第30話 宇宙の龍/大地の鬼神 その3
ヒリュウ改のモニターには複数のAMの姿が映し出されていた。その数と宇宙用の迷彩カラーで黒を基調にしたカラーリングにショーンは眉を顰めた。
(最悪の展開とまでは言いませんが、その次位には不味い状況ですな)
今地球圏では正体不明のテロリストによる新型奪取事件が多発しているという事を聞いていた。迷彩カラーから見てAM隊がテロリスト、もしくは公に見つかると不味い部隊と言うのは明白だ。
「ユン伍長。一応警告を」
「了解です。艦長にも連絡を入れますね」
「ええ、そうしてください。最悪の場合、ここで事を構える事になりますよ」
恐らく先に射出した偵察ポッド。その反応を逆探知してきたと予測するショーン、普段の飄々とした表情は消え、歴戦の軍人と言うべき鋭い気配を纏っていた。
「ん?」
「どうしましたか? 副長」
「いえ、今僅かな熱源反応が……ソナーによる熱源捜索を、伏兵の可能性があります」
迷彩カラーの機体を運用しているのに正面からだけと言うのは考えられないとショーンは告げ、ソナーによる熱源捜索を命じ、再びモニターに視線を向ける。
「やはり駄目なようですね。今地球圏を騒がしているテロリストグループと見て間違いないようですね」
声による警告、文章による警告も完全に無視。それ所か武装を展開し、目撃者であるヒリュウ改を轟沈しようと動き出した。これで相手がテロリストグループの一員であるという事を確信したショーンはユンにさらに命令を飛ばす。
「対AM戦闘、用意。オクトパス小隊、出撃させてください」
「了解!」
「お、遅れてすみません!」
ショーンの命令でオクトパス小隊の出撃命令を出したのと同時に、仮眠をしていたレフィーナが慌ててブリッジに駆け込んできながら謝罪の言葉を口にしたのだが、ショーンとユンは驚きに目を見開いた。
「か、艦長! その格好は!?」
「え!? ああっ!?」
ネグリジェ姿でぬいぐるみを抱えている姿に今気付いたのか、レフィーナはその白い肌を赤く染め上げた。
「わ、私、なんて格好をッ!?」
「気付いて無かったのですかッ!?」
今の今まで何故気付かなかったと言わんばかりにぬいぐるみで顔を隠して蹲りながらレフィーナは一応弁解を口にする、
「む、無我夢中で飛び出して来たので……」
「ううむ……いや、まぁ私やダイテツ中佐もそういう経験はありますが……しかし……」
仮眠中に警報がなり、寝巻き姿で寝癖をつけたままブリッジに上がって来た経験はショーンとこの場にはいないがダイテツにも経験があったが、レフィーナのような年若い乙女がネグリジェ姿と言うのは流石に些か問題があった。
「は……恥ずかしい……です」
耳まで真っ赤に染めて消え入りそうな声で言うレフィーナは顔をライオンのぬいぐるみで隠しながら、身体を小さくさせて艦長席に腰掛けた。
「まあ、仕方ありませんな。緊急事態で混乱するのは仕方ない事です。……ちなみに、その子は?」
「え? 寝る時いつも一緒の……」
ショーンがマイペースにライオンのぬいぐるみを指差して尋ね、レフィーナが返事を返そうとした時一際大きい警報が鳴り響いた。
「そんな事を言ってる場合じゃありません! アンノウン群がレンジD3へ侵入しましたッ!」
「各員は副長が出した命令を続行!……副長、状況報告をッ!」
最終警告ラインを突破してきたというユンの報告を聞いて、レフィーナは羞恥心を押し殺し、いつもの凜とした声で指揮を取り始めるのだった……。
赤く染め上げられたゲシュペンスト・MK-Ⅲを先頭に、緑のゲシュペンスト・MK-Ⅱ、ガーリオン、ジガンスクードがヒリュウ改から出撃してAMの部隊と向き合うようにフォーメーションを組み、隊長であるカチーナからの檄が飛ぶ。
「オクト1より各機へ。久々の実戦だ、しくじるなよ」
『オクト4、了解です』
『オクト2、了解です』
レオナ、ラッセルからの続けて返事を聞いた後。カチーナはジガンスクードに通信を繋げた。
「タスク、ホントにジガンで良いのか? まだ改造が終わってねえんだろ。無理そうなら、あたしの予備のゲシュペンスト・Mk-Ⅱかアーマリオンに乗り換えて来てもいいぜ」
ジガンスクード・ドゥロに改造中のジガンスクードは決して本調子ではない。戦場で、しかも宇宙で不調の機体に乗り込むという恐怖を考えれば、今の内に乗り換えて来いと言うのはカチーナの不器用な優しさの現われだった。
『まあ、調整中の所もあるんでギガ・サークルブラスターなんかは使えないッスけど……それ以外のところは問題ないっス。だから大丈夫っスよ、後ついでに改良したグラビコン・システムの調子を見たいんで、大丈夫です』
「ブッ壊して仕事を増やすんじゃねえぞ」
「そのつもりッス」
心配したカチーナに対してタスクの返答は大丈夫と言う物だった。本人が大丈夫と言うのならば、これ以上カチーナから言える事は何もなく、壊すなよ=死ぬなよと声を掛けるに留まった。
『カチーナ中尉! 敵機がレンジD2へ侵入します!』
「コスモリオンとアーマリオンか。なんだ、随分と豪勢な部隊じゃねえか」
ラッセルの報告と共にカチーナもAM隊の姿を確認した。迷彩カラーのコスモリオン4機とアーマリオン4機の混成部隊――しかもアーマリオンは独自のカスタマイズを施されているのか両腕がシールドに換装され、背部にレールカノンとビームキャノンの計4門の砲台を背負っているカスタムタイプだ。
『あんなタイプのアーマリオンは初めて見ますわね』
『ですね……支援と防御を同時に行うタイプなのでしょうか?』
シールドと支援用の中距離~遠距離装備と言うややちぐはぐな武装をしている事に疑問を抱くレオナとラッセルだが、カチーナはさっぱりとした考え方をしていた。
「あたしらに向かってくるって事は、DCかコロニー統合軍の残党だろうよ、あいつらの事なんて気にせずぶっ潰すぞッ! 詳しい話が聞きたきゃ後で脱出ポッドを回収すれば済む」
襲ってくるのなら敵。詳しい事情は撃墜した時に脱出ポッドを回収して聞けば良い。考え事なんてしていて、要らない隙を作るなと言うカチーナの言葉は乱暴だが、確かにその通りだった。
『もしかして、部隊消失事件と何か関係があるんでしょうか?』
もしかしたら他のコロニーの部隊からの捜索班では? とラッセルが口にしたが、アーマリオンからのレールガンによる砲撃が始まり、捜索班と言う線は消えた。
「今ので判っただろ、あいつらは敵だ。考え事は良い加減に止めるんだな、行くぞッ!」
『合点承知!』
『了解です、カチーナ中尉』
部隊の捜索・救助班を攻撃すれば条約違反となる為。それを警戒したラッセルだったが、攻撃してきた事で条約違反の心配は無くなり、カチーナの指示に従い戦闘に入ろうとしたのだが……
『あいつら、どこへ行くんだ!? っ! ああ、もう鬱陶しいッ!!』
迷彩カラーのコスモリオンは反転し、ヒリュウ改から逃げ、アーマリオンはレールガンとビームを使い分けしながらコスモリオンを守りながら後退する。後退している為狙いが甘く、狙わなくても当てれる巨大なジガンスクードに攻撃が集中している為タスクの苛立った声がジガンスクードから響いた。
『私達をヒリュウから引き離すつもりみたいね、カチーナ中尉。どうしますか?』
「陽動っつうなら乗ってやる、だけどあたしとラッセルだけだ。タスクとレオナはヒリュウをガードしろッ!」
『了解』
『ういっス!』
狙いが甘く見えるが、それが囮でヒリュウ改をピンポイントで狙撃される訳にも行かない。カチーナはそう判断し、レオナとタスクをヒリュウ改の護衛に残し、あからさまに囮であるアーマリオンとコスモリオンの部隊に向かって機体を走らせるのだった……。
宇宙に明暗を繰り返すビームとミサイルの明かりを見つめながらレフィーナは鋭い視線をAMに向ける。
「副長。あのタイプのアーマリオンは建造されていましたか?」
「いえ、私の記憶の中では存在しませんな」
L5戦役時の戦力増強で生産されたアーマリオンは武装換装タイプであり、決して機体の基本構造を変えるまでの改造はされていなかった。両腕がシールド、そして決して威力は高くないがビームマシンガンを装備している腕部を見ればかなりの改造が施されているのは明白だった。
「どう見ますか?」
「そうですな。並みのテロリストではないとしか今は言えませんね」
ここまだ大規模な改造をしていることを考えると並のテロリストではない、組織的に高い力を持ち、財力と、そしてそれだけの改造を実行できるメカニックも有していると見て間違いない、だからこそレフィーナの視線は鋭いものとなっていた。
(ライオンが……)
(胸で押し潰されておりますな、いやいや、眼福)
しかしその姿はネグリジェ姿で胸元に抱え込んでいるライオンのぬいぐるみが凄い事になっているが、戦況に集中しているレフィーナはそれに気付かない。
『ライトニングステークセット! ぶちぬけッ!!!』
ゲシュペンスト・MKーⅢからのカチーナの雄叫びが響き、アーマリオンをシールドごと粉砕する。
「流石、カチーナ中尉と言った所でしょうか? 勝手にカラーリングを変えているのは不味いですが、その操縦技術はピカイチですな」
命令違反の常習犯ではあるが、その操縦技術と戦術眼はやはりピカイチだとショーンは笑う。
「ええ、流石です。カチーナ中尉も、ラッセル少尉もですけどね」
突撃癖のあるカチーナとそんなカチーナの背中を何年も守ってきたラッセル。剣と盾と言うのに相応しい堅牢なコンビネーションはATXチームのキョウスケとエクセレンのコンビネーションに通じる物がある。
『ラッセルッ!』
『うっ!? 大丈夫ですッ! しかし、あんな攻撃までしてくるなんて……』
カチーナの心配する声とラッセルの大丈夫だと言う声を聞きながら、レフィーナは顎の下に手を当てた。
「あの盾は防具だけではなく、攻撃も兼ねているのですね」
「やれやれ、アーマリオンでガーリオンのソニックブレイカーを再現ですか、これは報告しないわけには行きませんね」
シールドユニットを前面で構え、テスラドライブを最大出力にした突撃。ガーリオン系列の最大武器である、ソニックブレイカーをアーマリオンで可能にするとはレフィーナ達にとっても計算外だった。
「あの突破力、あの速度……やはり本命はアーマリオンのようですな」
「ええ、回避出来たので良かったですが、直撃していたら不味いですね」
支援機に見せかけて、引き寄せた所をソニックブレイカーによる突撃で仕留める。いやらしい攻撃手段を持つアーマリオンだとレフィーナは顔を歪め指示を飛ばす。
「主砲、副砲、照準をコスモリオンへ、対空砲塔はミサイルの迎撃を続けてください。ジガンスクードにはギガワイドブラスターでの支援命令を、1度仕切りなおします」
コスモリオンから放たれるミサイル、そしてそれを守るアーマリオンが一撃でPTを粉砕できる攻撃力を見せた以上先行しているカチーナとラッセルが危険だと判断し、1度後退出来る隙を作るように命令するレフィーナ。
「良い判断です、艦長」
「いえ、副長の指導のお陰です」
撤退するように見せかけて、ここで確実にヒリュウ改の戦力を削ぎに来た。つまり今回の攻撃は計画的に練られた物だとレフィーナは判断した。
「副長はどう考えてますか?」
「本艦を攻撃するには、いささか数が少ないですな、それに2の矢を隠していた事を考えると……」
「3の矢があると見て間違いありません。ならば敵の思い通りに動かず、こちらのペースに巻き返します。本艦はしばらくの間、この位置で固定。オクト1、オクト2はレンジ2まで後退、オクト4はレンジ3へ移動し、撤退支援を、オクト3はレンジ1で固定、ギガワイド……ッ!!!」
指示を飛ばしている間にヒリュウ改は激しく揺れた。
「どうやら思ったよりも早く3の矢を撃ち出してきましたな」
「……そのようですね。オクト3、4はレンジ2へ移動。ヒリュウ改を護衛してください」
レーダーにも、そしてレオナやタスクにも気付かせない、超速度による狙撃に警戒を強めるレフィーナ。
「0時方向、レンジU3に熱源反応多数ッ! AMと思われます!」
「やはりですか、疑いたくはありませんが……ッ」
「ええ、情報漏えいですね。やれやれ、随分ときな臭くなってきましたなあ……」
L2宙域にヒリュウ改がやってくるのを判っていた――対艦用の大型レールガンを装備したガーリオンとアーマリオンを見てレフィーナとショーンは情報漏えいがあったと確信した。
「今度は妥当な数ですな、しかしながら……」
「ええ、部隊のカラーが統一されていません。恐らくは、最初のコスモリオンとアーマリオンの部隊と後詰は違う部隊と見ました」
最初に遭遇したコスモリオンとアーマリオンは迷彩カラーの黒で統一されていた。しかし、後続の機体は赤や黄色を主体にした威圧感や目立つカラーをしていた。
「あのガーリオンも気になりますしなぁ」
鎧武者のような装甲をしたガーリオン。それが明らかに指揮官機であると判断し、これ以上増援はないと決断した。
「ええ、恐らくあれが指揮官機ですね。波状攻撃で攻められては厄介です、こちらから打って出ます」
「了解しました。が、現状は艦首超重力衝撃砲が使用不可です。その事をお忘れなきよう」
「判りました、微速前進。対艦装備のガーリオンとアーマリオンをまずは落とします」
ガーリオン・カスタム・無明の参戦によって、L2宙域での戦闘は更に激しさを増していく事になる。そしてヒリュウ改とテロリスト達の戦いを小惑星に偽装したアルバトロス級のブリッジからカーウァイと武蔵は戦況を見ていた。
「落ち着け武蔵」
「いや、でもほら……すんません」
足踏みをしている武蔵にカーウァイは落ち着けと冷静に声を掛ける。戦況は確かにヒリュウ改が圧倒的に不利……割り込むタイミングとしてはそろそろ決断するべきだろう。
「ムラタか……ちっ、あいつめ」
その中でもカーウァイはガーリオン・カスタム・無明の動きを見て舌打ちをした。その癖を見て、そのパイロットが何者か判ったからだ。
「知り合いですか?」
「知り合いと言うほどではない、ただゼンガーと同じ時期に教導隊にと声が掛かっていた1人だ」
「じゃあ連邦の……?」
「リシュウ・トウゴウ氏の弟子だ、確かに腕は良かった。だがあの男は駄目だ、剣鬼に誰かを導く事は出来ない」
確かにムラタは教導隊に相応しい腕前をしていた。だがその目に潜む、人を斬りたい、殺したいという狂気を見てカーウァイはムラタに教導隊に相応しくないとして受け入れを拒否し、ゼンガーを迎え入れたと言う過去がある。
「なるほど、狂人ってやつですか……なら」
「ああ、私が出る。武蔵は待機していてくれ」
かつての因縁とこうして鉢合わせたのも何かの運命だと判断し、カーウァイは自分が出ると告げ、武蔵に待機するようにと口にした。
「オイラも出れますよ? ゲットマシンで」
「いや、私の勘ではまだ何かある。それに備えておいてくれ」
カーウァイの勘ではこれで戦いは終わらない、まだ戦いは続くとカーウァイの勘が訴えていた。
「カーウァイ大佐、出撃準備は完了しています」
「ああ。すまない、気密室に退避してくれ」
整備兵に感謝の言葉を口にしてカーウァイはゲシュペンスト・タイプSに乗り込み、アルバトロス級の格納庫から出撃するのだった。
対艦用レールガンの弾頭は特殊な物で、初弾以降を全てジガンスクードに防がれると即座に反転し離脱して行った。だが指揮官機であるガーリオン・カスタム・無明だけは残り、オクトパス小隊に執拗に攻撃を繰り返していた。
「うぐっ! あいつ、速い!」
「ふふ、頑丈だな。斬り甲斐があるわッ!」
素早い出入りでジガンスクードをシシオウブレードで斬りつけ、カチーナ達にはレールガンやマシンキャノンを駆使して、足を止めさせ、その脇を悠然と突破する。
「くそッ! こいつ乱戦に慣れてやがるッ!」
「ははははッ! その程度では俺には届かんぞッ!」
カチーナのゲシュペンスト・MK-Ⅲをあしらい、殴り飛ばすと再びジガンスクードに向かってガーリオン・カスタム・無明を走らせる。
「タスク、離脱しなさい! ジガンスクードじゃ、あの速さに対処しきれないわッ!」
ジガンスクードはその巨体ゆえにPTやAMの相手をするのは厳しい。それなのに並みのガーリオンの数倍は早いガーリオン・カスタム・無明をジガンスクードが相手にするのは無茶を通り越して無謀だった。レオナがガーリオンを駆り、少しでも自分に注意を引き付けている間に離脱しろと怒鳴るがタスクは余裕の態度を崩さない。
「ヘッ! 親分の斬艦刀ならともかく、そう簡単にジガンは斬られやしねえッ! レオナこそ下がれ! あいつの相手は俺がする!」
「だから、無理だと言っているでしょうッ!」
DC戦争でグルンガスト零式の斬艦刀を受けているタスクはシシオウブレードで両断される事はないと叫ぶ。だが、レオナから見ればシシオウブレードの切れ味は鋭く装甲は切り裂かれなくてもコックピットを狙われたらと心配するのは当然の事だった。
「痴話喧嘩をしている場合か? チェストォッ!!!」
ガーリオン・カスタム・無明は急旋回し、ガーリオンの背後を取り、そのままコックピットを両断せんとシシオウブレードを振りかぶる。
「覚悟!!」
「させるかよ!!」
そのあまりの速度に対応出来ないでいたレオナを庇う為に、タスクがジガンスクードでガーリオン・カスタム・無明の斬撃を両腕のシールドユニットで受け止める姿勢に入る。
「散り際は潔くなッ! 我が太刀を受けよッ!」
「レオナに手ェ出すんじゃねえ!」
神速の抜刀による横一線が、ジガンスクードのシールドユニットを引き裂き、ジガンスクードを後方に向かって大きく弾き飛ばした。
「うぐううっ!?」
ジガンスクードの巨体が弾け飛んだ。パイロットであるタスクも多少の衝撃は覚悟していたが、まさか一太刀で中破に追い込まれるとは思っていなかった。
「タスクッ!!」
「タスク! 大丈夫かッ!?」
そしてカチーナとレオナもジガンスクードの巨体が標準的なAMに弾き飛ばされると言う信じられない光景を目の当たりにし、タスクの名を通信越しで叫んだ。
「っ……な、何とか……! 無事っス!」
無事だと叫んだタスクだが、ジガンスクードは無事ではなかった。煙の中から姿を見せたジガンスクードを見てラッセルが叫び声を上げた。
「シールド・ユニットがッ!?」
ジガンスクードを最強の盾と知らしめていたシールドユニットが両断され、火花を散らしている。シシオウブレードの切れ味は判っている筈だったが、ガーリオン・カスタム・無明のシシオウブレードの切れ味は桁外れの物だった。
「下がりなさい、タスクッ!! もうこれ以上は戦えないわッ!!」
シールドユニットを失ってはもうガーリオン・カスタム・無明のシシオウブレードの一撃を耐える事は出来ない。レオナが撤退しろと叫ぶが、タスクは後に引かず敢えて前に出た。
「いや! ここで退く訳には行かねえッ! オクト3よりドラゴン2へ! 例のブツを射出してくれ!」
『例のブツ!?』
「か、艦長、そのカッコは何スかッ!?」
通信を繋げたら、モニターに映ったネグリジェ姿のレフィーナを見てタスクは目を見開いた。
『こ、これは……その……ッ! 副長、お願いします!』
見られているのが恥ずかしく、艦長席の後ろに隠れてしまうレフィーナに変わりショーンがタスクの要請を承認する。
『非常時ですから観賞は後で……すぐに例のブツの射出を』
『例のって……まさか!?』
『そう、事前に話があったあれです』
『りょ、了解ッ!』
タスクが出撃前に頼んでいた仕掛けの準備に入るヒリュウ改。だがムラタがその隙を見逃す訳が無かった……。
「何をするつもりか知らんが、潔く滅せい! 巨大なる盾よ!」
シシオウブレードを再び腰の鞘に納め、急加速しジガンスクードにトドメを刺そうとした瞬間。小惑星の影から飛び出してきた何かによって、その動きを止められた。
「むっ!? ちえいッ!?」
高速で飛来した何かを動きを止めて弾き飛ばすガーリオン・カスタム・無明。だが動きを止めた事でジガンスクードは両腕のシールドユニットをパージし、ヒリュウ改から伸びているガイドビーコンに向かって移動する。
「おいおい……今のはなんだ……ッ」
「実弾ッ!?」
一体何がガーリオン・カスタム・無明の動きを止めたのか困惑しているカチーナとラッセル。確かにタスクはその何かによって、救われた。だがタスクを救った何者かが味方とは限らない。ガーリオン・カスタム・無明の強襲も相まって、否が応でもその緊張感は増していく事になった。
「ドラゴン2! 今だ、射出してくれッ!!」
『ッシーズアンカー・ユニット、射出準備完了ッ!』
『座標軸合わせ。射出ッ!』
ヒリュウ改から射出されたシーズアンカー・ユニットをシールドユニットを捨てた両腕に装着するジガンスクード。
「よっしゃあ、合体完了ッ!! 覚悟しやがれ、サムライ野郎ッ! 生まれ変わったジガンの力! てめえに見せてやるぜぇッ!!」
シーズアンカーを振り上げ、放電させるジガンスクード・ドゥロ。その力強さに溢れる姿を見て、ムラタはにやりと笑った。
「何が俺の邪魔をしたかは知らんが……まぁ良い、これは斬り応えのある相手だッ! 貴様を斬ってから俺の邪魔をした者を見つけだして斬る事としようッ!」
自分の邪魔をされた事に腹が立つ物の、更に斬り応えのありそうな姿になったジガンスクードに笑みを浮かべ、ガーリオン・カスタム・無明を走らせるムラタ。
「行くぜ! ジガンスクードド、ド……いてッ! 舌噛んだッ! ええいッガンドロ! 行くぜぇぇぇ!!」
そして向かってくるガーリオン・カスタム・無明を向かい打つ為に、シーズアンカー・ユニットをガーリオン・カスタム・無明に向かって突き出すのだった……。
「やれやれ、私の嫌な予感は本当に当たってくれるな」
ガーリオン・カスタム・無明の突撃を食い止めたのは、ゲシュペンスト・タイプSの放ったレールガンの一撃だった。だがそれは、ガーリオン・カスタム・無明を狙った物ではなく、運よくそちらの方向に飛んだ流れ弾の一撃だった。
『『『『……』』』』
ゲシュペンスト・タイプSはL2宙域で行方不明となったランゼン、ゲシュペンスト・MK-Ⅱ、ヒュッケバインMKーⅡ、そして奇妙な形状の偵察機――「ガロイカ」に囲まれ、戦闘中だったのだ。
「ヒリュウ改の事は気になるが、来い。相手になってやるッ!」
ヒリュウ改とガーリオン・カスタム・無明が戦う中、カーウァイもまた戦いに身を投じていたのだった……。
第31話 宇宙の龍/大地の鬼神 その4へ続く
次回はこのインスペクター達との戦力との戦闘中にヒリュウ改とガーリオン・カスタム・無明のほうに雪崩れ込んでいく、と言う形で疑惑の宇宙と誰が為の盾を続けて行こうと思います。そしてその次の話では地上ルートの桜花幻影に入って行く予定です、場面や登場人物が目まぐるしく変わると思いますが、ある程度は整理してお送りしようと思うので、温かい目で見ていただけると幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い