進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第23話 騒乱の火種 その1

第23話 騒乱の火種 その1

 

 

日本の浅間山近郊に用意されていたビアンの隠しドッグの中にヴァルキリオンを格納し、ユーリアの運転する車で武蔵は街に向かっていた。

 

「なんか重ね重ねすいません」

 

「なに、気にするな。武蔵はまだ学生の年齢なのだから車の免許がないのは当然だからな」

 

バイクの免許はあったのだが、車の免許がない武蔵に気にするなと笑いかけ、ユーリアはハンドルを切る。傍目には冷静で頼りになる女性と言う風貌のユーリアだが、その内心はと言うと……。

 

(お金……はあんまり余裕がないな、それに地球の観光なんてした事が無いぞ……どうする、どうする)

 

大人として武蔵のエスコートをするべきなのに、軍資金の少なさ。そして日本はおろか地球にだって来た事が無いユーリアの内心はテンパリまくっていた……。だが武蔵はそれに気付く事は無く、AMの操縦も出来て車の運転も出来るユーリアが凄いなあと感心していた。心中に大きすぎる差を抱きながら、武蔵とユーリアは近くの街へと向かうのだった……。

 

「へー、いやあ、案外街並みって変わらないものなんですね」

 

武蔵が新西暦の街を歩いたのはこれで3回目だ。1回目はリクセントでシャインに案内され、2回目はオペレーションSRWの前に1時間ほど歩いて見て回っただけで、ゆっくり街並みを見ている余裕なんて武蔵には無かった。

 

「ここら辺は来た事があるのか?」

 

「いえ、あんまりですかねぇ……オイラ出身は北海道ですし、早乙女研究所に来てからは訓練ばっかりで、あ、でも偶に元気ちゃんと買い物とかには来てましたよ?」

 

軽井沢の別荘地が隣接する温泉街を歩きながら武蔵はのほほんと笑う。早乙女研究所が近くにあるという事で軽井沢は何度か来た事がある武蔵だが、観光や遊びで来ていたのではなくあくまで恐竜帝国と戦う為に長野に来ていたので別に土地勘などがある訳ではなかった。

 

「そうか、もしも武蔵に思い出の場所があるとかならそこに行こうかとでも思っていたんだがな」

 

「はは、別に良いですよ。のんびりと歩けるだけでも良い気分転換になりますから」

 

武蔵の言う通り太陽の光を浴びて歩いているだけでも武蔵の顔色は格段に良い物になっていた。

 

「でも人が全然いないですよね? なんでだろ?」

 

「そうだな……なんでだろうな?」

 

軽井沢の温泉街の近くなので観光地としては間違いなく一等地。それなのに人影が少なく、店も営業していない所が多かった。その事が気になると話しながら歩いているとやっと営業している店を見つけた。それは温泉饅頭の小さな屋台だった……飲食店や土産がしまっている中でやっと見つけた店に武蔵は笑みを浮かべ、歩き出そうとしたがふと思い出したように足を止めた。

 

「温泉饅頭か、ユーリアさんは温泉饅頭ってお好きですか?」

 

外国人……厳密にはコロニーの人間なので少し違うが、餡子は馴染みがないかもしれないと心配になってそう尋ねる武蔵。だがユーリアは心配ないと柔らかく笑った。

 

「エルザム様が良く土産と言って持ってきてくれたので餡子には慣れている。大丈夫だよ」

 

「そうですか、それなら良かった。すいませーん、温泉饅頭4つください」

 

「はい、まいどー! ここで食べて行きますか?」

 

短く刈り込まれた茶髪の活発そうな印象を受ける青年が元気良く訪ねる。

 

「おう、ここで食べていくぜ」

 

「了解、ちょっと待ってくれよ。今蒸し立てが出来るから」

 

同年代そうと言う事で砕けた口調になる武蔵。そしてそんな口調の武蔵に釣られたのか青年も砕けた口調になる。

 

「2人は観光か何かか?」

 

「いや、ちょっと気分転換で散歩にな。それよりもだ、えっと……トウマか、人影も開いている店も少ないがどうしたんだ?」

 

アルバイトの青年の名札「トウマ・カノウ」の名札を見て、人が少ない理由はなんだ? と尋ねるユーリア。トウマは蒸し器の蓋を開けて、蒸し立ての温泉饅頭を取り出しながら困ったように笑った。

 

「いやさ、半年位前にかな? すっごい大地震があってそれであちこち閉まっているんだよ。震源は浅間山らしくてな、俺もバイトがもうすぐ終わりで正直困ってるんだよ。あれ? 凄い顔色悪いけどどうかしたか?」

 

笑いながら言うトウマだが、半年前、地震と言うキーワードで武蔵とユーリアは背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。浅間山地下でゲッターロボを吹き飛ばした振動が観光地をダイレクトに襲っていた事が今判り、凄まじい罪悪感が武蔵を襲っていた。

 

「あーっと、後4個貰って良い?」

 

「おう? 良いけど……じゃあ、はい、先に4個ね。280円になります」

 

罪悪感から更に4個注文したユーリアと武蔵は並んで温泉饅頭を頬張る。

 

「お、温かくて美味い」

 

「それに思ったよりも軽いな。丁度良い感じだ」

 

薄皮でみっちりと餡子が詰められているそれは小腹が空いた時に食べるには丁度良く、また甘すぎない絶妙な味が2人の舌に合った。

 

「そうそう、もしこのままぶらりって歩いて見て回るなら、川のほうに行くと釣堀と公園があるぜ。そっちの方ならまだ店もやっているからそっちに行くといいぜ」

 

更に4個の温泉饅頭を受け取り、ユーリアと武蔵はトウマに教えられた通りに釣堀を目指してのんびりと歩き出した。

 

「釣り……釣りか……」

 

「やった事とか無いですか?」

 

「まぁ……ないな」

 

コロニーにも川や海はあるが、あくまで観光や、精神衛生上のものであり魚などは居らずプールに近い物である。よってユーリアも魚釣りなどはやった事がなければ、生の魚を見るのも初めての事だった。

 

「やってみると面白いから、行って見ましょうよ、判らなければオイラが教えますし」

 

「そうだな……うん、そうしよう」

 

判らなければ教えると言う武蔵の言葉にユーリアは頷き、温泉街に来た時よりも近い距離感で武蔵とユーリアは並んで釣堀に足を向けた。

 

「あの2人恋人同士かなあ……良いなあ、俺も彼女が欲しいッ!!」

 

モデル顔負けの美女のユーリアと並んで歩いていた武蔵の姿を店先から見つめながら、トウマが唸っていると店の奥から店主のおばちゃんが顔を見せた。

 

「トウマくーん、そろそろ追加でお饅頭作るから手伝ってくれる?」

 

「はーい! 今行きまーすッ!!」

 

今日もバイト戦士トウマ・カノウはバイトで爽やかな汗を流すのだった……。

 

 

 

 

 

武蔵とユーリアが軽井沢でのんびりと過ごしている頃。中国のハガネとシロガネのクルーは蚩尤塚での謎のアンノウン出現についての情報を得る為にLTR機構のエリ・アンザイ、そしてレーツェルとラドラを招きいれ、今回の件の話についての会議を始めていた。

 

「艦長、発掘責任者のエリ・アンザイ博士、レーツェル氏とラドラ氏をお連れしました」

 

ブリーフィングルームにテツヤがエリ達を連れて来るのだが、エリの後のレーツェルを名乗るエルザムの存在感が凄まじいことになっていた。

 

(なぁ、ライ。あれ、お前の兄貴だよな?)

 

(言うな……リュウセイッ。俺も混乱している)

 

間違いなくエルザムではあるが、レーツェルを名乗りエルザムでは無いと言うレーツェルの姿にハガネのブリーフィングルームとシロガネのブリーフィングルームには嫌な沈黙が広がっていた。

 

「うむ。忙しいところ申し訳無いな、アンザイ博士、それと……レーツェル・ファインシュメッカーとラドラ少佐。救援感謝する」

 

真顔でレーツェルの名前を呼んだダイテツ……ダイテツ自身もレーツェルに関して深追いせず、偽名と変装をしている理由を察する事にしたのだ。

 

「LTR機構、特殊考古学部門主任のエリ・アンザイです。先程は我々を救助していただきありがとうございました」

 

ダイテツ達とレーツェルに深く頭を下げるエリ。ギリアムとカイが先行した事で遺跡群に被害は少なく、スタッフも怪我が無く襲撃を乗り切れたことにエリは深く頭を下げながら感謝の言葉を口にした。

 

「……なあ、ブリット。LTR機構って何だ?」

 

「名前は聞いた事あるけど、詳しい事は知らないな」

 

軍艦にオブザーバーとして招集されたエリ。だが一般的ではないLTR機構の名前にリュウセイとブリットが首を傾げているとライが小さな溜め息と共にDコンを操作し、2人の前に置いた。そこにはLTR機構の主な活動内容が写真付きで表示されていた。

 

「ロスト・テクノロジー・リサーチ機構……主にオーパーツの発掘・調査を行っている組織だ」

 

「オーパーツってあれか? 黄金のシャトルとか、水晶髑髏とか?」

 

LTR機構の名前では判らなかったが、オーパーツと言われればアニメやゲームで出てくるのでリュウセイも何を研究している場所なのかが判り、ライにそう尋ねるとブリーフィングルームの扉が開き勢い良く1人の老人が飛び込んできた。

 

「ゲッターロボも最古のオーパーツの1つじゃ! さぁ! L5戦役でゲッターロボと戦ったお前達の「ちょっと静かにしてくださいね、シキシマ博士」うっ!?」

 

エリの流れるようなボデイブローで腹を押さえて昏倒するシキシマと呼ばれた老人に全員が目を見開いた。

 

「アンザイ博士、流石に実力行使が過ぎるのではないかな?」

 

「すいません、でもシキシマ博士はゲッターロボの熱心な研究者で、起きていたら話し合いとかしている場合じゃないですよ?」

 

少し顔を見ただけだが、狂人の類であると言うのは明らかでエリの実力行使が正しい処置の可能性が高く、シキシマはハガネのクルーによって足と腕を掴んで持ち上げられ、荷物のようにブリーフィングルームから連れ出された。

 

「あれがシキシマ博士か……聞いてたとおりやべえな」

 

「イルム中尉はシキシマ博士をご存知なんですか?」

 

イルムならばエリに反応を示すと思っていたのだが、イルムが反応したのがシキシマ博士で全員が若干驚いた表情でイルムを見つめた。

 

「俺を何だと思ってるんだ? お前ら」

 

「アンザイ博士をどう思ってます?」

 

「そりゃ、ちょっときつそうだが美人だと思うぜ? シキシマ博士がいなけりゃ、俺も口説くが、シキシマ博士がいるなら話は別だ」

 

エイタのからかうような口調にエリを美人と認め、ナンパする所だったと言いつつも、真剣な顔をするイルム。そんなにもシキシマ博士の名前が大きな意味を持つのかと全員が首を傾げていた。

 

「シキシマ博士は、旧西暦から続く科学者の家系の生まれでな、早乙女研究所に所属していた先祖を持つ高名な博士だ」

 

「だがその経歴と過去の記録を持つと言う事で、ありもしない罪をでっち上げられて投獄されていた博士でもある」

 

「まさか、それってゲッターロボを知っているかもしれないからって事ですか?」

 

ブリットが信じられない、いや信じたくないと言う顔でギリアムとイルムに尋ね、2人が頷くとブリーフィングルームに先ほどとはまた違った沈黙が広がった。

 

「失われた時代を知る研究者の多くは投獄、あるいはありもしない罪によって処刑されたという時代があります。それほどまでに、時の政府はゲッターロボに関する情報を根絶したかったのです」

 

L5戦役で最後まで先陣を切って戦い、そして壮絶に散ったゲッターロボ。地球を救った戦いに参加していた事もあり、政府は一部の失われた時代に関して公表し、投獄していた研究者の一部を解放した。その一部の人間がシキシマ博士だ、かつてはEOTI機関、そしてテスラ研に所属し、何かを作り上げようとしていたと言う話は研究者にとっては非常に有名な話の1つだった。

 

『シキシマ博士がこちらに居られるという事は、この遺跡にはゲッターロボに関する記述があるのですか? アンザイ博士?』

 

「リー中佐ですね。はい、遺跡の採掘準備をする前にいくつものゲッターロボに関する資料が出土しています」

 

少し失礼しますねと声を掛け、ブリーフィングルームのモニターを操作するエリ。スクリーンに映し出された壁画を見て、全員が目を見開いた。

 

「こりゃあ、武蔵の乗ってたゲッターロボか?」

 

「それにこっちはドラゴンにそっくりだ!?」

 

ゲッターロボ、ゲッターロボGにそっくりな壁画の存在にリュウセイ達は驚いた。

 

「アンザイ博士。これと同じ物が南極のリテクでも見つかっている」

 

「レーツェルさんでしたね。はい、その通りです。一定の時期に存在する遺跡の全てにはゲッターロボの記述とそれらしい姿が残されている」

 

「……アンザイ博士、その一定の期間とは?」

 

「勿論1つは旧西暦、そして今回の件にも関係しますが古代中国、そして新西暦初頭です。ゲッターロボは時間、場所を越えてありとあらゆる場所に記述が残っています」

 

時間・場所を越えて出現していると言う記録があると聞いて、ゲッターロボによる時間移動の可能性が強く証明されるが、それはダイテツによって制された。

 

「アンザイ博士、その話にはワシも興味があるが……先に遺跡を襲撃したアンノウンについてお聞きしたい……あれに心当たりは?」

 

ゲッターロボに関しての記述は確かにダイテツ達も知りたい、だが今はアンノウンについての話を聞く為に呼んでいるので脱線はここまでにして欲しいと遠回しに言うとエリは咳払いをして小さく謝罪をしてからアンノウンについての話を始めた

 

「確証は持てませんが、『百邪』の一種か、それに近いものだと思います」

 

「百邪? そんな記述があるのかね?」

 

「はい。太古の昔、この地上に存在していたと言う悪魔や妖怪の類ですわ、そうですね……最近の所では「百鬼帝国」……なんて物もありますわ」

 

ギリアムから告げられていた百鬼帝国の言葉がエリからも告げられ、ダイテツ達は驚きに目を見開いた。

 

「伊豆基地のレイカー司令から分析と解析依頼がありまして、遺跡の文献と見比べましたが……回収された残骸は百鬼獣で間違いないでしょう」

 

まだ僅かに疑いがあったが、百鬼帝国の記述があると聞いて百鬼帝国復活が信憑性を帯びてきた。

 

「でもアンザイ博士。あのアンノウンと百鬼獣は全然違ったけど……」

 

「ええ、あくまで百邪に含まれるというだけで年代や場所が違いますし、百邪と言っても、生物や機械といったようにその姿も思想も大きく異なります。あのアンノウンと百鬼獣は全く違う分類になるのでしょうね」

 

百邪と一言で言っても、その存在は多岐に渡って存在すると言われば姿が違うと言うのも微々たる差異になるのだろう。

 

「神話や伝説ならともかく、現実にそんな物が存在しているなんて……」

 

『正直言って信じられないな……いや、ギリアム少佐を疑っていた訳では無いが……それでもまさかと言う考えがなかった訳ではない』

 

「だが、あのアンノウンを見た以上……信じられぬ話ではあるまい」

 

文献があると言われていてもそれを直接見た訳ではなく、ギリアムから話を聞いていただけで、百鬼帝国と百鬼獣の姿を真似ているだけの兵器と言う線も捨て切れなかった訳だが、アンノウンと百鬼帝国の記述があるといわれ、その専門家に間違いないと言われれば、ダイテツ達もそれを信じるしかなかった。

 

「それで、博士……アンノウンがここへ現れた理由について何かお分かりか?」

 

「おそらく、あの遺跡……『蚩尤塚』に眠っている物を狙ってきたのだと思います」

 

「しゆうづかですか?」

 

聞き覚えの無い言葉に怪訝そうな声で尋ねるテツヤにエリはしゆうではなく、しゅうと訂正した。

 

「蚩尤とは中国神話に登場する軍神……伝説の帝王・黄帝との戦いで敗れ、封印された魔神の事ですね? アンザイ博士」

 

「良くご存知ですね。レーツェルさん」

 

「ええ、私もゲッターロボに関して色々と過去の文献を見ていましてね。その中で蚩尤塚に触れることもあったのですよ、しかし、あそこ

には蚩尤ではなく龍と虎の超機人が眠っているそうですが……?」

 

レーツェルから告げられた新たな言葉、超機人の言葉にエリは驚いたような表情をした。

 

「エリ博士、超機人とは?」

 

「古の時代の人々が百邪と戦う為に造り出した巨大な機械人形の事です、一説によるとゲッターロボと共闘した、あるいは敵対した等、その存在は謎に包まれているますが……この地方の古文書によれば、蚩尤塚に眠る超機人は1体……龍と虎の姿を持ち、その力は一国の運命をも変えると言われています」

 

ゲッターロボと敵として、またあるいは味方として戦った存在が中国に眠っていると聞いて、全員が驚き、そしてテロリストがこの場所を狙った理由にも納得が行った。

 

「テロリスト達はその超機人を狙っていたのか……」

 

「ゲッターロボと一緒に戦えるほどの存在だ……喉から手が出るほどに欲しいだろうよ」

 

ゲッターロボの強さはキョウスケ達が身を持って知っている。味方にすれば頼もしく、敵に回れば何よりも恐ろしい存在……それがゲッターロボだ。それと共に戦える物があるかもしれないと判れば、誰だってそれを手にしようとするだろう。

 

『ダイテツ中佐。このまま採掘を続けさせるのは危険かと』

 

「そうだな、また襲撃が無いとは言い切れない。ワシの方からレイカーに頼んで採掘現場に警護をつけるように頼もう」

 

「すいません、よろしくお願いします」

 

ゲッターロボと対等の存在が眠るかもしれない古代遺跡。そこに眠る物をテロリストにも、百鬼帝国にも渡す訳には行かない。ダイテツとリーは連名で、レイカーにLTR機構の採掘の護衛をつける事を頼むとエリに約束した。

 

「さてと、随分と待たせてしまったな。レーツェル、何をしに来たのか聞かせてもらっても良いだろうか?」

 

エリを採掘場に送り返してからダイテツがレーツェルとラドラに声を掛けた。ビアンの使いであるレーツェルとラドラの話をユリに聞かさせる事が出来ず、待たせたことを謝罪してからダイテツはビアンから何を言われて、ここに来たのかを問いかけた。

 

「はい、私達はビアン博士の指示によって動いております。L5戦役で共に戦ったダイテツ中佐、そして伊豆基地のレイカー司令を信頼して、1つ頼みたい事があると言って私達を派遣しました」

 

ビアンの名前を出した事で更にレーツェルがエルザムであると言う疑惑がより強い物となる中。レーツェルは深刻な声色で告げた。

 

「我々も幾度も百鬼帝国の襲撃を受けています。そしてその中でビアン博士と同じ声をした何者かの姿も確認しております」

 

「それに伴い、俺達で手にした百鬼帝国のデータを譲り渡しに来た。それぞれに地球の平和を守る為にな」

 

それはシャインと同じ……シャイン・ハウゼンに成り代わろうとしたように、ビアンを殺し、ビアンに成り代わろうとしている者が存在すると言う事がレーツェルから告げられ、ハガネとシロガネのブリーフィングルームに強い緊張感が広がるのだった……。

 

 

 

 

一方ハガネでそんな重い話をしているなんて夢にも思っていない武蔵とユーリアはと言うと……。

 

「あっ……」

 

「そんなに力いっぱい引いたら駄目ですって、こうやって竿の弾力を生かしてっと」

 

自然の川を利用した釣堀で2人で並んで釣り糸を垂れていた。だがユーリアは力任せに引いてしまい、竿を高く上げた事で、糸がピンと張られてしまい、乾いた音を立てて糸は切れてしまった。しょんぼりとしているユーリアの隣で武蔵は竹竿の弾力を生かして、ニジマスを1匹釣り上げてみせる。

 

「こういう風ですね」

 

「なるほど、では今度こそ私も釣って見せるぞ」

 

「頑張ってください。ユーリアさんの竿はこっちで仕掛けを直すんで、オイラの竿を使ってくれて良いですよ」

 

武蔵はユーリアに自分の竿を差し出し、ユーリアの竿を受け取って仕掛けを作りなおす。その隣でユーリアは釣り針にイクラをつけて、敵が川の中にいるかのように鋭い視線で睨みながら仕掛けを川の中に振り込んだ。

 

「……今度こそ釣ってみせる。じゃないと昼食が無くなるからな」

 

「はは、そうですね。頑張りましょう」

 

バーベキューも出来る釣堀だが、客が居らず殆ど貸切状態の川原で気合を入れた表情をしているユーリアと、その隣で朗らかに笑いながら仕掛けを作る武蔵の姿は誰が見ても恋人のように見えているのだが、ユーリアと武蔵はそれに気付かない。勿論、もしも回りに客が居れば気付く事も出来ただろうが、2人きりでは気づきようがある訳もない。

 

「き、来たぞ!」

 

「お、流石にイクラですから食い付きがいいですね」

 

仕掛けが馴染んで数秒でウキが沈み、右往左往しながらニジマスを釣り上げようとするユーリアの隣で網を構える武蔵。その2人の顔はとても楽しそうで、久しぶりの息抜きを心から楽しんでいるのが誰の目から見ても明らかで、釣堀の管理人達も思わずほっこりするような穏やかな光景だった。

 

「もう少し寄せてくださいね」

 

「こ、こうか?」

 

「そうそう、よいしょっ!」

 

「つ、釣れた。私にも釣れたぞ武蔵!」

 

初めて魚が釣れたと無邪気に喜ぶユーリアに武蔵も良かったですねと笑い返し、今度は2人で並んで釣りを始める武蔵とユーリアなのだった……。

 

 

 

第24話 騒乱の火種 その2へ続く

 

 




本当はもう少し話を広げるつもりだったのですが、長くなりそうな感じだったのでここで1度話を切る事にしました。次回はレーツェル達とダイテツ達の話、そしてラトゥーニとリュウセイ、最後にゼオラの話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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