第16話 予想外の再会 その6
伊豆基地司令部は百鬼獣の出現と共に放たれた雄叫びによって、酷い有様となっていた。破片は撤去されているが、砕けた窓ガラスからは浜風が吹き込み、司令部の機械なども数多くが横転していた。それら全ての光景が、伊豆基地を襲った未曾有の危機が事実だったと物語っていた。
「すまないな、ダイテツ。こんなありさまで」
「いや、大丈夫だ。それよりも、レイカー。お前の方こそ心配だ」
額に包帯を巻いている痛々しい姿のレイカーが心配だというダイテツ。だがレイカーは首を左右に振り、今は休んでいる場合では無いと言った。
「まさか、ハワイにも出現したアンノウンが伊豆基地を襲撃してくるとは想定していなかった」
「ハワイ……それはもしやヒッカム基地での事ですか? レイカー司令」
ダイテツと共にレイカーの元を訪れていたテツヤがそう尋ねるとレイカーは重々しく頷いた。
「ハワイ、ヒッカム基地にて新型奪取の折に出現したアンノウンの映像がこれ、そして伊豆基地を襲撃したアンノウンの映像がこれだ」
レイカーが手元のコンソールを操作し、ハワイと伊豆基地に出現したアンノウンの映像がダイテツとテツヤの前に映し出された。
「これは……その……なんと言いますか……」
「……鬼……か?」
頭部や額にある巨大な角状のパーツを見て、ダイテツもテツヤも異形の特機に鬼と言う印象を受けた。
「指揮官機らしき特機のパイロットも自らを鬼と名乗った。現状は鬼と呼称する事が決定しているが、この鬼とテロリストが同時に行動している事から、恐らく協力体制にあるだろう」
「……厄介だな。レイカー」
僅かな戦闘データを見ただけだが、鬼の戦闘能力は凄まじく、更に機械であるにも関わらず自己再生を行っているのを確認し眉を顰めるダイテツ。
「しかし、良く退ける事が出来ましたね……」
「それに関しては、これを見て欲しい」
映像が再生され、ゲシュペンスト・リバイブを庇うように現れたPTを見てダイテツとテツヤは驚きの声を上げた。
「げ、ゲシュペンスト・タイプSッ!?」
「馬鹿な。これはL5戦役で破壊された筈だッ! 識別はどうだったんだ、レイカー」
「PTX-002――紛れも無く、カーウァイ・ラウ大佐の乗っていたゲシュペンスト・タイプSだ」
死んだ筈の男の機体が現れ、そして鬼と戦った。そんなオカルト染みた現象にテツヤは声も無く、目を見開く事しか出来なかった。
「ダイテツも見たと思うが、漆黒のPTを見ただろう?」
「ああ、ミサイルを迎撃していたアンノウンだな。あれがどうした?」
ハガネが伊豆基地に到着した時にミサイルを迎撃していたR-GUNに酷似したPTをダイテツ達も目撃している。それがどうした? とダイテツが尋ねるとレイカーは深刻な表情をしながら告げた。
「あれも存在していい機体では無い、イングラム少佐が設計したが、設計図が残されていないPT――RWシリーズの2号機。R-SWORDで間違いないとオオミヤ博士の分析結果が出ている」
「そ、それは、イングラム少佐が生きていると言うことでは!?」
アイドネウス島で武蔵と共に行方不明になったイングラム。そのイングラムしか知らないPTが現れた……それはイングラムと武蔵の生存の証拠ではと喜色に満ちた声を出すテツヤをダイテツが諌める。
「そう思い込むのは早計だ。イングラム少佐ならば連絡をつなげてくるだろうが、それも無かったのだろう?」
「その通りだ。現段階ではゲシュペンスト・タイプSをファントム1、R-SWORDをファントム2と呼称する事が決定している。遭遇したら、通信を試みて欲しい」
本当にイングラムなのか、それを確かめる必要があると口にしたレイカーにダイテツが頷く。するとレイカーはCDディスクを取り出し、ダイテツに差し出す。
「ヴィレッタ大尉達にも見せてやってくれ、これから戦うことがあるかもしれない相手だ」
「了解した。リクセントに向かう前に見せておくことにしよう」
「既にリクセントに向かっているシロガネとATXチームだが、キョウスケ中尉が気になることを指摘してくれた。武蔵君が旧西暦から新西暦に跳ぶ前……武蔵君は「鬼」を見たと言っていたと」
レイカーの小声での言葉にダイテツもテツヤも驚きの表情を顔に浮かべた。
「……今はまだ可能性の段階だ。だが気を緩める事無く警戒して欲しい」
武蔵、そして鬼の言葉からダイテツ達の脳裏にはメカザウルスと恐竜帝国の言葉が過ぎった。鬼が武蔵と恐竜帝国同様、旧西暦からの侵略者であると言う可能性が浮上したのだ。
「……さてダイテツ、話は変わるがアイドネウス島海域の状況はどうだった?」
ハガネが偵察任務に出ていたアイドネウス島の事を尋ねるレイカー。それはこれ以上、今は鬼に関しても、ファントムについても話す事は出来ないと言うことだと判断し、ダイテツもアイドネウス島での偵察の結果を口にした。
「付近にDC残党部隊が現れた形跡は無かった、それに加えてアンノウンの出現も無く、平和その物だったよ」
「そうですか……我々はテロリストをDCの敗残兵と考えていましたが……そうでは無いのでしょうか?」
「そう判断するのは早計だ。参謀、もう暫く様子見をしよう」
鬼と共に新型機奪取を繰り返しているテロリスト……ラングレーの事もあり、アードラー派のDCの敗残兵の可能性は高いが、まだ確証を得ることが出来ないでいた。
「しかしあれだけの機体を量産する事が出来ていることを考えると、拠点の候補はいくつか絞られますね」
「うむ、1番怪しいのはやはりイスルギ重工だが……それらしい痕跡は無かったのだろう?」
「ああ。連邦の査察団がイスルギ重工のプラントに駐在しているが、機体等の横流しの痕跡は見つかっていない」
DC戦争時ではビアンに協力し、そしてL5戦役時では地球をエアロゲイターに売り渡そうとしていたシュトレーゼマン派の為にシロガネを修理していたこともある。そういう面ではイスルギが1番怪しいのだが証拠がない。
「次点でアードラーが利用したアースクレイドルなのですが……ソフィア博士が協力するとは思えないのです」
人類と言う種を守る為に人工冬眠を選択したソフィアがテロリストにも鬼にも協力するとは思えないとサカエが口にすると、テツヤが手を上げて、己の意見を口にした。
「確かにソフィア博士は人格者であり、人類の未来を案じている人物ですが、それ以外の構成員がソフィア博士と同意見とは限りません」
「大尉はアースクレイドルに内通者がいると考えているのか?」
ダイテツの問いかけにテツヤは真っ直ぐにレイカー達を見て頷いた。
「アースクレイドルのメンバーの大半はかつてアードラーと親交のあった科学者と研究者が大半と言う調査結果が出ています。ソフィア博士の知らない所で、暗躍している可能性は十分にあると私は考えます」
自信に満ちた表情でいうテツヤの言葉を聞いて、ダイテツは満足そうに頷いた。
「レイカー、ワシも同意見だ。アースクレイドルは使いようによって強固かつ自給自足が可能な地下要塞となる。L5戦役の後地中に潜っているとされているが、こうもテロリストの動きが活発化しつつある今、無視は出来ん」
「か、艦長も同じ考えだったのに自分に話をさせたのですかッ!?」
テツヤに意見を促し、自分の考えを口にさせたダイテツ。テツヤがそれに気付き恥ずかしそうにするが、ダイテツは悪びれた様子も無く笑い、テツヤの成長具合を確かめる為にだと言われればテツヤは何も言えず黙り込んだ。
「アースクレイドルに派遣する予定はあるのか?」
「近い内に我が軍の機動部隊があそこへ送り込まれることになるだろう。ダイテツ達は補給終了後、SRXチームとイルムガルト中尉と共にリクセントで開催される国際会議の警護任務に就いてくれ、先にシロガネのATXチーム、教導隊が準備を整えているから協力し、テロリストの襲撃に備えて欲しい」
そこで1度言葉を切ったレイカーは小さく深呼吸をしてから、ダイテツに視線を向ける。
「それで……最後に例の件の報告を聞こうか」
R-3によって発見され、最近までアイドネウス島で分析が行われていた物体について問いかけるレイカー。テツヤは小脇に抱えていた鞄から分析結果の資料をレイカーに差し出しながら、現段階で判っている事をレイカーに報告する。
「アイドネウス島沖の海底で発見された物体ですが……ケンゾウ氏の見解では『ホワイトデスクロス』の一部である可能性が高いと思われます」
「やはり、そうか……」
自己再生能力を持つ白亜の金属――考えられるのはホワイトスターとジュデッカの2つだったが、やはりレイカーの予想通り後者であった。
「しかし、ホワイトスターの中枢でもあった大型機動兵器が何故そんな所に……? ブラックエンジェルとゲッターロボによって大破したのでしょう?」
「現段階では理由は不明ですが、オペレーションSRWで撃墜された後、地球へ落下し、メテオ3に回収されたか……あるいはメテオ3そのものが複製したか。理由は色々と考えられます、現段階では自己再生は停止しており、ホワイトデスクロスが復元されるという事は無いようですが……警戒は緩めることは出来ないとの事です」
「了解した。では、回収物は計画通りコバヤシ博士のラボへ回してくれ。それと、この件は関係者以外にはまだ内密に頼む」
アイドネウス島の簡易研究所では詳しい分析結果が得れないと言う事で、設備の整った伊豆基地での分析を要請し、レイカーもそれを受け入れた形になり、ハガネがそれを運んできたのだ。
「……レイカー、今までに回収したホワイトデスクロスの破片はどうなっている?」
「軍のあるプロジェクトに回したサンプルを除き……ギリアム少佐の指示に従って完全廃棄されている」
数回に渡り回収されたホワイトデスクロスの欠片……それがどうなったのかと問いかけるダイテツにレイカーが返事を返すが、ダイテツは眉を寄せ思案顔をやめない。
「……気になるのか?」
「ああ。この半年間、軍で徹底的な調査を行ったが……場所が場所だけにな」
ゲッターロボの残骸が見つかるかもしれないと徹底的に調査を行ったが、一切見つからなかった事に武蔵が生きていると言う可能性が生まれたことに安堵したが、ホワイトデスクロスの破片が発見され、それを回収した事にダイテツは一抹の不安を抱き、レイカーにしっかりとサンプルが保管されているか確認してくれと頼むのだった……。
アヤを伊豆基地に残し、リクセントに向かうハガネ……一方その頃。リクセント公国で国際会議の警護の為の準備を整えているシロガネのブリーフィングルームでは重苦しい空気が広がっていた。
「そうか……ファルケンを奪ったのは、元スクールのメンバーだったのか……」
ヒッカムでファルケンを強奪された時の詳しい報告をしたラトゥーニにリーが深刻な表情でそう呟いた。
「中佐、責任は全て私が」
「勘違いするな、カイ少佐。部下の不始末は上官が背負うべき物、つまりこの場合は私が全て責任を取る。ラトゥーニ少尉、もう少し詳しい話を聞けるか?」
「……はい」
震える声で言うラトゥーニ。心情的にリーはラトゥーニを責めたくは無い、だが上官としてやらねばならぬことがある。
「少尉。しっかりと答えて欲しい。そうでなけれれば、私も少尉を庇う事が出来ない」
部下を上官が庇う……そのありえない事にブリーフィングルームに居たラミアは信じられないとその目を大きく見開いた。
(馬鹿な……スパイの疑いのある部下を庇うだと……この男は一体何を考えている)
「エクセ姉様。すこし気分が悪いので、退出させてもらえますか?」
「大丈夫ラミアちゃん? 私も付き添おうか?」
「い、いえ大丈夫です……自室で少し休ませてください……」
自分が所属するシャドウミラーではありえない事……だがそれなのに、それが正しい事のように思える事にラミアは混乱していた。今までの自分の常識が崩れ去るのを感じ、これ以上この場にてはいけないと判断したのか、エクセレンに気分が悪いと告げてブリーフィングルームから逃げるように抜け出した。
「はい……。彼女はゼオラ・シュバイツァー……間違いありません」
「そうか……お前が長い間捜していた者がDC残党にいたとはな……」
カイはラトゥーニがスクールのメンバーを探しているのを知っていた。やっと見つかったのに、それが敵と言うことに顔を歪める。
「リー中佐。その……」
「余計な気を回すな、私はラトゥーニ少尉がスパイでは無いと信じている。スクールの創設者はDC副総帥のアードラー・コッホ……あの非人道的な博士の元に居たと考えれば、ゼオラだったか……彼女も被害者と言っても良いだろう。ラトゥーニ少尉……何か気になる事はあるか?」
優しく諭すように尋ねるリーにラトゥーニは2~3度、深呼吸をしてから口を開いた。
「ビアン博士が亡くなっていると、連邦がビアン博士の遺産を奪ったと、彼女はそう口にしていました」
DC戦争を起こしたが、最終的にビアン一派のDCは地球を守る為に戦った。勿論それはビアンも同様だ……。
「それはおかしいな。彼女はそれを信じている様子だったのか?」
「は、はい。私がそれを指摘すると、頭を押さえて混乱している様子を見せたので……私は彼女を拘束しようとして……錯乱しているゼオラに肩を撃たれました」
錯乱していたの言葉にブリーフィングルームにいたキョウスケ達は顔を顰めた。
「……投薬かリマコンか……」
「キョウスケ中尉……リマコンって今は条例で禁止されているあれですか!?」
リ・マインドコントロール……一時期連邦で研究されていたPTSDなどを発症した兵士を再び戦わせる為の非人道的な装置にして、連邦の負の遺産の1つと言っても良い技術だ。
「なるほど、ではラトゥーニ少尉は操られている可能性があると言いたいのだな?」
「……はい……ゼオラは優しくて、私を守ってくれて……」
スクールの被害者であるラトゥーニの記憶の中では自分を守ってくれたゼオラの姿があるのだろう。辛そうにしているラトゥーニを見て、リーはある決断を下した。
「今回の件は私が責任を全て持つ、報告は一切しなくてよろしい」
「リー中佐……よろしいのですか?」
「よろしいも何もない、DCの非人道的な措置によって無理に戦わせられている子供を助けるのは当然の事だ」
胸を張って助けると口にしたリーにカイは苦笑いを浮かべた。
「良いのですか? 出世街道から外れることになりますが?」
「ふん、勲章等と言うものの為に戦っているのでは無い。降格、出生街道から外れる……大いに結構。私は私の正義を貫く」
胸を張ってそう言い切ったリーの姿はダイテツに似ており、カイ達でさえも信頼に値する人物だと思わせるほどのカリスマを有していた。
「辛い事だと思うが聞かせて欲しい、スクールの他のメンバーがDC残党に加わっている可能性はあるのか?」
「はい……ゼオラのパートナー、アラド・バランガ……そして、オウカ・ナギサ……オウカ姉様」
姉様と呼ばれた人物の名前に全員が首を傾げると、ラトゥーニが姉と呼んだ理由を口にした。
「そうか……ならばなんとしても救い出さねばならないな」
「簡単に言いますが、リー中佐。それは至難の業ですよ」
投薬、リマコンによって操られている人間を元に戻すのは容易の事では無い。それでもやり遂げると口にするリーにカイがそう言うと、リーはにやりと笑った。
「人の心は容易に操れるものでは無い。絆は断ち切れない、何があってもだ……な、なんだ。その目は」
「い、いえ、リー中佐は思ったよりもロマンチストなのだと思いまして」
「んふふ、親しみが持てるわね。中佐♪」
「ええい! からかうなッ! 非人道的な実験の犠牲者を助けるのは軍人として当然の事と言うだけだ! それよりも! ラトゥーニ少尉、肩の負傷はどうだ?」
からかわれているのに耐え切れず強引に話を変えるリーはラトゥーニにそう尋ねた。
「は、はい! 問題ありません」
「そうか。それならば良かった、シャイン・ハウゼン国家元首からの強い要望で少尉を護衛として国際会議に出席したいそうだ。やれるか?」
「やりますッ!」
「よし、ならば了承と返事を返すぞ。カイ少佐、キョウスケ中尉。国際会議での警護の陣形だが……PT隊のほかに、国際会議の後パーティに参加する「はいはい!! 私とキョウスケでやります」……良し、ではキョウスケ中尉とエクセレン少尉に任せる。ハガネが2日後に合流するからその時にまた打ち合わせをするが、当面のフォーメーションは……」
ブリーフィングルームでキョウスケ達が警護の打ち合わせの確認をし始めるのだが、キョウスケの目配せによってライだけがブリーフィングルームを後にし、格納庫に足を向けた。
(私はどうなっている……なぜこんなにも動揺している)
シロガネで見て来たのは自分の知る軍隊とは余りにも違う光景だった。部下の為に泥を被る上官、仲間の為に命を賭ける事が出来る優しい人間達……シャドウミラーとは余りにも違う、そして記録の中のハガネともベーオウルフとも違う光景にラミアは完全に混乱していた。
「そんなに珍しいか、俺達が」
「ライディース・F・ブランシュタイン少尉……」
背後から声を掛けられたラミアは驚いた。この距離に近づかれても全く気付けなかった己を恥じた。
「ライで構わん、何か考えているように見えてな」
「では、ライ少尉。私に何か用があらせられたりしますのですか?」
ぶっきらぼうではあるが、僅かに自分を案じている気配を感じながらライに何のようか尋ねる。
「テロリストが使っていたECMの話を君から聞こうと思ってな」
「何故、私にそんな事を?」
キョウスケだけでは無い、ライも……いやもっと言えばシロガネ全体が自分を疑っているのではと言う恐怖を感じながらも、平静を必死に装う。
「あれについて何か知っているような感じだったからな」
「知っているもいないもなにも、私も初めて見ちゃいましたのでしょうです」
「そうか? 君が所属しているイスルギ重工の新技術ではないのか?」
「私にはよくわかりゃしませんのことです」
「そうか……変な事を聞いて悪かったな。余りにも驚いていないように見えてな、気になったのさ」
「……表情に良く出ないと言われるでありんす。自分も、驚いていたでありますよ?」
シロガネの人間は甘いが怪しまれているとなると動きにくいなとラミアが感じていると、背を向けて歩き去ろうとしたライが立ち止まりラミアの目を真っ直ぐに見つめた。
「何か思う事があるのなら、早く言う事を勧める。手遅れになる前ならば、俺達がお前の助けになれるだろうからな」
(なんて甘い連中なんだ……だが何故だ……それが嬉しいだと)
助けになろうと言うライの言葉に返事を返せなかったが、それでも奇妙な安心感を得てしまったラミアは更に混乱を深める。
(早く、次の指令を……じゃないと、私は何をすれば良いのか判らなくなってしまう……)
自分が自分で無くなるような、言いようの無い不安……それを払拭する為に本隊からの新たな指令を求めたが、ラミアの願いは届かずアンジュルグには何の命令も届かない……自分が何をすればいいのか判らなくなり始めているラミア……だがそれはレモンが求め、エキドナに見出した自己の発現の第一歩であると言う事にラミアは気付く事が出来ず……そしてそれにラミアが気付いた時。それがラミアにとっての分岐点になると言う事を今のラミアは知る良しも無いのだった……。
クロガネと行動を共にする武蔵は1日の大半を医務室で過ごしていた。
「……武蔵、いる?」
「居ますよ。大丈夫ですって」
「……うん。それならいい」
記憶喪失になったエキドナだが、それに加えて、幼児性退行……なんらかの外的要因によって幼い子供に似た精神状態になる精神疾患と診察されたエキドナは武蔵に非常に懐いており、武蔵が側に居ないと不安に思うのか極めて不安定になる為。医療行為として武蔵とエキドナを極力引き離さないようにするべきだと診察されたのだ。武蔵からすれば、自分よりも年上の成熟した女性の世話をすると言うのは不思議な感覚だったが、風呂などの世話をするのではなく話し相手になったり、食事を共にするだけならばと助けられた事もあり、医者の頼みを快く引き受けていた。
「離せッ! 私も記憶喪失になるしかッ!」
「乱心! 隊長が乱心したッ!」
「やめてください!」
「確保ーッ!」
「ハンマーを取り上げてッ!」
「リリー中佐のところへ連れて行くわよッ!!」
「離せーーーッ!!!」
しかし武蔵がエキドナの世話をすると聞いたときに、ハンマーを手に覚悟を決めた表情をしていたユーリアの事が武蔵は気掛かりで気掛かりでしょうがなかった。武蔵の中ではユーリアは真面目で頼りになる人だったので、疲れているのかもしれないと思い、見なかった事にしていた。
「う、うう……こ、ここは?」
エキドナが寝入り、少し身体を動かそうと武蔵が立ち上がった時。カーテンに覆われたベッドから男性の声が聞こえ、もしやと思いカーテンを開けるとずっと昏倒していたグライエンがうっすらと目を開けていた。
「グライエンさん!? 大丈夫ですか!?」
ナースコールを押して、グライエンに声を掛ける武蔵。疲労、そして傷のせいで熱があるのかぼんやりとし、焦点が定まっていないグライエンの顔の前で手を動かす武蔵。
「武蔵君……ゆめ……か?」
「夢じゃないですよ!? 大丈夫ですかッ! しっかりしてください!」
意識が朦朧としているの気付き、必死に声を掛ける武蔵。そしてグライエンも自分の肩がつかまれ、声を掛けられていることに夢じゃないとやっと気付いた。
「リクセント……リクセントが! シャイン王女が危ないッ!!」
ベッドから跳ね起き、鬼気迫る表情で言うグライエンに武蔵も大声を上げた。リクセントが危ないとシャインに危機が迫っているとグライエンは必死に武蔵に訴える。
「な、どういうことですか!? シャインちゃんが危ないってッ! どういうことなんですか!?」
「鬼……鬼がリクセントを狙っているッ! か、彼女を助ける事が……できる……のは……うっ、き、君だけだ。 た、助けに……こ、国際……かい……」
傷が開いたのか傷口を押さえながらも、シャインが危ないと、助ける事が出来るのは武蔵だけだと言うグライエン。
「グライエンさん!? ちょっとグライエンさんッ!!「武蔵! 代わるわ! どいてッ!!」
詳しく話を聞こうとした武蔵だが、医務室に駆け込んできた女医に突き飛ばされるようにしてベッド脇から移動させられる武蔵。脈拍を計り、鎮痛剤などを投与している姿を見て、これ以上グライエンに話を聞くことが出来ないと武蔵は判断した。意識が朦朧としていても、グライエンはリクセントに危機が迫っていると武蔵に伝えてくれた。武蔵はシャインを助ける為にリクセントに向かう事を決め、ビアンやカーウァイ達にそれを伝える為に医務室を飛び出していくのだった……。
第16話 予想外の再会 その7へ続く
次回はアニメの「黒い侵入者」の話を盛り込んだ話にしたいと思います。アニメではアクセル出現後でしたが、今作ではそれよりも前になりますね。シャインやキョウスケ達の前に現れる武蔵らしき影とゲッターロボと言う感じの話にしたいと思います。勿論、いぶし銀のコールゲシュペンストもやりますよ! それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い