進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第11話 もう1人の来訪者

第11話 もう1人の来訪者

 

ハガネのブリーフィングルームにはリュウセイ達「SRX」チームの姿とジャーダ、ガーネット、ラトゥーニ、そしてイルムガルドに加え武蔵の姿があった。それはハガネの進路にあるウェーク島の連邦軍基地の存在だ、元々は連邦軍の基地だが現在はDCに制圧されDCの拠点となっている。DCはウェーク島基地を拠点にして、ハガネへと部隊を送り出している為。ここを制圧しておく必要性があった

 

「我々が目指すウェーク島の基地には、多数の対艦砲台が配備されている」

 

ウェーク島基地自体は旧西暦から存在する基地で、設備は旧式、新式が多数取り揃えられた海上の基地になる。それが丸々乗っ取られていると聞いてブリーフィングルームに緊張が広がる

 

「やれやれ、そいつがそっくり敵の手に落ちているなんて……冗談きついぜ、それでどうやって基地を攻めるんです? ハガネで射撃ですか?」

 

だがイルムの軽い雰囲気と質問にその雰囲気は変わる。良くも悪くもイルムガルドと言う男はムードメーカーであり、そして場の空気を読むことに長けていた。イングラムはそんなイルムの言葉に小さく笑みを浮かべると説明を再開する

 

「基地の迎撃システム自体は旧式だが、有効射程距離はハガネの主砲以上だ。だから迂闊には接近出来ん」

 

戦艦であるハガネの射程距離もある。それは今回の作戦でハガネを主力とする事が出来ないと言う事でもあった

 

「じゃあ、そいつをぶっ壊さない限り、ハガネは島には近づけないってことか」

 

「そうだ、よってPTと戦闘機、そしてゲッターで先行し、基地の迎撃システムを破壊する。その後、基地を制圧すれば作戦は成功だ」

 

軽い感じで告げられるが、その作戦の難易度の高さにブリーフィングルームに嫌な沈黙が広がる

 

「し、島へ突入って……その前に迎撃システムでやられちまうんじゃないのか!?」

 

リュウセイの質問は最もだ。戦艦であるハガネが撃墜される可能性があるほどの迎撃システムを持つ、基地にPTで突入する。それがどれほどの危険を伴うかは言うまでも無いだろう。

 

「ヒュッケバイン、ビルトシュバイン、ビルドラプターとF-28の性能ならば敵の攻撃を潜り抜けられる。後は、AMや戦闘機、SAM・MLPSにどうやって対処するか、だ」

 

自信に満ちたイングラムの言葉にリュウセイは黙り込むことしか出来ない。その後も作戦会議は進む中、イングラムの作戦を聞いていた武蔵が挙手をする

 

「なんだ。武蔵?」

 

「いやあ、基地に海中を進んで突撃するんだろ? それならオイラとゲッター3に任せて欲しいと思ってな」

 

武蔵の言葉に全員の脳裏に過ぎったのは、南鳥島でゲッター3が放った大雪山おろしによる破壊の跡……

 

「武蔵、悪いんだけど、基地もある程度の機能は残しておきたいのよ。完全に破壊されたら困るわ」

 

アヤが諭すように言うと武蔵は違う違うと笑いながら首を振る

 

「いやいや、オイラもそこまで馬鹿じゃねえよ。オイラが言いたいのは、ゲッター3は水中戦に特化しているんだ。確か、水中ではゲッター3は28ノットまで出せるし、ゲッター3のサイズなら頑張れば前と後にPTを乗せることも出来る」

 

武蔵の言いたい事はシンプルな内容だ。ゲッター3の速度で一気に基地に突入、その際にPTを2体もしくは1体を乗せて運搬する事で、2機による強襲と殲滅……地道に海中を進むより遥かに成功率と奇襲率が高い。

 

「少佐、俺はありな作戦だと思う。AMとかの対策と考えればゲッター3の攻撃力と防御力は頼りになる、ヒュッケバインの運動性能なら、基地に乗り込んで一気に防衛システムを潰せると思う」

 

イルムも武蔵の提案を聞き、その作戦に乗る。イングラムは少し考え込む素振りを見せてから頷く

 

「2体乗せても大丈夫なのか?」

 

「安全なのは1体までだな。後からゲッター3にしがみ付いてもらう必要があるし、前はゲッター3が抱き抱える形になる」

 

「ならばイルムガルド、お前がゲッター3と共に基地に先行しろ」

 

「了解、武蔵。運転速度はお手柔らかに頼むぜ?」

 

「出来る限り配慮するよ」

 

武蔵とイルムの2人でウェーク島に突入。その後を追って他のPT部隊も基地に乗り込み、迎撃システムを無力化し、その後をハガネの部隊が更に制圧すると言う作戦に変更されることになるのだった。

 

「作戦開始は1130。各自、持ち場につき出撃準備を取るように。では以上だ」

 

ブリーフィングはイングラムはそう締めくくり、イルム達は出撃準備の為にハガネの格納庫へと向かうのだった

 

「イルムさん、大丈夫か?」

 

ウェーク島の基地のセンサー外で1度、ハガネは停止していた。それはゲットマシン形態で格納されているため1度出撃させ、合体する必要性があったからだ。ゲッター3に合体し、海中に沈んだ武蔵がイルムにそう問いかける

 

「OKだ。さっきも言ったがお手柔らかに頼むぜ?」

 

イルムの言葉に武蔵は気をつけるよと返事を返す。今ヒュッケバイン009はゲッター3の後部に乗り込み、その両肩を掴むことで姿勢を固定していた

 

「武蔵、イルム。ハガネが先行する、相手がハガネを探知し、防衛体制を引いたら突撃しろ」

 

「了解です。うっし、じゃあ、イルムさん。行くぜ」

 

「おおっ! っと! 結構振動あるな。こりゃ相当気をつけないとやばそうだ」

 

そしてハガネは武蔵とゲッター3を加え、ウェーク島基地の攻略作戦を始めるのだった……

 

 

 

 

ウェーク島の基地の司令を任されたテンザンには2つの不幸があった。1つはアイドネウス島でゲッター1を見ていたので、ハガネに武蔵が乗っていると聞いて空中戦を仕掛けてくると思い込んでいた事、そしてもう1つはテンペストからゲッター3の事を聞いていなかった事だ。だがこれはテンペストが悪いのではなく、アードラーがゲッター3の情報を全て持ち帰れと命令したので、それに従っただけだ。

 

「さーて、ハガネが来たな。まずは敵のPTをギリギリまで引きつけろ」

 

ハガネから出撃してきたゲシュペンスト達を見てにやにや笑いを浮かべるテンザン。ゲッターは空を飛ぶが、この基地の防衛システムならば飛行してくれば迎撃出来るという確信があったからだ。そしてある程度ひきつけたらキラーホエールを浮上させ、リオンを出撃させ挟撃する。それがテンザンの立てた計画だった。

 

(へ、俺の完璧な作戦でハガネはいただきだ)

 

テンザンは自分の才能に酔いしれていたが、それは敵の妨害や敵の戦力などを計算に入れていない、自分にとって都合の良い計画であったと言う事だ。自分は死なない、自分は上手くやると思い込んでいたテンザンを襲ったのは基地を揺らす凄まじい衝撃だった。

 

「な、何だ!? 何が起きて「ゲッタアア……ミサイルッ!!!」 武蔵か!? どこから出て来やがった!!」

 

テンザンに一般兵が報告を出すよりも早く、武蔵の雄叫びが基地へと響き渡る。外の情報をモニターに出せと叫んだテンザンの目の前に広がったのは戦車の上に上半身が取り付いたような特機がミサイルを乱射し、両拳で迎撃システムを粉砕する姿と、ヒュッケバインがその手にしたショットガンで迎撃システムの砲塔を破壊していく姿だった

 

「……ッ! くそっ! 早くキラーホエールを浮上させろ! 急げッ!!!」

 

ゲットマシンは3つ。そして特機に変形合体するのは判っていた、だがまさか別の形態と持つとは思って見なかった。それはアードラーに合体する特機を作って欲しいと頼みこみ、無理だと言う事を説明されたから他の形態は無いと思い込んでいたのだ。だがテンザンの不幸はそれでは収まらない

 

「9時の方角よりアンノウンが高速で接近してきます!」

 

「これ以上まだ来るって言うのかよッ! どうなってやがるッ!」

 

通信兵の報告を聞いてテンザンが怒鳴り声を上げる

 

「……データ照合……該当データあります!AGX-05です!」

 

「南極で出た奴かッ! はッ! それなら流れはこっちだッ!」

 

エアロゲイターの機体の乱入。これで戦局は判らなくなったと笑うテンザンだが、流れは劇的に変わっていく。それもテンザンにとって最悪の方向性へ……恐ろしいスピードで空を舞い、ウェーク島基地上空まで移動した白銀の機体。そのスピードにハガネとDCに凄まじい衝撃が走る

 

「しょ、正体不明機が基地の防衛網を突破しました!」

 

「お、おいおい! なんでこっちにくるんだよッ! ハガネだっているだろうがッ!?」

 

テンザンが動揺して叫ぶ中。白銀の機体はウェーク島基地の上空に滞空する

 

「そこの機体ッ! 所属と官性名を名乗れッ! でなければDCの機体と認識し、攻撃する!」

 

オープンチャンネルでテツヤが白銀の機体に向かって叫ぶ

 

「おっと、早合点するな。ちょいと力を貸してやろうって言っているのさ!」

 

テツヤの問いかけにパイロットである青年が笑みを浮かべながら、そう返事を返すと同時に白銀の機体は緑の光に包まれていく

 

「行くぜッ!サイフラァァァシュッ!!!!」

 

白銀の機体の放った閃光はウェーク島の防衛システムを全て破壊し尽くし、そのまま基地内部へと消えて行くのだった……ゲッターそして謎の機体によって壊滅的な打撃を受けた。テンザンは自分の計画通りに行かないことに唇を噛み締め格納庫へと走るのだった

 

 

 

 

ゲッター3とヒュッケバインの強襲、それに加えてAGX-05の強襲によってウェーク島基地のDCは完全に浮き足だっていた。まさか戦艦を囮にして突っ込んでくる特機なんて想像もしてなかった上に、不可思議な武器で砲台だけを破壊したAGX-05は完全にDCの常識を超えていた

 

「各機へ告ぐ、DCは完全に浮き足立っている。相手が立て直す前にウェーク島を制圧する」

 

今パニックになっている間に制圧するとイングラムからの通達と同時に、ハガネが浮上し主砲と副砲で攻撃を開始する

 

「リュウ! 判っていると思うけど、水中だとビーム兵器は威力が半減するわ。ビルドラプターで上空から支援して!」

 

ビルドラプターFMとジャーダとガーネットの駆るメッサーは上空からシーリオンをミサイルで狙い撃ちにし、シーリオンが反撃にミサイルを放とうとすれば接近してきたゲシュペンストのジェットマグナムで機体を粉砕される。イングラムが浮き足立っていると判断したのは間違いではなく、更に司令系統も混乱しているのか連携もまともに取れていない

 

「……テンペスト・ホーカーでは無いのか?」

 

南鳥島で襲撃してきた元教導隊のテンペストが指揮を取っているとライは考えていた。だが蓋を開けてみれば、基地の防衛網こそはしっかりしていたが、その戦術は待ちの一手。とても教導隊の考えた作戦とは思えなかった

 

「だがやる事は変わらない」

 

今回の作戦では機動力を重視し、ヒュッケバイン009はMー13ショットガンを2丁とビームソードのみを装備している。余剰の手持ち火器はシュッツシバルトへと搭載され、ライはシュッツシバルトの両手にM950マシンガンを持たせ、海中を突き進みながらマシンガンの掃射でシーリオンの機動力を削いでいく、シーリオンはリオンのカスタムでその名の通り海中に特化した機体だが、武装はミサイルポッドのみであり接近してしまえば何も出来ずに撃破される運命にあった

 

「そらよッ!!」

 

イルムはウェーク島にゲッターと共に上陸していたので、滑走路の上を自在に走り回り、ショットガンとビームソードで出撃する前のリオンを撃墜して回っていた。海中からの強襲に加え、AGX-05の攻撃でリオンもその大多数が打撃を受けており、高度が上昇しない。それはヒュッケバイン009にとってはただの獲物に過ぎす、ショットガンで牽制し、接近しビームソードで飛行能力を奪えばそれでリオンは行動不能になっていた

 

(いや、しかし本当にゲッターが味方でよかったな)

 

同じく基地の上を暴れまわっているゲッター3。先ほどキラーホエールがMAPWを発射したが、それは即座にゲッターミサイルで迎撃され、その鉄の拳でキラーホエールの強固な装甲はぼこぼこに凹まされている。それで済めばまだ救いはある、だが武蔵とゲッター3の攻撃に容赦は無かった。

 

「そーりゃあああーッ!!!」

 

その両腕を海中に突っ込み、キラーホエールを海から引きずり出す。それで済めば良いが、滑走路に跡をつけながら高速回転したゲッター3はジャイアントスイングの要領でキラーホエールを投げ飛ばす

 

(うわあ……)

 

あれ絶対中酷いことになっている。イルムは心の中で手を合わせ、ショットガンの照準をリオンに合わせ引き金を引くのだった

 

「……ターゲットロック……ファイヤ」

 

シーリオンを撃破し、海上に設置された足場に陣取ったラトゥーニはヒュッケバイン009に搭載されていたブーステッドライフルによる狙撃で、確実にリオンを無力化していた。今もゲッター3の上空からミサイルを落とそうとしていたリオンを破壊したところだ

 

「……変なの」

 

自分に気付いて腕を振るゲッター3に変なのと呟きながらも、ラトゥーニの口は緩く弧を描いていて、知ってか知らずかラトゥーニは柔らかく微笑んでいるのだった

 

「こうなってしまうと、DCが哀れに思えてくるわね」

 

基地の近くの足場を確保し、メガビームライフルによる狙撃を行っていたアヤが小さく呟く。勿論戦争をしているので本当に哀れと思っているわけでは無い、だがPTとAMを超える能力を持つゲッターと正体不明機の広範囲攻撃で完全に出鼻を挫かれ、そして今各個撃破されているリオン。完全に流れはハガネに傾いており、ここからDCが巻き返すのは不可能に近かった。今は目の前でビルトシュバインとシュッツシバルトが上陸し、制圧を始めたのを見てアヤは勝利を確信した。もはやここまで攻め込まれてしまえばDCに勝機が無いのは目に見えていた。それはDC側も理解していたのか、黄色にカラーリングされたガーリオンと4機のリオンが基地から出撃する。だがハガネに向かうことは無く、離脱の為の航路を取っている

 

(基地を捨てる……訳じゃないわね)

 

まだリオンは戦っているし、防衛装置も稼動している。今基地に残っている兵士は切り捨てられたと言う事だろう、ガーリオンが飛び立つのを見て、戦っていたリオンの動きが目に見えて緩慢な物になった。最初は援軍と思ったのに、そのガーリオンが自分達を見もしなければ、何のために出撃したかは明白だったから……

 

「待ちやがれッ!」

 

今正に逃走しようとしていたガーリオンを追って、基地から白銀の機体が飛び立つ

 

「チッ! てめえとゲッターさえいなければハガネを沈められたのによ! おかげで俺のゲームが台無しだ」

 

オープンチャンネルで告げられたテンザンの言葉。それはリュウセイ達にも届けられ、テンザンへの敵意が強くなる。それは白銀のパイロットも同じでオープンチャンネルで怒りに満ちた叫びが木霊する

 

「何がゲームだ!ふざけるな! それよりもシュウの野郎はどこにいる!」

 

「お前もしつけえな! ここにはいないって言ってるだろうが!」

 

その会話で基地内部でテンザンと、AGX-05のパイロットが口論していたのは明らかだった。今出撃したガーリオンが何の武装も装備していないのも、武装を装備している時間がなかったという様子だ

 

「なら奴の行き先を教えろ!!」

 

AGX-05が剣を向ける。ガーリオンは肩を竦めるような仕草をし、AGXー05のパイロットに返答する

 

「アイドネウス島にいるんじゃねえか? 俺は知らんけどさ、腹も減ってきたし、ここで基地を死守するなんて面倒だしな、さっさとズラかるとすっか」

 

テンザンは自分が悪いとは欠片も思っていない態度でそう告げ、離脱の為に機体を反転させる。その姿を見て兵士達が大尉と叫ぶ、だがテンザンは馬鹿にするように笑いながら

 

「お前らも死にたくなければさっさと逃げるんだな、じゃないとゲームオーバーだぜ?」

 

そう告げるとテンザンはゲッター、そしてAGX-05を一瞥すると機体を反転させ、この空域から離脱していくのだった……

 

 

 

 

離脱していくガーリオンとリオンの姿を見ながらリオが報告を始める

 

「ウェーク島基地、沈黙しました。残存部隊はこの海域から撤退していきます」

 

「あのアンノウンは?」

 

「こちらへ攻撃を仕掛けてくる素振りは見せていませんが……」

 

ウェーク島基地上空で滞空している白銀の機体。DCは沈黙したが、まだあの機体が残っている。ハガネのPT部隊は警戒を緩める事無く、白銀の機体を見つめる

 

「……答えろ。お前は何者だ」

 

PT部隊を代表してイングラムがそう問いかける。白銀の機体は機首を反転させ、ビルトシュバインに視線を向ける。

 

「俺はマサキ、マサキ・アンドーって名前だ、お前じゃねえ」

 

「ではその機体は何だ、見たところパーソナルトルーパーでは無いようだが?」

 

その口調から軍人では無いと判断したイングラムは更に質問を投げかける

 

「こいつはそんな物じゃねえ、こいつは風の魔装機神……サイバスターって言うんだ」

 

魔装機神と自身満々に告げるマサキ。それは彼にとってはPTやAMよりも馴染み深いものである言う証だった

 

「魔装機神……? 聞いたことの無い名前だ」

 

「なら、これからは忘れずに……覚えておくんだな……」

 

今まで平然と喋っていたマサキだが、突如その声から力が消えていく。そして翼から放出されていたエネルギーが止り落下してくるサイバスターをゲッター3が受け止める。

 

「イングラムさんよ。どうする?」

 

受け止めはしたがどうすれば良い?と指示を求める武蔵。武蔵に返答したのはイングラムではなく、ハガネのテツヤだった

 

「これからハガネが着港する。そのままサイバスターを確保したまま帰還してくれ」

 

「了解、じゃあこのまま抱き抱えておく」

 

ハガネがウェーク島基地に降伏勧告をし、基地がそれを受け入れたのを確認してからハガネは着港し、ゲッター3はサイバスターを確保したままハガネの格納庫に乗り込み、ウェーク島基地で短い休息を取ることになり、イングラム、イルム、ロバート、テツヤは艦長室に集まり、ウェーク島基地での情報と今後の打ち合わせの為のミーティングを始めていた

 

「艦長、補給物資の搬入は終了しました」

 

ウェーク島基地はDCの基地となっていただけあり、食料を初め、AMの武装や弾薬もあり、それらの物資はその大半がハガネへと積み込まれることになった。テツヤからの報告を聞いてダイテツは気になっていた事を武装の報告に来ていたロバートへと問いかける。

 

「敵のAMは手に入れられたのか?」

 

DCの主力であるAMを鹵獲する事が出来たか?ともし手に入れる事が出来れば戦力を確保できる。そう考えていたのだがロバートの表情は芳しくない

 

「データは入手しましたが、流石に機体その物は……しかしAM用の武装を入手できましたので、PT用に調整しておきます」

 

機体は無理だったが、武器を入手できた。それで最低限の戦力強化は可能だろう

 

「艦長。データを調べて不審な点が1つありました。基地司令部との通信履歴の中に極東司令部との交信記録らしき物を発見しました」

 

テツヤの報告にダイテツはその顔を険しくさせ、通信記録の内容を尋ねる

 

「司令部との記録日と内容は?」

 

「流石にそれは削除されていましたが、通信が入っていたのは事実です」

 

テツヤもその顔を険しい物とする。極東支部との通信、それは連邦の中にスパイがいると言う疑惑となる。ダイテツもテツヤもロバートもその顔を険しくさせる

 

「グレードと回数は?」

 

通信装置を使う場合記録が残る。使用されたコードの種類は?ダイテツがそう問いかける

 

「グレードはAAA……回数は1回です、他にもあったかもしれないですが、調査は不可能です」

 

「AAAのコードを使用できるのは、指揮官クラスのみだ、となれば……」

 

「レイカー・ランドルフ司令や、サカエ・タカナカ参謀……あるいはハンス・ヴィーパー中佐でしょうか」

 

イングラムの問いかけにテツヤがAAAのコードを持つ人間の名前を挙げる。

 

「それと関係あるかどうかは判りませんが、1つ気になる事があります」

 

「何だ?」

 

イルムが挙手をし、テツヤが続きを促したことでイルムは報告を始める

 

「我々に何度か攻撃を仕掛けてきている。DCのパイロット……テンザンと言う奴の事ですが……リュウセイによれば民間人でバーニングPTの優秀なプレイヤーだったとか……」

 

バーニングPTの名前にイングラムやロバートの表情が強張る。

 

「バーニングPT? それが何か関係しているのか?」

 

「我々が適格者を見つけるために使用したシュミレーターだ。リュウセイ曹長はその結果によってSRX計画のパイロットに選ばれた」

 

「ふむ、ではDCもそのシュミレーターを使用して、何らかの選抜を行っていたという事か?」

 

「その可能性はあります。ただし、バーニングPTがそういう装置だと知る人間は、限られていますが」

 

イングラムの言葉で更に極東支部にスパイがいるかもしれないという疑惑が強まる

 

「まさか何者かが秘密裏に優秀なプレイヤーの情報をEOTI機関へ引き渡したと?」

 

テツヤの問い掛けにイングラムが頷く、あくまで可能性の話だがその可能性はゼロでは無いと告げる

 

「それでは極東支部にDCへの内通者がいる事に……」

 

ハガネの艦長室に緊迫感が満ちる。味方の中に敵がいる、それは強襲作戦を実行しているハガネにとっては最悪の事態となる

 

「駄目だって! 勝手に入ったら!」

 

「うるせえ! 俺はこの連中に聞きたい事があるんだよ」

 

だがその緊迫感は勝手に開かれた艦長室の扉と共に霧散する

 

「何だ? ミーティング中だぞ!」

 

テツヤが艦長室に入ってきたリオとマサキに怒声を発する。リオは申し訳ありませんと謝罪するが、マサキはそんな事は関係ないといわんばかりにダイテツに声を掛ける

 

「あんたがここの艦長か? ビアンって奴の居場所を知ってるか?」

 

マサキから告げられた言葉にダイテツは眉を少し上げ、マサキに質問を投げ返す

 

「何故そんなことを聞く?」

 

「ビアンの所にシュウが居るからだよ、俺は奴を追って地上へ来たんだ」

 

ダイテツの問いかけにマサキは少しだけ気分を害したようだが、ダイテツの問いかけに答えた。

 

「シュウだと? もしやグランゾンのテストパイロット……シュウ・シラカワの事か?」

 

「おっさん! あいつを知ってんのか!?」

 

ダイテツの口からもシュウの言葉を聞いて、マサキは艦長室の机を叩きながらダイテツに尋ねる。

 

「知ってるも何も、我々が乗っていたシロガネはシュウのグランゾンによって破壊されたんだ」

 

「じゃあ、あの時……南極で……」

 

テツヤの言葉にマサキは何かを思い出したように呟く。AGX-05……いやサイバスターが目撃されたのは南極で、そこでダイテツ達もサイバスターを目撃しているのだから

 

「お前こそ何故、シュウ・シラカワを知っているんだ?お前は一体何者なんだ?」

 

今度はテツヤがそう尋ねるが、マサキの返答は沈黙。暫く待っていたが、マサキが口を開かないと見るやイングラムが行動に出る

 

「マサキ・アンドー……だったな? 我々に協力する気は無いか?」

 

「イングラム少佐!?」

 

まさかの言葉にテツヤが大声を上げる、だがイングラムはそれを気にした素振りを見せず、マサキの説得を始める

 

「今この艦はビアン博士がいるアイドネウス島に向かっている」

 

「アイドネウス島……DCの本拠地だと!?」

 

「そうだ。総帥ビアン・ゾルダークとシュウ・シラカワをはじめとする、協力者達を倒すためにな」

 

その言葉にマサキは思案顔になる。そしてイングラムはダイテツに視線を向ける

 

「どうでしょう、艦長。少なくとも、現時点での我々と彼の目的は共通しています。武蔵とゲッターロボの事もありますし、彼も協力者と

して迎え入れるというのは? 我々は少しでも戦力を必要としています。マサキ・アンドーとサイバスターは大きな利益になると判断しますが……」

 

イングラムの説得によって、ダイテツはマサキ、そしてサイバスターを迎え入れることを決定し、ミーティングに割り込んでしまったと緊張しているリオにマサキを案内するように告げ、再びミーティングを再開するのだった……

 

 

 

第12話 敗北へ続く

 

 




ウェーク島基地はゲッター3がいればイージーモードだと思うんですよ、ゲッターの速度をシーリオンは追いきれないですし、装甲も厚いから有効打撃が入らない。水中戦使用がいるだけでこのシナリオはイージーモードになると思うので今回の形となりました。次回はグルンガストの話に入ろうと思いますが、ここも大胆にアレンジして行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い

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