第3話 帰って来た男 その1
ラングレー基地第4試験場に向かう道中でカイは完成した「ゲシュペンスト・MK-Ⅲ」に初めて搭乗していた。調整段階のプロトタイプにはリバイブのオーバーホール中に乗り込んだが、それよりも格段に操縦性もパワーも上がっていた。
(この出力に対して、この安定感……ふっ、ゲシュペンストはここまで来たか)
旧式と侮られたゲシュペンストがここまで来た――そう思うとカイの口角は自然に上がっていた。リバイブと比べれば確かに味気ない操縦感覚だが、ルーキーやベテランの操縦に応じて自由にカスタマイズ出来ると考えれば、量産機としてゲシュペンスト・MK-Ⅲは破格の性能を持っていると言っても良いだろう。
(今回は我慢するが、正式に教導隊に回って来る時はリバイブの予備機になる様に、しっかりとカスタマイズする事にするか……あの時の二の舞にならない為にもな……)
カイのために両腕をライトニング・ステークに換装されたゲシュペンスト・MK-Ⅲは貸し出された機体なので変な癖を着ける訳には行かないのでノーマルOSだが、カイの操縦感覚ではカスタムOSならば間違いなくカタログスペック以上の性能を発揮すると感じていた。無論リバイブと言う専用機があるので、他の機体に乗る事は殆ど無いが、L5戦役終盤でリバイブを失いまともに戦闘できず、目の前で武蔵が特攻するのを見ることしか出来なかったカイ。あの時ほど自分の無力さを感じたことは無く、終戦後から技量を磨き続き、歳だから等と甘えた事を言わず身体を鍛え続けてきたカイは間違いなく、L5戦役の時のカイよりも遥かに強い。
「ライ、ラトゥーニ、リョウト、リオ。後数分で第4試験場に到着する、設定は終了したか?」
先行量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲはそれぞれライとリオ。そして正式量産されることは無くなったが、一部の部隊に回される事になった量産型ヒュッケバインMK-Ⅲはラトゥーニとリョウトが乗っている。
『設定は今完了しました。カイ少佐、でもこの……砲戦パーツの安定感は凄いですね』
砲戦パーツは強行突破もしくは拠点防衛用に設計されている。その為か、テスラドライブではなくローラーによる移動と聞いていたが、想像以上に早いとリオは驚いたようにカイに報告する。
『こっちもですね、ノーマルタイプですが、安定度が段違いです』
R-2等と言う色物に乗っているライだが、それはライの操縦技術の高さによる人選だ。ライの操縦技術ならば、どんな機体でも十全以上に動かせる。そんなライが感心した様子で言うのだから、先行量産型と言う事でコストがやや高めに設定され、機体性能が高い事を除いても、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの基本性能の高さが良く判る。
『私も問題ありません、カイ少佐』
『僕も大丈夫です』
量産型ヒュッケバインの2人も支援装備の設定が完了したと聞いて、カイは第4試験場に突入する際のフォーメーションを告げる、
「よし、第4試験場に突入するぞ、リョウトとリオは無理をするな、支援を徹底しろ。ライは俺と共にセンター、ラトゥーニはフォローバック。行くぞッ!!」
『『『『了解ッ!』』』』
フォーメーションの指示を出し、カイを先頭にして第4試験場に乗り込むのだった。
クレイグに言われていたのか、人質に触れるとATXチームは抵抗を止めた。確実に民間人に被害が及ぶのを避ける為に要求を呑めと言われていたのは明らかだった。
(後8分……か)
ロレンツォにしても人質を殺すのは出来れば避けたい。虐殺者なんて言う名目がつけば、ロレンツォの大義名分は埋もれてしまう。人質を有効に使い、必要以上の血を流さずに撤退するという余裕を見せ付ける事が必要な要因だからだ。
「中佐。熱源5急接近中。後60秒後に試験場に到着します」
「やはり……か」
ラングレーの膝元での作戦だ。敵増援が来る事は判りきっていた事だ、何が出てくるかと熱源方向にモニターを向けたロレンツォは興味深そうに眉を細めた。
「ほう……新型のヒュッケバインとゲシュペンストを投入してきたか……随分と大盤振舞いだな」
連邦軍が時期主力量産機としてヒュッケバインとゲシュペンストのトライアウトをしていると言う情報はロレンツォも掴んでいた。そのどちらかが投入される事は判っていたが、その両方が投入されたことに少し驚いていた。
「あれも手に入れたい所だが……二兎を追うのは危険か、新型の情報収集を始めてくれ、連邦の新型は相当厄介そうだ」
ヒュッケバインの方はパッと見、個性を無くし、安価と整備製に特化したように見える。だが機体各所にあるハードポイントをロレンツォは見逃さなかった。3機ゲシュペンストが同じデザインなのに、外付けパーツで機体特徴を変えているのも見てあえてノーマルのヒュッケバインとカスタムしたゲシュペンストを送り込んできたと判断したからだ。
『……こちらは特殊戦技教導隊、カイ・キタムラだ。直ちに武装解除し、投降しろ』
指揮官機の緑のゲシュペンストからの通信にロレンツォは苦笑した。ATXチームの次は教導隊、しかも搭乗機は新型が5機……その余りに熱烈な歓迎には流石のロレンツォも苦笑を隠せないでいた。
「ATXチームの次は教導隊か。ご大層な対応だな」
『ここへ来たのは成り行きでな。さっさと武装を解除しろ』
念入りに準備してきたのだが、まさかそんな不確定な要因で囲まれているとは計算外にも程がある。だがロレンツォは余裕のある態度を崩さない、人質がいる限りロレンツォ達優位性は変わらない。
「それはこちらの台詞だ。人質の命が惜しくば、我らの道を開けよ」
(さぁ、どう出てくる?)
自分の言葉に相手がどう出てくるか、ロレンツォは目を細め第4試験場を包囲している機体に視線を向けた。
新型のゲシュペンストは両腕が両方とも電極になり、背部にブースター付きのフライトユニットを装備している所から突破力が高いだろう。
その斜め右後のゲシュペンストは見た所ノーマルタイプだが、背部にマウントしているライフルを見る限りでは射撃特化。
更にその後には巨大な砲門を背負った重厚な装甲を持っている所から支援特化……。
(どう出てきても対応出来る)
ATXチームが出張ってくることは予測していた、上空のアーマリオンには狙撃を防ぐ為のシールドユニットを装備させているし、リオンにもスパイダーネット等の相手の機動力を削ぐ装備を装着させている。どんな状況にも対応出来ると言う自信がロレンツォにはあった。
「……返答は如何に? カイ・キタムラ。民間人を犠牲にするかね?」
『貴様らと取引する気は……』
取引する気は無いと言う言葉を聞いて、アーマリオンがその銃口を第4試験場に向けた瞬間。人質を抑えていたガーリオン・カスタム・無明が格納庫から伸びた腕に殴り飛ばされた。
「馬鹿なッ! 何故あのグルンガストが動いているッ!?」
最初は持ち出す予定だったグルンガスト弐式。だがパスワードのせいか、起動せず放置していた筈のそれが動き出した事には流石のロレンツォも驚愕し、自分の計画が乱れ始めているのを感じ取っていた……。
第4試験場に走る振動と降伏勧告を聞きながらブリットは格納庫の奥に安置されていた特機に向かって走っていた。
「……グルンガスト弐式……やっぱり残ってたか」
格納庫に置かれていた量産型ゲシュペンストMK-Ⅲ、ヒュッケバインMK-Ⅲの予備フレームや装備は影も形もないが、グルンガスト弐式だけはそこに残されていた。その理由は明白、このグルンガスト弐式はT-LINKシステムを起動させて使う前提で設計されている。念動力者で無ければ操縦出来ないようになっている。
「……これで行くしかないな」
他に乗り込める機体は無い、クスハ用に調整されたT-LINKシステムを自分用に設定している時間もない。ブリットは機体に乗り込むと同時に、格納庫の内部からガーリオン・カスタム・無明に向かって弐式の拳を突き出させた。
「こ、この違和感……! 覚悟していたが、まさかここまで強いとはッ!」
クスハの念動力が自分よりも上と言う事は覚悟していたが、想像以上に強い負荷にブリットは顔を歪めた。それでも自分のやるべき事を見極め、歯を食いしばって叫び声を上げた。
「カイ少佐! あのガーリオンは自分が抑えます! テロリストの制圧をッ!」
人質さえ自分が守ればキョウスケ達は攻撃に出れる。まともに動かない機体でも人質を守る盾になることは出来る……ブリットは覚悟を決めてそう叫び、ガーリオン・カスタム・無明にグルンガスト弐式を向かい合わせる。
「了解した! 各機、メインターゲットはヴァルシオンだ! 仕掛けろ!」
『『『『了解ッ!!』』』』
「……グルンガストが動くとはな。人質はもう役に立たんか……各機へ。広範囲ASRSの展開準備が整うまで、暫く掛かる。それまで敵機をこのヴァルシオンへ近づけるな」
『『『了解ッ!!』』』
グルンガスト弐式が動き出したのを切っ掛けに第4試験場での戦いの幕が斬って落とされるのだった。
「ライ少尉、ラトゥーニ少尉、どちらかで構わない。ブリットの支援を頼む」
戦闘開始と同時にキョウスケからの支援命令がライとラトゥーニに下される。その理由はライ達ならばすぐに判った……。
『了解しました中尉。私がバックアップに入ります』
「……すまないが頼んだ」
T-LINKシステムはデリケートな代物だ。他人様に設定されたT-LINKシステムを搭載した機体で戦う事になっているブリットが相手をするにはあのガーリオンは強すぎる。少なくとも、あのガーリオンに集中出来るようにアーマリオンとリオンを撃墜する必要がある。
『キョウスケ、俺とお前で包囲網を抉じ開ける。行けるな?』
「問題ありません、行けます」
人質が意味を成さないとは言え、戦いが激化すればその命が危ない。強引に突破し、相手の包囲網を抉じ開ける。その為に指揮官機2による突撃と言う一見無謀とも取れる作戦にカイとキョウスケは踏み切った。同時にバーニアを全開にし、敵陣のど真ん中に切り込んでいくアルトアイゼン・ナハトとゲシュペンスト・MK-Ⅲに向かって、スパイダーネットや電磁ネットを装備したリオンが動き出そうとした瞬間、爆発してそのリオンは墜落した。
「つっつう……思ったより、弾速も反動も大きいわね……」
それはリオの乗る先行量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲの背負った実弾砲が放った弾幕による物だった。
『かなりパワーがあるから気をつけて、エネルギー砲のほうが反動も少ないと思う』
「ありがと、ラトゥーニ。そうさせて貰うわ」
ブーステッドライフルで移動と狙撃を繰り返している量産型ヒュッケバインMK-Ⅲからの通信を聞いてリオは小さく笑う。R-2のハイゾルランチャーを参考にして作られた武装と言う事はリオも知っていたが、想像以上のパワーだった。
「エクセレン少尉弾幕で突破口を抉じ開けたいと思うのですがどうでしょうか?」
『OK、それで行きましょう。あのシールドユニットを装備しているアーマリオンを落とすわよ』
リョウトが作り上げたアーマリオン……L5戦役で作られた量産機の生き残りをリオは目を細めて睨む。
「ロングバレル展開、照準あわせ……」
コンソールを操作し、背中に背負っているキャノンユニットを展開する。砲身が肩にマウントされ、そこから砲門が伸びる。
「姿勢制御ユニット射出、エネルギー充填120%……いっけぇッ!!!」
『はいはーい、つまらないものですけどどうぞーッ!!!』
周囲に響くような轟音を響かせて放たれたメガ・ツインカノンのエネルギー波とオクスタンランチャーEモードのフルパワーがシールドユニットなどお構いなしにアーマリオンを貫き爆発させる。
『……ちょっーとそれパワーがありすぎるんじゃない?』
「……いっつつ……そうみたいですね、調整が必要みたいです」
メガ・ツインカノンの威力は想像以上に凄まじく、姿勢制御用のアンカーで固定しているにも関わらず、リオのゲシュペンスト・MK-Ⅲは吹き飛んで森の中に倒れていた。
『フォローはしてあげるから早く立ちなさいな』
「す、すいません。少尉」
ライのゲシュペンスト・MK-Ⅲとリョウトの量産型ヒュッケバインMK-Ⅲの背中にマウントされているミサイルポッドから放たれる弾雨で強引にカイとキョウスケの通路を抉じ開け、散らされた包囲網を各個撃破するんだからと言うエクセレンの言葉を聞きながら、リオは打った額を摩りながら先行量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲを立ち上がらせた。人質を失った事、量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅲの大出力のエネルギー砲でアーマリオンとリオンは浮き足立っていて、各個撃破されている。だがロレンツォはその程度で気を乱す事無く、キョウスケとカイを2人にしても、有利に立ち回っていた。
「逃がさん……ッ!」
「ロレンツォ! 貴様の目的は何だ!?」
「しつこい男は嫌われるぞ、キョウスケ中尉、カイ少佐よ」
挑発を交えながらも余裕のある態度を隠さないロレンツォ……ヴァルシオン改・タイプCFと言う規格外の性能を誇る特機に乗っているからこその余裕なのか、それともこの包囲網を抜けるだけの隠し玉があるのか……戦場にいる全員が底知れぬ余裕を持つロレンツォに対して嫌な予感を感じているのだった……。
ヒュッケバインMK-Ⅱで自分を苦しめた相手が特機に乗って来た。さぞ心踊る戦いが出来ると期待していたムラタだが、その期待に反してグルンガスト弐式の動きは非常に緩慢な物だった。
「奴め、動かんな。機体の不調か……? 惜しいな。あまりのんびり相手はしてやれん」
本当ならば少し待ち、相手が調整するのを待つと言う手もあった。だが、雇い主の意向に逆らえないというのが傭兵の辛い所だ。それにさっきから自分を引き離そうといするゲシュペンストの狙撃にもムラタは辟易していた事もあり、撃墜されたリオンを無造作にゲシュペンストに蹴りつけ、強引に引き離すとシシオウブレードの切っ先を改めてグルンガスト弐式へと向けた。
「その足運び……本調子でないのが悔やまれるな……仕方あるまい、首級だけでも頂くとしよう……」
ここで殺すのは本望では無い、だが手加減していると思われ違約金を請求されても困るとムラタはグルンガスト弐式の首にシシオウブレードを添えた。
「名を聞いておこう、いずれ再戦の証としてな」
『……頼む、弐式。力を貸してくれ……ッ!……俺達の目的は……1つだろ……ッ!?』
接触通信で聞こえてくるパイロットの声にまだ闘志が折れていないと悟ったムラタはコックピットでにやりと笑った。
「気が変わった、お前の命……貰い受けるとしよう」
首に添えたシシオウブレードを引き、その刀身の切っ先をコックピットに向ける。勿論これは脅しだ、ムラタの経験上窮地で才能を開花させるという者を幾度も見てきた。この男もその類だと思い、恐怖させるかのように敢えてゆっくりとシシオウブレードの切っ先を突き入れる。
「クスハを……お前の主を助けるんだ……ッ! 弐式……応えろ……奴を……ッ! あのガーリオンを倒すッ! 奴の剣を叩き折るんだ!!」
グルンガスト弐式の目が輝いたとその瞬間にムラタは飛び退いていた。
「ふふふ、やはり俺の見る目に間違いはなかった」
「うおおおおおッ!!」
第4試験場に響き渡るブリットの雄叫び、それを聞いてムラタは笑った。自分の見る目は間違いでは無かった……生死の境目に追い込まれる事で限界を超えたと確信していた。
「この気迫……装甲越しに伝わってきおるわ……改めて聞こう。俺の名は「ムラタ・ケンゾウ」だ。お前の名は……?」
「ブルックリン・ラックフィールド……勝負はこれからだ。ムラタ」
コックピットにまでひしひしと伝わってくる闘志にムラタは笑みを深めた。
「調子が戻ったという訳か。面白い……貴様のその気概ごと斬り捨ててくれるわッ」
シシオウブレードと計都瞬獄剣が同時に振るわれ、凄まじい火花と轟音を周囲に響かせる。
「良い踏み込みだ、それにその太刀筋……迷いがない」
「くっ、やはり強いッ! それにこの太刀筋……完全に特機の相手に慣れているッ!」
瞬発力に秀でたガーリオン、そのカスタム機のガーリオン・カスタム・無明は通常のガーリオンよりも遥かに早い。そしてムラタが特機の相手に慣れているからか、グルンガスト弐式の弱点を的確に突いて来る。
「負けるかッ!!」
「ッ! 今のはいいぞ、良い太刀筋だ」
ガーリオンのパワーでは切り裂けないと装甲で防ぎ斬りかかるグルンガスト弐式、切り裂かれて飛んだ肩の装甲を見てムラタは更に笑みを深める。
「おりゃあッ!!」
「ぬうんッ!!」
目まぐるしく立ち位置を変え、相手を両断せんと振るわれる刃。そこに支援や援護の入る隙間は無い……ほんの少しの邪魔で互角の戦いは崩れる。それほどまでの張り詰めた空気がムラタとブリットの間にはあった……。
「ふうう……」
「ふん、お前の得意はそれか、ならばそれで相手をしてやろう」
鞘は無いが計都瞬獄剣を腰に添えて、前傾姿勢になった弐式に合わせるように無明もシシオウブレードを鞘に納める。
「「おおおおおーーーッ!!!」」
ムラタとブリットの雄叫びが重なり、グルンガスト弐式と無明の姿が交差する。
「ぐっ……やはり早い……」
右肩から左の足の根元に向かって袈裟に斬られたグルンガスト弐式が膝をつき、火花を散らす。
「……ふふふ……思っていた以上に 手応えのある連中だった……心行くまで戦いたかったが……続きはまたの機会にしよう」
肘から先のない右腕を見てムラタは楽しそうに笑い、残された左腕でシシオウブレードを腰の鞘へと納めた。
「ムラタ、 広範囲ASRSの準備が整った。退くぞ」
「承知」
元からASRSの展開準備が終わるまでの戦いだった。それにしては楽しめた戦いだったと思い、ムラタは無明を反転させる。
「! 逃げる気か!?」
「我らには次の仕事があるのでな。縁あらば、また会おうブルックリン」
ブリットの挑発には乗らず無明を浮上させると同時に、モニターを無効化させる特殊煙幕が張られ、モニターが回復した頃にはロレンツォ達は包囲網を悠々と抜けてこの空域から離脱しているのだった……。残されたキョウスケ達はここまで追詰めたにも拘らず離脱されたことに顔を歪め、ヴァルシオン改・タイプCFと量産型ゲッターロボを奪取されたが、それでも人質だけは守れた事をよしとするしかなかった。
クロガネのブリッジに何度目になる激しい振動が襲った。その衝撃に耐え切れず、ビアンが艦長席から転がり落ちた。
「ビアン博士、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ! それよりもユーリア達は大丈夫か!?」
クロガネのバリアは当の昔にその機能を失い、今はゲッター合金のお陰で轟沈を間逃れていたが、それも時間の問題だった。
「ユーリア、ラドラ機を残して全機大破。クロガネに帰還しています」
想像を遥かに越える凄まじい被害にビアンは言葉を失った。
「こ、ここまでの力があると言うのか! あいつらは一体何者なのだッ!!」
左腕がハサミ、頭部に1本の角がある異形の特機「百鬼獣 一角鬼」
両腕が3本の爪で構成された重厚な装甲を持つ片目の特機「百鬼獣 独眼鬼」
牛のような2本の角を持つ全身に棘を持つ特機「百鬼獣 針千本鬼」
頭部が髑髏で両腕にガトリング砲を持つ特機「百鬼獣 白骨鬼」
両腕が大きな車輪になっている頭部に1つの角を持つ「百鬼獣 大輪鬼」
たった5体にヴァルキリオン部隊は壊滅、ゲシュペンスト・シグも大破目前……そしてしまいにはクロガネまでも轟沈寸前だ。今まで、全く目撃情報の無かった異形の特機を前に流石のビアンも悲鳴にも似た声を上げる。
「ユーリアッ!?」
独眼鬼に組み付かれ、抱き締めるように圧壊されそうになっているヴァルキリオンを見てリリーが悲鳴を上げる。
「くっ、クロガネを前進させろッ! ユーリアを救出するッ!!」
クロガネで体当たりをしてユーリアを救出すると言った瞬間。凄まじいエネルギー反応が検知され、クロガネの警報が鳴り響いた。
「なんだ、何が起きている!? まだ何か来ると言うのかッ!?」
どうしようもない窮地に新たな敵の襲来かとビアンが声を荒げた瞬間。巨大な戦斧が上空から飛来し、ヴァルキリオンを拘束していた独眼鬼の両腕を肩から切り落とした。
「ギャアアアアッ!」
「げ、ゲッタートマホーク……?」
誰かがそれを口にした。地面に突き刺さる戦斧……形状は確かに異なっているが、それは間違いなくゲッタートマホークだった。独眼鬼が苦悶の声を上げた事で目の前の光景が現実だと全員が初めて気付いた。
「ゲッター線感知! く、クロガネのゲッター炉心の2倍……いや、5倍……うわあッ!?」
オペレーターが最後まで報告する事無く悲鳴を上げたクロガネに搭載されたゲッター線感知器、それが爆発し煙を上げた瞬間、上空から飛来した翡翠色の閃光がクロガネを囲んでいた百鬼獣達を薙ぎ払い、独眼鬼の手から解放され、墜落するヴァルキリオンをゲッター線の輝きが空中で抱き止める。そしてビアン達の目の前でゲッター線の輝きが散り、ゲッター線に包まれていた何かの姿が明らかになった。
「ゲッターロボ……Gなのか?」
ゲシュペンスト・シグの中でラドラは思わずそう呟いていた、そしてそれはクロガネにいるビアン達も同様だった。特徴的な髭のようなフェイスパーツ……3本の角を思わせる特徴的な頭部パーツ……それは紛れも無くゲッターロボGだった。だがビアン達の知るものよりも遥かに洗練された後継機としか思えないゲッターロボGはヴァルキリオンを抱えたまま百鬼獣に視線を向けた。すると黄色のカメラアイに黒目が浮かびあがった……それを見たビアン達はゲッターロボGが怒り狂っているように見えた。しかしビアン達はその怒りが誰に向けられた物なのか判らなかった、百鬼獣なのか、それとも自分達になのか……敵か味方かも判らないゲッターロボGに良く似たゲッターに恐怖した。だがそれは次の瞬間には安堵へと変わっていた……
『ゲッタァアア……ビィィイイイイムッ!!!!!』
雄叫びと共に放たれたゲッターロボGの頭部から放たれた横薙ぎのゲッタービームによる一閃……それは百鬼獣や、百鬼獣と共にクロガネを追い回していたランドリオン達を容赦なく薙ぎ払った。その威力もさる事ながらゲッターロボGから発せられた声にビアン達は目を大きく見開いた。
「い、今の声は……」
生きていると信じていた……だが、それを実際に目の当たりにするとまさかと、信じられないと言う思いがビアン達の脳裏を埋め尽くした。
『間に合って良かったぁッ!! ビアンさん! 助けに来ましたよッ!!!』
戦場に響いたその声は紛れも無く、ビアン達が探し続け、生きていたと信じていた「巴武蔵」の物なのだった……
第4話 帰って来た男 その2へ続く
百鬼獣に囲まれているクロガネを助けに現れたゲッターD2、次回からはクロガネサイドの戦闘シーンを書いて行こうと思います。
なお今作で登場する百鬼獣は全てアニメ、漫画版などごちゃ混ぜで本来「メカ○○鬼」となる敵も全て「百鬼獣」で統一するのでご了承願います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
なお次回のシナリオの勝利条件はこうなります。
勝利条件 敵の全滅
敗北条件 ヴァルキリオン、ゲシュペンスト・シグ、クロガネ改、ゲッターD2、ゲシュペンスト・タイプSの撃墜。
熟練度取得条件
ゲッターD2出現から2ターンの間、ヴァルキリオン、クロガネ、ゲシュペンスト・シグがダメージを受けない。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い