進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第14話 逃亡者

第14話 逃亡者

 

 

メタルビースト・ソウルゲイン、メタルビースト・アースゲインを退けた武蔵達は機体の修理もそこそこに、基地を出てアメリカの大地を進んでいた。

 

「それでアクセルさん。次の目的地ってどこなんですか?」

 

「テスラ研に向かう前に保護できる仲間を回収する予定としか聞いていない」

 

「やっぱり仲間が増えると頼もしいですよねぇ」

 

「そうだな、今回のインベーダーとの戦いで判った。戦うならば倒しきらなければならんとな」

 

「進化されると厄介ですからね」

 

普通に話をしている武蔵とアクセルだが、2人とも逆立ちして腕立て伏せをしている最中であり、上半身裸で額から汗を滴り流していた。

 

「アクセル隊長、武蔵。レモン……」

 

エキドナが格納庫に入って来たが武蔵とアクセルを見ると高速で回れ右をして扉を閉めた。

 

「今誰か呼びませんでした?」

 

「気のせいだろう?」

 

トレーニングに集中していた2人はエキドナの登場に気づく事無く、200回の腕立て伏せを終えるとタオルで汗を拭い、スポーツドリンクを口にする。

 

「それで仲間って言うのはどんな人なんですか?」

 

「エキドナが乗っているプロトアンジュルグの正式採用機アンジュルグのパイロットで女だ。エキドナと同じで要領とかは悪いが、それなりに戦力としては使える」

 

「いやいや、仲間を使えるとか言うのはどうかと思いますよ?」

 

「……悪いな、今朝一緒に飯を食っていた奴が数時間後には死んでるなんてざらでな、使えるかどうかで判断する癖があるんだ」

 

エキドナ達が人造人間であると言うことを隠しておきたいアクセルはぶっきらぼうにそう言うと、上着を羽織り調整中のソウルゲインの元へ足を向ける。

 

「……なんともなあ、難しいもんだ」

 

しかし武蔵は既にエキドナ達が人造人間だと言う事を知っており、それを隠そうとしているアクセル達に悪いなと思いながらスポーツドリンクを咥えながら格納庫を出る。

 

「あれ? エキドナさん? どうしました?」

 

格納庫の外の壁に背中を預けて座っていたエキドナにそう尋ねるとエキドナは素早く立ち上がり、手をぶんぶんと左右で振る。

 

「あ、あ、いやいや、なんでもない。大丈夫、うん、大丈夫。なんでもない」

 

スタスタと言う音が聞こえてきそうな勢いで歩き去るエキドナの背中に呆然と武蔵は手を伸ばす。

 

「なんかあったんじゃないのか……」

 

「そうね、エキドナには武蔵とアクセルをよんできてって頼んだんだけどね」

 

「うおっ!? れ、レモンさん?」

 

「はぁーい。アクセルはまだトレーニング中?」

 

「あー終わったからソウルゲインの微調整をするって言ってましたよ?」

 

「そう、じゃあ私はアクセルを呼んでから行くからブリーフィングルームに先に行っててね?」

 

レモンの言葉に判りましたと返事を返し、ブリーフィングルームに歩いていく武蔵を見送りレモンはにまあっと楽しそうに笑う。

 

「やだやだ♪ エキドナが乙女みたいな反応をして……やっぱりこれ自我に目覚めてるわよね!? ラミアも合流したら武蔵と組ませてみようかしら? あ、でもそうするとエキドナが嫉妬するかしら? そうなったらもっと自我に芽生えるわよね!」

 

「……お前、どうした? 頭でも打ったかレモン?」

 

自分の娘の成長が嬉しくて仕方ないと言わんばかりに顔を緩めていたレモン。だが背後から聞こえてきたアクセルの声に油の切れたブリキ人形のような動きで振り返る。

 

「……見た?」

 

「見た」

 

哀れな物を見るような目をしているアクセルを見て、レモンは小さく溜め息をはき、服の中から注射器を取り出した。

 

「……忘れてくれるかしら?」

 

「判った。判ったからその怪しげな色の薬が入った注射器を手放せ」

 

やると言ったらレモンはやる、アクセルはそれを知っているから両手を上げて降伏宣言をした。

 

「それよりもだ、あんまり寄り道をしているとヴィンデルが怒るぞ」

 

「そうね、それじゃあ行きましょうか」

 

しれっとした顔で歩きだすレモンを見てアクセルは溜め息を1つ吐いた後。レモンと共にブリーフィングルームに足を向けるのだった……。

 

「や、やはり私は壊れて……」

 

なおエキドナはさっきの上半身裸の武蔵を見て、筋肉フェチに目覚めかけていたのか早鐘を打つ己の心臓に手を当てて、壊れたのかと不安そうに呟いていたのだった……。

 

 

 

 

ブリーフィングルームでの会議の中。武蔵が手を上げて質問を口にした。

 

「時流エンジン? なんですかそれ?」

 

次の目的……それは先日基地から脱走したと言う時流エンジン開発チームとの合流だった。

 

「時流エンジンって言うのはね。時の流れでタービンを回して無限の動力を得るって言うエンジンよ。つまり、ゲッター炉心の仲間ね」

 

「なるほど! オイラには判らないって事が判りましたッ!」

 

弾ける笑顔の武蔵に苦笑するレモン達だが、エキドナは口を押さえてんんっと唸っていた。

 

「どうしました?」

 

「あ、いや、なんでもない。うん、大丈夫」

 

エキドナの口調はぶれっぶれになっているが、本人が大丈夫と言うのは武蔵はそれ以上あえて突っ込まなかった。

 

「時流エンジン開発チームは「ラージ・モントーヤ」「ミズホ・サイキ」「フィオナ・グレーデン」「ラウル・グレーデン」の4人だ。噂では時流エンジンを搭載した機体も2機開発していると言う。メカニックが2人、パイロットを2人手にする機会を逃すわけには行かない。連邦およびインベーダー、アインストに補足される前に発見したい」

 

「確保すると言うが、協力すると言う保障は無いだろう。断られたらどうするつもりだ?」

 

最もな意見を口にするイングラム。だがその通りである、開発チームも追われている身だ。同じく追われているシャドウミラーに合流しろと言われても、追われるリスクが高まるだけだ。断られる可能性は十分にある。

 

「アメリカはインベーダーの勢力圏、単独で逃げることなど不可能に近いです。互いに打算はあれど、協力関係は築けるでしょう」

 

だが単独で逃げれば死ぬと判っていれば、リスクを承知で協力する可能性は十分にあると言い切るヴィンデル。それは今の武蔵達とヴィンデル達と同じ状況だったが、武蔵からすればそういうのは好きではなく、思いっきり顔を顰めながら口を開いた。

 

「オイラ、そう言うのはあんまり好きじゃないですね。脅してるみたいで」

 

武蔵の言葉はこの場にいる全員にとっては甘い言葉だった。自体は深刻で、好きとか嫌いで行動しているだけの余裕は既にないのだ。

 

「そうだとしても、我々は生き残る為に行動しなければならない。その為の手段は選んではいられないのだ、そこは理解して欲しい」

 

「……はい」

 

「そう気を落とさなくても良いだろう武蔵。開発チームも死にたくないのは同じだ、合流できるとなれば喜んで合流してくる可能性はある」

 

「そ、そうですよね。エキドナさん」

 

エキドナの言葉にヴィンデルとアクセルは一瞬驚いた表情を浮かべた。言われた事しか出来ない筈のエキドナが武蔵を慰めるような行動に出た。それを初めて目の前にした2人は驚き、レモンはエキドナの成長に笑みを浮かべた。

 

「そうね、エキドナの言う通りよ。味方は多いほうがいい、素直に協力してくれる可能性はあるわ。脱走した基地がここ「オレゴン基地」、予想される行路はこうなるわ」

 

モニターの地図に行路予想を描くレモン。その進路は奇しくもギャンランドの物と重なっていた。

 

「開発チームの目的地もテスラ研と言うことか」

 

「ええ、テスラ研でテストを行う予定だったけど、足止めされてたみたいだからね。だから私達と目的地は一緒……ただ問題は、ここ」

 

アイダホ・ネバダ・モンタナに印を打ったレモンは真剣な表情を浮かべる。

 

「ここで巨大なインベーダー反応を感知――おそらくクロガネがどこかにいる」

 

インベーダーに乗っ取られた人類の希望――クロガネが近くに待機している。その言葉にブリーフィングルームに緊張が広がる。

 

「なるほど、それは厳しいな」

 

「進路的に外す訳にも行かないしな」

 

アラスカ州からコロラドを目指しているギャンランドは今ワシントン上空だ。数時間もしないうちにアイダホに差し掛かるだろう――時流エンジン開発チームと合流する可能性が高いのはアイダホ州に差し掛かる頃合だろう。

 

「一応こっちからも文章通信は送っておくわ。向こうがどうでてくるかはわからないけどね……」

 

「向こうも馬鹿でなければ、素直に協力する……ッ! ちいっ、休んでいる時間もないか!」

 

ギャンランドに鳴り響く警報。それはギャンランドがインベーダーに補足された証であり、レーダーに無数に浮かぶ熱源反応にブリーフィングルームにいた全員の顔が緊張に強張るのだった……。

 

 

 

 

 

一方オレゴン基地を脱出したラウル一行はレモンの推測通り、アイダホ州上空を経由してコロラドを目指していた。

 

「さてと、進路設定を済ませた所で今の僕達の状況ですが……食糧2日分、それと補給1回分の資材と、小破を直すだけの部材しかありません」

 

ラージからの絶望的な報告にラウル達の顔が曇るが、突然の脱出騒動で1回分の補給と応急処置が出来るだけの資材。そして食糧2日分を持ち逃げ出来ただけでも御の字だ。

 

「そうなると、やっぱりどこかの基地へ向かうしかないですかね?」

 

「……いや、それは難しいと思うわよ? もうあたし達は反逆者、ヘタに連邦の基地に近づけば……ドカンよ」

 

拘束されそうになったのを振り切って脱出して来たのだ。もう連邦にとっては反逆者に過ぎない、ヘタに基地に近づけば問答無用で打ち落とされる可能性は高かった。

 

「で、でもそれはオレゴン基地だけで他の基地は違うかもしれないですよ」

 

まだ希望を持ちたいのか、他の基地なら保護してくれるかもしれないというミズホの意見をラトゥーニが両断した。

 

「ううん、もう駄目。連邦軍は試作機強奪犯として貴女達を撃破することを決定した」

 

通信機を聞いていたラトゥーニの言葉にミズホの顔が絶望の色に染まる。

 

「やっぱり多少無茶をしても、直接テスラ研に向かうべきだったなあ……」

 

「多少の無茶所じゃ無いですよラウル。燃料切れで墜落するつもりですか?」

 

オレゴンに向かったのは輸送機の燃料切れが原因だった。あのまま強行していればアイダホで墜落していたと言うラージにラウルは肩を竦める。

 

「しかしまぁ……大変な事になってるよな。どこもかしこも化け物だらけ……イージス計画失敗はシャドウミラーが原因って聞くけどさ……それって実際どうなんだ? ラトゥーニ?」

 

ラウルの言葉にラトゥーニは首を左右に振り、化け物出現の事実を口にした。

 

「……イージスシステム起動と同時に化け物が溢れかえった。根底からイージス計画は破綻してたんだと思う」

 

「なるほど、責任逃れと言うことですか……となれば、やはり連邦は信用出来ないですね、口を開けばシャドウミラーシャドウミラーですしね」

 

「まぁ、英雄部隊だしね。正直中継で見たカーウァイ・ラウ少将の処刑は正気かと思ったわよ」

 

異星人襲来の際に先頭に立ったシャドウミラー隊の隊長を処刑……それは連邦が何かを隠そうとしていると言う都市伝説の信憑性を爆発に高めた。しかし良く考えれば、シャドウミラーが反逆したのはイージスシステムの危険性を理解していたからだと今になれば判る。

 

「さて、ここで朗報です。ギャンランドから文章通信が入っていますがどうしますか?」

 

「ギャンランドって、シャドウミラーの旗艦じゃない!?」

 

「マジか、近くに居るのか?」

 

「ええ、目的地は同じテスラ研ですし……正直僕はシャドウミラーの技術顧問のレモン・ブロウニングとは面会したかったですが、その時には既に連邦に抑えられてましたし……生き残る為にはギャンランドと合流するべきだと判断しますが……どうします?」

 

一応体裁として尋ねたラージ。だがこのまま連邦に追われ、化け物の巣でも追い込まれたら死はまのがれない。全員がシャドウミラーと合流するべきだと考えていた。

 

「俺はシャドウミラーと合流するべきだと思う。どうせこのままだったらやってもない反逆罪を押し付けられて囚人だぜ? それなら、シャドウミラーと居た方がいい」

 

「そ、そうですね……向こうは話も聞かないで撃って来ましたしね。話を聞いてくれる可能性がある方が良いですよね?」

 

「ええ、あたしも賛成。ラトゥーニは?」

 

「……私はどっちでも良い、ラウル達に任せる」

 

ラウル達に任せると言ったラトゥーニだが、突如その顔を険しくさせ立ち上がる。

 

「どうかした?」

 

「来る……」

 

「来る? それは……ロックオン警報ッ!? ラウル!」

 

「おう! ラージ、ミズホッ! 自動操縦解除! マニュアル操縦に切り替えてくれ!」

 

ラージとミズホが必死にコンソールを操作し、自動操縦からマニュアル操縦に切り替わった所をラウルが即座に機体を反転させる。その直後に進路を焼き払った熱線にラウル達の顔色が変わった。

 

「今のは……どうみても戦艦級の主砲よね?」

 

「ええ、間違いないですね。そして連邦軍に今や戦艦は無い……つまりそれが何を意味するか……言うまでも無いですね」

 

モニターやレーダーを見なくても今何が迫ってきているか、ラウル達には判っていた。

 

「ラージ、文章通信先に行路データとSOS通信。進路をそっちへ向けるッ!」

 

「逃げ切れる確率が低ければ、そっちに頼るしかありませんねッ!」

 

ミサイルや主砲が放たれ、その辛うじて回避を続けるレデイバードだが、その船体は大きく揺られる。

 

「これ不味いわよ。ミズホ、今どうなってるの!?」

 

「索敵結果……出ましたッ! く、クロガネです!」

 

クロガネ……それは最初に出現した化け物の群れに特攻し消え去った筈のスペースノア級。それはラウル達がインベーダーに補足されたと言う事を示していた……。

 

メタルビースト・クロガネの船体を埋め尽くしている不気味な瞳がぎょろぎょろと動き回り、雲の間に紛れて逃げていこうとするレディバードを逃がさないと言わんばかりに無数の瞳で睨みつける。

 

「ギャアアアアーーーッ!!」

 

「「「「シャアアアーーーッ!!」」」」

 

船体から響くおぞましい咆哮に呼応するように無数のインベーダーが解放されたままのハッチから飛び立ち、その後を翼が生えたメタルビースト・ゲシュペンストが続いて出撃していく。

 

「……シャアア」

 

唸り声を上げメタルビースト・クロガネは獲物を追詰めるようにゆっくりとその船体を進ませる。

 

「「「……」」」

 

そして闇に満ちたクロガネの格納庫の中では、6つの不気味な複眼がゆっくりと開き始めているのだった……。

 

 

第15話 悪魔王の名を冠した戦神 その1へ続く。

 

 

 




ここでメタルビースト・クロガネ出現です。勿論その内部には何かやベイ奴がいると言う感じで今回は区切りがいいので話を切りたいと思います。次回はラウル、フィオナ、ラトゥーニの3人VSメタルビースト・ゲシュペンスト、インベーダー戦から入って行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。 


そして今回更新に踏み切った理由ですが、活動報告のノワールGラスト20連ガチャをご覧ください。

理由は大体そこにありますし、触媒戦法を間違えたのか、色々思いながら今回の臨時更新をさせていただきました。

後これは関係ない話ですけど

マシンセルでブラックゲッターがノワールG進化してもおかしくないよね?(目ぐるぐる)です

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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