第20話 砂上の楼閣/狂う孤狼/太古の邪龍 その2
ピーターソン基地の上空に辿り着いたギャンランドのモニターに写された光景に武蔵達は絶句した。事前資料では無数の格納庫や、司令部、そしてマスドライバーが立ち並ぶ巨大基地と言う事を知らされていた。だが今の目の前に広がるのは廃墟だったからだ……。
「まさかたった数十分でこれとか……想像もしてなかったわ」
戦闘が始まっている事は判っていた。だが、まさか1時間も経たずにピーターソン基地が壊滅するとはレモンにとっても想定外だった。
『さぁ!! 進化の使徒よッ! 我らを認めよッ!! 我らこそが新たな種だッ!』
「お呼びのようですね……行きましょうか、イングラムさん、ラウさん」
「ああ……どの道出撃しない事にはなにも始まらないからな……」
「ギャンランドをここで失う訳にもいかん」
「……皆の仇をここで討つ……ッ!」
進化の使徒……武蔵の事を呼ぶベーオウルフ……その姿は誰が見ても正気ではなく、ピーターソン基地上空に陣取っているハガネの主砲もギャンランドに向けられている。このまま強行突破をしようとすれば、トロニウムバスターキャノンを放とうとするのは誰が見ても明らかだった。それを見て武蔵達は真っ先にブリーフィングルームを飛び出して行き、その後をリュウセイ達の仇を討つとその瞳に憎悪の炎を宿し、ラトゥーニが追いかけていった。
「ここで決着をつけ、後顧の憂いを断ってくれるッ! 行くぞ、ウォーダン、エキドナ」
「承知……ッ! ここでベーオウルフの首を獲る」
「了解しました。アクセル隊長」
アクセルに率いられ、エキドナとウォーダンもブリーフィングルームを飛び出して行った。
「ラウルとフィオナは無理をしないで、ギャンランドの支援で良いわ。危ないと思えば、撤退してくれればいいから」
「そう言うことです、無理をせずに命を大切に行動してください」
「ラウルさんもフィオナさんも気をつけて」
レモンの言葉の後にラージとミズホに声を掛けられ、ラウルとフィオナは互いに頷きあい、ラージとミズホを安心させるかのように微笑んだ。
「はい、判りました。フィオナ、行こう、ミズホ、ラージ行ってくるぜッ!!」
「ええ、このままジッとしてたら、何も出来ないで死にそうだしね、じゃ行って来るわッ!!」
ピーターソン基地の破壊された残骸から生えるように姿を見せるボーンやグラス、そしてアインストに寄生されたゲシュペンストの姿――あちら側の世界の明暗を分ける大きな戦いがピーターソン基地で始まろうとしていた……。
戦場にゲッターD2が現れると同時にゲシュペンスト・MK-Ⅲは弾丸のような勢いでゲッターD2へと突っ込んできた。
「進化の使徒! 我らはより進化した! 今こそ我らを後継と認めよッ!!」
「相も変わらず訳のわからねえ事を言ってるんじゃねえッ!!」
突撃してきたゲシュペンスト・MK-Ⅲの頭部に固く握り締められたポセイドン2の拳が振るわれる。
「無駄だぁ! 我らはより進化したと言っただろうッ!!!」
「バリアかッ! くそ厄介な物を身につけやがってッ!!!」
早乙女研究所の大型ゲッター炉心の爆発であわよくばと考えていたが、そのゲッター炉心の爆発の中でもゲシュペンスト・MK-Ⅲは健在であり、それ所か新しい能力を有するまでになっていた。ポセイドン2のパワーでさえも完全に防ぎきる高出力のバリア……それにポセイドンの拳は受け止められ、高速で突っ込んでくるゲシュペンスト・MKーⅢの体当たりで3倍近いサイズ差のあるポセイドン2は上空に跳ね上げられていた。
「なろおッ!! ゲッターキャノンッ!! フィンガーネットッ!!!」
「当たりはしないッ!!」
ゲッターキャノンによる目晦ましからのフィンガーネットによる放電でゲシュペンスト・MK-Ⅲの機動力を削ごうと考えた武蔵だが、両肩のハッチから放たれた半分エネルギー態と化したスクエアクレイモアによる弾幕によって、ゲッターキャノンは無効化され、フィンガーネットも弾き飛ばされる。
「チイッ! オープンゲットッ! チェンジッ! ポセイドンッ!!!」
ポセイドン2に迫るクレイモアをオープンゲットしかわし、離れた所に再合体を果たすポセイドン2――そのコックピットの中で武蔵は冷や汗を流していた。
「こいつはかなりやばいな……」
ゲシュペンスト・MK-Ⅲをゲッターロボも危険と判断したのか、その出力を増している。だがゲッターロボの出力が上がれば、それだけゲシュペンスト・MK-Ⅲの進化を促すことになる。だが……これだけのパワーがあるゲシュペンスト・MK-Ⅲを相手を出来る機体はゲッターD2を除けば、ソウルゲインと修理を終えたばかりのグルンガスト参式しかいない。しかもそれも、互角に戦えるということではない。1発か2発耐えれるというだけで、連続で攻撃を受ける異なれば殆ど一瞬でその装甲は砕かれ、スクラップへと化すだろう。今のゲシュペンスト・MK-Ⅲはそれほどのパワーを有していた。
「だけど、諦めるってことにはつながらねえッ!! ゲッタァアアッ!! サァアアイクロンッ!!!」
パージされた胸部回りの装甲の下から展開されたファンから放たれた凄まじい暴風がゲシュペンスト・MK-Ⅲに向かって放たれる。その凄まじい暴風でさえも、ゲシュペンスト・MK-Ⅲのバリアを突破する事は出来ず、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの中でキョウスケはにやりと獰猛な笑みを浮かべた。
「こんな小細工……がぁッ!」
こんな小細工など通用しないと言おうとしたゲシュペンスト・MK-Ⅲの頭部が大きく仰け反る。
「……私は……お前を許さないッ!!」
ゲシュペンスト・MK-Ⅲを仰け反らせたのは、R-1改の放ったブーステッドライフルだった。勿論それ単体に本来ゲシュペンスト・MK-Ⅲを仰け反らせるだけのパワーは無い。だが念動力でコーティングされたライフル弾はそのバリアを貫き、ピンポイントでセンサーアイだけを打ち抜いた。その衝撃で仰け反ったゲシュペンスト・MK-Ⅲはゲッターサイクロンに耐える事が出来ず、暴風に巻上げられ機体が天高く舞う。
「フィンガーネットッ!! うおおおおおーーーッ!! 大ッ! 雪ッ!! 山ッ!!!!」
「ぐ、ぐおおおおーーッ!?」
舞い上がったゲシュペンスト・MK-Ⅲに即座にフィンガーネットが巻き付き、高速で動く腕の動きに合わせてゲシュペンスト・MK-Ⅲの全身が激しく揺さぶられる。
「おろしいいいいーーーッ!!!!」
ゲッターサイクロンの比では無い暴風がゲシュペンスト・MK-Ⅲを飲み込み、大きく上空へと吹き飛ばす。真空状態の中に閉じ込められ、真空の刃に切り裂かれたゲシュペンスト・MK-Ⅲの全身には細かい傷が入っているが、それだけで行動不能に追い込むだけのパワーはなかった。
「まだだ、進化の「貴様、どこを見ている」……アクセル……アルマアアアーーッ!!!」
ただ闇雲に武蔵は大雪山おろしでゲシュペンスト・MK-Ⅲを弾き飛ばしたのでは無い、大雪山おろしに合わせて参式によって天高く投げられていたソウルゲインの元にゲシュペンスト・MK-Ⅲを弾き飛ばしたのだ。
「白虎咬ッ!!!」
エネルギーを纏ったソウルゲインの両拳によるラッシュがゲシュペンスト・MK-Ⅲの胸部装甲を容赦なく貫いた。
「がっ!? 舐めるなあッ!!」
「舐めているのは貴様だッ! ベーオウルフッ!!!」
スクエアクレイモアを放とうとハッチが開いた瞬間。太陽の光の中にその姿を隠していたプロト・アンジュルグの放ったシャドウランサーが放たれようとしていたクレイモアを貫き、両肩を吹き飛ばす。
「良くやった、エキドナ。そのままギャンランドのフォローに入れ、俺は武蔵とラトゥーニと共にゲシュペンスト・MK-Ⅲをしとめる」
『了解しました。ご武運を……』
その言葉と共に通信は途切れ、プロト・アンジュルグはその翼を羽ばたかせギャンランドの元へ急降下する。
「くたばれッ! ベーオウルフッ!!!」
ソウルゲインが回転し、勢いを乗せた踵落としがゲシュペンスト・MK-Ⅲの胸部を粉々に打ち砕く
「がはあッ!!」
「おおおおおおーーーッ!!!」
地表に叩きつけられる僅かな時間――その時間を一秒たりとも無駄にはしないと背部のブースターを吹かし、落下していくゲシュペンスト・MK-Ⅲにソウルゲインの両拳が叩き込まれ、大きく振りかぶった回し蹴りがゲシュペンスト・MK-Ⅲを地表へと凄まじい勢いで叩きつける。
「こいつはついでだッ! 持って行け青龍鱗ッ!!!」
着地の衝撃を和らげる意味合いもある青龍鱗がゲシュペンスト・MK-Ⅲに殺到し、その反動で柔らかく着地したソウルゲインの中でアクセルは小さく笑う。
「いいフォローだった。これがな」
『……ありがとうございます。私はキョウスケ・ナンブを許さない、だけど……私だけで倒せないなら、倒せる相手を使う事に躊躇いはありません』
「はっ! 良いぞ、貴様。この戦いが終わればシャドウミラーに来い。俺が面倒を見てやる」
『……いえ、私にこの後はありませんから』
ゲシュペンスト・MK-Ⅲを倒せばそれで良い、相打ちになったとしても本望だと考えているラトゥーニにアクセルも武蔵も何も言わない。
「うっし、ならオイラも手伝うさ。それにどうせ……オイラ1人じゃ、あいつには勝てない」
「そのようだな……化け物め……ッ!」
ソウルゲインの攻撃で確かにゲシュペンスト・MK-Ⅲのコックピットは砕かれた。だが砂煙の中でビデオの巻き戻しのように機体を再生させるゲシュペンスト・MK-Ⅲに向かってアクセルが吐き捨てるように呟いた。
「まだだぁッ! その程度で我が意志は打ち砕けんッ!!」
「それで足りないって言うなら、何度でも倒すだけだッ!!」
「ああ、その通りだッ! いつまでも現世をさまよわず、地獄へ行けッ!! ベーオウルフッ!!」
あれだけの攻撃を叩き込んでもなお再生するゲシュペンスト・MK-Ⅲに大しても、武蔵とアクセルの闘志は折れない。
「……エネルギーの集束点……そこさえ、判れば」
既にゲシュペンスト・MK-Ⅲが機械ではなく、生き物であると言うことは明らかだった。だが生き物であると言う事は、どこかに再生を司る器官があるはず……ラトゥーニがそれを見破ってくれると信じ、アクセルと武蔵は既に完全に復元したゲシュペンスト・MK-Ⅲに向かって再びソウルゲインとポセイドン2を走らせるのだった……。
最後の確認……と言うよりは正気か? と言うニュアンスを込めたイングラムの言葉にも、カーウァイの意思は変わらなかった。
「本当にいいのか、カーウァイ」
「……ああ、私がやる。お前はギャンランドの支援に回ってくれ」
例えヴィンデル達が裏切っていると判っていても、イングラム達が元いた世界に戻るにはギャンランド、そしてシャドウミラーが必要だ。
「……判った。気をつけろよ」
「ああ。判っている。
R-SOWRDを見送り、ゲシュペンスト・タイプSはピーターソン基地の中心に立つ異形の剣鬼を睨みつける。
「全ては静寂なる世界の……為に」
ゼンガーの強い意思を感じさせない無機質な声にカーウァイは心を痛めた。あの時早乙女研究所で、倒す事が出来ていれば……ゼンガーがあんな姿にならなかったと……あの時倒し切る事が出来なかった己の腕の未熟さを悔いた。
「今度は私がお前に引導を渡してやる……ゼンガーッ!!」
「眼前の敵は全て……打ち砕くッ!!」
鬼面から生えるように現れた異形の斬艦刀を構えるグルンガスト参式だった物を睨む、シルエットは確かにグルンガスト参式だ。だがその装甲は鬼面を組み合わせたような、それこそ骸骨のような姿をしていた。
「剣鬼……お前にはそんな姿は似合わんぞッ!! ゼンガーッ!!!」
「アアアアアアーーーッ!!!」
振るわれた斬艦刀の切っ先から飛び出すエネルギー刃をかわしながら、ゲシュペンスト・タイプSは滑るようにアインスト参式へと迫る。
「ちっ、固いッ!!」
早乙女研究所を脱出する時よりも武装も弾薬も充実している。だからこそ、最初からカーウァイは弾幕による制圧に挑んだ……。だがアインスト参式の装甲は固く、むき出しの目を打ち抜いても即座に回復され、有効打撃にはならない。
「うおおおおおおーーーッ!!」
「くっ!?」
胸部の鬼面の口が開き、そこから放たれた赤黒い光線を咄嗟に飛び退いて避ける。だが体勢を立て直す間もなく、走る振動にカーウァイは口から血を吐きながら顔を顰める。
「姿は変われど、グルンガスト参式と言うことには変わらんか!!」
蔦で繋がれた腕がゲシュペンスト・タイプSの右腕を掴んでいた。装甲の拉げる音とアラートを聞いて左腕で腰のビーム・ブレードガンを抜き放ち、ビームソードで右腕を掴んでいるアインスト参式の腕を切り裂くが……。
「回復速度が速すぎる……ッ!」
切り裂いた瞬間は確かに力が緩む。だが即座に回復し、再び右腕を力強く握り締められる。その度に、タイプSのコックピットに警報がなり響いた。
「……一刀……両断……ッ!!」
「ぐっ、くっ……馬鹿力めッ!!」
全身のバーニアを使って引き寄せられるのを耐えているが、アインスト参式のほうが圧倒的にパワーがあり、徐々にアインスト参式にタイプSが引き寄せられていく……。
「ぬうんッ!!!」
後ほんの数メートルで斬艦刀の間合いに引きずり込まれるという所で、グルンガスト参式……ウォーダンが割り込み、アインスト参式とその腕を繋いでいる蔦を斬艦刀で両断した。
「ぐうっ!?」
腕の関節を切られたことで転倒するアインスト参式、その隙にウォーダンはタイプSの腕を掴んでいるアインスト参式の腕を引き離し両断する。
「すまない、助かった」
『いえ、部下としてお助けするのは当然です。カーウァイ大佐』
声は確かにゼンガーの物だが、ウォーダンはゼンガーでは無い、そう判っていてもその言い回し、その態度はどうしてもゼンガーを思い出せていた。
「私1人では倒せない、協力してくれるか?」
『……了解しました。このウォーダン・ユミル、ご協力いたします!』
1人で倒すつもりだった……それがかつての部下に対する手向けだと思っていた。だがアインストに寄生されたゼンガーの強さは想像を遥かに越えていた……これではゼンガーを解放する所ではなく、自分がやられてしまう――それが判ったからカーウァイは意地を張らずに、ウォーダンに助太刀を頼んでいた……いや、もっと言えばそれこそ無茶をすれば、カーウァイ単独でもアインスト参式の撃墜は可能だった。
(……見極めなければ……)
この戦いの中でウォーダン・ユミル……いや、シャドウミラーによってゼンガーの人格データをコピーされたW-15……それが機械でしかないのか、それとも……ゼンガー・ゾンボルトのなのか……それともウォーダン・ユミルと言う個なのか……それを戦いの中で見極める為にカーウァイはウォーダンに共闘を頼んだのだ。
『ウォーダン・ユミル。推して参るッ!!!』
「アアアアーーーーッ!!」
ピーターソン基地の廃墟に響く、ウォーダンとゼンガーの雄叫び、それを聞きながらカーウァイはゲシュペンスト・タイプSを駆る。
(……私に力を貸してくれ……タイプS……そして皆……)
今のタイプSでは、アインストに取り込まれたゼンガーを助け出すことは出来ない。カーウァイは無茶を承知で戦場の中で新しいコンバットパターンを組み上げ始めた……それはカーウァイ・ラウだけでのコンバットパターンでは無い、テンペスト・ホーカー、ゼンガー・ゾンボルト、エルザム・V・ブランシュタイン、カイ・キタムラ、ギリアム・イェーガー、そしてラドラ・ヴェフェス・モルナ……特殊戦技教導隊の7人のコンバットパターンを組み合わせた特殊戦技教導隊を象徴する新しいコンバットパターンをカーウァイはこの戦いの中で作り出そうとしていた……。
ギャンランドの中でレモンとヴィンデルは顔を顰めていた。戦力は確かに早乙女研究所の時よりも遥かに充実している……だがそれ以上にベーオウルフ……キョウスケ・ナンブの力が上がっていたのだ。
『なろおッ!! 負けるかよぉッ!!』
『ふははははッ! その程度なのか!!』
背負い投げで地面に叩きつけられ、確かに装甲が拉げたが、ゲシュペンスト・MK-Ⅲから響くべーオウルフの声には何の変化もない。
『ちい! 武蔵かわれ!』
ポセイドン2の背中を踏み台にし、跳んだソウルゲインの手刀が腕を断ち切った。
『ぬるい、ぬるいぞ! アクセル・アルマーァーーーッ!!!』
断ち切られた腕は即座に触手によって繋げられ、リボルビングステークの一撃がソウルゲインの胸部を貫く寸前に、R-1改が飛びかかる。
『ぬうッ! 弱者が邪魔をするなあッ!』
『……当たらないッ!』
T-LINKナックルによってリボルビングステークの切っ先を逸らされ、僅かにソウルゲインの脇腹を抉るに留まり、邪魔をしたR-1改に5連装マシンキャノンの掃射が迫るがラトゥーニはその射撃を背中に目があるのかと言いたくなるような軌道で舞うように回避する。
『おっらああッ!!!』
『……効かん、効かんぞォッ!!』
スレッジハンマーがゲシュペンスト・MK-Ⅲの頭部を押し潰すが、即座に再生し、ポセイドン2の両腕を持ち上げる。
『くそ……ますます回復力が高まってやがる……』
『化け物め……ッ!』
3対1の状況だからゲシュペンスト・MK-Ⅲに対しても有利に立ち回れていたが、ソウルゲイン、あるいはR-1改が倒れれば、その瞬間に武蔵達は劣勢に追い込まれるだろう……それほどまでにアインストとの融合が進んだゲシュペンスト・MK-Ⅲは脅威となっていた。
『……静寂なる世界の為に……貴様は邪魔だ!』
『ぬううッ!!』
アインスト参式とグルンガスト参式の戦いも、アインストの再生速度に対してダメージ量が少なく完全に劣勢に追い込まれている。
「計算が甘かったか……ッ」
「いいえ、早乙女研究所の段階での戦力で考えれば勝てるはずだったわ」
早乙女研究所で戦ったときにこれだけの戦力が整っていれば、間違いなく武蔵達は勝てていた。だが早乙女研究所のゲッター炉心のゲッター線を取り込んだ事で進化したゲシュペンスト・MK-Ⅲの強さを想定していなかったのが、この劣勢の原因だった。
「でもまだ何とかなるわ、イングラム達がハガネに組み付いたわ」
制空権を制圧しているハガネさえ撃墜出来ればギャンランドで支援も出来る。そうすれば、この劣勢も少しは覆せる……レモンはそう考えていたが……状況はそんなに甘いものではなかった。
「レモンさん、熱源反応急接近ッ! 上空から来ますッ!」
「ガアアアアアーーッ!!」
雲を引き裂いて急降下してて来た巨大な影……ギャンランドはその巨大な影の一撃に耐え切れず、煙を上げてピーターソン基地の上に墜落した。
「な、なんだよあれ!? あ、あんなのまで出てくるのかよッ!」
「驚いてる暇は無いわよ! ラージ達を助けに行くわよ!」
「あ、ああッ! イングラムさん、エキドナさん、俺達は1度下がります!!」
ハガネに組み付いていたエクサランス2機がギャンランドの救出の為に一時離脱する。
「時間を掛けている暇は無い、一気に落とすぞ!」
『委細承知ッ!』
ギャンランドを墜落させた巨大な影……それはまるで巨大なくらげのような生き物だった、PTよりも巨大な牙がびっしりと生え、鋭い三白眼がピーターソン基地の跡地にいる全員を見つめ、餌が山ほどあると言いたげにPTなら丸呑みできそうな巨大な口を広げ、涎と共に大きな咆哮を上げるのを見て、カーウァイは危険は承知でアインスト参式を速攻で倒す事を決め、グルンガスト参式と共に戦場を駆ける。
「……なんで俺はこんな事を忘れていたんだ」
そんな中イングラムだけは険しい顔でその化け物……「ドラゴノザウルス」を見つめていた。自分はそれを知っていたのにそれを忘れていた事に今気付いたのだ。
『イングラム少佐。大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だ。エキドナ、それよりも1度下がるぞ」
『し、しかし、それではハガネがッ!』
「俺に考えがある、それにこのままここに残ると危険だ。見ろ」
ドラゴノザウルスを見るように促され、エキドナはそちらを見て顔を顰めた。
『あれはまさか……』
「そのまさかだ。判ったら下がるぞ」
確かにアインスト・ハガネを撃墜一歩前まで追い込み、下がるのはイングラムにとっても避けたい事だった。だがエクサランスが後退した今、プロト・アンジュルグとR-SOWRDだけでは火力が足りない……自分達のみを守ると言う意味もあり、イングラムは一時アインスト・ハガネへの追撃を断念したのだ。
「ガオオオオーーンッ!!!」
「「「「シャアアアーーーッ!!」」」」
その咆哮と共に身体の下から無数の龍の首が現れる。それは日本脱出の際に海中から襲ってきた龍の姿だった……。
「なるほどね……あれは触手だったって事なのね」
「何を冷静に言っている!? ただでさえ悪い状況が更に悪化したのだぞ!?」
「そんなに慌てないで頂戴、ヴィンデル。確かに状況は最悪を通り越して、最低だけど……あの化け物は利用出来るわ」
空中を浮遊する異様な怪生物を見てレモンは目を細める。あの化け物は飢えている、だから餌を求めてこの場にやってきた……飢えた獣は何よりも危険だ。だが危険だからこそ、利用する方法がある――前門のゲシュペンスト・MKーⅢ、後門のアインスト参式、そして上空にはハガネと正体不明の化け物……どう考えても助かる術は無い、絶望的な状況……だがレモンの卓越した頭脳はこの状況を切り抜ける為の策を考えて、フル回転を始めているのだった……。
第21話 砂上の楼閣/狂う孤狼/太古の邪龍 その3へ続く
戦力は充実したが、それ以上にパワーアップしていたベーオウルフとアインストゼンガー。有利に立ち回っているが、それはギリギリの綱渡り、少し間違えば一瞬で死ぬという状況で、ドラゴノザウルスの乱入と言う絶望的な状況になりました。レモンがこの劣勢をどう切り抜けるのか、そこを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い