進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第12話 予想外の再会 その2

第12話 予想外の再会 その2

 

時間はヒッカム基地でのビルトファルケン、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・R02カスタムの試験が行われる2時間前まで遡る。

 

「ユウキから、緊急連絡が入った」

 

ブリーフィングルームに呼びつけられた武蔵達は神妙な顔をしているビアンを見て、ただ事では無いという事を一瞬で悟った。

 

「何があったんだ? ビアン所長」

 

「うむ、ハワイのヒッカム基地でカイ・キタムラ少佐が率いる新・特殊戦技教導隊が新型機のテストを行うのだが。そこに百鬼帝国が出現

するという情報を得た。敵側の戦力はリオン、アーマリオン、ガーリオン、そしてクロガネを襲撃した百鬼獣が約5機」

 

場所、そして戦力までも詳しく告げるビアン。そこまで正確な情報を得ることが出来る……それが可能になる方法は1つしかない。

 

「……スパイか」

 

「ああ、君達が行方不明になってから色々と私達も動いていてね。私の思想に共感してくれた兵士の何人かが、百鬼帝国と協力しているテロリストの部下となっている。命懸けの潜入任務をしてくれているユウキ・ジェグナンからの連絡だ」

 

見つかれば殺される、そして連邦には敵として攻撃を受ける――そんな危険すぎる任務を受けている男からの連絡。それを無碍にするような者はこの場には誰1人としていなかった。

 

「新型機強奪にスクールの生き残りが2人参加するとの連絡だ。エルザム達の中から誰かに救出を頼みたい」

 

「スクールって、確かアードラーのくそジジイがやってたっていう」

 

「そうだ。洗脳、薬物投与などを行われ、記憶に混濁の様子が見られるとの事だ。これ以上薬物投与などをされない為に、早い段階での救出を求めている」

 

洗脳、そして薬物操作を受けている子供がいると聞いて、エルザム達の全身から吹き上がるような殺気と怒気が放たれる。

 

「判りました。ビアン総帥、ではこの場は私「いや、私が出る」……しかし、大佐。ヒッカムにはカイがいるんですよ? カイが見たら一目でカーウァイ大佐だとバレてしまいます」

 

エルザムの言葉を遮り自分が出ると言ったカーウァイにエルザムがヒッカムにはカイがいる。誰よりも、カーウァイを慕っていたカイがその動きを見間違える訳が無いとエルザムが進言する。

 

「バレた所で問題など無い。それに私は死人扱いだから動くに容易いだろう、エルザム達ではビアン所長と繋がっているのがばれてしまう。適役は私かイングラムだ」

 

ビアン一派として名が知られているエルザム、ゼンガー達では追いかけられ、クロガネを危険にさらす可能性がある。故にこの場での適役は自分かイングラムだとカーウァイは口にする。

 

「オイラが行っても良いですよ?」

 

「いや、武蔵君の場合。ゲッターロボだと目立ちすぎる……カーウァイ大佐。頼めるかね?」

 

「頼めるも何も、私から行くと言っているんだ。私に任せてくれ」

 

「……判った。ユウキ少尉との文章通信コードと、ロケットユニットを準備する。30分以内に出撃出来るようにする」

 

カーウァイがヒッカム基地に向かうことが決定し、クロガネは慌しくカーウァイの出撃準備を始める。

 

「カーウァイ大佐。お気をつけて」

 

「ああ、百鬼獣と戦うのは2度目だ。しっかりと分析してくることにしよう、私がいない間クロガネは頼むぞ。皆」

 

クロガネは今も百鬼獣に追われている。ゲシュペンスト・タイプSの出撃で、補足される可能性は極めて高い。だからカーウァイ1人での出撃となった。

 

「カイの奴が弛んでないかついで見てくる。もし弛んでいたら、合流した時にきっちりと訓練をつけてやるとしよう」

 

獰猛な笑みを浮かべるカーウァイにゼンガー達は心の中でカイの冥福を祈った。そしてそれと同時に現在進行形で地獄の訓練を受けている身として道づれが増えたと心の中でほくそ笑んでいた。

 

「気をつけて、百鬼獣は強いですよ」

 

「判っている。ここでしっかりと実戦経験を積んでおく事にする。ではな行ってくる」

 

武蔵の言葉に頷き、カーウァイは格納庫に走り、ゲシュペンスト・タイプSに乗り込む。

 

『基本的な操縦はゲシュペンストと大差無いが、速度が尋常じゃなく速い。操縦ミスには気をつけてくれ』

 

「了解した。打ち出してくれ」

 

『健闘を祈る。ロケットユニットの射出準備、カタパルト展開ッ! カーウァイ大佐、射出まで10秒だ。ハワイに到着するまで約40分……ブラックアウトなどに気をつけてくれ』

 

「判った、ゲシュペンスト・タイプS。カーウァイ・ラウ出るッ!」

 

海底から射出されたロケットユニットを装備したゲシュペンスト・タイプSが海面を割り、ハワイへと向かって飛び立っていくのだった……。

 

 

 

 

水上鬼から出撃した百鬼獣の上空で待機していたガーリオンのコックピットの中で、ユウキは小さく間に合わなかったかと呟いた。ユウキがクロガネにコンタクトを取った時間を考えれば良く間に合ったと考える段階だ。

 

【間に合わなかったか、すまない】

 

ガーリオンの中に搭載している、ビアンが開発した秘匿の通信チャンネルに浮かぶ文字を見て片手で素早く返答を入力する。

 

【いえ、私の方こそ急な連絡で申し訳ありませんでした。貴方は?】

 

【……ゴーストとでも今は呼んで貰おう。それで、スクールの生徒は? もうこの場にはいないのか?】

 

アラドが残っているが事前のミーティングでは、アラドとゼオラを離すとゼオラが精神的に不安定になるとセロから話を聞いていたユウキは謝罪の言葉と共に返答を入力した。

 

【2人でワンペアの組み合わせらしく、引き離すと精神的に不安定になるそうで……申し訳ありません。この場に1人残っていますが……

回収するのは得策ではありません】

 

【そうか。ではそのスクールの生徒の搭乗機体、お前の機体の報告しろ】

 

【はッ、この場にいるノーマルリオンがスクールの生徒の搭乗機です。後方2機のガーリオンが私と私のパートナーの機体になります、それ以外の機体はテロリスト側の機体になるので、撃墜してくれて構いません】

 

【了解した。お前も機会を見て脱出しろ】

 

その言葉を最後に文章通信が途絶える。ユウキは小さく溜め息を吐き、パイロットスーツのバイザーを再び展開し、アラドとカーラに通信を繋げる。

 

「シロガネがこの空域に侵入してくるまで4分だ。百鬼獣の展開の完了を確認したら、各機個別でこの空域を離脱せよ」

 

『……了解です。でもユウキ少尉……あの、百鬼獣って奴……大丈夫なんですか?』

 

「それは俺の管轄外だ。アーチボルド少佐達の作戦なので俺は一切関与出来ない」

 

『でも、ユウ。あれ……めちゃくちゃ暴れてるよ? 連邦が止めれなかったら一般人に被害が出るんじゃ……』

 

アラドとカーラに言われなくても判っている。あの暴れようではハワイの市街地に踏み込むのも時間の問題だろう……ユウキ個人としては、今すぐにでも百鬼獣を止めたいと願っても、潜入任務中であるユウキにはそれを実行する事は出来ない。

 

「……市街地近郊に威嚇射撃を行え、警報を発令させ避難を開始させる。良いか、ゲシュペンスト・MK-Ⅲを狙って偶然市街地の方に向かってしまったという体を取れ」

 

『了解♪ やっぱりユウは優しいね』

 

直接的に行動することは出来ない。あくまで、偶然。偶然を装い、ヒッカム基地に警報を鳴らさせる。それを目的し、精密射撃が得意なカーラにそう命じる。

 

『……ユウキ少尉って、何かその上手く言えないですけど……優しいんですね』

 

「五月蝿い、アラド。お前も離脱の準備を始めろ……俺達の任務は完了した」

 

自分は優しく等無い……今この場で出来る事ならば市街地の民間人に逃げろと叫びたい。百鬼獣の暴走を止めたい……そう願っても、それは出来ないのだ。だから自分を優しいなどと言うなと心の中で呟き、早くこの場にシロガネが来る事を願った。百鬼獣が市街地に向かう前に、早く来てくれと心の底から願うのだった……。

 

 

 

 

水上戦闘母艦水上鬼に搭載されていた百鬼獣はアーチボルドには全5機としていた。その理由は、アーチボルドと二本鬼の性格の相違である。

 

アーチボルドはテロリストで、生粋の快楽殺人者である。虐殺を好み、必要以上の騒乱を巻き起こしたがる。

 

それに対して二本鬼は鬼でこそあれ、その性格は生粋の武人である。戦いの中で人が死ぬのは当然の事で、それに心を痛めるというわけではない。戦いの中で相手を殺す事こそ二本鬼の喜びであり、生きがいである。だからこそ戦えぬ者を殺すと言うのは二本鬼の流儀に反していた。

 

(面白い、中々倒し甲斐のある男がいるではないか)

 

だから百鬼獣の搭載数を誤魔化して伝えていたが、戦場に現れたゲシュペンスト・タイプSの姿に二本鬼はその闘志を隠せないでいた。生粋の戦士だからこそわかる、ゲシュペンスト・タイプSを駆る男が並の男では無いいうことがひしひしと二本鬼に伝わってくる。それを見てしまえば、二本鬼が止まっていられる訳がなかった。

 

「今出撃しているのは、双剣鬼、豪腕鬼、暴龍鬼だったな」

 

両腕が剣となっている双剣鬼。

 

機体の全長もある豪腕を振るう豪腕鬼。

 

龍を思わせる水中に特化した暴龍鬼。

 

ブリッジにいる部下の確認を取っている二本鬼にアーチボルドがにやにやと笑いながら声を掛けてくる。

 

「どうします? 二本鬼さん。思ったより状況は良くないんじゃないですか? 出し惜しみをしている場合じゃないんですか?」

 

たった3機に足止めを受けているのは二本鬼にとっても想定外だった。からかうように言うアーチボルドを無視して、二本鬼は艦長席から腰を上げる。

 

「二本鬼を回せ、それと豪腕鬼、後詰で半月鬼だ。俺が直接この目で確かめる」

 

これ以上アーチボルドの不快な顔を見たくない二本鬼は艦長席から立ち上がり、自分の百鬼獣を回せと部下に指示を出す。

 

「了解です! 百鬼獣 2本鬼の出撃準備を始めろ!」

 

「了解!」

 

慌しく動き始めるブリッジの鬼を見てアーチボルドは笑みを浮かべる。まさか二本鬼本人が出撃するとは思っていなかったこともあり、百鬼衆を名乗る二本鬼の戦いを自分の目で見る事が出来るという事に押さえきれない好奇心の色をその瞳に映していた。

 

「へえ? 二本鬼さんが出てくれるんですか、これは楽しみですねぇ」

 

「見ていろ、人間。鬼の戦い方を言うものな」

 

電子頭脳で動く百鬼獣とは違う、百鬼衆が乗る本物の百鬼獣を見せてやると告げて、二本鬼は格納庫に足を向けるのだった……。

 

「ぐうっ! なんというパワーだっ!!」

 

「ゴガアアッ!!」

 

『カイ少佐! 支援しますッ! 離脱してください!』

 

「すまん、ライッ!」

 

ゲシュペンスト・リバイブ(K)と殴り合いを繰り広げている豪腕鬼をリバイブ(K)とゲシュペンストMK-Ⅲ・R02カスタムの2機掛りでやっと豪腕鬼をその場に足止めすることが可能になっていた。

 

「ふう……やれやれ年を実感するな」

 

一撃でも掠れば大破する――それが判っている中でのやり取りはカイの集中力を凄まじい勢いで削っていた。ライの支援によって一息つけたカイは横目でゲシュペンスト・タイプSの視線を向けた。

 

「グギャア!?」

 

「シャガアッ!?」

 

『……』

 

カイとライが2人掛りでやっと足止め出来ている百鬼獣をたった1機で、2機相手にしているゲシュペンスト・タイプS。その技量、そして操縦テクニックは紛れも無く、カーウァイの物だとカイは確信していた。

 

(どうなっているんだ)

 

突如現れたメカザウルスのような強大なパワーを持つ特機、そして死んだ筈のカーウァイの搭乗機であるゲシュペンスト・タイプSの登場。カイの理解を超える事ばかりが続いているが、それでもカイが調子を乱すことは無い。

 

「グルゥウウウウッ!」

 

「調子に乗るなよ。この木偶の坊ッ!!」

 

確かに豪腕鬼の巨体とその豪腕は恐ろしいプレッシャーをカイに与えている。だが当たらなければどうと言う事は無いのだ、振るわれた豪腕をかわし、カウンターの要領で顎を打ち抜いたリバイブ(K)の豪腕に豪腕鬼はたたらを踏んで後退する。

 

「回復する隙は与えんッ!!」

 

相手が生物なのか、それとも機械なのかは判らない。だが顎を打ち抜かれ、たたらを踏んだのを見るかぎりでは脳震盪を起した相手の動きに良く似ていた。ならば今が畳み掛ける最大の好機とリバイブ(K)を走らせようとした瞬間。首筋に走った凄まじい痛みにリバイブ(K)の動きを止めた、そしてカイの眼前に巨大な槍が突き刺さった。あのまま突っ込んでいれば、確実にカイは機体ごと串刺しになっていただろう。

 

『良く避けたな、褒めてやろう』

 

雲を引き裂き現れたのは額と側頭部から半月上に捻じ曲がった角を持った巨大な盾を手にした圧倒的な威圧感を放つ特機だった。

 

「ちいっ、ライ。お前は撤退して、応援を呼んで来いッ!」

 

殿を務めると言うカイにライはその必要はありませんと告げた直後、この空域に巨大な熱源反応が現れた。

 

「シロガネ! 間に合ったかッ!!」

 

ヒッカム基地に向かっている筈のシロガネが戦域に現れたことにカイは安堵の溜め息を吐いた。

 

『こちらATXチーム、アサルト1……カイ少佐、ライ少尉、あの特機は何ですか?』

 

リオンなどのAMの姿は既に無く、異形の特機ばかりに埋め尽くされた戦場を見て、キョウスケがそう尋ねる。

 

「そんな物俺が聞きたいわッ! 突然現れた化け物だ。メカザウルス並みに強いぞ、気を締めて戦え」

 

『了解……ッ! ゲシュペンスト・タイプS!? カイ少佐、あれは一体……』

 

「それはこっちの台詞だ、なんだその見慣れん機体は」

 

キョウスケはゲシュペンスト・タイプSに驚愕の声をあげ、カイはアンジュルグを見て怪訝そうな声を口にした。

 

「とりあえず、タイプSは味方だ。正体も目的も不明だがな……そっちは?」

 

『イスルギ重工の新型のパイロットのラミア・ラブレスです、稼動データの収集の為に行動を共にしています。ラミア、カイ少佐だ。ラミア?』

 

キョウスケが呼びかけるがラミアは反応を示さない、いや、この場にいるゲシュペンスト・タイプSを信じられないと言う視線で見つめていた。

 

(ゲシュペンスト・タイプS・Gカスタム……カーウァイ・ラウッ!)

 

捜索しろと言われていたカーウァイとその搭乗機を発見した事でキョウスケの言葉がその耳に届いていなかった。

 

『ラミア、返事をしろ。不調なら下がれ』

 

『キョウスケ中尉……失礼したでごんす。問題ありません』

 

『……そうか、それならば良い』

 

今の自分はシロガネに所属している。だからシャドウミラーの構成員と判っていても、襲ってくることは無い。ラミアはそう判断していたが、カーウァイはそんな事を考えていなかった。

 

(……見た事はある。だが思いだせん)

 

世界を超えたことによる記憶障害により、アンジュルグに見覚えがあっても、その機体の名前もパイロットの名前も思い出せないでいた。

 

「ハ~イ、色男さん! お久しぶりじゃなぁい?」

 

「悪いが、再会を喜んでいる暇はない。先程、試作機が敵に奪取された」

 

「ほ、本当ですかッ!? くそ、俺達はまた間に合わなかったのかッ!」

 

ライの言葉にブリットが悔しさを表し、そう叫ぶ。

 

「じゃあ、ラトゥーニちゃんがいないのはもしかして……?」

 

新型機の強奪時に負傷したのかと心配そうに尋ねるエクセレンに通信に割り込んだカイが口を開いた。

 

「いや、あの子は無事だ。それより、援護を頼むッ! あの化け物を市街地に行かせる訳には行かないッ!」

 

海中から徐々に出てくる百鬼獣。その進路は紛れも無くハワイの市街地――そちらに行かせるわけにはいかないと全員が百鬼獣の前に立ち塞がるのだった……。

 

 

 

 

 

悪くない錬度だ……ゲシュペンスト・タイプSのコックピットでカーウァイはそう呟いていた。

 

「グギャアッ!」

 

『貴様達をここから先には通さんッ!!!』

 

『そう言う事ッ! いっくわよーッ!!!』

 

アルトアイゼンとヴァイスリッターの完璧なコンビネーションは1体では確実に押し負ける所を押し返し、出力の差をテクニックで補い、二本鬼と共に現れた豪腕鬼を相手に完全に有利に立ち回っていた。

 

『ちえいっ!!』

 

「ガアッ!!」

 

双剣鬼と切り結ぶシシオウブレードを手にしているゲシュペンスト・MK-Ⅲのパイロットは荒削りだが、光る物がある。

 

『ターゲットマルチロック……カイ少佐今ですッ!!!』

 

『おうッ!!!』

 

弾雨の中に身を投じ、豪腕鬼に挑みかかるカイは今も昔も変わらないとコックピットの中で微笑む。

 

『主砲! 副砲! 照準合わせ! ってーーッ!!!』

 

『逃がしはしない、ここで沈めッ!』

 

シロガネから撃ち込まれる主砲と副砲の圧倒的な火力と正確無比なアンジュルグの射撃によって暴龍鬼は海面に顔を出すことも出来ず、海中を逃げ回る事しか出来ないでいた。ATXチーム、そしてシロガネの奮闘を前に百鬼獣は徐々にだが、その動きを緩やかにさせる。

 

『やるな、人間。名を聞いておこうか?』

 

盾でゲシュペンスト・タイプSの攻撃を防ぎ、正確無比な槍により妙技を叩き込んでくる明らかな指揮官機からの言葉――本来ならば、敵に接触を取ることなどは無い、だが情報が欲しい今カーウァイは異形の特機からの問いかけに返答を返した。

 

「ゴースト。今はそう呼んで貰おうか」

 

『ふっはははは、幽霊、幽霊かッ! ふふふ、良いだろう。今はそれで我慢をしておいてやろうかッ!!』

 

横薙ぎ、突き、振り回しと縦横無尽に振るわれる槍はその重量と、百鬼獣の圧倒的なパワーと相まって掠めただけでも簡単にPTを破壊するだろう。

 

「そう簡単には当たってやれんな」

 

だがカーウァイからすれば力任せに振るわれているに過ぎず、マニュアル制御の細かいスラスターの制御を持って紙一重でかわし、ビーム・ブレードガンによる射撃と、ビームソードによる切り込みを自在に切り替え互いに攻めあぐねる状況を作り出していた。

 

『エクセレン、あわせろッ! クレイモアッ!』

 

『オッケー! オクスタンランチャーBモードッ! いっけえッ!!』

 

「ゴアアアアアーーッ!?」

 

ベアリング弾を至近距離で喰らい、顔を打ち上げられた豪腕鬼の顔面にフルパワーのオクスタンランチャーが叩き込まれ豪腕鬼は背中から倒れこんだ。

 

『……うそお……まだ全然動いてるわよ。キョウスケ……』

 

『メカザウルス並みと言うのは本当のようだな……』

 

今のアルトアイゼンとヴァイスリッターで出来る最大攻撃だったが、豪腕鬼を撃墜するには火力が足りず。顔面から煙を上げながらも豪腕鬼はその腕力だけで身体を持ち上げ、地面を殴りつけると海中へと逃亡する。

 

『待てッ! 逃げるなッ!!』

 

「キシャアアアーーーッ!!」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムに片腕を切り落とされた双剣鬼は腕を抱えたまま、海中へと飛び込んでいく姿にこの場にいる誰もが違和感を覚えた。まだ戦える筈、それなのにダメージを受けたら逃亡するという一手を打って来た百鬼獣に困惑と驚きを隠せないでいた。

 

『引き際だな。中々に面白い戦いであった』

 

「逃がすかッ!!」

 

カーウァイが二本鬼目掛け、ブラスターキャノンを放とうとした瞬間。周囲を覆い隠す紫色の煙幕が打ち込まれた。

 

『な、なんだこれは!? センサーが全て誤作動だと!?』

 

『くっ! 動き回るな! 攻撃も止めろ! フレンドリーファイヤになるッ!』

 

目の前にいるはずなのに煙幕でこの場にいる全ての機体のセンサーが狂わされた。こんな中で攻撃を繰り出せば、フレンドリーファイヤにしかならない。リーからの攻撃中止命令が下される中、2本鬼の声だけが響く。

 

『今日は顔見せ、最後まで戦う気は無い。よくそんな弱い機体で俺の百鬼獣と良く戦い抜いた。褒めてやろう人間達よ、心踊る良き戦いであったよ……いずれまた会おう、我は鬼……貴様ら人類に地獄を見せる鬼よッ! 二本鬼、この名を忘れるなッ!』

 

煙幕が晴れた時百鬼獣の姿は何処にも無く、僅かに残されている装甲や武装の欠片が百鬼獣がこの場にいたという証だった。

 

『協力感謝する。ゴースト……だったな、すまないが直接感謝を告げたいのでシロガネに着艦して貰えるだろうか?』

 

シロガネのリーからカーウァイに頼むという口ぶりで告げるが、ゲシュペンスト・タイプSは既に囲まれていて頼みと言うかは命令と言う状況だった。そんな中、ゲシュペンスト・リバイブ(K)のカイが意を決した表情で口を開いた。

 

「カーウァイ隊長なのですか? 生きておられたのですか……?」 

 

死人であるはずのカーウァイが居る訳が無い。そう判っていても、カイはそう尋ねざるをなかった。操縦の癖、立ち回り……それら全てがカーウァイと同じ物だった、カイがそれを見間違える訳が無い……疑問系で口にしたが、ゲシュペンストのパイロットがカーウァイであるとカイは確信していた。

 

『……さて……な、くたばり損ねた亡霊が現世を彷徨っているだけさ』

 

否定でも肯定でもないあやふやな回答と共にゲシュペンスト・タイプSはキョウスケ達の見ている前で翡翠色の光に包まれ、空中に翡翠色の尾を残し、包囲網を抜けて遥か上空へと飛び去っていった……。それはゲッターと戦ったキョウスケ達だからこそ間違いないと断言出来る、あのゲシュペンスト・タイプSがゲッター線で稼動していると、しかし武蔵のMIAの後ゲッター線反応は感知されず、PTサイズのゲッター炉心もビアンが開発している可能性もあるが……それでも信じられないと言う気持ちが強かった。

 

「今のはゲッター線ですよね? 中尉」

 

「ああ、まず間違いないだろう。ライ少尉、計測の結果は出ているか?」

 

「はい、ゲッター線を観測しました……しかし何故……」

 

「判らない、判らないが……何か、大きな事件の予兆なのかもしれない」

 

鬼を名乗る未知の存在……百鬼帝国。

 

そして既にこの世に存在しない筈のゲシュペンスト・タイプSとそれを駆る謎の男……。

 

各地の連邦基地で多発する新型強奪事件……。

 

それらは一見何の繋がりも関係性も見えないが、何か大きな事件の前触れだとにこの場にいる全員が感じながら、リーの命令でシロガネへと着艦しヒッカム基地へと帰還していくのだった……。

 

 

 

 

 

第13話 予想外の再会 その3へ続く

 

 

 

 




と言う訳で今回は規定ターン経過、もしくは一定のダメージを与えるで強制終了になるイベントでした。百鬼獣は全てHP「????」表記で高HP、高火力、高装甲ですが、命中が低めって感じで考えてます。OG1編の武蔵がAMとかとまともに戦えなかったのと同じですね。次回は状況整理の後、伊豆基地のリュウセイ達の話しにしたいと思います。また話を1つスキップしてますが、シナリオの流れ上と言う事でご理解の程をお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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