第13話 魂を乱獲する者 その3
それは異様な光景だった、頭部が半分、胴体も凹みだらけ、そして右足と左腕しか存在しないアースゲインがビデオを巻き戻すように、その姿を修復させる姿は早乙女研究所を脱出時のゲシュペンスト・MK-Ⅲの変異と酷似しているように見えたが、それよりもおぞましく、そして邪悪な光景だった。既に活動を停止しているインベーダー、アースゲインを取り込み、全員が見ている前でその姿を修復……いや、ソウルゲインへと進化させたのだ。そして上空に向けて手の平から放たれたエネルギー弾の雨に全員が飲み込まれてしまったのだった……
「ぐっ……全員無事か……?」
タイプSのコックピットの中で頭を振りながらカーウァイが全員に尋ねる。青龍鱗の雨はメタルビースト・ソウルゲインが再生中であったこともあり、出鱈目な狙いだった。だからタイプSは幸運にも直撃はしなかったが、その余波で弾き飛ばされていた。
『こ……っ……い……が……しが……』
「くそ、何を言っているか全然聞こえんッ!」
ただのエネルギーではない、インベーダーのエネルギーも混ざったそれは強烈なジャミングを周囲にばら撒いていた。近くに居るはずなのに、まるで聞こえない声に痺れを切らしタイプSを立ち上がらせる。
「シャッ!!」
「ッ!?」
その瞬間に空を裂いて伸びて来たインベーダーの触手を反射的に回避させるが、肩の装甲を抉り取られてしまった。先ほどまではとは段違いの伸縮速度にコックピットの中でカーウァイは顔を顰めた。
「なるほど……随分と進化をしたようだな」
メタルビースト・アースゲインとはまるで違う。動きも構えもより洗練されている姿を見て、これはそう簡単に倒す事は出来ないなと小さく呟き、タイプSの巨体が空へと舞い上がる。それと同時に雪原を蹴り、メタルビースト・ソウルゲインに肉薄していたアクセルから通信が入った。
『カーウァイかッ!? 無事なようならあの化け物を引き離すのを手伝ってくれ!』
「何があった」
『エキドナを庇ってドラゴンが中破、行動不能になっている。インベーダーとやらがゲッター線を喰らうと言うのならば今のドラゴンは餌に過ぎん、これ以上あいつを進化させないためにもここで食い止める』
「了解した。武蔵には誰がついてる?」
『エキドナとヴィンデルがついている。グルンガストが中破してしまったからな』
「状況は最悪か……いや、気を緩めた私が悪いか」
メタルビースト・アースゲインを撃破し、撤退しようとしたタイミングだった。その気を緩む僅かなタイミングを待っていたメタルビースト・ソウルゲインの上手さにカーウァイは考えを改めた。
(インベーダーは獣ではない、驚異的な速度で進化する化け物だ)
これがメタルビースト・アースゲインと同じならばあんなタイミングで奇襲してくるなんて事はせずに、真っ向から襲ってきただろう。それをするだけの知恵がある……楽に戦える相手ではなくなって来ている事に初めて気付くのだった。
「ぬんッ!」
「!!!」
グルンガスト零式の刃を回し受けの要領で受け流し、がら空きの胴に拳を叩きつけ、密着した状態で青龍鱗を打ち込むメタルビースト・ソウルゲイン。その破壊力に吹き飛ぶグルンガスト零式を見て、上空からM-13ショットガンを撃ち込む、角度、位置、完全に死角からだったが……。
「なるほど、化け物と侮った私のミスだな」
『いやそうでもない。あのインベーダー……恐ろしいスピードで進化している、ここで倒さないと大変な事になる』
イングラムの言葉にカーウァイはその言葉は何の救いにもならないなと苦笑した。見せ付けるように開かれた右拳には今放たれたばかりのM-13ショットガンの弾頭が全て握られていた。
『射撃が効かないと言うのなら直接叩き潰すまでッ!』
『ウォーダン・ユミル、押して参るッ!!!』
「待て! 不用意に突っ込むなッ!」
相手の進化の速度が想像以上に速いのを警戒し、カーウァイがアクセルとウォーダンを止めようとしたが、ソウルゲインとグルンガスト零式は既にメタルビースト・ソウルゲインに向かって格闘戦を仕掛けてしまっていたのだった……。
エキドナ……いや、W-16は完全に混乱していた。どうして役立たずの自分が庇われて、ドラゴンが行動不能になったのか、そして武蔵が怪我をしているのか……。役立たずになった機械は廃棄されなければならないのに、何故自分を武蔵が庇ったのか理解出来なかった。
『大丈夫か!?』
『……いちち……大丈夫ですよ、ちょいと頭を切っただけですからね……オイラよりもゲッターがやばいですね』
通信機から聞こえてくる操縦桿を動かす音とレバーを動かす音が接触通信で聞こえてくる。その音を聞けば聞くほどにエキドナの混乱は深まっていく……。
(なんで……)
プロト・アンジュルグとゲッターロボではどちらが戦力になるかなんて言うまでも無い。それなのになんで自分を庇ったのか、考えてもエキドナにはその理由が判らない。
『エキドナさんは怪我とかないですか?』
一瞬何を言われたのか理解出来なかった。だがそれは当然だ、Wシリーズは使い捨ての兵隊。ある程度は修理、修復されたとしても、それすらも出来ないと判断されれば廃棄される運命にある。それ所か、自爆コードを与えられ、戦えないと判断されればコードATAで相手を道づれに死ねと言われているエキドナにとって、心配されるということは初めての事だった。
『大丈夫ですか? もしかして気絶してるんじゃ……ヴィンデルさん。オイラより、エキドナさんを』
『エキドナ、返事をしろ。それとも気絶しているのか』
不機嫌そうなヴィンデルの声に我に返り、エキドナはそこで初めて通信機のスイッチを入れた。
「大丈夫です、頭を打って意識が朦朧としていましたが、今はもう大丈夫です」
『いやいや頭打ってるなら大人しく……いちち……』
『武蔵君!? 君こそ重傷なんじゃないのか!?』
『いやあ、大丈夫ですよ。内臓も零れてないですし、骨も折れてないし……』
『大丈夫の基準がおかしいだろう!? エキドナ! 空中からアクセル達の支援を行え!』
「……了解しました」
ヴィンデルからの指示に了承し、プロト・アンジュルグを飛翔させる。だが返事に間があったとおり、エキドナにはその命令が不服だった。何故か判らないがその命令を受け入れたくないと一瞬思ってしまったのだ。
「……やはり私は壊れているのか?」
助けられた理由も……。
大丈夫ですかと心配する武蔵も……。
ヴィンデルの命令に即座に返事を返せなかった自分も……。
エキドナには自分が壊れているとしか思えないのだった……。
「武蔵君、怪我は正確に報告するんだ」
『ういっす。えーっと、腕にコックピットの砕けたガラスの破片が突き刺さってます。後、頭を大分切ったみたいで、目の前が真っ赤ですね……最後に足にもガラスの破片が刺さってるんで床が血塗れですけど……問題ないです』
「問題しかないッ! お前は馬鹿かッ!?」
どう考えても重傷だと怒鳴るヴィンデルだが、武蔵はからからと笑う。
『だから腹に金属欠片が刺さってる訳でもないですし、内臓が零れてる訳でもないから大丈夫ですよ。オイラはまだ戦える』
強靭な精神力と言えば聞こえは良い、だが武蔵の場合はそれは気狂いの類だとヴィンデルは感じていた。
(これが旧西暦の人間か……)
今よりももっと酷い状態で戦っていたのだろう、だから動ける段階ならば自分は戦えると言い張る武蔵にヴィンデルは歓喜した。これこそが自分が求める理想の兵士だと……だがここで武蔵を死なせる訳には行かないと内心の歓喜を隠しあくまで冷静な大人として対応する。
「大丈夫だと思い無茶をして、重症化したらどうする。それにドラゴンだって……」
ドラゴンだって動かないだろうと言おうとしたヴィンデルは初めてそれに気付いた。ドラゴンの傷が修復されているのだ、インベーダーやベーオウルフほどの速度では無いが、確実にその損傷は回復していた。
『すいません、心配させちゃったみたいですね。大人しくしてます、動かないなりに出来る支援はさせてもらいます』
「あ、ああ……そうしてくれ」
武蔵の言葉に返事を返せたのはありえない光景に慣れていたと言うのが大きかった。無機物が再生する……そのありえない光景を何度も見ていたからこそ、我を失わずに済んだ。だがそれと同時にゲッター線への興味が更に深まる事になった。
(空間転移、時間跳躍……そして自己再生……ゲッター線を手に入れることが出来れば……)
ゲッター線を扱う事が出来れば転移した世界でも自分達は戦える。だが、武蔵は確実に自分達に組する事はない……どうやってゲッター線を手に入れるか……ヴィンデルはグルンガストのコックピットの中で邪悪な笑みを浮かべてそれを考えていた。
「すいません。モニターとかが不調なんで、距離と角度の確認をお願いします」
「ああ、ドラゴンとモニターとレーダーを同調、こっちで角度、タイミングを合わせる、お前は引き金だけを引け、武蔵」
「助かります」
ドラゴンの肩の上に膝立ちで止まったプロト・アンジュルグ。その指示に従い、ゲッタービームの発射準備に入る武蔵。それを見て、ヴィンデルが武蔵がエキドナに気を許していることに気付くのは当然の事であり、それを生かして武蔵とゲッターロボを手中に収めることを計画し始めるのは必然の事であった……。
メタルビースト・ソウルゲインとアクセル達の戦いは最初こそアクセル達が優勢だった……だが今では完全に互角に持ち込まれていた。
「化け物め。まさか短時間でここまで進化するとは……」
「!!」
高速で駆け回るソウルゲインとメタルビースト・ソウルゲイン。その拳と足が何度も交差を繰り返し、火花を散らす。
「技を使う間もないッ!」
「ッ!」
最初こそ白虎咬や、青龍鱗などの技を使う間があったアクセルだが、メタルビースト・ソウルゲインは攻撃を喰らうたびにその動きを最適化していき、今ではアクセルでもギリギリ捌く事が出来ると言う猛攻撃を繰り出していた。
「ちいっ! ウォーダンッ!」
『承知ッ! ハイパーブラスターァアアーーーッ!!』
メタルビースト・ソウルゲインの胴体を蹴りつけ、間合いを強引に離したソウルゲインの影からグルンガスト零式の放った熱線がメタルビースト・ソウルゲインの全身を飲み込む。
『大丈夫か?』
「何とかと言った所だ、ちいっ、ベーオウルフよりも厄介だな。これがなッ!」
熱線の中に消えたメタルビースト・ソウルゲインは姿を現すと同時に、装甲版を全て回復させその紅い眼光を光らせる。
『ダメージがまるで通らないか……やはりEG装甲を破壊しない事には何ともならないか』
メタルビースト・ソウルゲインの中にいるインベーダーそれを撃破しなければならないが、EG装甲とインベーダーの回復力に遮られ、インベーダー本体まで攻撃が届いていない。その間にインベーダーは悠々と学習し、その動きを昇華させている。
『俺が撹乱する。あいつをこの場から逃がす訳には行かない』
ケルベロスモードに変形したR-SOWRDが雪原を駆け始める。それを見て、タイプSも飛行ではなくホバーで追走し、手持ち火器やグランスラッシュリッパーなどの遠隔操作の武器を駆使し、メタルビースト・ソウルゲインの撃破を試みる。
「ッ!」
『ちいっ! 早いッ!』
ケルベロスモードの低姿勢、そして高速機動からのビームクローも蜻蛉を切って軽々と回避し、右手から伸ばした触手をR-SOWRDに伸ばすメタルビースト・ソウルゲイン。だがそれがR-SOWRDに届く事は無く、漆黒の影が触手を纏めて掴んで止めていた。
『させんッ!』
そこに横から割り込んでグルンガスト零式が触手を掴み、力任せに引き寄せる。
「好機ッ! 白虎咬ッ!!!」
宙を舞ったメタルビースト・ソウルゲインに向かってソウルゲインが飛びかかり、エネルギーを込めた両拳を振るおうとした瞬間。両肘から特殊流体金属で作られた聳弧角と呼ばれるブレードが出現し、自身に向かって伸ばされたソウルゲインの腕を切り落とそうと反転した状態で肘を振るう。
『許せッ!』
「ぐあっ!」
「!?」」
背後からR-SOWRDが放ったビームライフル。それがソウルゲインの背中を捉え、バランスを崩したソウルゲインの頭上を聳弧角が素通りする。
『ターゲットロック。ブラスターキャノン、ファイヤッ!』
そしてソウルゲインを狙っていた、メタルビースト・ソウルゲインが目標を失いたたらを踏んだ所を狙い済ましたブラスターキャノンの一撃が叩き込まれる。
「ギギャアアアアーーッ!?」
咄嗟に回避したメタルビースト・ソウルゲインだが完全に回避しきれず、ブラスターキャノンの光の中に伸ばしたままの左腕が飲み込まれ消滅する。初めてメタルビースト・ソウルゲインがインベーダー特有の耳障りな悲鳴を上げた。
『続けて持って行けッ! アクセルッ!』
「ふっ、良い距離だ、これがなッ!」
ステルスブーメランを喰らい、僅かにメタルビースト・ソウルゲインの姿が更に上に打ち上げられる。その隙をアクセルは見逃さず、ソウルゲインの両腕の力だけで機体を持ち上げ、カポエラの要領で回し蹴りを叩き込み、跳ね起きる動きを利用してメタルビースト・ソウルゲインを更に蹴り上げる。
「この切っ先、触れれば切れるぞッ!」
地面を蹴ったソウルゲインの姿がぶれ、メタルビースト・ソウルゲインの身体に深い切り傷が刻まれる。
「舞朱雀……貴様に見切れるかッ!!」
上下左右、それに加え斜めの動きも加わり縦横無尽の連撃がメタルビースト・ソウルゲインの身体を切り刻む。
「でええぃッ!!!」
トドメの一撃と言わんばかりに叩き込まれた上段からの一撃をメタルビースト・ソウルゲインは右腕を犠牲にして、直撃を防いだ。
「眼前の敵は全て打ち砕くッ! 斬艦刀疾風怒涛ッ!!!」
だが両腕を失ったメタルビースト・ソウルゲインが素早く体勢を立て直すことは出来ず。零式の上段からの振り下ろしがメタルビースト・ソウルゲインを逆袈裟に切り裂いた。
「が、ガガガアガガガ……ッ!」
糸が切れた人形のように動き回るメタルビースト・ソウルゲインは両腕を失い、逆袈裟に両断されたのをインベーダーの体組織が辛うじて繋げているだけで、今にも爆発しそうな勢いだった。
「この一撃で決める!」
トドメにソウルゲインが駆け出そうとした瞬間。メタルビースト・ソウルゲインの両腕の切断面から触手が伸び、雪原に埋もれているメタルビースト・アースゲイン、そしてインベーダーを突き刺し、その身体に引き寄せる。
「まだ再生するのか! この化け物はッ!? ええいッ! 邪魔をするなッ!」
『あいつを再生させるな! ここで仕留めるぞ!』
『判っている!!』
全員が見ている前でメタルビースト・ソウルゲインがインベーダーやメタルビースト・アースゲインを取り込み、決死の攻撃で与えたダメージを修復させていく。勿論イングラム達もそんな行動を隙にさせるわけには行かないと回復を妨害しようとするが、全身から伸びた触手に阻まれ、ソウルゲインとグルンガスト零式の動きは封じられ、R-SOWRDとタイプSの射撃は触手に防がれメタルビースト・ソウルゲインには届かない。
『くっ、不味いぞ!』
『これ以上進化されたら手の打ちようが無くなる』
戦っているうちにどんどん進化を繰り返したメタルビースト・ソウルゲイン。ここで再び進化されてはそれこそ、今度こそ勝ち目が無くなると焦りばかりが募り、攻撃に集中しすぎて防御が疎かになる。しかしそれでもメタルビースト・ソウルゲインには攻撃が届かない。
『これよりゲッタービームを照射する! 各員メタルビースト・ソウルゲインから離れろ! 5……4……3!』
エキドナからの通信が入り、攻撃に前に出ていたアクセル達が後退する。その直後空気を焼きながら放たれたゲッタービームが再生を完了させたメタルビースト・ソウルゲインの左半身を跡形も無く消し飛ばした。
『当たりましたか!』
『ああ。アクセル隊長! 今の内にトドメを!』
「言われるまでも無いッ!」
左半身を失い崩れ落ちたメタルビースト・ソウルゲインに向かって、聳弧角の一閃が振るわれメタルビースト・ソウルゲインはその場で風化するように崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……ふう、これでひと段落着いたが、気を緩めている時間はなさそうだな」
『ああ、修理や補給を行いたいが……急いで目的地のテスラ研に向かうべきだろうな』
インベーダーが強くなっている、更に言えばブラッドハウンドによって時空転移システムが破壊されている可能性が浮上した今。悠長に準備を整えている時間は無いと判断し、アクセル達はギャンランドの待つ基地へと慌てて帰還して行くのだった……雪に紛れ、紅い宝玉が逃げるようにその場から雪原の中に潜っていくのにも気付かずに……。
一方その頃。ある基地では……輸送機の出発準備が行われていた。積み込まれる2体の機体を見上げながら、作業着に身を包んだピンク色の髪の少女が不安そうな顔をして、タブレットを手にした眼鏡の青年に声を掛ける。
「ラージさん、本気でテスラ研に向かうつもりですか?」
「ええ、僕達が開発したエクサランスの試験を行うのは元々テスラ研でしたし、ここにいつまでも留まる訳にも行きませんからね」
「で、でもでも、また化け物が出たって……やっぱりもう少し考えるべきじゃないかな?」
考え直すように説得している少女の後ろから赤髪の気の強そうな少女が姿を見せて肩に手を乗せる。
「ミズホ、そんな事を言っていては何も進まないわよ?」
「フィオナさん……でも危険なのは避けるべきだと思うんです」
ミズホ・サイキは出発を考え直すべきだと訴えるが、フィオナ・グレーデンとラージ・モントーヤの意見は変わることは無かった。
「くそっ! やっぱりあいつらやりやがった!! ラージ! フィオナ! ミズホッ! 早くレデイバードに乗り込めッ!!」
滑走路に向かって走ってきたフィオナを似た顔立ちの青年がそう叫び声を上げる。
「ラウルさん!? 一体なにが起きているって言うんですかッ!?」
「簡単ですよ、ミズホ。軍はエクサランスの強制徴収を決めたんです」
「そんな!? エクサランスはまだテスト機ですよ!?」
「今の状況じゃそんなのお構いなしって事ね! ラージ、ミズホ! 出発準備をするわよ! あれを見れば判るでしょ!」
非武装のラウルを追いかけている武装した軍人と出撃準備をしているゲシュペンスト・MK-Ⅱを見ればミズホも状況のまずさを理解して、操縦室に駆け込む。
「それで軍人さん。貴女はどうする? 私達を拘束する?」
レデイバードの中にいた女性軍人に声を掛けるフィオナ。だがその目と口調は自分達を拘束しないと確信したような色を浮かべていた。
「……ううん。私ももうこの基地にいるのは疲れたわ。私の機体も積み込んでくれるなら協力しても良い、ここに居たんじゃ私の目的はかなわないから……」
「OK、どうせ私達だけじゃどうしようもならないし、貴女の機体って?」
「あれ」
無造作に指された指の先を見て、フィオナは自然にその指の先に視線を向けた。そこにはトリコロールのPTが立っていた。
「あれって……マジ? R-1でしょあれ?」
女性軍人が指差したトリコロールの機体を見てフィオナは目を見開いた。それはこの基地のエースの機体であり、異星人の脅威から地球を護った特機の1つであるSRXを構成するPTの1つだったからだ。
「うん。お願い出来る?」
「勿論! どうせこれから先私達は追われる身だし、味方は多いほうが良いからね! えっと名前は?」
「……ラトゥーニ、ラトゥーニ・スゥボータ」
光の無い曇った目で自分を名を名乗る少女にフィオナは危うい物を感じたが、化け物が闊歩する今。家族か、それとも恋人か、はたまた両方か……それらを失い復讐に走る者は何人も見てきた。この少女もそのうちの1人だと、その顔を見れば判った。だが、フィオナは何も言わず、レディバードのクレーンアームを利用して、R-1を掴み上げ、強引に格納庫に搭載する。
「おいおい火事場泥棒みたいなことするなよ!」
「違うわよ! スカウトした子の機体よ! どうせ追われる身なんだから味方は多いほうがいいでしょ! ミズホ! ラージ! ラウルが
乗り込んだわよ! 出発してッ!」
『了解! エンジン点火、離陸準備OKです!』
『ええ、では行きましょうか! フィオナ、ラウル、しっかり掴まっていてくださいよッ! 安全に離陸なんて出来ないですからね!』
『逃がすな! 捕らえろ!!』
『最悪パイロットも技術者も殺しても良い! 機体だけ回収出来れば良いのだッ!』
ビームライフルやM950マシンガンをかわしながら、この基地唯一の輸送機であるレディバードは天高く舞い上がった。遠ざかる基地を窓から覚めた視線で見つめながら、ラトゥー二は首から下げた凹み血塗れのドッグタグを握り締める。
(憎い、憎いぞ……私は全てが憎い)
(大丈夫、大丈夫だよ。判ってる、判ってるよ。私も憎い)
自分……自分達から全てを奪った世界が憎い、大切なリュウセイを殺したキョウスケが憎い。復讐する為の力――痛く苦しい、人体実験を憎悪だけでラトゥーニは乗り越えた。そして後天的な念動力者となり、R-1のパイロットとなった。その時からラトゥーニの脳内にはもう1人の存在が生まれることになった――それはかつてはリュウセイを巡って、競いそして友情を育んだ少女の声だった。
(……殺す、許さない、許さない、許さない、引き裂いて、磨り潰して、殺してやる)
脳内に響き続ける怨嗟の声。常人ならば発狂するほどの激しい憎悪と殺意をラトゥーニは受け入れ、そして己もまた復讐の徒となったのだ。だから、自分達の自己保身ばかりに走る基地を捨て、ラウル達と行く事を決めたのだ。
(判ってる。判ってるよ……だから私に力を貸して、マイ)
(お前は私、私はお前……もう私はお前の一部。お前が望むままに私は力を)
(そしてマイが望むままに私は戦う)
俯いたラトゥーニの左の瞳は禍々しい金色に染まっていた。人体実験によってラトゥーニの脳内にはR-3、そしてSRXのパイロットとして戦い、そしてキョウスケ・ナンブによって殺された「マイ・コバヤシ」の思念が宿っていた……。2人の意志は1つとなり、マイであり、ラトゥー二、そしてラトゥーニでありマイと言うべき存在へとなっていた。
((絶対許さない……リュウセイを殺した……お前を私は……私達は許さない、キョウスケ……ナンブッ!))
蒼と金色に輝くオッドアイに憎悪と殺意をその目に宿した幼き復讐者を乗せ、レデイバードはテスラ研へ向かって飛び立つのだった……
第14話 逃亡者へ続く
まずは1つ。石を投げないでください、いいですね? 石を投げないでくださいよ? OG2編で向こう側を書くと決めた段階で、闇落ちラトちゃんは出す予定でした。リュウセイをアインスケに殺されてますからね。ハイライトOFFになるのは確定ルートだと思うんです、更に人体実験によってマイの思念を脳内に宿した事で念動力に覚醒し、R-1のパイロットになったアヴェンジャーラトゥーニが爆誕することになりました。マイであり、ラトゥーニ、ラトゥーニでありマイと言う1つの身体に2つの精神と言う状態になっております。この復讐者ラトちゃんはOG2編ではでませんが……うん、流れの中で夢とかで、ラトマイに干渉するかもしれませんね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い