進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第12話 敗北

第12話 敗北

 

巴武蔵とゲッターロボと言うイレギュラーの存在。それは最初は小さな波紋だったが、時が経つほどにその波紋を大きくしていく……それは今ハガネと合流しようとしていたとある特機を輸送している輸送機……タウゼント・フェスラーの内部にも起きていた。

 

「くっ! 大丈夫か!」

 

DCの警戒網に引っ掛かり、リオン、そしてシュヴェールトの追走を受け、激しく揺れるコックピットの内部で白衣を来た男性……「ジョナサン・カザハラ」がパイロットに問いかける。北米のラングレーから逃走を続け、タウゼント・フェスラーの燃料の消費もパイロットの疲弊も凄まじい物だった。それでも希望はある、この空域の近くにまで来ているハガネの存在……それがタウゼント・フェスラーに乗り込んでいる5人の希望だった。

 

「大丈夫ですッ! ですがこの空域を離脱するのは難しいかとッ!」

 

コックピットの連邦軍兵士がモニターに写る反応を見て、唇を噛み締める。良くここまで逃げてきた……だがそれも限界に近いのが明白だった

 

「……すまない、通信装置を使わせてくれ。ハガネに緊急通信を送る」

 

敵に傍受され、攻撃が激しくなる可能性がある。それでもこれ以上は耐え切れないと判断したカザハラが通信機に手を伸ばす、だがその手を掴む青年の姿があった。

 

「カザハラ博士。私が時間を稼ぎます、その間になんとかこの空域を離脱をッ!」

 

黒髪で鋭い目付きの青年が自ら囮になると告げる。だがジョナサンは首を左右に振り、青年の肩を掴んで引きとめる。

 

「コウキ。君は私から見ても優れた科学者であり、パイロットだ。だが海のど真ん中でしかも敵の方が遥かに多い……そんな場所に私は弟子を送り込めない」

 

「し、しかしッ!」

 

「大丈夫だ。ここまで執拗に追ってくると言う事は、このタウゼント・フェスラーに何が積まれているかDCはそれを知っている。最悪あれを差し出しても私達は生き残る必要があるんだ。これからの為に……」

 

師であるジョナサンの言葉にコウキ……コウキ・クロガネは唇を噛み締める。それを見て、ジョナサンが励ますように笑う。

 

「大丈夫さ、もう近くまで来ている。それにハガネには私の息子が乗っている……希望はある」

 

諦めでも絶望でもない、強い意思の光をその目に宿し、カザハラは覚悟を決めた表情で連邦軍の緊急事態通信を飛ばすのだった……

 

 

 

 

その頃ハガネの通路では……

 

「おう? なんだ、どうした? 何をきょろきょろしとるんだ?」

 

「お? すまねえが、格納庫はどこか知らないか?」

 

武蔵とマサキがハガネの通路で鉢合わせていた。武蔵は格納庫? と首を傾げ、それよりもと呟く

 

「お前さん、リオに案内されてたんじゃないのか?」

 

「案内して貰っていたけど逸れたニャ」

 

マサキの足元の2匹の猫の白猫が喋りだす。武蔵は一瞬目を細めたが次には大声で笑いながら

 

「オイラが案内してやるよ。どうせ格納庫に用事があったからな」

 

ゲットマシンの定期メンテナンスでロバートに呼ばれていた事もあり、マサキの頼みを快く引き受ける。

 

「驚かないのかニャ? 猫が喋ってるのに?」

 

マサキの足元にいた黒猫がそう尋ねる。普通ならば猫が喋れば動揺もするし、恐怖もするだろう。だが良いも悪いも武蔵は普通ではなかった。

 

「蜥蜴が喋るんだ、猫だって喋るだろ?」

 

蜥蜴? マサキとシロとクロが不思議そうに首を傾げ、回りに誰もいないのを確認してからマサキが小声で尋ねる。

 

「お前ももしかしてラ・ギアスの人間か?」

 

「……ラ・ギアス? そりゃどこだ?」

 

一瞬自分と同じ地底世界ラ・ギアスから来たのかと思い尋ねるマサキだが、その表情を見て違うのだと悟り、勘違いだと謝る。だが武蔵も武蔵でニッと笑う。

 

「俺も色々とわけありで、この船に乗っててな。ある意味ではお仲間さ、それよりも格納庫に行こうぜ」

 

その表情に自分とはまた違うが、何か訳ありなのが明白だった。だからマサキはよろしくなと笑い、武蔵と共に歩き出した……のだが。

 

「おーい、どっち行くんだ? 格納庫はこっちだぞ?」

 

「……おう」

 

並んで歩き出して数秒で明後日の方向に向かって歩き出すマサキ。その絶望的な方向感覚に、前途多難な始まりだった

 

「ん? メッサーが……偵察か?」

 

最終的に武蔵が後ろにつき、誘導するという形で格納庫に到着したマサキと武蔵だが、メッサーが1機で飛び出していくのを見て不思議そうに首を傾げる。リュウセイとジャーダ、それにライの姿を見て何があったのかと尋ねる。すると近くまで連邦軍の輸送機が来ていて、その機体に呼ばれてイルムが飛び出して行ったと言う事だった

 

「DCの追撃を受けていると言う事は、AMとの戦いになる。メッサーは空いているが、メッサーだけでは戦力不足だ」

 

「そう言う事なら、俺が行くぜ」

 

話を聞いていたマサキがニッと笑い俺が追いかけると告げる。だがジャーダとリュウセイはマサキを見て

 

「お前どこにいたんだ? クスハとリオが探してたけど」

 

「艦内放送するかって話になってたぞ?」

 

物凄く大事になっていると気付いたマサキは逃げるようにサイバスターへと走り、シロとクロと共に乗り込んで発進していく

 

「ったく、方向音痴にも程があるぜ。並んで歩いていても、気がついたら逆走してるんだぞ?」

 

武蔵の疲れたような言葉にご苦労さんとジャーダが笑う。武蔵は疲れたように溜息を吐きながらも、今正にサイバスターが出撃し、慌しい格納庫を見ながら、ロバートに声を掛ける。

 

「なんかその輸送機って奴、DCに追われてるんだろ? マサキとイルムさんだけで大丈夫なのか?」

 

「……正直敵の数が判らないから不安ではある。だからハガネも全速力で急行している」

 

サイバスターの力は判るが、それも1機だけだ。数の暴力で押されればイルムともども撃墜される可能性は十分にある。

 

「オイラもゲットマシンで出るッ!」

 

「しかし、武蔵ッ! ゲットマシンのメンテナンスはどうするんだ!?」

 

ゲットマシンに走る武蔵を見てロバートが慌てて叫ぶ、南鳥島での大暴れ……いや、火球の直撃とウェーク島でのヒュッケバインの運搬とゲッター3にはかなりの負担が掛かり、メンテナンスをする予定だったのだ。ビアンに修理こそされているが、ゲッターは満身創痍の状態に応急処置を施されているに過ぎず。無茶が効く状態では無い

 

「心配ない! ゲッターは無敵のスーパーロボットさッ! それにゲッター3だけじゃねえッ!!」

 

武蔵はそう叫び返すとベアー号ではなく、イーグル号に乗り込みエンジンを点火する。それを見てロバート達は慌てて撤退し、格納庫の緊急放送用のマイクを掴む

 

「ゲットマシンが出撃するッ!! 総員退避ッ!!」

 

スマートな出撃をしたサイバスターとは異なり、ブースターで強引に飛ばすゲットマシンの出撃は大変荒っぽい。それこそ出撃の度に格納庫が煤塗れになるほどだ、巻き込まれたら死ぬと判断した整備員は放送が入る前に既に逃走を始めている。

 

「ゲットマシン出るぞッ!!!」

 

そしてゲットマシンは勢い良く飛び出して行くのだった……

 

 

 

 

武蔵がサイバスターを追ってハガネを出撃した頃……イルムはリオンとシューヴェルトに囲まれ、行動不能になっていたタウゼント・フェスラーを発見していた

 

「ちっ、あの黒いガーリオン……ライの兄貴か」

 

だがその部隊の指揮を取っている黒いガーリオンを見て舌打ちする。イルムもエースパイロットと呼ばれる凄腕のパイロットだ、これがただのリオンやシューヴェルトならばタウゼント・フェスラーに接近することは容易い。だがエルザムがいれば話は変わる、機体性能と腕に差がありすぎるのだ。

 

「これだから奴に関わると面倒事になるんだ! おい! T3応答しろッ!!」

 

怒り任せで応答しろと通信を入れる。そして通信に出たのはイルムの予想通りの人物だった

 

「おお、イルム。待っていたぞ」

 

「やっぱり……俺を呼びつけたのはあんたか」

 

敵に追われているのに自分1人を呼びつける人物……そんな無茶をするのは1人しかいなかった。それは自身の父親であるジョナサン1人だけだ、平然と挨拶をするジョナサンに何をしてると怒鳴るが、ジョナサンはそんな言葉を完全に無視して、T3に接触しろと告げる。

 

「渡したい物……?」

 

「そう、とっておきのプレゼントだ。この不利な状況を引っくり返すとっておきだぞ」

 

ジョナサンの言葉に今までプレゼントとして送られた数多の危険な発明を思い出し、何かの試作機を運んでいると予想したイルムは舌打ちと共に

 

「この状況を何とかできる代物なんだろうな?」

 

キラーホエールにリオン、そしてシューヴェルトにエルザムが駆るガーリオン。この絶望的な状況を引っくり返せる物なんだろうな?と睨みながら問いかける。だが運が悪いのか、それとも意図的なのか、そこでT3との通信が途絶える。接触するしかないが、これだけの敵を単独で突破する方法をイルムが考えているとサイバスターが姿を見せメッサーに並ぶ、その姿にイルムは勝機を見出し、通信を繋げる

 

「マサキだったな、悪いが暫くの間敵機を引きつけておいてくれ」

 

「はぁ!? いきなり何を言ってる!?」

 

マサキが怒鳴るのも当然だ。追いかけてきて、いきなり囮になれと言われてはい、そうですかと言えるわけが無い。

 

「悪いが文句はあの輸送機に乗ってる俺のクソ親父に言ってくれ! 頼んだぞッ!!」

 

マサキに返事を待っている時間は無いと判断し、イルムはメッサーを敵のど真ん中に飛び込ませる。

 

「ったく! 人使いが荒いぜッ! 行くぞッ! シロ、クロ!」

 

敵の陣営のど真ん中に戦闘機で突っ込んでいくのを見れば、マサキもただ見ているわけには行かない。イルムの後を追って敵の陣営に突入していく、だがただ闇雲に突っ込むわけでは無い。前に進むのと同時にサイバスターの射撃兵装であるカロリックミサイルでシューヴェルトの翼を砕き、その手にしたディスカッターでリオンのレールガンを破壊する

 

「シロッ! クロッ! 頼んだぜッ!!」

 

「全く、ファミリア使いが荒いニャ」

 

「行くよッ!!」

 

マサキは激情型だが決して頭が悪いわけでは無い。方向音痴なのは……仕方ないとして、冷静に戦況を見る能力も持ち合わせていた。まず優先するべきなのは、イルムをあの奇妙な形の輸送機と合流させる事。カロリックミサイルとハイ・ファミリアで進行方向のシューヴェルトへと攻撃を仕掛ける、戦闘機であるシューヴェルトはサイバスターの攻撃に耐えれる訳が無く翼をあっけなく砕かれ落下していく。

 

「良し、これで良いだろう」

 

パイロットが脱出装置で脱出したのを確認し、リオンへと向き直る。進行方向にまだシューヴェルトはいる、だがある程度撃墜し、進路を空ければ後は自分で何とかするだろう。故に戦闘機を撃墜する能力をあるリオンの足止めをすれば良い、あの輸送機に何があるかは知らない。だがここまで必死になると言う事は何か特別な武器があるとマサキは考えていた。

 

「ッ! こいつ動きが全然違うッ!!」

 

リオン達の間を縫って突撃してきた黒い機体の剣をディスカッターで反射的に受け止めながらマサキはそう呟く。脚部と肩部にバーニアを増設し、両腰に銃を携帯したガーリオンのカスタム機。その速度はサイバスターに迫る物であった、だがそれだけでは終らず接触通信がマサキへと届けられる。

 

「風の魔装機神……サイバスターの力。確かめさせて貰うぞッ!」

 

「お、お前サイバスターを知ってるのかッ!?」

 

地上では知る者がいない筈のサイバスターの名前を知っている……その事にマサキに僅かな動揺が走る。そしてその隙を見逃すエルザムではなく、ディバインアームでサイバスターへと斬りかかり、ディスカッターとディバインアームによる鍔迫り合いに持ち込む。

 

「てめえ!何でサイバスターの事を知っているんだッ!?」

 

「シュウ・シラカワから話を聞いていたのでな」

 

鍔迫り合いをしながらエルザムに怒鳴るマサキ。だがエルザムは涼しい顔でサイバスターの膨大な推進力から放たれた横薙ぎの一撃をかわす、ガーリオンのコックピットで冷静にサイバスターの戦力分析を行うエルザムに接触回線によるマサキの怒声が響く

 

「シュウだと! あいつの事を知ってるのかッ!」

 

「いずれ自分を追って、サイバスターと言う機体に乗った少年が現れる。彼はそう言っていたよ」

 

エルザムから告げられた言葉に一瞬驚いた表情をするマサキだが、次の瞬間にはその怒りを爆発させる

 

「あの野郎、よくもぬけぬけとッ! ふざけやがって!」

 

「その怒りよう。どうも並々ならぬ憎悪が渦巻いているようだな」

 

「黙れッ! 知った風な口を利くんじゃねえッ! それよりもシュウの居場所を教えやがれッ!」

 

怒りに身を任せ、ディスカッターを振るうサイバスター。だが怒りに我を失っているマサキの攻撃はエルザムには届かない

 

「若いな、怒りは力を生み出す源となるが、同時に己を見失う原因ともなる、だからこそ、その己の精神は常に氷のごとくあらねばならぬ……これは我が家訓でもある。だが……お前も我が弟も、その境地に至るには程遠いようだ」

 

ブースターの勢いを乗せた回し蹴りがサイバスターの胴を捉え吹き飛ばす。距離が開いたことで腰にマウントされた。改造を施されたレールガンを取ろうとしたエルザムだが、センサー内に入ってきた3つの熱源反応に笑みを零し、サイバスターへの追撃ではなく距離を取り熱源反応へと機体を反転させる。

 

「……その機体! エルザムさんかッ!?」

 

予想通り反応が現れた方向からゲットマシンが現れ、エルザムはコックピットの中で笑みを浮かべる。

 

「ふっ、武蔵君も来てしまったか……少年よ。シュウ・シラカワと相見えたくば、ハガネと行動を共にするが良い、各機はサイバスターへ攻撃を集中せよッ! 私は武蔵君を止めるッ!!」

 

そしてエルザムはサイバスターから背を向ける。この場での最大の脅威……それはサイバスターではなく、巴武蔵とそしてゲッターロボの存在なのだから。

 

(天はハガネに味方したか)

 

被弾しつつも、輸送機に着艦したメッサーを見てエルザムは苦笑する。戦況はハガネに良い方向に向かっていると、撤退準備を文章通信で送りながらガーリオンをゲットマシンに向かって走らせる。合体してしまえばゲッターを止めることは難しい、だが合体する前ならばやや頑丈な戦闘機と変わりは無い。ここでゲットマシンを確保してしまえば、武蔵を無力化出来る。それがエルザムの考えたゲッターを無力化させる方法だった。だがそんな事は武蔵は100も承知であり、そして恐竜帝国と戦い続けた武蔵にとってエルザムの取った作戦はもっとも対処しやすい1つの事なのだった……

 

 

 

ゲットマシンの姿はDCの兵士ならば誰もが知っている。その姿を見て動揺が走った瞬間にイルムは強引にタウゼント・フェスラーに着艦し、ヘルメットを投げ捨てながらコックピットを飛び出す

 

「待っていたぞイルム」

 

「ったく、態々俺を呼びつけやがって、それで何を運んできたんだ? ATX計画の試作機か何かか?」

 

イルムの問いかけにジョナサンは返事を返さず、モニターでこの空域に登場したゲットマシンに視線を向ける。

 

「おい、この戦闘機はなんだ? と言うか、良く飛んでいるって思うんだが?」

 

「あーそれは後にしてくれ、俺も良く判ってねえ。それよりも早くしろよッ!」

 

何を運んできたんだと怒鳴るイルムにジョナサンは肩を竦めて、格納庫の中の扉の前に立つ

 

「これがお前へのとっておきのプレゼントだ」

 

レバーが下ろされ、開かれた扉の奥には1機の特機の姿があった。重厚なフォルム、大きく張り出した肩パーツ……

 

「グルンガストッ! こいつはラングレー基地にあったやつかッ!?」

 

超闘士グルンガスト……テスラ研の開発した特機の1体であり、その当時の技術を結集し可変機能を搭載したスーパーロボットだ。

 

「お前がカザハラ博士の息子だな? 今グルンガストの最終調整をしている所だ。早く機体へ乗り込め」

 

グルンガストの足元のコンピューターを操作している青年がイルムガルトにそう促す。

 

「親父、こいつは?」

 

「コウキ・クロガネ。私の弟子だ、かなり若いが優秀なメカニックであり、機体開発の専門家だ。私と一緒にラングレーを脱出した1人で、ATX計画にも関わっていた」

 

「話は後で、残念な事に脳波制御装置に不備があり、FCSの制御に回してる」

 

コウキの言葉にイルムがおいっと叫ぶ。グルンガストの最大の特徴は脳波を読み取り、機体制御を手伝う機能にある。それが無いと聞けば誰しも叫びたくもなるだろう。

 

 

「設備が無いのでそこまでの調整は無理だった。だがそれ以外の整備は完了している、まずは乗り込んでから文句を言って欲しい物だ」

 

「あー、いや、あんたを責めた訳じゃねえよ。マニュアル制御でもこいつはありがたい」

 

仮にマニュアル制御でもあっても、超闘士の名は伊達では無い。その操作性は十分に理解している、そしてジョナサンが呼んだのも脳波制御無しでグルンガストを操れるのは2人しかない。そして今地球にいるのは息子のイルムしかいないと判断したからだった

 

「さぁいけ! グルンガストでDCを叩きのめしてくるんだッ!」

 

変わりない自身の父親に苦笑しながらイルムはグルンガストへと乗り込む。

 

「良しッ! コウキ! コックピットブロックに行くぞ! グルンガストを発進させる!」

 

「はい!」

 

そしてジョナサンとコウキが格納庫を後にする。そしてコックピットブロックでジョナサンとコウキが見たのは信じられない光景だった

 

『チェーンジッ! ゲッタアアアーッ! ワンッ!!!』

 

3機の戦闘機が正面衝突したと思った瞬間に1体の特機へと合体した姿にジョナサンは驚愕し、そしてコウキは目を大きく見開き、そしてその顔を青くさせ、恐怖に身体を震わせながらゲッターロボと呟く……1人にはありえないという驚愕を、もう1人には恐怖を与えゲッター1がこの空域に現れたのだった……

 

 

 

 

「マジかよ……」

 

グルンガストのコックピットにいたイルムは信じられんと言う様子でそう呟いた。ゲッター3の戦闘能力は見ていた、そしてその名称から3タイプ作られた特機の1体ではと考えていたイルムの目の前で別形態に変形合体したのだ。その驚愕は言うまでも無いだろう

 

(3って言うのは形態の事だったのか……)

 

ゲッター1と叫んでいた特機はマントを翻し、上空を舞っている。20m強のゲッター3と違い、今自分が駆るグルンガストと同等のサイズの特機へと合体している姿に驚く。だが今は味方であり、飛行能力を持つのでこの場では非常にありがたい味方の存在であった。

 

「武蔵。聞こえるか?」

 

「イルムさんか? 青いのに乗ってるのか?」

 

武蔵の問いかけにそうだと返事を返すイルムの視界には、明らかにゲッター1を警戒する素振りを見せているリオンとガーリオンの姿がある。恐らくだが、アイドネウス島でその姿を1度見ているのだろう。その警戒のしようは厳重を通り越して恐れているようにも見えたから……

 

「ハガネがもうじき合流してくる。それまで耐えるぞ」

 

「了解っと! じゃあ行くぜぇッ! ゲッタートマホークッ!!」

 

両肩から飛び出した戦斧を手に吼えるゲッター1。その特徴的な頭部と相まって鬼と言う印象を受ける、40mクラスの特機が空を飛び、そして斧を手に襲ってくる。敵でありながらイルムはDCの兵士に同情した

 

「マサキ、ゲッターには近づくなよ。同士打ちになる」

 

「……みたいだな」

 

雄叫びを上げゲッターを駆る武蔵、戦場を縦横無尽に駆けめぐり斧を振るう姿は下手をすれば自分が撃墜されると思わせるほどの暴れっぷりだった。

 

「しゃ、こっちも行くぜッ! ブーストナックルッ!!」

 

脳波制御は使えないが、音声入力式武器選択装置は生きている。突き出したレバーと共に発射されたグルンガストの右拳はゲッターを警戒していたリオンを一撃で粉砕する、ゲッターロボに加え、サイバスター、グルンガストの3機の特機を相手にするDCの兵士の士気はガタ落ちであり、明らかに精彩を欠いていた。

 

「行くぜッ! アカシック……バスターッ!!!」

 

空中で魔法陣を描き、その姿を鳥に変形させたサイバスターが魔法陣の中から溢れ出した炎を纏い海中のキラーホエールを貫く。

 

(これは変形の出番は無いな)

 

グルンガストは飛行形態のウィングガスト、そして戦車形態のガストランダーへの変形機構を持つ。最初はゲッター3が海中のキラーホエールを相手にし、自分がウィングガストで支援する形でDCを撤退させることを考えていた。だがゲッター1へと変形した今、その姿は実に生き生きとしていた。

 

「トマホークッ! ブゥゥゥメランッ!!!!」

 

手にしていた斧を全力でリオンに向かって投げつけるゲッター1。それは近代の機動兵器の戦闘とは思えない荒々しい物であり、しかも投げ付けた斧は信じられないことに逃げるリオンを追い抜き、戻ってくる勢いで両足を引き裂くと言う出鱈目ぶりだ。

 

「行くぜッ! ファイナルビームッ!!」

 

ゲッターの出鱈目な攻撃に、浮き足立っているリオン。そこを狙ってグルンガストの胸部が変形し、現れたビーム砲の掃射が襲う。ゲッターを警戒すればグルンガストとサイバスターが、サイバスターとグルンガストを警戒すればゲッターが、1機でも戦況を左右するという特機が3機。しかもそれ1体1体が桁違いのスペックを誇る事もあるが、元々ウェーク島からアイドネウス島に撤退する最中であった事もあり、DCの戦力は面白いように削られていく。

 

「早々好きにはさせんぞッ!」

 

「くるかッ!!」

 

エルザムのガーリオンがディバインアームではなく、両腰に下げていた小型のバーストレールガンを手にゲッターへと肉薄する。こうなってしまえばDCは追走戦ではなく、撤退戦になる。エルザムも馬鹿では無い、ハガネが近づいて来ている上に3機の特機が相手だ。ハガネが現れる前に撤退する事それを行う為にはこの場で最も火力のあるゲッターを押さえる殿を自ら務める事にしたのだ。

 

「マサキ! 撤退するリオンは無視しておけッ! それよりもタウゼント・フェスラーの護衛に回ってくれッ!!」

 

エルザムの指揮はシンプルな物で、しかしそれゆえに悪辣な一手でもあった、サイバスターの機動力を前にすればリオンの機動力は役には立たない。しかしリオンはいかに安価で作ることが出来る機動兵器とは言え、軒並み破壊されては生産も追いつかない。それ故に可能な限り無事に帰還する為にサイバスターとグルンガストではなく、タウザント・フェスラーを狙うように命じていた。更に今回はハガネが近辺に存在することも把握していたので、通常のリオンとしての出撃ではなく、ミサイルコンテナを搭載しているリオンが数機部隊に編成されていた。通常のミサイルと比べて威力は低いが、防御力の低いタウザント・フェスラーには最悪の相性を持つ武器である。更にグルンガストを受け取る為に乗り込んだ際に支援物資を積んでいる事も確認しているイルムからすれば、可能な限り無事で回収したい為に追撃ではなく、防衛に入る必要があった。ミサイルを乱射しながら後退していくリオン、先ほどまで姿を確認していたキラーホエールは既に沖合いに離脱しており、完全に撤退戦を挑んでいるのは明らかだ。それは消極的な戦いだが、これ以上に無いほどに効果的な戦いだった。

 

「くっ……早いッ!」

 

「その程度では私を捉える事は出来んぞ、武蔵君ッ!」

 

そして武蔵は武蔵で完全にエルザムに翻弄されていた。テンペストから渡された戦闘記録と、アイドネウス島で見たゲッター1の戦闘能力、それらを分析しウェーク島でエルザムのガーリオンは急造の域は出ないが更なる改造が施されていた。一回りサイズダウンし、砲身を強化したバーストレールガン。肩部のソニックブレイカーの為の金属粒子生成装置を試作段階のブレード型に展開するパーツに交換し、両腕・両足も可変式のバーニア付きの装甲に変更し、今まで以上のスピードが出る代わりにマニュアル操作性が濃くなったが、機体制御に関しては段違いにパワーアップした。その対価に操作性が劣悪になったがその分細かい機動と精密な操作を獲得したのだ。

 

「ゲッタートマホークッ!!」

 

「ふっ!!!」

 

バーストレールガンの強化された砲身で受け止め、そのまま受け流すと同時に距離を少しだけ取り、両手のレールガンを乱射する。

 

「ぐうっ!」

 

両腕をクロスさせそのレールガンを防ぐ武蔵だが、その一瞬でガーリオンの姿を見失う。

 

「シュツルムアングリフ……突撃ィィィッ!!!!」

 

「ぐはっ!?」

 

背後からの全推進力を生かしたソニックブレイカーの直撃を叩き込まれ、海面に向かって落下するがギリギリで態勢を立て直しゲッターマシンガンによる射撃を行う。その弾幕の嵐は並みのパイロットならば防ぐことも、避ける事も不可能だが、相手はエルザム。あえて弾幕の中に身を投じることで最小限の被害と回避でマシンガンを全て防ぎきる。

 

「その程度では私は勿論ビアン総帥を止める等不可能だ!」

 

完全に懐に入られた武蔵は慌ててマシンガンで殴りかかる。だがガーリオンは舞うような高速機動で前に突っ込みながらそれを回避すると同時に、レールガンを放つ。ゲッターの弱点、それは自分と同等のサイズと戦ってきた事による、小型の敵との戦闘経験の少なさ……そしてモニターやセンサーが旧式の事による敵の察知能力の低さだった。完全にイニシアチブを取られ、ゲッターの強大なパワーも完全に空回りしていた。

 

「ふっ、ハガネが来たか……ならばここまで、ではな武蔵君。また会おう、その程度の強さでは私達を止める事等不可能だ」

 

エルザムの目的である部下の離脱は既に成し遂げられ、これ以上この空域にいる必要は無い。ハガネが合流したこともあり、エルザムは即座に撤退していくのだった……ハガネへの直接的な被害は無く、グルンガストを始めとした支援物資は手に入れた。それはハガネにとってはこの上ない勝利であったが、今回は武蔵にとってはただの一度の有効打も入らず、終始翻弄されていた完膚なきまでの敗北となるのだった……

 

 

 

第13話 思惑へと続く

 

 




今回のガーリオンは漫画版のOGでよく出てくるカスタムタイプのガーリオンと思ってください。ゲッター相手にノーマルのガーリオンはありえないと思ったので改造してみました。ゲームではハガネと共に戦闘になりますが、グルンガストと登場と共に撤退指令を出していたので、ハガネのPT部隊との戦闘はなしとなりました。次回はジョナサンやオリキャラのコウキとの話とアイドネウス島での話になります、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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