進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第18話 分岐点

第18話 分岐点

 

武蔵はコンテナの上に腰掛けて、ぼんやりとゲッターロボD2を見つめていた。思えば自分はゲッターロボの事を何も判っていないと今回は改めて痛感していた。

 

「ゲッター……おめえは何を見てるんだ。ええ、兄弟」

 

自分とゲッターロボは一蓮托生だと思っていた。だが新西暦に初めて来た時も、自分が死んだ後の時間にも、そして今平行世界にいるのも全てゲッターロボが武蔵をここに連れてきた。それが今初めて何故と思ったのだ、あの絶体絶命のピンチの時にゲッターは確かに助けてくれた……だが、助けてくれるならもっと早くても良かった筈だ。あのピンクの不気味な生物……それが何か関係しているように武蔵には思えてた。

 

「武蔵、こんな所にいたのか」

 

「エキドナさん、すいません。勝手に抜け出したら不味かったですよね?」

 

「全くだ」

 

武蔵は転移した直後に意識不明となり医務室に運ばれていた。時流エンジン開発チームとの話し合いがあるからその場に1人残され、目を覚ました後武蔵は引き寄せられるように格納庫に来ていたのだ。

 

「アクセルさんとかも探してますか?」

 

「当たり前だ。お前とゲッターロボがどれだけの重要な立ち位置にいるのか判っていないのか?」

 

時空間転移、時間跳躍……それは全てゲッターロボによって発生している。プロジェクトEFを計画しているヴィンデル達にとっては武蔵もゲッターロボも何よりも重要なファクターだ。唯一ゲッターロボを操れる人材がいなくなれば、騒動になるのは当然だと言いながらエキドナは手にしていたスポーツドリンクのボトルを武蔵に手渡す。

 

「何か悩んでいるのか?」

 

「悩んでいるって言うか……そうっすね。判らないんですよ、兄弟が」

 

「兄弟?」

 

「……ゲッターですよ。オイラにはゲッターは兄弟同然で、色んなことを経験してきましたよ。だけど、今回のは流石にちょっとね」

 

R-1改から出てきた眼に光のないラトゥー二を見て、新西暦の楽しそうに笑うラトゥー二の事を思い出した。そしてそれと同時にもっと早くこの世界に来ていれば、リュウセイ達が死ななかったのでは無いか? いや、もっと言えば、イージス計画を止めるのを協力できたのでは無いかと言う考えがどうしても武蔵の頭から離れなかった。

 

「出来る事しか私達には出来ない。お前の考えている事は自分に出来無い事を望んでいる。……それは高望みだ。武蔵」

 

「エキドナさん……はは、そうっすよね。人間に出来る事なんて高が知れてますよね」

 

可能性だけでも時間跳躍と言う可能性を示唆されたからこそ、武蔵は悩んでいた。だがそれはエキドナからすれば馬鹿な悩みだった――Wシリーズとして生を受けたエキドナ……いや、W-16は出来る事しか出来ないのだ。自分の限界を超えて行動しようなんて思わない、だから悩まないし、迷いも無い。だからエキドナには武蔵の気持ちが判らない――何故悩むのかそして、どうして迷うのかが理解出来ない。だがエキドナは気付かない、本当にW-16と呼ばれていたエキドナだったのならば、武蔵にこのようなことを投げかけたりはしない。ブリーフィングルームにすぐにでも連れて行き、話し合いに参加させていただろう。エキドナも自分には判らない所で変化を始めていたのだ……。

 

「飲み終わって落ち着いたら、ブリーフィングルームに行くぞ」

 

「ういっす」

 

「アクセル隊長にはこっちから連絡をしておく」

 

「……重ね重ねすいません」

 

「別に構わないさ」

 

そう笑いエキドナは通信機でアクセルに武蔵を見つけたという旨、そして少し混乱が見えるので落ち着いたらブリーフィングに参加させると報告した。

 

「……オイラ馬鹿だから、難しい事は判らないんですよ」

 

「そうか。今も判らないのか?」

 

「……こう、オイラの戦いって、明確に悪い!って奴がいて、それを倒せば平和になるっていう単純なものだったんですよ。でも今は……

どうすればこの戦いが終わるのかって事が全然判らないですよ」

 

「……お前は戦いが嫌いなのか?」

 

「嫌いですよ、あんなもん好きな訳が無い……でも守りたい物があれば戦うしかないじゃないですか、エキドナさんは戦いが好きなんですか?」

 

武蔵にそう問いかけられ、エキドナは言葉に詰まった。Wシリーズはヴィンデル・マウザーの掲げる永遠の闘争の実現の為に存在している。だから戦う事こそがエキドナの存在理由……だから戦いは必要不可欠な筈なのに……。

 

「そうだな……私にも判らない……判らなくなってしまった」

 

「そうですか……やっぱり、生きるって言うのは難しいですね」

 

武蔵と出会う前ならば即答できた。だが今のエキドナには……ヴィンデルの掲げる永遠の闘争に即座に賛同出来なかった……自身の存在理由であったとしても……それが本当に正しい事なのかと言うのが判らないのであった……。

 

(やはり私は壊れてしまったのか?)

 

創造主の願い通りに動けない自分に壊れてしまったと感じるエキドナだが、それこそが創造主レモンが求めた。Wシリーズの自我の目覚めであると言うことには気付けないでいるのだった……。

 

 

 

 

武蔵とエキドナがコンテナに揃って座り、互いの頭を悩ませている頃――ブリーフィングルームでは……。

 

「落ち着いたか?」

 

「……はい、すいません」

 

「いや。良い、平行世界のイングラムと言ってもそうは受けいられる物では無いからな」

 

ラトゥー二にそう声を掛けるイングラムの頬には打撃の痕があった。それは、イングラムの姿を確認したラトゥー二が、どうしてリュウセイを助けてくれなかったのか、どうして生きていると伝えてくれなかったのかと詰め寄り、拳を振りぬいた痕だった。即座に取り押さえようとしたヴィンデルだったが、それはイングラム自身に制されたのだ。

 

「ラトゥー二・スゥボータには俺を殴る権利がある」

 

そう言って甘んじてその拳を受け入れたのだ、本当ならば受け止める事も反撃する事も出来る中。歯を食いしばり、その小さな拳に込められた激情を受け入れる事を選択したのだ。

 

「……本当にすいませんでした。良く見れば判るのに……」

 

良く見れば自分の知るイングラムよりも数段若い……それなのにその顔を見た時にラトゥー二の中で何かが弾けてしまったのだ。それが判ったから、その小さな身体にどれだけの悲しみを背負っているのかを考えた時イングラムにはその拳を受け入れるという選択しかなかったのだ。

 

「すまないな、騒動になったがブリーフィングを始めよう」

 

席に腰掛け、何事も無いようにブリーフィングを始めようと言うイングラムにヴィンデルは何も言えず、イングラムに促されるままにブリーフィングを始めた。

 

「なるほど、別の世界のイングラム・プリスケン大佐とカーウァイ・ラウ少将と言うことですか……」

 

その内容はイングラム達がこの世界の住人では無いと言うこと、そして時空転移を起しているゲッターロボに関しての内容だった。

 

「あら? 結構早く受け入れるのね?」

 

「そうですね。本当なら何を馬鹿なと言うんですけど……実際に見てますからね」

 

証拠があれば疑いはあっても受け入れるしかないというラージにレモンは笑う。ラージ・モントーヤは確かに若い、だがその科学者としての矜持、その知識も本物であると理解したのだ。

 

「時流エンジンの情報提供を求める、もしゲッターロボと合わせて時間跳躍が可能ならばそれの1つの手段としたい」

 

「ヴィンデル大佐。確かに時流エンジンは僕の父が作ったタイムマシンの理論を発展させた物であると言う事は認めます、ですが開発段階であり、そんな物をお渡しする事は僕には出来ません」

 

「ほう? では完成したら渡してくれると?」

 

「はい、今の時流エンジンはエクサランスに搭載している2つしかありません。今この状況で、エクサランスのエンジンを取り出すことは得策では無いと思うのですがどうでしょうか?」

 

重い空気の中でヴィンデルと真っ向から話し合うラージ達をラウル達は無言で見つめるしかない。

 

(なんか、状況悪くないか?)

 

(そ、そうよね……なんでラージあんなに喧嘩腰なのかしら?)

 

(……何か思う事があるんでしょうか?)

 

シャドウミラーに保護されたのだから、エクサランスの1機の時流エンジンを渡しても良いと思っていたラウル達。だが、それはラージによって全て封殺されていた。それ所か、ブリーフィングルームでは発言しないで欲しいと言われていたのでこの険悪なムードに不安を感じながらも見ていることしか出来ない。

 

「ヴィンデル、今は戦力が欲しい所だ。確かに時流エンジンと言うものは興味深いが、今闇雲に戦力を減らすのは得策では無い」

 

「アメリカはシャドウミラーに全ての責任を押し付けたい軍上層部がいるのだろう? それならば頭数は多いほうがいい」

 

ラージの意見にイングラムとカーウァイも賛同した事でヴィンデルは溜め息を吐くしか出来なかった。

 

「俺は正直に言うと実用段階では無い物を使う事は反対だ。それにさっきの時空転移……ゲッターロボとエクサランスが共鳴していたように俺には見えた。その2つを組み合わせるのは余りにも危険だと思う」

 

「……アクセルさんでしたね、はい、確かにあのピンクの奇妙な生物が現れた時――ゲッターロボとエクサランス……そしてSRXは全て共鳴しておりました」

 

「私の方もそう言うデータがあるわね。あの奇妙な物とメタルビーストSRXが消えたのはありがたいけど……下手をすれば私達も消し飛んでたかもしれないわよ?」

 

別の世界に跳んだと考えても良いが、どこに飛ぶのか判らないと言うリスクを抱えるべきではないと言うレモンとアクセルの意見も追加され、ヴィンデルの時流エンジンの徴収は全員に反対され、却下された。

 

「すいません。遅れました……」

 

「申し訳ありません。遅れました」

 

そして武蔵とエキドナがブリーフィングルームに入ってきた事で、時流エンジンに関する話し合いは一時中断され本題が切り出された。

 

「……連邦の暗号通信を解析したら……ピーターソン基地にかなりの数の連邦軍が集結しているそうです」

 

「これは私も確認したから間違いないわね。私達をピーターソン基地で捕まえるつもりね……多分シロガネも出てくるわよ」

 

テスラ研に向かう為の最後の難関……ピーターソン基地を中心に張り巡らされているギャンランド包囲網をどのように突破するかと言う問題。そしてもう1つ……の疑念があった。

 

「テスラ研が無事であるかも怪しいぞ?」

 

「ブラッド・ハウンドか……確かにな」

 

ブラッド・ハウンドがテスラ研からアースゲイン、そしてソウルゲインを持ち出した。たとえテスラ研に辿り着いても、システムXNがまだ存在しているのかと言う不安を抱えたまま、ギャンランドはテスラ研を目指して進む事を余儀なくされるのだった……。

 

 

 

 

 

ブリーフィングを終えた後。ラージ達はイングラムに呼び止められ、イングラム達に与えられた部屋にいた。

 

「コーヒーで良いか?」

 

イングラムに差し出されたコーヒーを受け取り、ラウル達はちびちびとコーヒーを口にしていた。

 

「あのさ……これ、悲しませるだけかもしれないけど……良かったら」

 

「……これ……ッ! 良いんですか?」

 

「うん。その……この世界のリュウセイじゃないけど……」

 

「いいえ、ありがとうございます……リュウセイの写真とか持ってなくて……」

 

武蔵は自分がハガネにいるときに与えられていた携帯端末の中に残っていた、リュウセイの写真をラトゥー二にコピーして渡していた。少しでも良い、リュウセイや仲の良い友人を失い、不安定になっているラトゥー二の支えになればと思ったのだ。

 

「では改めて、イングラム・プリスケンだ」

 

「カーウァイ・ラウ。カーウァイでもラウでも好きに呼んでくれ」

 

「巴武蔵、武蔵って呼んでくれればいいぜ!」

 

「ら、ラウル・グレーデンです、こっちは妹のフィオナ」

 

「フィオナ・グレーデンです。平行世界の方とこうして会えるなんて感激です」

 

「み、ミズホ・サイキです。エクサランスのフレームのメカニックをしてます」

 

「ラージ・モントーヤです。時流エンジンのメカニックです」

 

ブリーフィングルームで1度自己紹介をかわしているが、改めて自己紹介をかわす武蔵達とラウル達。

 

「そう力を入れなくていい、この部屋はレモン達から見られることは無い。今頃はこの光景とは違う光景が向こうに映っているだろう」

 

その言葉にラージは驚いたように目を見開き、そして納得がいったように頷いた。

 

「貴方達も信用していないと言うことなんですね?」

 

「ああ、だが今は単独で行動して生き残れるほど甘い世界では無い。互いに一物を抱えながらも、同時に行動するかないのさ」

 

「えっと、どういうことなんですか?」

 

「どういうことも何もない。ヴィンデルと言う男は信用は出来ても、信頼は出来ん。いきなり時流エンジンを寄越せと言ったのも怪しいとは思わないのか?」

 

「そ、そりゃまあ……でもシャドウミラーが守ってくれるならって」

 

フィオナの言葉にカーウァイは子供だからしょうがないと言ったあとにフィオナの目を見つめた。

 

「そんな甘い考えは捨てろ。シャドウミラーの目的はこの世界からの離脱、自分達だけが別の世界に逃げることを目的としている」

 

「「「え!?」」」

 

「やはりですか……」

 

驚くラウル達に対してラージはやはりと呟いた。時流エンジンを求められた時にラージは既にその可能性に辿り着いていた――自分達の命綱それを奪われる訳には行かないとラージはヴィンデルに対して、強い敵意を示していたのだ。

 

「あの敵を何処かへ飛ばしたときの興奮具合を見ればおおよその予想は付きます、ヴィンデル・マウザーが求めているのは時空転移システム、もしくは時間跳躍システム……それも安定性が高いものを欲していると言う所ですね」

 

「シャドウミラーの持っている転移システムは不安定らしくてな。それを安定させる為に時流エンジンを求めたのだろう」

 

「ま、待ってくれ、で、でもレモンさんは俺達の研究に出資してくれたし、助言もしてくれたぞ!?」

 

シャドウミラーが信用出来ないという方向に話が進んでいるのに気付き、ラウルが止めに入った。

 

「私達もシャドウミラー全体が悪いというつもりは無い、だがあくまで軍は軍。ヴィンデルの命令には逆らえない」

 

「そう言うわけです。レモン・ブロウニングさん自身は僕も信用していますが、ヴィンデルと直接会って信用するのは危険と判断しました。ですので、エクサランスの起動コード、β12に変更していますので、起動時は気をつけてください」

 

「え、それってパスワードが10個以上あるやつじゃ?」

 

「念には念のためです。それでこんな話をして来たと言う事は……助けてくれるって言う事ですよね?」

 

「有事の際はギャンランドを離脱する事も考えている。その前提で動くようにしてくれれば、こちらも対応出来る」

 

「判りました。ではラウルとフィオナは基本ツートップで行動してください。最悪の場合、僕がラウルのエクサランス、ミズホがフィオナのエクサランスに乗り込むと言う事で」

 

ぽんぽんと最悪のケースに備えての話をするイングラム達とラージにラウル達は口を挟めず、空返事を返すしかない。

 

「それで武蔵さん、ゲッターロボについて知っている事とか教えてくれますか?」

 

「いや、オイラそう言うの全然判らんよ? 馬鹿だし、でも、そうだな……メンテとか手伝ってくれるなら判る範囲では返事をするよ」

 

「それで結構です。では早速行きましょうか?」

 

え? 今からと言う顔をしている武蔵を半分引きずるようにして部屋を出て行くラージ。

 

「すいません、ラージはちょっと周りが見えない部分があって」

 

「いや、気にしていない。正直、私達の話は最悪の場合に備えての事だ」

 

「安心出来る場所を得たと思って判断が遅れてはお前達自身が危険だ。最悪の場合は自分達だけでも離脱する事を考えろ」

 

自分達の事を心底心配してくれていると判り、ラウル達は判りましたと返事を返した。

 

「ラトゥー二、お前もだぞ」

 

「……私は逃げない、シャドウミラーはキョウスケ・ナンブに追われている。だから……私はここに残る。リュウセイを殺した、あいつを……私は許さない」

 

だが、イングラムとカーウァイのラウル達の身を案じる言葉も、復讐の業火をその目に宿すラトゥー二には何一つ届かないのだった……。

 

 

 

 

 

 

レモンはギャンランドから遠隔操作でW-17……レモンの最高傑作の調整を行っていた。

 

「あーっ! もう! 最悪ッ!」

 

だがレモンの機嫌は最悪を通り越して、最低だった。本当ならば、ピーターソン基地へ向かう前にW-17……ラミアを回収し、最後の微調整を行い。アンジュルグと共に戦線に加えるつもりが、エクサランス2機にR-1改を手にした事でWシリーズにそこまで拘る必要は無いとラミアの回収を拒否され、ギャンランドの進路は強制的にピーターソン基地へ向けられていた。

 

「……最終調整も無しで実戦投入されたらラミアがどうなるかってわからないのッ!? ヴィンデルもそうだけど、アクセルもアクセルだわッ!」

 

テスラ研を制圧した後にラミアを回収しに行けばいいと気楽に言うアクセルにもレモンは苛立ちを隠せないでいた。

 

「あーあ……失敗したかなあ」

 

人造人間の開発と言う事でスポンサーの一切つかなかったレモンをヴィンデルが拾った。その事に関しては感謝しているレモンだが、自分の息子や娘であるWシリーズを使い捨てのように言うヴィンデルとアクセルには不満があった。だがそれでも、我慢してきていたが今回の一件は流石にレモンと言えど、ヴィンデル達への不満を隠せないでいた。

 

「うっ……ここ……は?」

 

「やっと起きたのね、バリソン。気分はどう?」

 

「……良いと思うか?」

 

「OK、そんな軽口が叩けるなら大丈夫ね。バリソン、起きたばかりで悪いんだけど、手伝って欲しい事があるのよ」

 

レモンの言葉にバリソンは身体を起こし苦笑した。

 

「死に掛けてた奴にか?」

 

「死に掛けてたバリソンにしか頼めないのよ」

 

「……判った。何をすれば良い?」

 

「悪いわね」

 

「良いさ、俺の事を庇ってくれたのも知ってるしな」

 

バリソンはヴィンデルの掲げる永遠の闘争を受け入れたわけでは無い。だが、カーウァイの意志を継いでシャドウミラーに残っていた。ヴィンデルはそんなバリソンを疎んでいたが、その腕は一流だから受け入れていた。勿論、それはレモンが協力していたと言うのもある。

 

「この基地のラミアが眠っているポッドにこのカードを入れて起してあげて欲しいの、アンジュルグとかも持ってきてくれるとありがたいわ……どうかした?」

 

「いや、W-17って言わないんだなって思ってな。まぁ、良い。命の恩人の頼みだ、引き受けるぜ」

 

「ありがとう。出発する為のトレーラーを用意するわ、後はインベーダーにも、アインストにも見つからないでね」

 

「俺は運は良いんだ。任せておいてくれ」

 

バリソンはレモンから受け取った電子カードを受け取り、医務室を後にする。その後姿を暫く見つめていたレモンだが、すぐに視線を逸らしバギーの出発準備を行い、培養液に満たされたポッドに浮かぶ一糸纏わぬ姿のエキドナを見つめる。

 

「大丈夫よ。エキドナ、貴女は壊れてないわ……貴女は辿り着きかけているの「技術的特異点(シンギュラリティ)」に……」

 

人間と同じ事が出来ても、エキドナは作られた個体だ。その頭脳は高度に発達したAIと言っても良い。そんなエキドナが自我に芽生えかけている……レモンにはそれが嬉しくて堪らなかった。

 

「テスラ研に辿り着く前に、少しでも良い、武蔵とゲッターに会わせたいのよ」

 

テスラ研に辿り着けばそんな事をしている時間は無くなる。すぐに時空転移の準備を始めなければならない……エキドナの自我の芽生えは武蔵とゲッターが関係している。だからラミアにも武蔵にあわせたいと思うのは当然の事だった……そしてレモンは思うのだ。このままギャランドに乗り続けていて良いのかと……自分の子供達の行く末を見届けるにはヴィンデルではなく、武蔵やイングラム達と行動するべきだと頭では判っている。

 

「私って案外義に厚い女だったのね、知らなかったわ……」

 

だがどれほど怒りを抱えても、苦しいときに拾ってくれたヴィンデルに対する恩も、恋人であるアクセルへの情もあり、レモンにはヴィンデル達を裏切ると言う選択をすることが出来ないのだった……。

 

 

 

 

第19話 砂上の楼閣/狂う孤狼/太古の邪龍 その1へ続く

 

 




次回はOG2プロローグの大きな山場を書いて行こうと思います。OG2編の序盤シナリオの大半は全てOG2本編に繋がるシナリオと言う事で考えているので、逃げるや決着うやむやでしたが、ベーオウルフと太古の魔龍(多分皆判っていると思いますけど)は決着までは書くつもりなので、次話からは長い話にしたいと思います。


ゲッターアークアニメ化記念と言う事で明日の18時も更新しますのでよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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