進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第13話 予想外の再会 その3

第13話 予想外の再会 その3

 

 

百鬼獣の襲撃を切り抜けた後、ヒッカム基地では新型奪取に加えて、謎の敵の襲来に対する臨時緊急会議が開かれる事となり、伊豆基地のレイカー、そしてラングレー基地のクレイグ、そしてヒッカム基地の司令ジョージの3人に、シロガネのATXチーム、カイが率いる新教導隊メンバーも加わり対策会議が行われる事となったのだが……。

 

「カイ少佐。今回の新型機……ビルトファルケン奪取についてはラトゥーニ・スゥボータ少尉の手引きがあったのでは無いのかね?」

 

会議開始と共にジョージによる己の責任追及を避ける為の責任すり替えから会議は始まりを告げた。

 

「ジョージ司令。貴方は身内を疑うのですか?」

 

「ふん、私とて疑いたい訳では無い。だが、余りにも敵の手際が良すぎる。そしてあれだけテストの位置を変更したのに敵が待ち伏せしていた。それは敵への情報漏洩が在った事を疑わずにはいられない」

 

肩を負傷しているラトゥーニに目もくれず、通信越しで会議に参加しているクレイグとレイカーにラトゥーニが如何に怪しいかと言う事を熱心に口にするジョージ。

 

「ジョージ司令、お言葉ですが我々がテスト位置の変更を聞いたのはテストの15分前です。仮に情報を漏洩していたとして、15分であれだけの敵の布陣を配置できるとは思いません」

 

「……リオン、アーマリオンに確認されている高速機動を使えば可能な筈だ。それにラトゥーニ少尉は……DC副総帥のアードラー・コッホが責任者を務めていたスクールの出身者だった筈だ。ならば、DC残党と何らかの接点があると考えられる」

 

スクール、そしてアードラーの名を出されラトゥーニが肩を竦める。確かに明るくなったが、それでもまだアードラーの名はラトゥーニにとってトラウマの1つである。疑われている上に、その名前、肩を撃たれている事も加わりラトゥーニはリアクションを起してしまった。そしてそれを見たジョージは図星だからと鬼の首を取ったように笑う。

 

「ラトゥーニ少尉を拘束せよ。弁解は軍事裁判にて聞こう」

 

警備兵がラトゥーニを捕らえようとした時、リーがそれに割り込んだ。

 

「ジョージ中佐。貴方の言う事は全て状況証拠であり、そしてなおかつDC戦争、L5戦役で地球圏を守る為に戦った尊敬すべき兵士に向ける口調では無い。更にライディース少尉の言う通り、試験までに7箇所も場所を移動している。それら全てはジョージ中佐の意見によって行われていると言う司令部勤務のオペレーターの発言もあります。この場で最も疑わしきはラトゥーニ少尉ではない、失礼ですがジョージ司令は鬼を名乗るアンノウン出現時、いえ、それよりももっと前……試験の会場が決まった直後からヒッカム基地から姿を消していたと言う兵士の発言を多く聞いておりますが、それに関して何か弁明はありますか?」

 

ラトゥーニを庇い、そして逆にジョージが疑わしいと反論を口にするリー。

 

「若造がお前は私を疑うのか!」

 

「疑うも何も私は何をしていたのかと尋ねているだけです。試験会場の度重なる変更により、マオ社のスタッフと共にビルトファルケン、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・R02カスタムの設定をしており、アリバイが確定しているラトゥーニ少尉を犯人に仕立て上げたいことに関する弁明を求めているのです」

 

「なっ!? そ、それは……」

 

理路整然と疑った理由を問い詰めるリー。それに対してジョージの顔色は見る見る間に悪い物になっていく……。

 

「カイ少佐。マオ社のスタッフの発言についてはどうなっている?」

 

「はっ! ジョージ司令によって基地から撤退させられ、民間の病棟に移動させられる前に話を聞くことが出来ました。ラトゥーニ少尉は

テストの時間まで最終調整を行っており、通信室に足を向けたという話はありませんでした」

 

「ジョージ司令が基地から退出なされ、避難所周辺に向かわれたのも確認しております!」

 

副指令の発言にジョージは目を見開き、口をぱくぱくと動かす事しか出来ないでいた。

 

『どうやら軍法会議に出るのはジョージ中佐。君のようだな』

 

『ジョージ司令を拘束せよ、またヒッカム基地の司令室、及びジョージ中佐の私室への立ち入りを禁止する』

 

レイカーとクレイグの言葉にラトゥーニの前から移動し、ジョージを拘束する警備兵達。

 

「ち、違う! わ、私は何もしていない! わ、私では無い!!」

 

みっともなく違うと叫びながら引き摺られていくジョージをリーは冷めた視線で見つめ、その姿が見えなくなってからラトゥーニに視線を向ける。

 

「肩の負傷もある。傷が痛むのならば、無理にこの会議に出る必要は無い。後日、また話を聞くことも出来るが……傷の調子はどうだ?」

 

「い、いえ、大丈夫です。問題ありません……それと……その……」

 

「私が君を庇った事が意外かね?」

 

言葉に詰まるラトゥーニにリーがそう問いかけるとラトゥーニは小さく頷いた。

 

「上司が部下を守るのは当然の事であり、義務である。部下の責任は全て上官が背負う物であり、責任を擦り付けるものでは無い。そして私は何よりも、L5戦役を戦い抜いた全ての兵士に尊敬、そして感謝の念を抱いている。故に、自分に向けられる責任を擦り付ける為に君を狙ったジョージ中佐が許せなかった。と言うわけだ」

 

『良い上官だろう? 今若手で、スペースノア級を任せれる唯一の艦長だと私は思っているよ』

 

『さて、邪魔者がいなくなった所で、対策会議を再開するとしよう』

 

リー・リンジュン中佐は連邦における理想の上司トップ20に名を連ねるほどに人徳がある艦長であり、義に厚い男だった。ただそれはL5戦役時から僅か半年での出来事であり、リーと同期の軍人たちは皆リーに何があったと首を傾げているのは連邦でも有名な話だったりする……。

 

 

 

 

ジョージは新型機奪取における責任追及の為にクレイグとレイカーが参加したと思っていたが、クレイグとレイカーが忙しい最中会議に参加したのは百鬼獣とゲシュペンスト・タイプSに関しての話し合いをするためだった。

 

『鬼を名乗る……謎の男と、異形の特機……』

 

『そして失われた筈のゲシュペンスト・タイプS……か』

 

DC戦争の影で出現した恐竜帝国、そしてメカザウルスに匹敵するパワーを持つ異形の特機に関しては情報が殆どなかった。

 

「シロガネの整備主任に確認してもらいましたが、材質は未知の金属で、微々足る物ですが自己修復能力を持っていたそうです」

 

金属でありながら自己修正能力を持つ……それはL5戦役で戦ったブラックエンジェルと呼称された「アストラナガン」、ホワイトデスクロスと呼ばれたジュデッカと同等の性質であり、現在の地球の技術力では製造出来る金属では無い。

 

『ふむ……カイ少佐、キョウスケ中尉。戦った者の感想を代表として聞きたい。あの異形の特機はどう見えた?』

 

レイカーの問いかけにまずカイが口を開いた。

 

「恐ろしい力を有しています……今回は何とか切り抜ける事が出来ましたが……あれが集団で襲ってくることを考えたら、今の連邦ではあの進撃を止める事は極めて難しいかと……」

 

獣のような瞬発力、そして改良されたゲシュペンスト・MK-Ⅲ、ゲシュペンスト・リバイブの装甲を容易く破壊する攻撃力、そしてアルトアイゼン達の攻撃を受けても大破しない防御力……どれをとっても脅威でしたとカイが報告する。

 

『なるほど、ではキョウスケ中尉はどうだ?』

 

「はっ、あの特機に関しては私もカイ少佐と同意見です。十分な備えがあったとしても迎撃するのは難しいでしょう……ですが、私には1つ気になることがあるのです。レイカー司令」

 

『気になる事? それは重要な事かね?』

 

「……はい、あの異形の集団の正体に関わることだと私は思います」

 

「待て、キョウスケ中尉。私はそのような話を聞いていないぞ?」

 

リーがキョウスケに待ったをかける。異形の集団の正体に関わるような重要な話を何故私に報告しないとリーが問い詰める。

 

「リー中佐。緘口令が引かれていることなんですよ、私もキョウスケも本当は報告したかったんですけど……許可無く話す事が出来なかったんです」

 

エクセレンがリーに話せなかった理由を口にすると、リーは納得はしていないがしょうがないという表情で椅子に腰を下ろした。

 

「武蔵の事に関する発言許可を」

 

『……許そう。司令部にいるATXチーム、教導隊を除き全員退出せよ。ラミア・ラブレスに関しては……』

 

「今後またあの特機と戦うこともあるかもしれません。私が責任を取るのでラミアもこの場に残る許可を」

 

『……良いだろう、許可する。ではキョウスケ中尉、何に思い当たる節があるのかね?』

 

連邦において武蔵の事はSSS機密に該当する。更に、武蔵が生きていた時代……旧西暦に関する話は最重要機密となる、レイカーの命令で司令室から人が次々と出て行き、リーとクレイグ、そしてラミアを除いて全員が武蔵を知る面子だけになった。

 

「武蔵の話の中で恐竜帝国との最後の戦いの前に「鬼」に出会ったという話がありました。あの異形の特機のパイロットは自らを鬼と名乗りました……武蔵、そして恐竜帝国に続き、旧西暦の使者なのではないでしょうか?」

 

「待て、待ってくれ、旧西暦? キョウスケ中尉、お前は何を言っている?」

 

『ふむ、混乱するのは当然だな。リー中佐、これはSSS機密の為隠されているがL5戦役、そしてメテオ3との戦いで人類を勝利に導いたゲッターロボ、そして巴武蔵は旧西暦の人間だ』

 

「……冗談……ではないのですね?」

 

『ああ、旧西暦のとある戦いの中で武蔵君はゲッターロボと共に新西暦に時空間転移を行い、アイドネウス島に出現した。リー中佐、君の事だ。武蔵君については調べていたのだろう?』

 

レイカーの問いかけにリーは黙り込んだ。それがリーが武蔵を調べていたという証拠になった。

 

「申し訳ありません」

 

『いいや、責めている訳では無い。L5戦役の立役者だ、知りたいと思うのは当然の事だろう』

 

調べれば全員が戸籍の無い男に辿り着く……巴武蔵、そしてゲッターロボが何者なのか? と言う疑問に辿り着き、そしてそこから先に進めなくなる。なぜならば、武蔵は旧西暦の人間であり、新西暦に存在した人間では無い。どう調べても、武蔵の正体には辿り着けないのだ。そしてそれは話を聞いていたラミアも同じだった。

 

(旧西暦の人間……どういうことだ?)

 

ラミア自身は武蔵と面識が無く、指令の内容と、容姿、搭乗機体に関しては情報を得ていたが、武蔵が旧西暦の人間と言うありえない情報を聞いて、その目を大きく見開いていた。

 

『……私も初めて聞いた時は、我が耳を疑った。良く話を聞いて情報を整理して欲しい』

 

「……クレイグ司令……はい、判りました」

 

武蔵に関わる話のすべては今までの常識を越える。そしてそれが必要になるほどの激しい戦いが間近に迫っていると言う証だと気付いたのか、レイカーも険しい色をその顔に浮かべた。

 

『ではキョウスケ中尉はあの特機を旧西暦の存在であると考えていると言うことか?』

 

「はい、その可能性は極めて高いかと、事実メカザウルスと同等と思われるパワーを発揮していました」

 

『ふむ……この件は1度私預かりにしよう。リー中佐達には悪いが、今回の件は緘口令を引かせてもらう』

 

旧西暦の使者……しかもそれは武蔵とは異なり、人類に明確な敵意を見せる存在。今の新型機奪取が多発し、それと共に出現した事もある。警戒しなければならないが、必要以上に警戒する事で余計に包囲網に穴を開ける訳にはいかないと言う事で、百鬼獣に関する事はレイカーの預かりとなった。

 

「それとは別にやはり、連邦軍の内部に内通者がいる可能性も捨て切れません。ヒューストン基地の事もあります」

 

『……確かにな。新型のテストに関しては司令クラスに留めていたが、こちらから信用出来る者を派遣する形にする必要もあるな』

 

このまま新型機を奪取され続けては開発した意味がない、なんとしても新型機奪取はここで食い止めなければならない。

 

『カイ少佐、ゲシュペンスト・タイプSに関してはどうだ?』

 

「かなり改良されているのは間違いないですが……操縦の癖、立ち回りなどを見てカーウァイ大佐だと確信しております。しかし隊長は……」

 

『エアロゲイターに捕まりサイボーグとなり、その残骸に残された僅かな肉片からカーウァイ・ラウ本人と言う認定が降りているな。つまりカーウァイ・ラウの戦死は確認されている』

 

月で間違いなくカイ達はカーウァイを殺した……いや、呪われた生から解放した。だがカーウァイの操縦の癖を持つゲシュペンスト・タイプSが出現し、教導隊のカイが認めた以上……タイプSを駆る男がカーウァイである可能性は極めて高い。

 

「レイカー司令。発言よろしいでしょうか?」

 

『ブルックリン少尉、構わない。何か気になることはあるのか?』

 

「はい、前から思っていたのですが……武蔵の話ではゲッターロボをオーバーロードさせた事により時間を越えたと言っていました。そしてメテオ3の時を考えると限りなく、武蔵の言っていた状況に近いと私は考えます、ゲッターロボの残骸が見つからないのも、武蔵達が再び時間を越えたと言うのはどうでしょうか?」

 

前々からブリットが感じていた事、武蔵、そしてイングラムが再び時空を越え別の時間軸にいるのでは無いか? と言う説を口にする。アイドネウス島ではメテオ3の残骸が幾つも発見されているが、ゲッターロボに関してはゲッタートマホーク1つしか見つかっていない。それもまたブリットの中では武蔵が時空を越えたと言う思いをより強くさせる要因となっていた。

 

『……つまりブルックリン少尉は武蔵、イングラム少佐が過去に飛び、エアロゲイターによって拉致される前のカーウァイ大佐を連れて、再びこの時間に戻って来たと言いたいのかね?』

 

それは夢物語と一蹴すべき内容だが、武蔵の経歴を考えるとその可能性はゼロでは無い。

 

『ふむ……それも1つの可能性として考えておこう。リー中佐、ATXチームと教導隊と共に特務命令を下す。今回の件に関してはこちらが本題となるのだが5日後リクセント公国にて、国際会議が行われる。シロガネ、ATXチーム、教導隊と共に国際会議の警護を命じる』

 

「はっ!」

 

『ヒッカム基地での補給、及びビルトファルケンの奪取に関する調査が終了次第、出発せよ』

 

こうしてシロガネ、ATXチーム、教導隊は2日ヒッカム基地に滞在し、国際会議の警護を行う為にヒッカムを後にした。だが、そこでライとラトゥーニは予想にもしない人物と再会する事となるのだった……。

 

 

 

 

 

時間はシロガネがヒッカム基地を発つ2日前まで遡る……藤沢地区のダテ家では慌てるリュウセイの声が家の外まで響いていた。

 

「リュウ、早く出ないと遅れるわよ」

 

リビングからしょうがないわねと言う顔をする母、ユキコに言われてリュウセイは階段から転がり落ちるように駆け下りてきて、ジャケットを羽織った。

 

「判ってるッ! カバン、カバンはどこだッ!?」

 

寝癖を整えるので手一杯だったのだろう。昨晩準備しておいた筈の鞄の場所を忘れているリュウセイにユキコは溜め息を吐いた。

 

「昨日、準備をして玄関に置いておいたんでしょう? ほら、髪が乱れてるし、襟が乱れてるわよ」

 

「そ、そんなの良いって」

 

気恥ずかしそうにするリュウセイにユキコは駄目よと笑い、櫛を手にしてリュウセイを振り返らせ髪と襟を整えながら声を掛ける。

 

「ダメよ、ちゃんとしなさい。でないと、ヴィレッタさんやアヤさんに怒られるわよ」

 

「わかったわかった」

 

恥ずかしさも相まって空返事を返すリュウセイに対してユキコが少し寂しそうに尋ねた。

 

「……ね、リュウ。今度はいつ帰って来れるの?」

 

リュウセイが帰って来たのは1週間前。2週間はゆっくり出来ると言っていたのに、急に呼び出されたリュウセイ。ユキコはどうしても嫌な予感を払拭出来なくて、リュウセイにそう尋ねた。

 

「判らねえな。ここ最近、何かと忙しいし……でも、大丈夫だよ。お袋、俺はちゃんと帰ってくるからさ」

 

ユキコを安心させるように笑うリュウセイ。その笑みを見てユキコもまた不安げな表情を一転させて、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「そう。今度、機会があったら皆さんをうちに連れていらっしゃい、母さん、貴方がお世話になってる人達にお礼をしたいから。あと……

ちゃんとラトちゃんの保護者の人も1度ちゃんと連れてきて欲しいわ」

 

「……お袋、俺がいなくてもラトゥーニの服とか増やさなくていいからな?」

 

ラトゥーニが日本を発つまでの2週間。ラトゥーニはリュウセイの家に泊まっており、リュウセイの知らない内にラトゥーニの部屋が出来ているわ、ユキコがラトゥーニちゃんと呼んでいたのがラトちゃんになり、ユキコさんと呼んでいたのがユキコおば様になっていると言う自体にリュウセイは恐怖していた。自分の知らないうちに、外堀所か内堀が埋められている……そんな気がしていた。

 

「あら、もうこんな時間。気をつけてね、リュウ」

 

そしてユキコはリュウセイの疑問に返答を返す事は無く、リュウセイの背中を押して家から押し出すのだった……。埋められているような気がするではなく、埋められている事にリュウセイが気付くのはまだ先の事だった……。

 

地球連邦軍伊豆基地の正門で待っていたアヤに手を上げて、リュウセイが門兵に入門許可証を見せて伊豆基地の中に足を踏み入れる。

 

「……休暇中に呼び出してごめんなさいね」

 

「例の試作機が予定より早く来たってんだろ? しょうがねえさ」

 

申し訳なさそうにするアヤに気にするなよと笑うリュウセイ。その笑みにつられて、アヤも笑みを浮かべてユキコの容態を尋ねた。

 

「所で、お母様の具合はどう?」

 

「まだ通院してるけど、前に比べりゃ元気になったよ」

 

「ちゃんと親孝行してきた?」

 

「それ所か、いつまで経っても子供扱いで困ったのなんの」

 

「いいじゃない。母親って、そういうものらしいわよ」

 

私は知らないけどと言うアヤにリュウセイが神妙な顔をして、アヤも妙な雰囲気をしているので話題を変える為にリュウセイが口を開いた。

 

「なんかさ、俺の家に何時の間かラトゥーニの部屋が出来てて、お袋がラトちゃんって呼んでるんだけどさ、これっておかしくない?」

 

「……そう、そうね……うん。少しおかしいかもしれないわね」

 

「少しかなぁ……浅草にジャーダとガーネットが家を買ったんだろ? なんで俺の家に泊まるんだろ?」

 

(き、気付いてない……もう手遅れ一歩手前なのに……)

 

完全に外堀も内堀も埋められているのに気付いていないリュウセイにアヤは何も言えなかった。そしてそこまでアグレッシブに行動しているラトゥーニにもアヤは驚いていたが、それを口にすることは無かった。リュウセイが自分で気付かなければ意味がないからだ、しかしいつか痺れを切らして既成事実とかにラトゥーニが動き出すんじゃないかとアヤは思ってしまった。

 

「リュウ。とりあえず今日の予定を教えておくわ、この後、試作機に関するレクチャーを受けて貰ってから、模擬戦をやるわよ」

 

「了解。所で、模擬戦の相手って誰? アヤか? ……アヤ?」

 

模擬戦の相手は誰だと尋ねるリュウセイにアヤは黙り込んで目を逸らした。その顔を見てリュウセイの額から一筋の汗が流れた。

 

「も、もしかして……た、隊長?」

 

MIAになったイングラムに変わり、SRXチームを率いているヴィレッタが模擬戦の相手と尋ねるリュウセイにアヤが小さく頷いた。

 

「何よ、そのこの世の終わりって顔は……」

 

自分も酷い顔をしているのに、リュウセイの事を棚に上げて言うアヤにリュウセイはがっくりと肩を落としながら返事を返す。

 

「だって、負けたら特訓のメニューが追加されちまうからなあ」

 

「じゃあ、頑張って勝つ事ね」

 

「そういうアヤは俺が休んでる間、隊長に何勝したんだよ?」

 

他人事のように言うアヤにリュウセイは眉を寄せながらリュウセイが尋ねると、アヤは目を逸らして、慌てた様に手を振りながら口を開いた。

 

「え? ま、まあ、そんな事は別に良いじゃない」

 

「さては連敗か。お互い先が思いやられるよな……」

 

その反応を見ればアヤも模擬戦で負け続けていると判り、自分だけじゃないと言う安堵の顔を浮かべるリュウセイだが、次のアヤの言葉にまた肩を落とした。

 

「あ、私は明日から父のラボに詰める事になるの、だから、しばらくの間訓練はお休みするわ」

 

「って事は、隊長とマンツーマン? トホホ……」

 

アヤも自分と同じでヴィレッタの訓練を受けると思いきや、アヤは伊豆基地から出ると聞いてリュウセイは絶望したと言う表情で肩を落とす。しかしそんなリュウセイに対して、アヤの顔は神妙な物で、不安げな色をその瞳に宿していた。

 

(やっぱり伊豆基地で行うのね)

 

アイドネウス島沖でアヤがゲッター線で出来たゲッターロボに導かれ、発見したホワイトデスクロスに関係した調査であると言う事は緘口令が敷かれているのでリュウセイにその事を伝える事が出来ないアヤは不器用な笑みを浮かべて、リュウセイに声を掛けた。

 

「文句を言わないの。隊長だって、忙しい中をぬって私達の面倒を見てくれてるのよ?」

 

「そりゃ判ってるけどさ……あ~あ、教導隊へ出向したライの野郎が羨ましいぜ。今頃、カイ少佐やラトゥーニと一緒にハワイでのんびりしてんだろうなあ」

 

「そんな訳ないでしょ。さ、隊長とオオミヤ博士の所へ行きましょう」

 

任務で行っているんだからハワイでも忙しく働いてるわよと言うアヤに注意され、リュウセイとアヤは2人でSRX計画のラボに足を向けた。

 

「おはようございます、オオミヤ博士」

 

「ああ、おはよう。アヤ、リュウセイ」

 

格納庫で組み上げられているPTを見て、リュウセイはロブに挨拶を返すよりも先に目を輝かせて、格納庫に視線を向けた。

 

「ロブ、ブレードは? 早く実物を見せてくれよッ!」

 

初めて自分が携わった量産機が目の前で組み上げられている事に喜びを隠しきれず、ロブにアルブレードを見せてくれと言うリュウセイの肩を背後から掴む男がいた。

 

「そう焦るな、リュウセイ」

 

「ッ! イルム中尉!? いつこっちへ? あ、もしかして……ブレードと一緒に?」

 

マオ社にいるはずのイルムが自分の肩を掴みながら笑っている事に驚いたリュウセイだが、マオ社で作られたアルブレードと共に地球に着たのかと気付いてそう問いかける。

 

「正解、アルブレードの月から付き添いでね。ま、出来れば美人の付き添いが良かったぜ」

 

「リョウトやリオ、ラーダさん達は元気?」

 

イルムらしい返答にリュウセイは笑みを浮かべながらマオ社にいるはずのリョウト達の事を尋ねる。

 

「ああ。お前達に会いたがってたよ」

 

「皆とはあの時以来だもんなあ……」

 

L5戦役の後からあっていないリョウト達の話をしているとロブが手を叩いて、リュウセイ達の視線を自分に集める。

 

「さて、積もる話は後だ。早速、仕事に取りかかろう、アルブレードの事だが……」

 

ロブが模擬戦の内容を伝えようとした時、SRX計画のラボに神妙な顔をしたヴィレッタが入って来た。

 

「オオミヤ博士。模擬戦の前にリュウセイ達に伝えておく事がある」

 

「何です? 何か予定の変更がありましたか?」

 

司令所に詰める筈だったヴィレッタが態々ラボに来た。その理由として予想される模擬戦の予定の変更ですか? と尋ねるロブにヴィレッタは首を左右に振った。

 

「2日前、ハワイのヒッカム基地からビルトファルケンが強奪された」

 

想像にもしていなかったヴィレッタの言葉にリュウセイ達は大きく目を見開いた。

 

「ちょっと待ってくれよ隊長。 ファルケンって、ブレードと一緒にマオ社で作ってたATX計画の試作機だよな? ライ達がテストするって言ってた」

 

リュウセイの言葉にヴィレッタは言葉短くその通りと返事をした。ヴィレッタ自身も今その報告を聞いたばかりなのか、書類を確認する。

 

「ライ達が居てファルケンが奪取されたのですか?」

 

「ええ。ファルケンは教導隊によるテスト中に強奪されたそうよ、詳しい所は緘口令が敷かれているけど……かなり大きな戦いだったそうよ」

 

緘口令が引かれるほどの戦いと聞いてリュウセイ達は眉を顰めた。

 

「ライとラトゥーニが怪我はしてないのかッ!? 隊長」

 

そこまでの戦いがあったのだから怪我をしているのでは無いかと心配するリュウセイにヴィレッタは報告書に目を通す。

 

「詳しい事情は判らないが、重傷者とかの報告は無いから問題は無い筈だ。世界各地の連邦で行われている新型が全て強奪されているか、襲撃を受けている。伊豆基地を狙ってくる可能性は低いが……警戒してテストに望んでくれ。では模擬戦の内容と訓練内容を説明する」

 

日本の連邦軍基地で最大の規模を誇る伊豆基地に襲撃を掛けてくる可能性は低いとしつつも、警戒を緩めることは出来ないと言う険しい顔をしているヴィレッタの言葉に頷き、リュウセイ達は模擬戦と訓練の内容に耳を傾けるのだった……。

 

 

 

第14話 予想外の再会 その4へ続く

 

 




原作ではここでユウキやゼオラ達ですが、今作では百鬼獣に襲撃して貰おうと思います。それに伴い、前回と同様特別ゲストに参戦してもらおうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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