出して行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い