第22話 古の呪歌 その3
空間を引き裂いて現れた爪と触手によって爆発四散したリオンの破片が周囲に飛び散る。その場にいる全員が何が起きたのか理解出来ず、呆然としていた。その中で1人だけ……ラミアだけが危機迫った声で叫ぶ。
「何を呆けている! 散開しろッ!! 死にたいのかッ!!!」
罅割れた空間が徐々に大きくなる。その光景はまるで別の世界に住まう「何か」が世界を超えて、この世界へ侵入しようとしているように見えた。
「な、何が……何が起きているんだ」
『なんだ……あれは化け物……魔物とでも言うのか……』
「テツヤ大尉! リー中佐ッ! 何を呆けているッ! 散開命令を出せッ!!」
ダイテツの一喝で我に帰った、リーとテツヤはそれぞれ外部スピーカーでキョウスケ達に向かって命令を下す。
「アンノウン出現ッ! 各機散開せよッ!!」
『可能ならば投降した機体を回収し、シロガネへと帰還せよッ! いや、各機散開! 投降機は放置して散開せよッ!!』
正式に投降が完了した訳ではない、だが、謎の化け物によって破壊されたリオンと両足を破損したランドグリーズのパイロットは広域通信で投降すると叫んだ。ならば条約に基づいて保護しなければならない。リーはそう判断し、投降したゼオラの保護をするように命じたが、その命令はすぐに覆された。
「ア、アラドォォォォッ!! いや、いやあああああッ! アラドッ! アラドぉッ! 返事……返事をしてよ、アラドぉッ!!! いや、いやあッ! ラト、ラトッ! アラド、アラドが返事をしてくれないッ!! いやッ! いやああああああーーッ!?!?」
広域通信で半狂乱で叫ぶ幼い少女の声、それだけならばまだリーだって保護することを諦めなかった。だが半狂乱になって暴れるランドグリーズを取り押さえ回収するのは不可能だと判断したのだ。
「ぜ、ゼオラッ! 落ち着いて! きゃあッ! ゼオラ、お願いだから落ち着いてッ!!」
「いや、いやぁッ! アラドッ! アラドぉッ!! 返事して、アラドぉッ!!! ラト、ラトッ! ラトも探してッ! アラドッ! アラドぉッ!!」
半狂乱で暴れるランドグリーズに殴られ、ヒュッケバインMK-Ⅲの装甲が凹み、砕けたカメラアイから火花が散る。それでも何とかランドグリーズを押さえ、ゼオラを落ち着かせようとするラトゥーニだが、搭乗機であるヒュッケバインMK-Ⅲの肩を背後から掴まれランドグリーズから引き離された。
「ラトゥーニ! 今は下がれッ!」
「で、でもッ! ゼオラがッ! ゼオラがここにいるんです! カイ少佐ッ!」
「気持ちは判る! だがあそこまで暴れていたらお前まで共倒れだッ! 捕獲用のスパイダーネットを射出してくれッ! それで鹵獲するッ!! ラトゥーニはアルブレードを牽引して、ハガネへ戻れッ!」
言葉で説得する事が出来るのならば誰だって、その選択をする。だが半狂乱になって暴れているのが巨大な質量を持つランドグリーズでは下手に近づけばPTでは大破してしまう。もっと言えば、今まさに時空を切り裂いて未知の脅威が出現しようとしている中。無駄な事をして手を拱いている余裕はないのだ。
「りょ、了解ッ!」
ラトゥーニを庇って右足が大破しているアルブレードと両肩と頭部の半分を失っているヒュッケバインMK-Ⅲでは戦闘にならない、カイからの撤退命令に従い、ラトゥーニはアルブレードに肩を貸して立ち上がらせるとヒュッケバインMK-Ⅲとアルブレードのブースターを同調させて、その場から離脱する。
『ラトゥーニ。ゼオラって……誰なんだ?』
「……後で説明する。ごめんね」
『いや、悪い。俺も変なタイミングで聞いちまった……』
今もなお半狂乱でアラドと言う少年の名前とラトと言う愛称でラトゥーニを呼ぶゼオラ。その叫び声に後髪を引かれる想いになりながらもカイ達がゼオラを助けてくれると信じて、ラトゥーニはリュウセイを連れてハガネへと帰還するのだった……。
リュウセイとラトゥーニが撤退してもなおランドグリーズは暴れまわっていた。むしろラトゥーニの姿が見えなくなった事で余計に激しさを増していた。
「くそっ! 厄介なお嬢さんだッ!!」
「イルムガルト中尉。下手に近づくなッ!」
グルンガストで捕えようとしてもお構いなしで暴れるランドグリーズを見て、ギリアムが近づくなと警告する。
「ちょっとやばいわね。あれでしょ? ラトちゃんが言ってたスクールの子って」
「……脱出ポッドが落ちていないか……チッ! 探している時間もない。来るぞッ!!」
ガラスが割れるような音が響き、虚空から無数の異形の集団が現れた。
「あ、あれは……!!」
「見た目は骸骨に植物……何者なんだ、あいつら?」
20M前後のPTと同じサイズの骨が組み合わさり人型になった異形と、植物の蔓が鎧を纏っているような異形が次々と姿を見せる。
「あ、あああ……いや、いやッ!! こないでッ! いやッ! アラドッ! ラトッ! たすけ、助けて……い、いや、いやああああああーーーーーーッ!!!!」
異形の空虚な瞳がランドグリーズに向けられた瞬間。ゼオラの脳裏で虚空から現れた爪と触手がリオンを引き裂く光景がフラッシュバックし、ゼオラは悲鳴を残し、ブースターとスラスターで強引にランドグリーズを浮かせて、その場から逃げ出した。
「いかんッ! スパイダーネット撃てッ!!」
「2~5番連続発射!!」
半狂乱になっているゼオラを見逃す訳には行かないと、シロガネとハガネからスパイダーネットが連続で射出されるがランドグリーズはそれを回避しながら、蚩尤塚から逃げ出していった。
「ユウッ!」
「ちっ! カーラ、先にゼオラを追えッ! 俺もすぐに行くッ!!」
今のゼオラを1人にしてはいけないとカーラにゼオラを追うように命じ、ユウキは撤退命令の信号弾を射出する。
(……アラドを探している余裕はない。シロガネとハガネを信じるしかないッ!)
投降したゼオラとアラドを保護しようとしたハガネならばアラドを探してくれる。ユウキはそう信じて、カーラ達の後を追ってゼオラを追いかける。
(エルザム少佐、何故……まさか……何かトラブルが……)
余裕を持って到着出来るようにエルザム達に連絡をしていたユウキ。だが合流予定時間を過ぎても現れないエルザム達の事を考えながら、離脱しましたの文章通信を残し、その場から離脱するのだった……。
この世界にラミア達……いや、シャドウミラーが逃げてくる事になった敵性存在……アインストの出現にアンジュルグの中でラミアは顔を歪めた。
(間違いない、アインストだッ! 何故、まさか私達を追いかけてきたのかッ!?)
本隊とは違う転移反応で現れたのがアインスト。その脅威と自分達が劣勢に追い込まれていた事がラミアの脳裏を過ぎり、アインストが世界を超えて追いかけてきたのだと感じた。
「該当するデータは無いわね……可能性があるとすれば、エアロゲイター……だけどそうは見えないわね」
ヴィレッタがデータベースを確認し、どこにも該当データがないと全員に告げる。
「どうやらそのようですね。あれは機械と言うよりも……生物のように思えます」
ガチガチと牙を鳴らし、周囲を威嚇するように歩き出す姿は機械にはとても見えず生物のように思えた。
「……気味が悪い。なんなんだ、あれは……キョウスケ中尉どうしますか?」
「あれが機械だろうが、生物だろうが敵対するのならば倒すまで、それにどこかから転移して来たということは……出所があの遺跡ではないようならば、破壊しても問題ない」
LTR機構が研究している古代の戦闘兵器ではないのなら破壊しても問題ないと告げキョウスケは、アルトアイゼンのリボルビングステークを現れた異形――アインスト・クノッヘンへと向けた。
「……うっ!?」
「エクセレン? どう……ッ!」
エクセレンの呻き声が聞こえ、キョウスケがどうしたと尋ねようとした時、キョウスケにも激しい頭痛が襲い掛かった。
『……メザメ……サセルワケニハ……』
その直後一瞬だけ、奇妙な声がアルトアイゼン、そしてヴァスリッターのコックピットに入った。
「ん? 今、奴らから通信が入らなかったか?」
「そんなもの聞こえませんでしたけど……」
「何……ッ!?」
キョウスケがブリットにそう尋ねるが、ブリットの返答はそんな声は聞こえていないと言う物だった。しかし声が聞こえたのはキョウスケだけではなかった、エクセレンも通信で他の面子に声が聞こえなかったか? と尋ねている。
「今、あのホネホネが喋らなかった?」
「いや、何も聞こえていない」
「え!?」
「エクセ姉様、機体のレコーダーにもそのような物は記録されてませんでございます」
これだけの面子がいる中、アインストの声が聞こえたのはキョウスケとエクセレンだけで、キョウスケもエクセレンも困惑していたが、その困惑は一瞬で吹き飛ばされる事となった。
「「「!!!」」」
目を光らせたアインスト達は遺跡とキョウスケ達に襲い掛かったからだ。先制攻撃と言わんばかりに放たれた骨のブーメランと、蔦が鎧から放ったビームを旋回し回避したカイは広域通信で全員に号令をかける。
「どうやら向こうは敵と見て間違いない様子だ! 各機、散開してアンノウンを叩けッ!」
その号令に従ってアルトアイゼンを走らせるキョウスケだが、その脳裏には何故自分とエクセレンにはアンノウンの声が聞こえたのかと言う疑問が浮かび続けていた。だが、その疑問も戦闘に入れば頭の隅に追いやられキョウスケはアインストとの戦いに意識を集中させるのだった。
「ブーストナックルッ!」
「ぬうんッ!!!」
アインストクノッヘンにグルンガストとゲシュペンスト・リバイブKの豪腕が叩き込まれ、骨の外見通りに粉々に砕け散って弾け飛ぶ。
「なんだ、見た目……なにッ!? ぐうううッ!?」
「ぐあっ!? くそッ! 見た目通りの化け物かッ!?」
粉々に砕け散った筈のクノッヘンの残骸は空中で再生し、グルンガストとリバイブKに襲い掛かり、その装甲に深い傷をつける。
「カイッ!」
「イルムガルト下がれッ!」
上下左右から飛来する骨のブーメランに翻弄されているカイとイルムを見て、ギリアムとヴィレッタが支援に入る。正確な射撃で宙を飛び交う骨を迎撃すると嘲笑うかのように集まりもとの人型に戻る。
「効いていないッ!?」
「どうやら普通の攻撃では駄目のようね」
グルンガストの打撃もR-GUN達のビーム攻撃もまともな有効打にならない謎のアンノウンにハガネのPT隊に驚愕と同様が広がる。
「ちえいッ!」
「……?」
シシオウブレードの一閃によって両断された蔦の様な異形――アインスト・グリートだが、ブリットを挑発するかのように何かした? と言うジェスチャーと共に再生し、その蔦の様な触手を伸ばす。
「こいつ!? 再生するのかッ!!」
「ならこれはどうだッ! ハイゾルランチャーシュートッ!!!」
実体剣が効かないのならビームはどうだとゲシュペンストMK-Ⅲ・R02カスタムのライがハイゾルランチャーを発射するが、命中する直前で霧散した。
「ビームコートだとッ!?」
実体剣も駄目、ビームも駄目と判り困惑するブリットとライの前を駆け抜け、アルトアイゼンがリボルビングステークをアインスト・グリートに叩き込む。
「実体剣もビームも駄目だと言うのなら、これはどうだッ!!」
炸裂音と共にリボルビングステークが炸裂し、グリートのコアを砕く。すると大きく痙攣し、グリートの身体は地面に溶けるように消えていった。
「残骸も残らないのか……ますます訳が判らないな。だが弱点は判った! 各機アンノウンのコアを狙えッ!」
アインスト達の弱点が胸部のコアだと判明し、そこからは徐々に優勢に変わり始めるPT隊。
(弱い……? こんなにもアインストは弱かったか?)
しかしその中でもラミアだけは困惑を隠せないでいた。コアに牽制程度のシャドウランサーを当てるだけで、コアが砕け消滅するアインストの弱さに困惑していた。アンジュルグに残されている戦闘データと今戦っているアインストの強さには雲泥の差があったのだ。それでも十分な脅威であると言う事に変わりはないので、十分に警戒し距離を取って戦っているとコアが砕かれ消滅しかけているアインストクノッヘンが怪しい動きをしているのに気付いた。
「ライ少尉! カイ少佐ッ! 足元に気をつけろッ!!」
そう叫んだ瞬間地面が盛り上がり、崩壊しかけたアインストクノッヘンが肋骨を展開し飛び掛る。
「何ッ!?」
「しまっ!?」
コアを完全に砕けきれず、奇襲の機会を伺っていたアインストクノッヘンの攻撃がコックピットに突き刺さろうとした瞬間。一陣の風が吹いた……。
「グラビトンライフル発射ッ!」
「究極ぅッ!! ゲシュペンスト……キィィイイックッ!!!!!」
漆黒の重力砲と紫色の彗星がアインストクノッヘンを粉砕しライとカイを救った。
「ラドラ! ラドラかッ!?」
「エルザム兄さんッ!?」
メタリックパープルのゲシュペンスト・シグ。そして黒・赤・金のカラーリングが施され、ブランシュタイン家の紋章が刻まれたゲシュペンスト・MK-Ⅲの登場によって、戦闘の流れは大きく変わり始めるのだった……。
百鬼帝国の偵察機によって妨害を受けていたラドラ達だが、間一髪と言う所でハガネとシロガネと合流する事が出来た。
「ラドラ、すまない。助かった」
「気にするな、それよりもまた面倒なことに巻き込まれているようだな」
テロリストと戦うつもりだったラドラだが、ラドラ達を出迎えたのは機械のような、生物のような化け物だった。旧西暦では爬虫人類であり、人間ではなかったラドラでさえも化け物と思うような敵だった。
『エルザム兄さん、今まで何をしていたんだッ!?』
『違うな、私はレーツェル・ファインシュメッカー。決してエルザム・V・ブランシュタインではない』
『に、兄さん?』
弟にも堂々とバレバレの偽名を名乗っているエルザムにラドラは深く溜め息を吐いた。
「ラドラ……」
「言うな、俺も困惑している」
あれは素でやっているのか? と問いかけるカイに言うなと質問をシャットアウトして、ゲシュペンスト・シグをアインストに向けるラドラ。
(戦闘データはユーリア達が取ってくれている、俺は戦いに集中出来るッ!)
謎の化け物がいるという事でユーリアと武蔵を偵察に上空に配置したので、戦闘データの収集を気にしなくていいラドラはシグをアインストクノッヘンに向かって走らせる。
「そいつらの弱点は胸部のコアだッ! 中途半端に砕くと再生するぞッ!」
「了解ッ!」
クノッヘンの放つブーメランを回避しながらシグは前進を続け、エネルギークローをコアに突き立てる。
「!?!?」
「ふんッ!!!」
高速で回転したエネルギークローにコアを貫かれ1度痙攣すると消滅するアインスト。
「なるほど相性の問題か」
打撃ではなく、貫き抉り取るという攻撃を取るゲシュペンスト・シグにとってはアインストの相手は楽な相手だった。
「わぉ、やっぱりラドラってやっるぅ」
「エクセレンか。元気そうで何よりだな、そこの天使みたいのはなんだ?」
「ああ、アンジュルグの事ね。ラミアちゃんっていうイスルギのパイロットなのよ。後で紹介するわ」
武蔵とユーリアを残したのはこれも大きい要因となっている。武蔵の性格では怪しんでいる相手に平常心で過ごす事など出来る訳が無いので、ラドラとレーツェルと名乗っているエルザムがハガネの前に向かうことにしたのだ。
『行くぞトロンベよッ!!』
『エルザム、お前正体を隠す気あるか?』
『何を言っているギリアム、私はレーツェル・ファインシュメッカー。決してエルザム・V・ブランシュタインではないと言っているだろう』
本気で変装したいのならばトロンベとか言うなと思いながらラドラはゲシュペンスト・シグを走らせる。
「ふんッ!!!」
「!?!?」
グリートに前蹴りを叩き込み、そのまま右足でコアを踏みつけてふみ砕こうとするゲシュペンスト・シグ。グリートは反撃に蔦を振るうが、シグはそれを容易に掴み取り、根元から引き千切る。
「!?!?」
「失せろ」
一際力を込めてコアを踏み砕くシグ。痙攣し、消滅していくグリートを一瞥し、ラドラの残虐的な戦いに絶句しているブリットに通信を繋げる。
「ブルックリン。武蔵に師事を受けたのだろう、お前は何をしている? 敵と判断したら躊躇うな、同情するな殺せ。死にたくなければな」
「お、押忍ッ!!!」
一瞬動揺したものの力強く返事を返すブリット。そしてその叫びに呼応するかのように力強い構えを取るゲシュペンスト・MK-Ⅲをみて大丈夫だなと判断し、ラドラは次の獲物に視線を向ける。
『スラッシュリッパーッ! GOッ!!』
『引き裂けッ! ファングスラッシャーッ!』
ゲシュペンストリバイブSから放たれた3つの刃を持つブーメランと、ゲシュペンスト・MKーⅢトロンベの左腕に搭載された十字のブーメランがアインストクノッヘンのコアを引き裂いた、だが消滅させるには僅かに破壊力が足りない……だがこれでギリアムとレーツェルの計算通りの展開になった。
『パルチザンランチャーBモード。そこだッ!!』
『ツインマグナライフル……デッドエンドシュートッ!!』
「「!?!?」」
正確無比なゲシュペンストMK-Ⅲ・R02カスタムとR-GUNの実弾が亀裂の入ったコアを砕き、グラートとクノッヘンが同時に崩れ落ち消滅する。
「キョウスケ、カイ少佐! 〆はよろしくねッ! ラミアちゃん行くわよッ!」
『了解でごんすッ!!』
Bモードとシャドウランサーの直撃を受けて、最後のクノッヘンのコアに亀裂が入った瞬間。アルトアイゼンとゲシュペンスト・リバイブが爆発的な加速でクノッヘンの懐に飛び込み、その腕を大きく振りかぶり突き出した。
「撃ち貫くッ!!!」
「これでトドメだッ!!」
リボルビングステークがコアを貫くと同時に炸裂し、コアを粉々に打ち砕き、メガ・プラズマステークの一撃がコアを体内から弾き飛ばし、最後のアインストクノッヘンが沈黙し、キョウスケ達の目の前で消滅する。
「ふう、なんとか切り抜けたな。それでラドラ、お前達はどうする?」
「ダイテツ中佐に話があるから、俺達はここに来た。ハガネへの着艦許可を求める」
「判った。こっちでダイテツ艦長に連絡を取ろう」
「エルザム兄さんですよね? 何を」
「何度も言わせるなライディース。私はレーツェル・ファインシュメッカー。決してエルザムなどではない」
「……兄さん……」
ハガネに着艦許可を求めるラドラとバレバレの変装でゴリ押しするエルザム。戦いの後で妙に締まらない空気の中……キョウスケとエクセレンは自分達にだけ聞こえた謎の声について考えていた。
「キョウスケ……声聞こえたわよね?」
「ああ。確かに聞こえた、だがリュウセイ達に声が聞こえなかったのは何故だ……」
念動力を持たないキョウスケとエクセレンだけに聞こえた謎の声――何故念動力を持たないキョウスケ達に聞こえ、念動力を持つリュウセイ達にその声が聞こえなかったのか……1つの謎を残し、蚩尤塚での戦いは終わりを迎えるのだが、アインストの出現によってこの世界での戦いは更なる激化を迎えていく事になる……。
ラドラとエルザムがハガネへと着艦したのを確認してからヴァルキリオンは戦闘区域から離脱していた。
「どうだ、武蔵。何か感じたか?」
「……すっごい見た事あるんですよ。頭の中でぞわぞわするのに、思い出さなきゃいけない事があるのに……それが言葉にならないんです」
「そう……か。無理する事はない、クロガネに戻ってカーウァイ大佐とイングラムと話をすれば、その疑問も解決するかもしれないな」
「そうですね……うん。そう思います」
明らかに顔色が良くない武蔵を気遣い、ユーリアは少しスピードを緩めた。
「大丈夫か? 気分が悪いなら1度どこかで休むか?」
「でも、そんなのビアンさんに迷惑をかけるんじゃ?」
「戦闘記録は衛星通信でクロガネに送れる。それでも不安だと言うのなら、1度クロガネに連絡を取ろうか?」
「……すいません。お願いします」
武蔵は確かに戦闘者としては優れている。だが、過去、平行世界と戦い続け、そして今はクロガネに隠れ潜む生活に間違いなくストレスを溜めているとユーリアは判断しクロガネのビアンに連絡を取った。
『そうか、状況は把握した。日本のE-67に隠しアジトがある、武蔵君。少し日本を見て歩いて気分転換をしてくるといい』
「すいません、迷惑を掛けます」
『気にするな、武蔵君。ユーリア、武蔵君の様子を見て、2人で少し日本で羽を伸ばしてくるといい』
ビアンの許可を得てヴァルキリオンは日本へと進路を向けた……。
(いや待てよ? これはデートと言う奴ではないのか?)
(ふう、やっぱり疲れが顔に出ていたのかな?)
武蔵とデートなのでは? と顔を赤めるユーリアと、疲れが出ていると見抜かれた事を恥じる武蔵を乗せてヴァルキリオンは優れたステルス性を利用してレーダーに検知されず日本へと上陸するのだった……。
第23話 騒乱の火種 その1へ続く
次回はハガネでの会議と武蔵とユーリアの視点で話を書いて行こうと思います。話を飛ばすところもありましたが、20話以上とテンポよく話を続けてこれたので、これからもその勢いで頑張って行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
-
サイドまたは視点は必要
-
今のままで良い