第28話 宇宙の龍/大地の鬼神 その1
クロガネから飛び立ったゲッターD2は凄まじい勢いで急上昇を続け、夜空にゲッター線の証である翡翠色の光を残し、あっと言う間に成層圏を抜け、中間圏、熱圏へと突入する。
「うぐぐぐうううッ!!!」
スペースシャトルや戦艦で宇宙に行くのとは違う、凄まじいGとゲッターウィングで守られているがそれでも凄まじい熱がコックピットを襲い、カーウァイは操縦桿を握り締めて苦悶の声を上げる。
『後もう少しなんで我慢してくださいよッ!』
平然とした声で我慢してくれと言う武蔵の声に内心化け物めとカーウァイが感じている内にゲッターD2は大気圏を突破した。
「ふー……地獄のような30秒だったな」
宇宙に出てしまえば後はどうと言う事は無く、ゲッターD2の腕から解放されたゲシュペンスト・タイプSの動作確認を行なう。
『大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない。少し不調があると思ったが……全く問題は無さそうだ」
PTで大気圏突破と言う事で不調があると思っていたカーウァイだが、それも無かったので安心した声で武蔵に返事を返す。
「このままランデブーポイントに向かう、私が誘導するからついて来てくれ」
『了解です』
ブースターとスラスターを使い武蔵とカーウァイは急いで移動を開始する。ゲッターD2は特機の中でも非常に巨大で全長は90M近い、そんな大質量が地球から上がってくれば警備隊も動きだす。それに囲まれる前に、迎えに来ているビアン親派と合流する事を目的にして武蔵達は動き出す。
『最初は何処って行ってましたっけ?』
「L2宙域だ。ホワイトスターからは離れているが、L5戦役で破壊された機体などの残骸が漂っているデブリ帯だ。あそこが1番失踪事件が多発している』
事前情報は決して多くないが、それでも人の口に戸は建てられない。どれほど少ない情報であっても、目撃者達の話はどこかに必ず存在している。
「信号弾探知、あそこだ。行くぞ」
『了解ッ!』
デブリに偽装した外壁から射出された信号弾を感知し、武蔵とカーウァイはその方向に向かって動き出すのだった……。
「艦長……今のは……」
「ああ、ゲッター線だな。どうやら武蔵達も動き出したようだな」
「……シャイン様、そろそろ夜風が強くなります」
「ジョイス……ええ、戻りますわ。でももう少しだけ見ていたいのです」
「あれはゲッター線……ゲッターロボでしょうか?」
「そうですわ、きっと武蔵様です。地球を守る為にまたどこかで戦っておられるのです」
「ゲッター線……ふっ、武蔵もこの世界に来たかこれがな……俺もいい加減にヴィンデル達と合流したいものだ」
「ふ、ゲッターロボが復活したか、これでやっと面白くなるな」
地上から宇宙を目指すゲッター線の輝きは世界各国で観測され、ゲッターを知る者すべてがゲッターロボの健在を改めて知る事となるのだった……。
宇宙を目指すゲッター線の光が観測された翌日――テスラ・ライヒ研究所の管制室にフィリオ、リシュウ、コウキ、ジョナサンの4人の姿があった。
「リシュウ先生、その件に関しては、もう謝罪したと思うんですが?」
「勘違いするな馬鹿者。ワシも気掛かりな事があると言ったじゃろう? まぁ、まずはこの映像を見てくれ」
リシュウがそう告げてコンソールを操作すると、ラングレー基地の第4試験場でグルンガスト弐式と切り結ぶ鎧武者を連想させるガーリオンの姿があった。
「これは……ガーリオンタイプ。各部をかなり弄っていますね……」
「パッと見しただけですが、ガーリオンの皮を被った別の機体と言っても良いくらい改造されてますね。リシュウ先生、これが何か?」
突然見せられたカスタムタイプのガーリオンの画像。それを見せられた意図が判らずそう尋ねるジョナサン達。
「……ワシの弟子が遭遇した機体じゃ。この改造やパイロットに心当たりがあるかの?」
「いえ……僕は設計と試作機の開発に携わっただけで、量産移行型やカスタムタイプについての詳細までは知りません。お力になれなくて申し訳無い……」
改造されたガーリオンなので、ガーリオンの設計者であるフィリオなら何か知っているかもしれないと思ったらしく、パイロットを知らないか? と尋ねられたフィリオだが、あくまで自分は基礎設計と試作機の製作にしか関わっていないと言われリシュウは小さく肩を落とした。
「リシュウ先生、この機体が持っている剣はシシオウブレードではありませんか?」
映像を見ていたコウキがシシオウブレードではないか? と尋ねるとリシュウは若干気落ちした表情で口を開いた。
「うむ、シシオウブレードの最初の一振り。ワシがここでこしらえたパーソナルトルーパー用の実剣の第1号じゃ」
「それではリシュウ先生。このガーリオンに心当たりがあるのは、フィリオではなく先生の方では?」
リシュウが作成したシシオウブレードを持つガーリオン……それを知っているのは誰でもない、リシュウの方ではないのですか? と尋ねられ、リシュウは今度こそ深い深い溜め息を吐いた。それはリシュウが抱えている後悔さえも吐き出したような、とても重い溜め息だった。
「そうじゃ。この機体に乗っておる男は、ワシの古い弟子かも知れん、だから何か知らないかと思ったのじゃ」
「弟子……ですか。すいません、僕はDCの兵士までの事は知らないんです」
「そうじゃな、その通りだ。すまぬ、ワシの思い違いじゃった……あの当時ワシの元には才能に溢れ、特殊戦技教導隊への入隊を勧められた程の腕を持つ男が何人もおった。 じゃが、カーウァイ大佐との面接の後、ゼンガーを残し、奴はワシらの前から消えた。一振りのシシオウブレードと共に……」
カーウァイ大佐との面談の後に姿を消した……それは、教導隊としての資格が無いと言われたからと容易に想像出来た。
「あの当時は先生の弟子は大勢いましたし、現に教導隊へと言われた男も何人もいましたね。ゼンガー少佐もそのうちの1人でしたよね?」
「うむ、ワシの弟子から6人が教導隊へのスカウトを受けた。その中でゼンガーだけが教導隊へ招かれた。他の5人とはそれ以降あっていない」
教導隊にスカウトされ、隊長との面談で落とされた。それはエリートの道を歩み始めるかもしれないと言う時に深い挫折へと繋がっただろう……それがシシオウブレードの盗難事件に繋がったのだ。
「……ワシは確かめねばならん。このガーリオンに乗っておる者の正体を……もし、ワシの弟子達の1人だとしたら……止めねばならん。師として悲しんでいるあいつらを……正しき道へ導けなんだワシの責任なんじゃ」
ゼンガーが採用されたという事に喜び、他の5人へのフォローが出来なかった事――それがリシュウの後悔しても仕切れない、後悔の1つだった。
「その為にグルンガスト2号機に乗ったのですね?」
ここでやっとリシュウが何故、昨日の狂言に乗ったのかをコウキ達は理解した。もしも、弟子の1人がシシオウブレードを手に殺戮を繰り返しているのならば、それを止める為にリシュウはグルンガストを駆って戦う為に昨日の狂言に参加していたのだ。
「やはり直接見つけて止めるしかないの、それよりもだ。次はこれを見てくれ」
リシュウであっても触れて欲しくない過去なのか強引に話を変えたリシュウが再びモニターを操作した。
「これは昨日の……」
「うむ、フィリオは判らないと思うが、これを拡大していくと……」
「これは!? ゲッターロボGッ!?」
「いえ、カザハラ博士、良く見てください。細部が少し違います、それに機体のサイズもです」
「し、しかし、良く似ているな」
DC戦争でアードラーが使い、L5戦役ではエアロゲイターに使われた量産型ゲッターロボG。それに酷似した未知の機体の存在にジョナサン達は顔を歪めた。
「うむ。恐らく何者かがこの機体を操り、宇宙に飛び立ったのじゃろう。計り知れぬ推進力とパワーを持つ機体じゃ、この機体に関して判りうる限りでいい、調べて欲しいと言う依頼じゃ。映像記録だけじゃから、難しいと思うが協力してくれ」
モニターに映るドラゴンに似た未知のゲッター……それを調べる為にジョナサン達は何度も映像を巻き戻しては再生し、少しずつ、少しずつその情報を集め始めるのだった……。
武蔵とカーウァイが宇宙に旅立って12時間後――アフリカのアースクレイドルにこの場には似つかわしくない、スーツ姿の1人の男が飛行機から降り立った。それを青い髪の男が笑顔で招き入れた。
「ようこそ、アースクレイドルへ……ブライ議員。我々は貴方をお待ちしておりました」
「下らないおべっかは良い。時間の無駄だ、イーグレット」
それは今アメリカの会議に出席している筈のブライだった。普段の柔らかい笑みではなく、邪悪とも言える全てを見下すような視線をしていた。
「それは失礼しました。ではこちらへ」
イーグレットの案内でブライはアースクレイドルの中を進む。
「そう言えば、あの小娘はどうした」
「小娘……ああ、ソフィア博士ですか? 余りにもうるさいのでね。人工冬眠装置に押し込みましたよ、貴方方や、コーウェン博士達の素晴らしい知識を邪悪だと言う愚か者をね」
アースクレイドルは既にイーグレットの謀反によって完全に百鬼帝国の親派となっていた。
「ほう、これが平行世界の兵器と言う奴か?」
ブライが案内されたのは格納庫と製造ラインだった。そこに並べられている機体を見て、ブライの目に初めて興味深いという色が浮かんだ。
「初めまして、ブライ議員。ヴィンデル・マウザーと申します」
「お前がそうか……なるほど、良い面構えをしているな」
機体の陰から姿を見せたヴィンデルを見てブライはにやりと笑う。ブライほどの存在になれば、一目で相手が何を考えているか、何を企んでいるかを見抜くことなど容易い。
「イーグレット。貴様は失せろ」
「は……いえ、その私の研究は……」
「気が向いたら見に行ってやる。今はヴィンデルと私だけで話をしたい。良いな?」
睨まれたイーグレットは不服そうだったが、判りましたと返事を返し格納庫を後にする。
「さてと、ヴィンデルだったな。中々やるではないか」
「……何の事でしょうか?」
「誤魔化すな。これでも私はお前達のスポンサーになってやろうというのだぞ? くだらない誤魔化しは止めろ不愉快だ」
ギロリと音が出そうな眼で見つめられヴィンデルは小さく肩を竦めた。
「イーグレットを焚きつけたのは私だけではないですよ」
「はははッ! あの小心者をコントロールしたと言うだけでも評価するぞ。コーウェンとスティンガーのように煽ったのではないだろう? お前は何をした? どうやってあの小心者に謀反などを起させた?」
言わなければお前を殺すと目が物語っているブライにヴィンデルは溜め息を吐き、自分が何をしたのかをブライに伝えた。
「ただ兵力を、私達が作ることが出来る兵力を提示したのですよ。そして……ゲッターロボの戦闘データを渡しただけです」
ヴィンデルがアースクレイドルに潜り込んだのはミツコの口利きではあるが、こうして格納庫や製造ラインを自在に使えるようになったのはその話術と未来を見させる弁術だった。
「ゲッターロボ……か」
「量産型ゲッターロボ計画をしているブライ議員には興味深い物でしょう。どうです? 戦闘データをお譲りしましょうか?」
「いや、いらん。この目で見なければ信用など出来ん。映像などではなくな……それよりも私はお前が気に入ったぞ」
少ない会話で自分の何を知ったと言うのだと言わんばかりにヴィンデルが顔を歪める。するとブライはそれを見て、牙を剥き出しにして笑った。
った。
「何もかも利用してやる、自分の目的の為にならば裏切りも平気でやる。そういう野心溢れる人間は大好きだ、私の首も狙ってみるか?」
「……ご冗談を」
「ふふっ、今はそういう事にしておいてやろう。今日は有意義な話し合いが出来そうだな」
自分と向かい合い冷や汗を流しながらも、それでも不屈をその目で訴えるヴィンデルを見てブライは楽しそうに笑う。
「好きな数字を書くがいい。私が本格的に動く時までは、出資をしてやろう」
「……ありがとう……ございます」
数字の書かれていない小切手を平然と差出し、寝首を掻けるものならば掻いて見ろと言わんばかりのブライにヴィンデルはやや押されながらも、対等な立場に立つ為にあれやこれやと策を講じるのだった……。
疲れ果てた様子で帰って来たヴィンデルをレモンがからかうように笑いながら出迎える。
「……で、どうだったの? 百鬼帝国の指導者って言うのは?」
「化け物だな、アインストやインベーダーとはまた違う。俺でさえも飲まれそうだった」
実際に生死をかけた戦いをしてきたヴィンデルではあるが、そんなヴィンデルでさえも恐れ戦き、飲み込まれそうな威圧感を持っていたとヴィンデルは告げ、レモンが用意してくれた紅茶を口にして、漸く一息付く事が出来たようだ。
「そ、鬼の帝王って言うだけはあるわねぇ。それにしても、私達が世界を超えてきたって言うのまで切る必要があった?」
手札は隠していればいるほどに効果を発揮する。それなのに既にヴィンデルは平行世界の人間と言う札を切ってしまっている……いや、正確には切らされたと言うべきなのかもしれない。
「言うな、俺だって切りたくて切った訳じゃない」
「ふふ、まぁ別に良いんだけどね。あの手のタイプはこちらの手札は切っておいた方がいいもの」
レモンから見てもブライと言う男は化け物に見えた。下手に隠し立てすれば、命を以って償わされる……それくらいの事は平気でやるタイプの人間……人間ではなく鬼だがその危険性は一目で判る。
「反逆出来るならして見ろ、裏切れるなら裏切って見せろと言われたぞ」
「でしょうねえ。システムXNを修理する為の時間稼ぎ程度に思っていたけど、ふふ、そうも言ってられないわね」
ヴィンデルとレモンからすれば戦力を整える為にアースクレイドルに接触した。利用するだけ利用したら捨てるつもりが、それすらも出来ない伏魔殿に潜り込んでしまっていた。だがそれに気付いた所で逃げ出す術もない、ならば逆に喰らい尽くしてやろうと気位を持つべきと開き直っているレモンに対して、ヴィンデルは自分の作戦ミスを悔いていた。
「笑っている場合か……それで連邦の作戦実行日は?」
「んー3日かくらいね。シロガネとハガネが日本に戻って補給して……それからね」
連邦軍のアースクレイドル攻略戦――それは既にアースクレイドルに情報が漏れていた。
「3日か……それならばもう少し戦力を削いでおくか?」
「やめといたら? 下手に動くと更に切らなくても良い札を切らされるわよ?」
「しかしだな、向こう側よりも連邦の戦力が増しているのだぞ?」
「ゲシュペンスト・MK-ⅢとヒュッケバインMK-Ⅲね。確かに、私達のより高性能だわ」
向こう側の連邦よりもはるかにこちら側の連邦の戦力は増している。それをヴィンデルは懸念していたのだが、レモンは明るく笑うだけだ。
「今回の作戦は立ち上げ、勝ち負けはどうでも良いのよ。なら私達は下手に動かないで、百鬼帝国さんに任せましょうよ?」
「それは判るが、W-17からの報告もないのだろう? あの人形しくじったんじゃないだろうな?」
ラミアを人形と言われ、レモンはむっとした表情になる。
「人形って言わないでくれる? あの子は私の最高傑作で、大切な娘なのよ? 顔も良いし、スタイルも凄いんだから」
「顔と身体が良ければ娼婦として男に取り入るくらい出来るだろう?」
「……それ以上言うと、私も考えがあるわよ」
レモンにとってWシリーズの後期NOは自分の子供と同意義だ。それを慰安婦のように男に媚を売れと平然と言うヴィンデルにレモンは静かだが明確な怒りを見せた。
「悪かった。俺が悪かった、しかしだな? W-16は行方不明、W-17は音沙汰なしでは失敗を疑うだろう?」
一応謝罪の言葉を発するヴィンデルだが、それに謝罪の感情が込められていないのは明らかでレモンは更に不機嫌そうになるが、ヴィンデルはそういう性格よねと呟いて報告書を机の上に投げる。
「リクセントの量産型Wシリーズからの報告よ。武蔵らしき人影発見、それとラミアから通信機の破損により、連絡不能。通信機もとむだって」
「しくじっているのではないか! そんな有様でヘリオス……あのファーストジャンパーを発見出来ると思っているのかッ!」
「あのねえ? 転移は完全な形で成功したんじゃないの。判る? 貴方が1回計画を変えたせいでミスが起きたの。それに通信がないってだけで、ちゃんと任務は遂行してる。任務ディスクも渡しているからちゃんと仕事はしてくれるわ、少し落ち着きなさいよ。ヴィンデル」
レモンとヴィンデルの間に険悪な空気が広がるが、それも仕方の無い事だった。転移してきて、新天地に来たと思えば自分達の機体よりも高性能な量産機が多数配備されている連邦に焦りを覚えるのは当然の事だった。
「……すまない。そうだな、冷静に考えればヘリオスが姿を見せないのは当然の事だな」
「そうそう、彼も私達の事には気付いている筈だし……簡単に尻尾は出さないでしょうね。それに、W17から連絡が無いって事は……ハガネとかシロガネにはいないんじゃない? とにかく、あの子に任せておきましょうよ、果報は寝て待てって言うでしょ? 後は、昨日のゲッター線の柱、あれやっぱりゲッターD2だったわ。ちょっと画像は荒いけど、これを見てよ」
ゲッター線の柱、あれやっぱりゲッターD2だったわ。ちょっと画像は荒いけど、これを見てよ」
モニターに映し出されたのはぼんやりとしていて輪郭しか判らないが、ゲッターD2とゲッターD2に抱えられたゲシュペンスト・タイプSの姿だった。
「……やはり武蔵もこちらに転移していたか、あのボロボロのゲッターロボとの関係性は?」
「そこは判らないけど……多分D2を地上で動かす気はあんまり無いんじゃないかしら?」
D2のパワーは桁違いだ、それ故に荒廃したあちら側ならまだしも、こちら側では積極的に動かすつもりはないと武蔵の性格を知るレモンは分析していた。
「……そうだな。それだけでも御の字か……後はW-16次第か」
「ま、仕掛けはしてあるしね」
ゲッターD2と戦う事になれば苦戦は必須――レモンがこっそりとゲッターD2にセットしておいた仕掛けが起動すれば武蔵とゲッターD2は鹵獲出来る。その後はどうにでも出来るとヴィンデルは笑い、カップに残っていた紅茶を飲み干した。
「それで今の所で何か判っている事は?」
「宇宙で連邦軍の部隊がいくつか行方不明になってるって事ね、多分武蔵とカーウァイが宇宙に行ったのも、この件の捜索と見て間違いないんじゃないかしら?」
連邦軍の部隊の行方不明とそれに前後して、宇宙を目指したゲッターD2。誰が聞いても、行方不明の部隊の捜索に出たと考えるのが自然な流れだ。
「やはり武蔵の言う通り順序が逆だと言うのも信憑性を帯びてきたな」
「何? 信じてなかったの?」
「いや、我々のほうではあの事件が先だった。この世界ではインスペクターが出現しないのかと思っていてな」
ヴィンデル達の世界ではインスペクターが現れ、イージス計画と話は進んだ。だがこの世界では別の異星人が現れ、そこからイージス計画の話になるとヴィンデルは考えていたのだ。
「L5戦役の事もあるから、ハガネとヒリュウが囮になるかもよ、ま、もう少し様子を見ましょうよ。色々と事態が動き始めたみたいだしね。私達も百鬼帝国の影で動きましょ。と、言う訳で私は日本に行くわ」
「待て、何をしに日本に行くんだ?」
軽い口調で日本に行くと告げたレモンに何をする為に日本に行くんだと尋ねるヴィンデル。
「ハガネが伊豆基地に戻るならラミアも戻るでしょ? ちょっと様子を見てくるのよ。それに気になる事もあるしね」
「気になる事?」
「ええ、武蔵の言う通りL5戦役の時にアクセルは転移してしまったみたいでしょ? それで各地で蒼い特機の目撃情報噂もあるからバリソンとそこら辺を調べてくるわ。そのついでにラミアに通信機を渡してくることにするわ、じゃあね~」
アクセルの搭乗機らしいソウルゲインの噂と、ラミアが破損したと言っている通信機の事もあり、レモンはオペレーションキルモールが発令させる前に1度日本に向かう事にしたのだが、これが後にレモン、ラミア、そして今は消息不明のエキドナの運命を変える出来事になるとは思っても見ないのだった……。
リクセントの国際会議、そして中国でのアンノウンとの遭遇を経て、シロガネとハガネは漸く伊豆基地へと帰還し、3日後に控えるオペレーションキルモールの最終調整をしていた。そんな中、ダイテツとリーはレイカーと共に衛生兵の報告を聞いていた。
「身体検査の結果、筋肉増強剤や精神高揚剤など薬物投与の痕跡が発見されました、後大変微弱ですが、リマコンの痕跡もあります」
簡易的ではあるがハガネで行なったアラド・バランガの身体検査と同じ結果が伊豆基地でも確認された。
「ここまでやるのか、テロリスト共めッ!」
少年兵であるアラドに投薬やリマコンをし兵士とする。その非人道的な行いにリーがレイカーの前だと言うのに怒りを露にする。レイカーが自分を見ているのに気付き、リーはすぐに敬礼する。
「も、申し訳ありません。怒りを抑え切る事が出来ず」
「いや、それで良い。君の正義感を私もクレイグ司令も買っている」
熱く燃える激しい正義の男。だからこそ、クレイグもレイカーもリーを買っている。むしろ上官の前でさえも、その正義感を見せると言う事は演技ではないと言う事が判る。
「注目すべき点は肉体の頑強さ……か、見た目の年齢とは不釣り合いと言う報告もある。それに、傷の回復力も常人より速いのか……」
「恐らくだが、数で劣るテロリストが数の不利を覆す為に色々と試しているのだろう」
「そうか……普通ならば精神操作などを疑うべきなのだが……」
連邦の負の遺産であるスクールの生き残り、投薬や精神操作の疑いもあるのならば投獄や、戸籍が無いので処理すると言う方法もある。レイカーとダイテツのやりとりに不信な物を感じたのかリーは敬礼したまま声を張り上げる。
「レイカー司令ッ! ダイテツ中佐ッ!! アラド・バランガは投降しておりますッ! 処罰や投獄などの行いは出来れば避けて頂きたいと具申させていただきますッ! 全ての責任は私が背負います、どうか温情ある決断をよろしくお願いいたしますッ!!」
部屋中に響くほどの大声にレイカーもダイテツも驚いた顔をしたが、小さく笑い始める。
「リー中佐。安心して欲しい、私が伊豆基地の司令である限りアラド・バランガは捕虜として人道的な扱いを行なう事を約束しよう」
「リー中佐。覚えておけ、伊豆基地に集まっているのはある意味、問題児、命令違反の常習犯だ。お前の心配するような事はない」
「流石ダイテツだ、命令違反の常習犯が言うと説得力が違うな」
自分の早とちりだったと気付き、リーは再び敬礼し申し訳ありませんでしたと謝罪を口にした。
「それでアラドの様子は?」
「リュウセイ少尉、ラトゥーニ少尉と良く話をしている」
「そうか、その中で錯乱するような素振りは?」
「ありません。ただその……常人の4倍近い食事をするのが些か問題ではありますが……」
アラドの食事量は成人男性の4倍近いのが問題ですと言うリーだが、ダイテツとレイカーは声を揃えて笑った。
「3日で1ケ月分の食糧を消費した男もいる。それと同じと思えば大した事はない」
「念のために多目に食糧を積んでおいて正解だった」
「は、はぁ?」
武蔵の事を知らないリーは2人が何の話をしているか判らなかったが、食事量に関しては問題がないと言うことは判ったようだ。
「早めに連絡をしてくれたからマオ社のラーダ女史と連絡がついている」
「流石レイカーだな。手が早い」
ハガネの簡易の検査報告を聞いてすぐレイカーはマオ社に連絡を取り、セラピストでありメンタルケアの専門家であるラーダにアラドの検診を頼んでいたのだ。
「どの道アラドからテロリストの話も聞けそうにない。マオ社で見てもらう事を優先しよう」
「本人は自分の知る限りの事を話してくれたが、立場も末端の兵士だから詳しい事は何も知らなかった。判ったのはアースクレイドルと百鬼帝国に繋がりがあると言うことだ。レイカー、今からでもキルモールを中止する事は出来ないか?」
オペレーションキルモールはアースクレイドルの制圧作戦だ。そのアースクレイドルに百鬼帝国がいるとなれば、苦戦は必須……いや、最悪の場合全滅の可能性もある。今からでも中止を発令出来ないか? と尋ねる。
「それは出来ない、既に第21・23・24混成機動師団が出撃している」
既に出撃している為今更キルモール作戦は中止できないと言うレイカーの言葉を聞いてダイテツは深く肩を落とした。
「しかしだ、この作戦でハガネとシロガネを轟沈させる訳には行かない。私の権限で部隊を分ける、ダイテツ達はエチオピアで第21・23・24混成機動師団と合流後、アースクレイドル攻略戦に参加してくれ、リー中佐は第25・26と合流してベルフォディオ基地を目指してくれ」
「そんな事をしていいのか?」
「言った筈だ。ハガネとシロガネを失う訳には行かない。最悪の場合――現場放棄をして離脱せよ。良いな」
誘い込まれて全滅する可能性を考慮し、レイカーはハガネとシロガネを遊撃隊、最悪の場合に離脱出来る立ち位置へと配置した。
「それとだ、ダイテツ、リュウセイ少尉とエクセレン少尉を月に派遣してくれ」
「急にどうした?」
「マオ社から要請があってな……名目上は最近宇宙もきな臭いから、早めに新型を受け取りに来て欲しいそうだ」
このタイミングで単独行動で宇宙へ行き新型を受理せよと言う命令はかなりむちゃくちゃだ。
「それはキルモールに参加させろという事でしょうか?」
「恐らくな……だが、これを利用させて貰う。アラドを連れてマオ社へ迎え、事後承諾になるがラーダ女史に見て貰う。出発は2日後だと伝えてくれ、ダイテツ、リー中佐。貧乏くじを引かせてしまうが……よろしく頼む」
「「了解ッ!!」」
こうして百鬼帝国の影がちらつくなか、テロリストの本拠地であるとされるアースクレイドル攻略戦の準備が進められていくのだった……。
第29話 宇宙の龍/大地の鬼神 その2へ続く
今回はここまでにしたいと思います。次回はオリジナルのインターミッション、そしてヒリュウ改の面子を出しつつ、誰が為の盾と疑惑の宇宙をやや簡略化して書いて行こうと思います。ゲームでのシナリオで言うと、誰が為の盾と疑惑の宇宙を1つに、その後は地上ルートの桜花幻影→異形の呼び声→その名はアインスト→星から来るもの→第三の凶鳥→ノイエDC→剣神現るとシナリオを前後させて、シナリオを調整しながら展開して行こうと思います。やや混乱するかもしれないですが、上手く調整して行きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
それとエイプリルフールには間に合いませんが、4月4日の更新でエイプリルフールの特別企画をやりたいと思っております。
それに伴い活動報告にアンケートをおいてありますので、そちらも1度目を通していただけると幸いです。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い