進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第15話 予想外の再会 その5

第15話 予想外の再会 その5

 

SRX計画のラボは突如現れた漆黒のPTを前に大混乱に陥っていた。それもその筈「RW」シリーズのR-GUNに酷似したその機体を見て混乱しない訳がない。何故ならば、それは存在しないはずの機体だからだ。

 

「識別はどうなってるッ!?」

 

「アンノウンですが、動力反応はゲッター線ですッ!」

 

「なッ!? 嘘だろッ!?」

 

武蔵が行方不明になってから1度も検知される事のなかったゲッター線。それで稼動しているPT――すべてのレーダーがゲッター線と言う事を示していても、ロブはそれを容易に信じる事は出来なかった。

 

(……ここでゲッター線だって!? それにあれは……細部は少し違うけど……間違いない)

 

SRX計画に長年携わってきたロブはイングラムが設計図を引いている所を見た事がある。そして今目の前に存在するゲッター線で稼動する謎のPTは、1度だけ見たRW2号機「R-SWORD」に酷似していた。

 

(そんな馬鹿な、ありえない)

 

ATX計画・SRX計画を統合し、発令される予定のレイオス・プラン……Reliable Extra Over Technological Hybrid――高信頼化された異星人技術複合体の第一弾として、ほんの僅かに残されたR-SWORDのデータをヒュッケバイン・MK-Ⅲ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲに流用し、小型化されたSRXを目標に今月で漸く組み上げが始まったばかりのボクサーパーツ――その原型となったR-SWORDは完成形で存在するなどありえてはいけないことだった。

 

「い、イングラムなの……」

 

「しょ、少佐? イングラム少佐……?」

 

ヴィレッタとアヤの様子を見てロブは舌打ちした。まともな精神ではないのは誰が見ても明らか、そんな状態で未知の敵――どんな攻撃をして来るかも判らない相手と戦わせる訳にはいかない。

 

「リュウセイ、イルム中尉。アヤとヴィレッタ大尉の出撃にはまだ時間が掛かる! すまないが暫くの間2人で耐えてくれッ!」

 

「オオミヤ博士!? 何を勝手にッ」

 

「勝手にではありません! ヴィレッタ大尉今のご自分の状態をお分かりですか?」

 

そう言われたヴィレッタは咄嗟に右手を背中に隠したが、ロブの目は欺けない。小刻みに震えていて、とてもPTを操縦出来る段階では無い、そしてそれはアヤも同様だ。

 

「少し気持ちを落ち着けてください、あの機体はR-GUNに似ているだけ、ただそれだけのはずです――それにイングラム少佐なら通信をつなげてくるはず……だからあれはイングラム少佐じゃない」

 

ロブ自身が苦しい言い訳と判っていてもそう言わざるをえなかった。あのPTに乗っているパイロットがイングラムである可能性は極めて高い、何故ならばSRXとRシリーズと異なり、R-GUN、R-SWORDはイングラムが設計し、設計図もイングラムしか知りえない筈だ。

 

(イングラム少佐なら通信を繋げて来る。だからあれはイングラム少佐じゃない)

 

伊豆基地の通信コードをイングラムが知らない訳が無い。だからあれはイングラムじゃないとロブは自分に言い聞かせるように呟いた……リュウセイを助けてくれた事や、その操縦の癖からイングラムであると信じたかったが……容易にそれを信じる事が出来ない。イングラムの振りをしていて、通信を繋げた瞬間にデータを吹き飛ばされる可能性もある以上。ロブは向こうから通信を繋げて来る事を……イングラムであると言う事を告げられるのを待つしかなかったのだった……。

 

 

 

 

R-SWORDのコックピットの中でイングラムは小さく笑った。伊豆基地に向かうと決めた時、考えられる幾つ物パターンの中――イングラムにとっての最善の選択がなされたからだ。

 

(そうだ、お前ならその選択をする。だから俺はお前をSRX計画に誘ったんだ)

 

ロバート・H・オオミヤならば最悪の可能性を想定し、通信を繋げる事は無いとイングラムは確信していた。ハッキングなどの可能性を考えて、伊豆基地の司令コードを利用しての通信を繋げる事が出来たとしても、ロブならばそれをしないと言う確信があった。そしてイングラムもまた自分から通信を繋げるつもりは一切なかった。今は百鬼獣の襲撃に対応出来ない可能性を考慮して助けに来たが……まだイングラムが表舞台に立つつもりはなかったからだ。

 

「百鬼獣……か、思ったよりも事態は深刻だな」

 

『シャアッ!!!』

 

角を振りかざし突進してくる牛角鬼の一撃を跳躍して回避し、着地と同時にビームライフルを乱射しながら後退する。

 

「ブモォッ!!」

 

牛のような唸り声を上げて追いかけてくる牛角鬼の角や、肩を狙い。ダメージには繋がらないが、怒らせながら牛角鬼を引き付ける。

 

『こ、こっちに来るッ!?』

 

牛角鬼とR-SWORDが近づいてくる事に驚愕の声を上げるリュウセイ。その声に変わってないなと苦笑し、アルブレードの目の前で急加速し、アルブレードの背後に回りこむ。

 

『シャアッ!!』

 

牛角鬼はR-SWORDから、アルブレードに標的を切り替え、その角を大きく振るう。

 

『どわッ!?』

 

牛角鬼をアルブレードまで誘導し、テスラドライブを起動させ舞い上がると同時に空中から飛来した鳥獣鬼にビームライフルを撃ちこむ。

 

「ギッ!」

 

「そうだ、お前の敵は俺だ。こっちに来い」

 

当てるつもりの無い射撃を繰り返し、鳥獣鬼をR-SWORDに惹きつける。牛角鬼をアルブレード、そして豪腕鬼をグルンガストにぶつけるように誘導した。百鬼獣のパワーは凄まじく、イングラムだったとしても乱戦になれば苦戦は必須。それならば早い段階で分断させ、1対1に追い込んだほうが良いと判断したのだ。

 

(倒せないにはしろ、そう簡単には撃墜はされないだろう)

 

正直リュウセイ達が百鬼獣に勝てるとは思っていないが、それでも分断する事で生存率は確実に上がる。

 

(ハガネの到着まで10分……ヴィレッタとアヤが出撃するまでは判らんが……それまでには撤退する算段をつけるとするか)

 

本気で伊豆基地を落とすつもりならばもっと大量の百鬼獣を動員している。それがたった3機と言う事は威力偵察の可能性が極めて高い、それならば向こうも無理に攻めてくることはない筈だとイングラムは考えていた。

 

「ターゲットロック、ファイヤッ!!」

 

「ギガアッ!?」

 

ゲッター合金で作られた弾頭を持つM-13ショットガンの掃射を喰らい、完全に鳥獣鬼の目がR-SWORDに固定された。

 

『ったく、思い通りに操られてる感じがして嫌だが、相手になってやるぜッ!!』

 

『ゴガアッ!!』

 

グルンガストの鉄拳と豪腕鬼の拳が交差する。だがグルンガストは紙一重でかわし、カウンターの要領で拳を豪腕鬼の顔面に叩き込んだ。

 

『ギギィッ!』

 

『……落ち着いて対応すればッ!!』

 

牛角鬼の巨大な角をかわし、一定の距離を保ちながら背中のキャノンと腰のレールガンを駆使して戦うアルブレードを見て、イングラムは余計な心配だったなと呟き、改めて鳥獣鬼に視線を定めた。

 

「シャアアッ!!!」

 

雄叫びと共に放たれた火炎と鳥獣鬼の翼から放たれる弾丸。それにR-SWORDは右手を翳す、右手を中心に展開された念動・G・フィールドが火炎と翼の弾丸を弾き、困惑している鳥獣鬼の胴体にビームライフルのエネルギー弾が撃ち込まれた。

 

「ギャアッ!?」

 

「この程度では済まんぞ」

 

苦しんでいる鳥獣鬼の背後に回っていたステルスブーメランが高速で回転しながら背中を引き裂く。想定外の攻撃、そして翼付近を攻撃された事で僅かに高度を落とした鳥獣鬼に向かってR-SWORDは急接近し、肩にマウントしていたビームカタールブレードで斬りかかる。

 

「遅いッ!」

 

「ギィ!?」

 

近づけまいと両腕を振るう鳥獣鬼だが、R-SWORDは滑り込むように鳥獣鬼の腕の中にもぐりこみ両手に持ったビームカタールブレードで斬りかかりながら、頭部のバルカンを乱射する。

 

「ギャギャアアッ!?」

 

「お前など俺の敵では無いッ!!」

 

懐で回転したR-SWORDの踵落としが鳥獣鬼の頭部を砕き、くぐもった悲鳴を上げて鳥獣鬼は頭から墜落する。

 

「ふん、この程度では終わらないか」

 

だが途中で態勢を立て直し、その目に激しい憎悪の色を宿し、翼を大きく羽ばたかせR-SWORDに肉薄する鳥獣鬼。そしてそれから逃れるように急上昇するR-SWORD、伊豆基地の上空で音速を超えた超高速のドッグファイトが行われる。高速で何度も互いの背後を取り、互いの攻撃をかわし、そして再び攻撃を繰り返す。R-SWORDと鳥獣鬼の姿は現れては消え、そして現れては消えるを繰り返す、凄まじい闘いとなるのだった……。

 

 

 

 

空中でR-SWORDと鳥獣鬼の音速の戦いが繰り広げられている中。地上でもその戦いに引けを取らない凄まじい戦いが行われていた。

 

「ゴアアアアアーーッ!!」

 

「くそがっ! 舐めるなよッ!!!」

 

グルンガストとがっぷり4つに組み合う豪腕鬼、その重量と質量の差に脚部のモーターが悲鳴をあげ、火花を散らす。だがイルムは冷静にグルンガストの現状を把握していた。

 

(よし、もうちょいだ)

 

模擬戦を前提にしたセッテイングから戦闘モードに切り替えた。だが本来は時間を掛けて切り替える物を短時間で強引に切り替えた事でグルンガストは僅かな不調を起していた……その為にグルンガストは劣勢に追い込まれていたが、徐々に動力が温まって来ている。脚部から上がっている火花は急激に設定が変わった事によるオーバーヒートだったが、イルムはそれさえも計算に加えていた。司令部から来たハガネの到着予定時間……そしてグルンガストの動力が完全に温まるタイミング。豪腕鬼の直撃すればグルンガストでさえも一撃で大破するような強烈な一撃をかわしながら、イルムはただひたすらにその時を待っていた。

 

「しゃあッ!! 今だッ!!」

 

待ち続けたALL GREENの文字が浮かぶと同時に、イルムは一気に攻勢に打って出た。まずは挨拶代わりにと豪腕鬼の足に蹴りを叩き込む、これは通常の機体ならば意味の無い攻撃であった。だが今までのやり取りで豪腕鬼が、メカザウルスと同様に生物に近い生体をしていると把握したイルムは弁慶の泣き所……すなわち脛を全力で蹴り上げさせたのだ。

 

「ギアアッ!?」

 

「へ、予想通りだよッ! オラアッ!!」

 

脛に走った痛みにグルンガストの両拳を握りつぶそうとしていた豪腕鬼の力が緩んだ隙に拳を引き抜き、豪腕鬼の顔面に叩きつける。

 

「ギギィッ! シャアッ!」

 

グルンガストの鉄拳で歯が砕け、どす黒い血を撒き散らし怒りを露にし、腕を振り回す豪腕鬼だが、そんな闇雲に振るわれた攻撃に当たるほどイルムは優しい男ではなかった。

 

「あ? 怒ったか? だけど歯が砕けて良い男になったぜッ! 整形代はタダだッ! こいつも持ってきなッ!! ブーストナックルッ!!!」

 

「ゴバアアッ!?」

 

アッパーカットの要領で豪腕鬼の顎を打ち抜き、そのままブーストナックルへと繋げる。豪腕鬼の巨体が宙に舞い、背中から伊豆基地の格納庫に倒れこむ。

 

「……しゃあねえ、緊急事態だッ!」

 

戦闘機などを纏めて押し潰すのを見たが、イルムはしょうがないと口にして豪腕鬼が立ち上がる前にその顔をグルンガストの巨大な足で踏みつける。

 

(いつまでも有利性は保てねぇッ! 多少強引でも攻めるッ!)

 

豪腕鬼の攻撃力の高さ、そして機動兵器ではありえない機動力と柔軟性……今は怒りで我を忘れて暴れているから有利性を保つ事が出来ているが、それも長くは続かないと判断したイルムはグルンガストの強固な装甲を頼りにし、豪腕鬼へと白兵戦を仕掛ける。

 

「くそっ! もう……うおっ!?」

 

「ギギャアアアアーーッ!!」

 

グルンガストの足を掴み、強引に自分の顔の上から退かせた豪腕鬼はそのままグルンガストの足を掴んだまま、立ち上がりグルンガストを引っくり返させる。

 

「おいおい……マジかあッ!? ぐっ!? うおっ!?」

 

「シャアアアーーーッ!!」

 

ジャイアントスイングの要領で振り回され、投げ飛ばされたグルンガストが今度は背中から地面に叩きつけられる。

 

「うっくそ……マジかよ……あぶねえッ!」

 

立ち上がれないでいるグルンガストに向かって跳躍し、全体重を掛けた踏み潰しをしてくる豪腕鬼の一撃を横に転がるようにかわすが、豪腕鬼の執拗な踏みつけ攻撃は続き、グルンガストは立ち上がることも出来ず徐々に海に向かって追いやられる。

 

「……まさか、海の中にも何かいるとかいわねえよな……」

 

明らかに自分を海に追いやろうとしている豪腕鬼の攻撃にイルムは背筋に冷たい汗が流れるのを感じ、何とかしてこの場を切り抜ける方法を必死に考えるが、そんなことを考えている間もない豪腕鬼の猛攻撃にイルムが焦りを感じ始めたその時。

 

『イルム中尉、支援しますッ!』

 

「アヤかッ! すまん、助かった!!」

 

上空から飛来したストライクシールドで豪腕鬼の動きが一瞬止まった隙にグルンガストを立ち上がらせ、肩から体当たりして豪腕鬼を弾き飛ばす。

 

「大丈夫か?」

 

『……大丈夫です、今は目の前の敵に集中しましょう』

 

「OK、そう言うなら信用するぜ!」

 

イングラムが生きているかもしれない、そして今目の前にいるかもしれない。それでも今は伊豆基地を守る事を優先すると口にしたアヤを信じると口にし、R-3の支援を受け再びグルンガストは豪腕鬼に向かって駆け出すのだった……。

 

 

 

 

 

 

牛角鬼とアルブレードの戦闘は互角――いや、完全な均衡状態に陥っていた。牛角鬼の破壊力をいなす為にアルブレードは踏み込む事が出来ず、そして牛角鬼は軽業師のように飛び回るアルブレードを相手に踏み込む事が出来ないでいた。互いに余り得意では無い、射撃による距離の奪い合い、牽制を用いた互いの領域を守る戦いになっていた。

 

『リュウセイ! 突っ込みなさいッ!』

 

「了解ッ!」

 

だがそれはRーGUN――即ち、ヴィレッタの参戦によって大きく変わる事になる。アルブレードの最大の武器はその瞬発力を生かした素早い出入り、だが牛角鬼の一撃はグルンガストを越えており容易に踏み込む事が出来ないでいた。

 

「ギッ!?」

 

「オラアッ!!」

 

牛角鬼が腕を振り上げようとした瞬間。RーGUNの正確無比な射撃が腕関節を狙い撃ち、腕の動きを制限する。その隙をリュウセイは見逃さず、ブースターによって加速させた回し蹴りを牛角鬼の顔面に叩き込む。

 

「ちいっ!? やっぱり重量が足りねぇッ!」

 

牛角鬼は60M近い特機、20M強のアルブレードとは全長だけではなく、重量も遥かに違う。完全に回し蹴りが顎を捉えたが、牛角鬼の血走った目に睨まれリュウセイが舌打ちする。

 

『いえ、そのままで良いわ! リュウセイ前へッ!』

 

ツインマグナライフルによる支援射撃でスレッジハンマーを叩き込もうとした牛角鬼の注意を逸らすR-GUN。その隙にアルブレードは両腰のレールガンの側面に装着されているブレードサイを逆手に構える。

 

「行くぜ行くぜ行くぜッ!!」

 

自分を鼓舞するように叫びリュウセイは牛角鬼の懐に飛び込む、単独では回避と防御に気を割かなければならないから攻めあぐねていた。だが防御をヴィレッタが担当してくれる事でリュウセイはやっと自分のペースで戦う事が出来た。

 

「シャアッ! ギッッ!?」

 

『甘いわね』

 

生物であり、機械である百鬼獣が相手だからこそ関節部などを狙う事でその動きを阻害する事が出来る。

 

「おりゃあッ!!!」

 

「ぎッ! ギャアアアアアーーーーーッ!! ゴバアアッ!?」

 

ブレードサイを目に突き立てられ、その痛みに暴れ出そうとした瞬間R-GUNの放った牽制用のスプリットミサイルが口の中で炸裂し、煙と血を吐き暴れ回る牛角鬼の頭部目掛けブラストトンファーの強烈な打撃が襲い掛かる。

 

「ギギイッ!?」

 

「もう1発ッ!」

 

スラスターとブースターを使いこなした加速を加えた一撃は牛角鬼の名を示している巨大な牛の角を根元から叩き折り、苦痛の悲鳴を上げようとした所に強烈な回し蹴りが叩き込まれ牛角鬼の顎が砕け、悲鳴を上げる事も出来ず、だらだらと口から血液を流しながらアルブレードとR-GUNを凄まじい憎悪を込めた視線で睨む。

 

「回復してる……ッ」

 

『リュウセイ、一気に』

 

「ゴガアアアアーーーッ!!!」

 

回復しているのに気付き、アルブレードとR-GUNがトドメに動き出そうとした瞬間。牛角鬼はその口から凄まじい火炎を吐き出しアルブレードとR-GUNの動きを止めると、地面を蹴り跳躍しアルブレードとR-GUNから背を向けて海へと走り出した。

 

『なっ!?』

 

「ギギィイイーッ!!」

 

そしてグルンガストと対峙していた豪腕鬼も腕の装甲から射出した閃光弾の光に紛れて離脱する。

 

『おかしい、確かに私達が優勢だったけど、撤退するほどでは……』

 

一時的にリュウセイ達は確かに百鬼獣を上回った。だがそれは一時的な物で、自己修復能力を持つ百鬼獣ならば時間を掛ければその有利性は覆された。それなのに、百鬼獣は逃げを選択した。それは時間稼ぎが済んだから、ここにはもう用は無いと言わんばかりに鮮やかな逃亡だった。

 

『っ!? 隊長何か来ます!』

 

アヤがそう叫んだ瞬間、伊豆基地の警報がけたたましく鳴り響き、司令部からレイカーの怒声が響いた。

 

『沖合いからLASMだッ! ヴィレッタ大尉ッ! 退避しろッ!』

 

「全員散開しつつ迎撃の出来る物は迎撃をッ!』

 

レイカーの怒声を聞くと同時に散開しろと叫ぶヴィレッタ。その直後上空から降り注いだLASMが炸裂し、伊豆基地の迎撃システムを破壊する。

 

「きゃあああっ!!」

 

「くそがッ! あいつらこんな手まで打ってくるのかよッ!」

 

百鬼獣と言う圧倒的な攻撃力を持つ集団がまさか囮で、LASMによる伊豆基地の殲滅を仕掛けてくるなんて言う事はこの場にいる誰にとっても想定外だった。

 

『迎撃システムの稼働率75%ッ! 敵ミサイルを防ぎ切れませんッ!!』

 

『くっ! ヴィレッタ大尉! ミサイルの迎撃をッ!!』

 

最初のミサイルで迎撃システムが破壊されたという報告を聞いて、レイカーからミサイルの迎撃命令が出る。

 

「くそったれッ! グルンガストじゃ精密射撃なんて出来ないぞッ!」

 

グルンガストでミサイルの迎撃に出れば必要以上に被害が出る可能性が高く、グルンガストのコックピットの中でイルムが悔しさに歯噛みしながらそう叫ぶ。

 

「リュウセイ、アヤッ! 手伝いなさいッ! 全てとまでは言わないけど、半分は迎撃するわよッ!」

 

「ああッ! 伊豆基地はやらせねぇッ!」

 

「了解です、隊長ッ!」

 

アルブレード、R-3、R-GUNによるミサイルの迎撃が始まる。勿論R-SWORDも迎撃に出た事で第二波の迎撃に成功するが、迎撃された事により第一波、第二波を上回るミサイルが向かっていると言うオペレーターの声にリュウセイ達は顔を顰めたが、イングラムだけは違っていた。

 

「流石ダイテツ・ミナセ。良い読みだ」

 

海を割って姿を見せたハガネを見て、イングラムは最悪の展開は回避出来たと微笑んだ。これで自分の今の役目は終わりだと、ハワイで百鬼獣とカーウァイが戦った時のセンサーの反応が伊豆基地に出たと知って慌てて来たが間に合って良かったと安堵した。ハガネによってミサイルが迎撃されたのを確認し、伊豆基地から離脱しようとしたR-SWORDの前にR-3が立ち塞がる。

 

『少佐……イングラム少佐なんですか?』

 

泣きそうな、いや実際泣いているのだろう声を震わせ尋ねて来るアヤ。

 

『……おい、少佐よ。随分と趣味が悪いじゃねえか。生きてるなら連絡1つくらい入れろや、あんたが生きてるなら武蔵もいるんだろ?』

 

『……教官だよな。何とか言ってくれよ! イングラム教官ッ!』

 

『イングラム……』

 

仲間達の声を聞いて、やっと戻って来たという実感とこれほどまでに悲しませていたのかと言う罪悪感がイングラムの中に芽生える。だが、今イングラムはリュウセイ達の元に戻る訳にはいかない……この世界に暗躍する百鬼帝国、そしてシャドウミラーの事を探らなければならないからだ。

 

「……また会おう」

 

一言、たった一言そう告げ、R-SWORDの姿はリュウセイ達の目の前でゲッター線の光に包まれ、翡翠色の尾を空中に残し、伊豆基地上空から消え去るのだった……。

 

「い、今の声は!? アヤ、今のは!」

 

「え、ええッ! 間違いない、間違いないわ……イングラム少佐の声だわ……」

 

「殺しても死なないって思ってたけどよ……やれやれ、これで1つ肩の荷が降りたわな……」

 

「そうね、全機帰還して頂戴、レイカー司令からブリーフィングルームに集合と言う命令が出ているわ」

 

イングラムの声が聞こえたと言う事で武蔵とイングラムが生きているという事に真実味が出てきた。リュウセイ達は潤む目を拭いながら伊豆基地の格納庫に己の機体を収納するのだった……。

 

 

 

第16話 予想外の再会 その6へ続く

 

 




百鬼帝国はまだイベントバトル、本格戦闘はリクセントの国際会議になりますね。次回は今回の戦闘の話と、シロガネ、クロガネ、ハガネの三隻のスペースノア級での話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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